オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
この20話で第3章は終わりとなります。
竜王国の玉座には、4人の人間と1人の亜人。
ドラウディロンは、ソルディフ殿が昨日の今日で戻ってきて、しかもたった一昼夜でビーストマン国を滅ぼし、さらに約束通りビーストマンの王を捕虜として連れ帰ってきたことに、驚きを通り越して、何だか達観した気分になっていた。
ソルディフ殿の話では、火滅聖典をはじめとした他の者たちは、ビーストマン国で捕虜になっていた竜王国民を保護しながら、この王都に向かっているという。
ビーストマンの王は、というと、どこにも目立った外傷は無いのに、生きているのが不思議なくらいぐったりしている。
雄々しい獣の両腕は、後ろ手に縛られて、その縄をソリュシャン殿が掴んでいる。
「ソルディフ殿…その、危険ではないのですか?」
宰相が堪らず質問する。
「いえ、大丈夫でしょう。ソリュシャンが抑えていますし、“恐ろしく速い手刀”という技でHP1にしましたから。ミネウチの様なものです」
「はぁ…」
言っている意味は良く分からないが、とりあえず無力化はできているという事らしい。
「ドラウディロン陛下、ビーストマン王とお話しされるということだったのでは?」
ヘロヘロからの言葉に、ドラウディロンは達観状態から少し回復し、気を引き締めてビーストマン王を見る。
「私は竜王国の女王、ドラウディロン・オーリウクルスじゃ。お前はビーストマン国の王で間違いないか?」
「…お…お前のような子供が…王なのか…」
ビーストマン王は、何かに怯えているかのように声が震えていたが、やっとのことでドラウディロンに疑問を投げかけた。
ドラウディロンは、宰相の方を少しジト目で見ると、宰相はすまし顔で頷いた。
一つため息をつくと、ドラウディロンは
女王の体は、瞬くように僅かに輝くと、そのサイズを少しずつ大きくしていき、妙齢の女性の姿となった。
服はマジックアイテムだったようで、女王の姿に合わせ形を変え、“女王”にふさわしいものとなる。
下品ではない程度に開いた背中には、竜王の子孫たる証の黒き鱗が覗いている。
「竜王国女王ドラウディロン・オーリウクルスとしてもう一度、問う。お前がビーストマン国の王で間違いはないか?」
想像外の出来事にさすがのアザドも驚きの顔をしていたが、やがて小さく頷きながら答える。
「ああ、俺こそが当代のビーストマンの王、アザドだ」
ヘロヘロの予想外のイベント進行に目を丸くしながらも、『運営…やりますね』という気持ちで感動するとともに、『ペロロンチーノさん、どうしますか?』という内なる幻影に問いかけるという事を同時に行っていた。
「そうか…ビーストマンの王、アザド。お前の国民は長年にわたり我が国の国民を襲って食い、また、先日ついには我らが街へ攻め入るという行動に出た。私はこれを宣戦布告と捉え、わが国民と協力者によってお前の国へ攻め入った」
アザドは、ドラウディロンの言葉から、部下が西の街を包囲するだけでは留まれず、命令を無視して先走り攻め入ったという事実を知った。
そしてその結果、背後にいる人間の形をした死神を呼び寄せてしまったことも。
…いや、正確には順序が逆なのだが。
「私はこの国の女王として、お前を殺し、この長きに渡る戦禍を終結させねばならない」
「…人間の王…俺には息子が二人いる。もしあの子たちが生き残っていたら、見逃してくれることはできないか?」
「…ならん。お前たちが我が国の国民でもとりわけ子供を攫って食っておった事は知っている。それが逆になっただけじゃ。それに禍根は絶たねばならない」
「くっ…」
ドラウディロンは王家に伝わる魔法効果を持つロングソードを抜く。
