オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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みんな大好きペロリストです。

この人、ナザリック勢からすれば非常に使いやすい情報源ですよね。

この人といかに早く繋がれるかで難易度だいぶ変わってくるかと思います。

第1章はイージーモードなので、タブラ様はラッキーです。




第1章 第2話 -ペロリストの予定調和-

 

ドアが開き、確かに老人が、ゆっくりと階段を下りてきた。

私は素早くアルベドにメッセージをつなぎ確認する。

 

『戦士としての強さは感じません』

 

どうやら、この老人は見た目通りの魔法詠唱者であると考えられる。

現状正確に判断はできないが、この場所に一人で老人が現れたということは、

つまりそれはこの老人は、最大戦力の魔法詠唱者である可能性が高いと言える。

 

私はデス・ナイトの後ろに隠れる形で立っていたが、老人がデスナイトの10Ⅿ程手前まで来て、ニグレドから『次元封鎖(ディメンジョナル・ロック)完了いたしました』というメッセージを受け取ったのち、静かに歩み寄った。

 

瞬間、老人は目を見開いた。

 

「ご老人、わたくしは“パラケル”と申すものです。実は転移実験の失敗により、この場所へ突然来てしまいました。結果的にですが勝手に侵入してしまったことお詫びさせていただきます。よろしければ此処がどこか教えていただけますでしょうか?」

驚いた顔の老人を前に、私は当たり障りのない言葉を述べる。

内容的に嘘は全く言っていない。

嘘をつくときは全くの虚偽でなく、曖昧な言葉を使い、相手を勘違いさせることが大事だ。その場合は、嘘は嘘でなくなることもある。

 

「お」

 

「お?」

 

「おおおおおおおおおお!!かみ!!あなた様こそ!!私の求め続けてきた魔法の神!!わが主!!いとふかき御方!!どうか!!!どうか私めをでしに!!弟子にしてくださりませえええええええええ!!!!!!!!」

 

「ひえっ!!」

 

老人が、老人とは思えない速度で足に纏わりついてきた。

低い体勢から一瞬で進んで来るその姿は、まるで恐怖公の眷属の様だった。

 

『タブラ・スマラグディナさまっ!!いかがいたしますか!!』

素の声が漏れてしまったが、ニグレドのメッセージが頭に響き、一瞬冷静になる

 

『あ。ええっと、私の姿は人間になっているか?』

 

『え、あ、はい。人間のお姿ですがとても高貴で深い英知を醸し出しておられます』

 

(そういうことじゃない)とりあえず人間に対して人間の姿で会話したのに何でSAN値がおかしなことになっているだろうか?

 

そう思った直後、アルベドがいる方向から砂を蹴るわずかな気配がした。

 

「あ、やば」

 

瞬間、老人が跪いた体制のまま沈黙した。

死……いや気絶している。

 

はあ…

ため息を一つついて、私は娘たちに不可知化解除を告げる。

続いて、念のため老人に、睡眠(スリープ)をかける。

 

 

「まず、アルベド」

 

「…はい」

 

「良く殺さなかった。本当にお前は偉かった」

 

「え、あ、はい。私が自身で述べ、お父様がご承認したことを曲げることは、万死に値すると愚考し、踏みとどまることができました。ですが…やはりこの者の行為は万死に値するものです。ご許可いただければお父様のお目汚しにならない形で処理いたします」

 

「いや、まあ、言いたいことは分かるが、先ほど話した理由でここで殺すのはだめだ。お前の気持ちはよくわかる。お前の気持ちはよくわかるが」

 

「はい…過ぎた言葉でした」

 

「いや…反省などいい。本当にお前の気持ちはよくわかるから。で、ニグレドも感謝する。お前が(比較的)冷静にメッセージをくれたおかげで、我に返ることができた」

 

「滅相もございません」

 

「それで、次から次へと悪いのだが、この部屋に新たに誰かが来ないか探知しながら話を聞いてもらいたい」

 

「悪いなどということはございません。私は至高なる御方の忠実な僕。そして、お…お父様の娘でございます。何なりとお申し付けください」

 

そう言うと、少し顔を赤くしたニグレドは呪文を唱え外の様子に注意を払いだす。

そういえば、今の状態(ヒトの皮を被った怪人version)は“少し恥ずかしがり屋”という設定にしたのだった。

もしかして“お父様”というのが恥ずかしかったのかもしれない。

わが娘は少し可愛いなと思いつつも、今が緊急事態でなければ、恥ずかしがった直後に本性を露わにし、襲い掛かってきてくれないかな、とかホラー脳が一瞬頭をもたげたので、それを振り払う。

 

「で、だ。二人に聞きたいのだが、この人間はなぜあの様な行動をとったのだと思う?」

 

「恐れながら、お父様」

アルベドが口を開いた。

「あの者は私のミネウチで昏倒する前にこう言っておりました。“貴方様こそ、私の求め続けてきた魔法の神。我が主。いとふかき御方。どうか私めを弟子にしてくださいませ。”この言葉から推察するに、この者は、お父様の力に心酔し、あのような行動に出たと考えられます」

 

老人の言ったことを真似るときは、とても平坦で心がこもっておらず、憎しみのような感情が漏れ出ている。

言葉を真似ることさえ、よっぽど嫌だったんだろう。

 

「ふむ、なるほど。その可能性はあると思うが、問題はなぜこの老人は私の力を感じることができたのか、だ。ニグレド。どう思う?」

 

「可能性として最も高いのは、無詠唱にて何らかの魔法を使い、こちらを探知していたと考えられます。不可知化状態の私やアルベドに対して反応しなかった理由にもなります」

 

「そうだな…私が知る限りそのような魔法はなかったと思うのだが…モモンガさんなら何かわかったかもしれないな…ん?」

 

そこで今まで試していなかったことに思い至った。

ギルメンに“伝言<メッセージ>”をしてみればいいじゃないか!