アザドは抵抗しようとしたが、残りHP1であることに加え、ソリュシャンによる拘束により身動き一つとることはできなかった。
いかにドラウディロンが通常の人間と同じ程度の力で、アザドと隔絶したレベルの差があっても、魔化されて強化された剣のおかげで1のダメージは与えることが出来たようだ。
アザドの首が落ち、宰相がそれを布で包んだ。
「血なまぐさいことだが、脅威と戦争が終わったことを国民に知らせる必要がある。その首は適切に保管しておくのじゃ」
「はい、陛下」
様々な処理が終わった後、ドラウディロンは大人形態のまま、改めて玉座でソルディフに言葉をかける。
「驚かせてしまったかな。この姿が私の本来の姿だ。
ヘロヘロの頭の中には二つの選択肢があったが、彼女の本来の姿が大人であるという事を理解した今、『選択肢① ペロロンチーノに紹介する』はナシの方向に固まっていた。
なので、頭の中に浮かんでいるもう一つの選択肢②を述べる。
「それでは噂で聞いたのですが、陛下のご祖先には竜王がいるとか。もしその竜王がご存命ならば会わせていただけますか?」
「なっ…!」
ドラウディロンは、予想外のソルディフの希望に言葉を失う。
自身の曽祖父が
また、
「ソルディフ殿、確かに私の曽祖父は
「ふむ…失礼ですが陛下はその場所まで行ったことは有るのですか?」
「ああ、私は戴冠の時にご挨拶に伺ったことがある。だが、マジックアイテムを用いた転移のような手段だったので、陸路で行ったことは無いのじゃ」
「なるほど、
「“げーと”?…いや実を言うとな、そのマジックアイテムはこの玉座の後ろ、このタペストリーがそうなのじゃ。だが、このアイテムを使用できるのは王家の血を引く者と決まっているのだ。おそらく貴殿が使用することはできないだろう」
そう言うと、ドラウディロンは宰相に、そのタペストリーに触るように言う。
宰相が触っても、それはただのタペストリーでしかなく、なんら不思議な点はない。
しかし次にドラウディロンがそのタペストリーに触れると、伸ばした右手の先はタペストリーの中に吸い込まれた。
「このようにな、このタペストリーは曽お爺様が魔法をかけて、王家の血を引く者しか通れんようになっているのだ。ソルディフ殿も試してみて構わんぞ」
「成程面白い仕掛けですねぇ。ではお言葉に甘えて」
ヘロヘロが伸ばした右手の先は、タペストリーに吸い込まれた。
「なっ?!」
「おや?」
当然だが、ドラウディロンや宰相は、今起こっている現象に驚く。
ヘロヘロはというと、まず玉座の後ろに最初からかかっていたタペストリーが扉になっているというお約束を守りつつ、何らかのイベントクリア—おそらくはビーストマン国の殲滅—によってフラグが立ち、自身も扉をくぐれるという事実に歓喜した。
『これは…やはり一見悪意に満ちた罠イベントと見せかけて、実は竜王とかいう重要NPCと会うための隠しイベントにつながるものだった訳ですね!!これはもうトロフィー獲得間違いなしでしょう!コンソールが確認できる状態になった時に、解除されている実績がいくつあるか見るのが楽しみですねー!!』
驚愕の表情を浮かべたドラウディロンは、さらにヘロヘロの御付きメイドもタペストリーの扉をくぐれるという事実にさらに驚愕し、言葉を失う。
「な…ソルディフ殿、ソリュシャン殿まで…貴殿らは一体………まさか…そなたらも竜王に連なる者…?」
「陛下、私たちは遥か南の国から来た者で、
ドラウディロンの中では様々な思いが入り乱れていた。
この者は何者なのか。
自身のスキルでは本質や強さを読み解くことも出来ぬ上位者であることは間違い無さそうである。
そして救国の恩人であることも疑いようがない。
しかしここに来て、竜王が魔法をかけたという王族しか通さないタペストリーの扉を通ることが出来る者であることが判明。
もしやこの方々は、遥か昔、曽お爺様が別の系譜で残したご子孫、つまり自身とも遠縁に当たる者なのではないだろうか。
かつて竜王が建国されたこの国は国難に見舞われ、その国の女王たる末裔は竜の血が薄れて竜として十全の力を行使することもできず、日々の政務にも追われ、本当の意味で心を許すことが出来る身内はおらず、寂しく辛い日々を過ごしてきた。
自身にとって都合の良い夢物語であることは充分わかっているのだが、ソルディフ殿は国と私に、運命が齎してくれた救世主なのではないか。
この御方が、これからも我が国に居てくれるならば、この国平和と私の心の安寧が約束されるのではないか…
「…ソルディフ殿。私と共に曽お爺様の元へ行こう。曽お爺様にお会いして、直接貴殿のことを確認した方が良いと私は思う…宰相、私たちはこれから
「はい畏まりした、陛下」
優秀な宰相は、ドラウディロンと同じ予測を立てていた。
そして、もし仮に、ソルディフ殿が竜の末裔であるならば、なんとしても彼をこの国に迎えて、この国の力を盤石にしなければならないと考える。
御付きのメイドは卿の御手付きと予想していたので今まではその可能性は考えていなかったが、最も望ましい形は卿に領地をお渡しし、この国の貴族となっていただいたのち、女王と婚姻してもらう事だ。
同じ竜王の系譜であれば国民や他の貴族から文句が出ることは無いだろうし、メイドの方がお手付きであったとしても、側室や第二夫人としての高い地位を与えればよいだろう。
優秀な宰相は、3人がタペストリーの向こうに消えると、それらの案を現実のものとするために意欲的に政務に取り掛かるのだった。
***
タペストリーをくぐった先は、非常に高い山の山道であった。
眼下には雲海が見え、地上の様子は確認できない。
ドラウディロンを先頭にしてしばらく山道を歩き頂上に到達すると、周りの景色とは少々違和感のある直線的な建物が現れた。
建物は石を削り出して作られたような幅広の立方体で、いくつかの窓がついている。
ヘロヘロから見るとそれはまるで、リアル世界の研究所のような建物に見えた。
『これは…何ともファンタジー感が無い建物ですねぇ…それとも現時点でここに到達する可能性があるプレイヤーは居ないと想定していてまだ建物のグラフィックが初期設定のままなんでしょうか?』
恐らく後者だなとヘロヘロが考えていると、明らかにリアルの住居の入り口のようなドアの前で、ドラウディロンが声を上げる。
「
すると中から「いいよ」という男性の声がする。
建物のサイズからしても、
扉をくぐると、左右にいくつかの扉がある廊下が奥へ続いている。
その内装は明らかにゲームとしては手抜き。
まるでヘロヘロがリアルで勤めている企業の廊下のようだ。
一番奥の扉を開けるとそこには、外見とは明らかに空間の広さが異なる広大な部屋が広がっていた。
部屋の中には何かしらの実験器具や、モニター、PCのような装置の数々。
分かりやすく言えば、エンジニアの仕事場と化学実験室が混ざったような部屋の内装だった。
最奥の椅子—ヘロヘロにはゲーミングチェアーに見えた—に座るのは、白銀色のボサボサ髪に不健康そうな猫背の若い男。明らかにリアルの仕事場でも良く見た白衣を纏っている。
「やあドラウ。久しぶり。もしかして代替わり?キミ、子供出来たんだっけ?」
どう見てもリアルのエンジニアか科学者に見えるその男—
「いえ、曽お爺様。そうではありません。我が竜王国は隣国のビーストマン国からの侵攻を受け滅亡の危機にありました。この方はその危機を救ってくれた恩人でございます」
「あービーストマンね。そういえばそんな感じだったっけ?で、その人らは恩人てことだけどなんで連れてきたの?あ、もしかしてこの人と結婚するのかな?そんなの僕の許可要らないよ?」
「えっ…いやまだそう言う話ではなく……」
少し顔を赤らめて言葉に詰まるドラウディロンを見て、ソリュシャンは殺意を覚えて、飴玉の1個をうっかり噛み砕いてしまった。
「
ヘロヘロはまず当たり障りのない会話から、この竜王というNPCの設定を読み解くことにした。
しかし
「国はもうドラウに任せている。僕の手から離れ居ているから僕がどうこうする責任は無いと思うんだけど…あれ、君」
そこまで言うと、
そして小さく「結構強そうだね。護衛に良さそうだ」と言うと、その瞬間、ソリュシャンに向かって竜の形をした光を飛ばした。
瞬間的なことで、ソリュシャンもヘロヘロも完全に油断していた。
だがその竜の形をしたなにかは、ソリュシャンの体に当たると霧散して消えてしまった。
ソリュシャンの左腕に嵌められた腕輪が一瞬だけ光を放った。
その腕輪こそは、ユグドラシルの最終日にソリュシャンに装備させたワールドアイテム。
ヘロヘロの持つ
このWIの名は
その効果は『超位魔法の発動時間をゼロにする』というもので、最後の1年に手に入れた、魔法職にとっては夢のような超絶アイテムである。この腕輪が1500人侵攻やナザリック地下墳墓のような高難度ダンジョンアタックの際に持っていたなら非常に有利に事が進んでいただろう。
ただ最終日、もう冒険に出ることは無いと考えていたため、このアイテムは同じ腕輪を装備するヘロヘロとお揃いというだけでソリュシャンが装備することとなる。
結果NPCは超位魔法が使えないし、二人とも魔法職ではないため、この世界では完全に死蔵している状態だった。
だがここに来て、重要な一つのルールに有効なアイテムとして働くこととなった。
それは『
そして、ヘロヘロも気づいていなかったが、ヘロヘロとソリュシャンがタペストリーを通ることが出来たのは、
ソリュシャンのWIが反応したことで、ヘロヘロは理解する。
この
「…今、何をしました?」
静かな怒りを内包するヘロヘロの質問に竜王は特に興味を示さず首をかしげる。
「あれ?失敗したかな?」
そして今度はその竜の形をした光をドラウディロンに飛ばした。
光がドラウディロンに届くと、彼女は声を上げることも無くその場に崩れ落ち、眠りにつく。
「ん?ドラウには効くな?おかしいな?」
瞬間、ヘロヘロだけでなくソリュシャンも異変に気付く。
そしてヘロヘロの前に出て盾となろうとした瞬間、ヘロヘロに肩を掴まれ後方へ投げ飛ばされた。
すぐさま再び前に出ようとしたところ、ヘロヘロが大声を上げる。
「ソリュシャン!!下がっていなさい!!」
「ですが!!」
「命令です!!あなたはその女王を守りながら下がっていなさい!!」
ソリュシャンは主の有無を言わせない言葉に一瞬たじろぎ、本来の自身の使命と、今頂いた勅命のどちらを遂行すべきか迷う。
敵であると認識した
剣はその外見とは裏腹に、凄まじい力が内包されていることが感じ取れる。
「そんなに怒るなよ。それにドラウを守る必要はないよ。眠ってもらっただけだから。なんかそっちの子の魅了はうまくいかなかったみたいだけど、もう一回やるから安心しなよ」
そう言うと今度はヘロヘロに向かって竜の形の光を飛ばす。
ソリュシャンが飛び出そうとしたとき、ヘロヘロは腕輪をした右腕を上げながらソリュシャンに優しく言う。
「ソリュシャン、不要です。これがある私たちには効きません」
ヘロヘロの言葉の通り、竜の光は霧散した。
今度こそ
そしてヘロヘロのセリフを聞き、その表情から笑顔が消える。
「竜王。どうやらあなたは敵認定でいいみたいですね。WIを持つ私たちにWIの攻撃は効きません。“傾城傾国”ではないですか?」
「お前…そうか、ついに来たか…だからタペストリーも潜ったか…」
武道を極めた存在となっているヘロヘロの動体視力と体術予測は、そのわずかな動きを見逃さず、次の行動を読み切る。
「ソリュシャン!
その言葉が終わる前に、ソリュシャンは中にいるビーストマンの残りの一体を投擲する。
切り裂いたのは、亜人種の子供と思しきもの。
目の前にいた男は姿が見えない。
瞬時に竜の種族スキルで完全不可知化を見破ろうとした瞬間、右腕に衝撃が走った。
つい今しがたまで持っていた、何の変哲もない剣。
その剣は何百年か前にこの世界に転移してきたプレイヤーが、暴走するNPC達や現地の強力なモンスターを倒すことで成長させ、最後は他の竜王と協力してそのプレイヤーを殺し、奪った剣。
その名を
「バカな…!ワールドアイテムが壊されるなど…!!」
いつの間にか姿を現した男が、滅多に見せない怒りの表情を浮かべながら言葉を発する。
「自己紹介がまだでした。私はソルディフ。
その言葉の意味を理解しながら、
確かに自分は特殊魔法を主体としたビルド構成で防御力に特化しているわけではないが、竜としての種族レベルに由来する高い物理防御力があったはず。だが信じられないことに、この者の攻撃は明らかに自身のHPをすさまじい勢いで削っていく。
この力は限界まで高めた100レベルモンクのさらに上を行く力。
それは単なるレベルだけでなく、
そうだ…確かに居た。
もう記憶はだいぶ薄れていたが、ホログラフィの収集データの中に、唯一WIアイテムを物理破壊できるワールド職の
名前は思い出せない…“ソルディフ”では無かった…たしか悪名名高いギルド:アインズ・ウール・ゴウンのスライムだった…要注意と言われていた…だめだ、メッセージで仲間に伝えることもできない…
いや、あんな奴ら仲間じゃない…僕は何度も言ったんだ。
竜王でいる時間が長ければ、精神は竜のそれになってしまう。
人間の姿で人間として生きる時間を作らなければ、取り込まれた僕たちはいずれ“竜王”としてのロールをする存在になってしまうと…
なのにあいつらは、僕のことを変態呼ばわりして、“竜王”そのものになりつつある…
ああ、ギルドホームを持たない僕が死んだら、僕はどうなるんだ?
復活する
消えるのか…こちらに来て数百年…あいつらの言いなりになって働いて、何人ものプレイヤーを殺した僕への罰か…
HPの急激な減少と共に意識が薄れゆく。
そして、目の前の男が今一度言葉を口にした。
「竜王などと呼ばれるボスなだけあって、中々の強さでした。ですがソリュシャンに手を出したのは許せませんね。消えなさい。奥義・半歩崩拳」
その一撃は今までの連打とは異なり、とても静かに放たれた。
男の体がスライドするように半歩だけ前に進み、それと同時に緩やかに伸びた拳が
残ったHPの全てが砕けるように静かに消滅した。
最後に許されたわずかな時間で、目の前の男に忠告をする。
「…君が見た目通りの人間ではないのなら気を付けることだ…長い時間異形の姿でいると…心はそちらに引っ張られ、帰って来れなくなるぞ……それと…ちゃんと最後までサポートできなくてすまなかった……プレイヤー」
ビーストマンをはじめとする、今まで倒してきたモンスターとは違い、
そしてその光の中に浮き上がる一つの銀色の鍵。
ヘロヘロはその鍵に手を伸ばす。
道具鑑定のスキルや魔法を取っていないのに、その鍵に意識を向けると、頭の中にそのアイテムの名前が明確に浮かんできた。
『特殊アイテム:
***
その後、少しの時間を経て目を覚ましたドラウディロンは、気を失う前の最後の記憶、なぜか曽お爺様が攻撃のような光を飛ばしてきたことを思い出した。
そして目を覚ました時、自身はソリュシャン殿に守られていて、同じく傍で自身を守るように佇むソルディフ殿が話しかけてきた。
「陛下、ご無事でしたか。お体に異常は無いですか?」
手足を動かしてみるがどこにも異常は無い。
ただ眠っていただけのように感じる。
「私は大丈夫なようだ…曽お爺様は…?」
ドラウディロンの質問に、ソルディフ殿は、今まで見たことが無い真剣な目をして答える。
「
「な…んだと…」
ドラウディロンは辺りを見回した。
確かに曽祖父の姿はなく、部屋の中はいつも以上に物が散乱している。
気を失う前、ソルディフ殿がした質問に対して、曽祖父の素っ気ない答えには正直少し失望した自分がいた。
そして、ソルディフの言う通り、曽祖父はなぜか私たちへ攻撃をしてきた。
なぜ…という気持ちもあるが、竜王に打ち勝ってしまった、ソルディフ殿の強さに驚くという気持ちもある。
理由は分からない。
だが、これは現実で、これから先竜王国、いや私自身が、
だからこれは、良い機会なのかもしれない。
「ソルディフ殿…曽祖父が済まなかった。彼が言っていたように、竜王国は既に
そこまで一気に言うと、ドラウディロンは立ち上がり、しっかりとした力強い目線でソルディフを見ながら言った。
「ソルディフ殿、どうか我が国へ来てくれないだろうか。返事は一度祖国に戻ってからで構わないし、貴殿の祖国を捨てろとは言わない。貴殿はあくまで貴殿の祖国に帰属しながら我が国においても貴族位を持ち、我が国の一員としてもいてくれるのであれば、これほど心強いことは無い…それに私は、貴殿のことが…気に入ってしまったようだ」
ドラウディロンは、メイドから放たれる強い殺気に脂汗をかきながらも、頑張って気づかないフリをしながら言い切った。
「そうですねぇ…一度祖国に帰った時に、仲間と相談します。それに陛下でしたら…私の国に所属するための基準も満たしていますので、仲間たちも良い返事をするかもしれません」
ヘロヘロは、彼女が実は未成年でなく女王という職業を持った社会人であり、おそらく竜人という異形種であることから、ナザリックに招待しても大丈夫だな、という意味で言った。
「ああ、待っておる!私はソルディフ殿が再び我が国を訪れるのを待っておるぞ!まずは親書の内容を一部変更しないとな」
こうして、イベントアイテム「じょおうのしんしょ」を手に入れたヘロヘロとソリュシャンは次の街を目指して旅に出る。
次に目指すはカルサナス都市国家連合。
競技大会「コネリエ」の他、この都市の東の平原を支配するという『騎馬王』というボスNPCに興味を持ったからだ。
ドラウディロンから話を聞いた優秀な宰相は、新たに手に入れた元ビーストマン国の領域を、未来のソルディフ・カーゴ・カルト・ヘロ=ヘロ侯爵の領土とするため、土地の浄化にしばらくは国家予算を投入することとした。
だがビーストマンの脅威がなくなり、明るい未来を見ることが出来るようになった竜王国はこれから国力を増していくだろう。
火滅聖典と共に、額に青筋を立てながら領土を浄化しているとあるシスターは、結局この戦争を終結させた上に、竜王を殺した者と会うことは無かった。
さらに言えば、竜王が乱心の末、とある旅の貴族に殺されたことは一部の者のみが知る秘匿事項となった。
彼はこの世界の真実を知る存在であり、重要な一つ目のピースである。
しかし彼の消滅するエフェクトがあまりにゲームだったために、ヘロヘロはこの世界が<Yggdrasil 2>であるという事をさらに信じ、そして何日もログインし続けているという事実はTETによるものと信じて疑わない。
手に入れた重要アイテムも、それが何だか今は分からないが、いずれ何かのストーリークエストで使うのだろうと理解し、すぐに考えることを止めてしまうだろう。
彼が最後に自信を『プレイヤー』と呼んだこともゲームのメタ的な遊び心くらいに思っている。
人は辛いこと、やりたくない事から逃げる理由を見つけることに対しては天才的である。
そういう可能性があり、自分が無事であるという事実は、この世界が楽しい楽しい<Yggdrasil 2>の中であることを信じて疑わないようにしていくのだ。
彼の大事な仲間であり、ギルマスであるモモンガは、既に2つの国の国王からのアポを勝手に取られているし、この数は今後も増えていくだろう。
ヘロヘロ本人も知らん状態で、とある国から爵位を与えられそうになっている。
誰か、AOGの誰でもいいので、お願いです。
早くこのスライム主従を見つけて止めてください。
このままではモモンガさんがストレスで死んでしまいます。
ぺロロン「はああああ???ヘロヘロさん、約束したよね?!フラグ立てるなって言ったよね?!!」
ヘロヘロ「え、フラグ?良く分かりませんが、彼女は幼女ではありませんでしたよー?対象範囲外では?」
ぺロロン「そういうことじゃねえええ!!永遠娘は実年齢はどうでもいいの!!大事なのはフォルム!!あー!!もうヘロヘロさんなんて知らない!!モモンガさんに怒られても絶対味方しないからね!!」
ヘロヘロ「え?私モモンガさんに怒られるようなことしました?」