そう思い立って、まずはモモンガさんへメッセージをつなぐ。

 

すると呼び出す様な感覚はあるのだが、一向に繋がらない。

続けてぷにっと萌えさんに繋いでみる。今度は呼び出す様な感覚もない。その他のギルメンも同じだ。

 

「大丈夫でしょうか?」

ニグレドが尋ねてきた。

 

「ああ、今モモンガさんをはじめとしたギルメンに伝言<メッセージ>を試みたのだが、うまく繋がらなった。それよりもお前の意見は的を得ている。本当は自動カウンターが怖いのでしたくはなかったのだが、相手がかなり低位階の魔法詠唱者である可能性が高いと思われるため、この老人に記憶操作(コントロール・アムネジア)をかけて確認してみることにする」

 

そう言うと私は突っ伏している老人に手を向けた。

 

「こ…れは……“タレント”……“第十位階、いやその上”…“魔法の神”……」

 

記憶操作の魔法を解除する。

額には汗がにじんでいる。

内容に驚愕したのもあるが、それ以上にMPの減りがとんでもないのだ。

記憶内容を書き換えようかとも思ったが、操作が非常に難しく、四苦八苦しているうちにもMPはどんどん減っていくので、いったん解除した。

 

そして得られた情報を共有する。

「この老人は“生まれながらの異能(タレント)”という特殊な力を持っていて、その内容は他人の使用できる魔法の位階を感じ取ることのようだ」

 

ニグレドとアルベドは驚愕する。

 

「そしてこの老人の認識では、第7位階以上は人の到達できぬ領域と考えており、第10位階や超位魔法についてはそれこそ神の所業と考えているようだ」

 

「恐れながら」

アルベドが胸に手を当てて跪き、意見を言う体制になる

「状況から考えますに、この老人は拠点の第5位階の探知阻害をかけた者。となると少なくともこの拠点においては最高位の能力者の可能性があります。その者が第7位階以上を到達できないと認識しているとなると、それはこの拠点が弱いのではなく、この拠点を取り巻く周囲の環境においても第7位階に到達できていないと考えることが妥当かと思われます」

 

「うむ…まさにその通りだと私も思うよ。だが今より重要なことは、この老人がこの拠点においては重要人物かつ、超位魔法まで使える私を神聖視しているという事実だ。以上から次の作戦は……」

 

 

私は娘たちに指示をし、彼女らは再び完全不可知化にて姿を隠す。

 

 

「……じん」

「…ご老人!」

 

「は……わたしは…何を…あ…神!!…ではない?」

 

「ご老人、あなたは先ほど私のことを見た後突然興奮して失神されたのです。もしかして私の魔法力をご覧になられましたか?」

 

「そう…そうでした!あなた様からは確かに第10位階を超える魔力の奔流が!!」

 

「成程…やはりそうでしたか。まず、落ち着いていただけることを約束できますか?」

 

「はい!やはり貴方は神?!いや…しかし今の貴方からは何も感じないが…」

 

「まず、私が第10位階の魔法を使えることは事実です。ですが、あなたのように力に中てられる方がいるので、今は力を感じ取れないよう隠蔽しています。その証拠に、ごらんなさい。“第十位階怪物召喚(サモン・モンスター・10th)”!」

 

目の前には見たこともない深淵の魔獣。燃え盛る三つ首の魔犬が現れる。

とても自身の力ではどうすることもできない。

死。

その瞬間、目の前の男は再び手を払う。

「消えよ」

男の言葉とともに、魔犬はおとなしく首を垂れ、そして闇に沈むように消えた。

 

「ご理解いただけましたか。ご理解いただけたら、落ち着いて私の話を聞いていただけますか?」

 

「はい…神のお望みとあらば…」

 

そこから自信を『パラケル』と名乗ったその御方は、身の上を語りだした。

元々は別の国に住んでいたが、転移の事故に巻き込まれ見知らぬ土地に飛ばされたこと。

そして一刻も早く帰りたいが、ここで出会ったのも何かの縁。協力をしてくれるならば知っている魔法について教えてくれること。

 

それを聞いた私は、もう一度だけ魔法力を見せて欲しいと強請った。

自身の生まれついての異能<タレント>をすべて説明し、見せてもらった暁にはどんなことでも協力すると誓って強請った。

 

それを聞いた御方は少し思案して『決して取り乱さぬこと』と『平伏したりすり寄ったり靴をなめたり大声を出したりとにかく奇行をしないこと』と仰った。

私は交渉の結果、涙を流すことと、決して声を上げず近づかぬがその場で体を動かすことだけは許可を取り、御方が指輪を外され、もう一度力の奔流をこの目に収めることに成功した。

 

涙はとめどなくあふれ、私はその場で自身の口を閉じながら座ったり立ったり転げまわったりしたが、御方が“獅子ごとき心(ライオンズ・ハート)”を5度ほどかけてくれたところで漸く落ち着くことができた。

 

私は知り得る全て、そう、この帝国の秘匿事項も含めて全て喋った。

幾つかは御方の琴線に触れる事項があったと見えて、興味を示してくだされた。

そして一冊の写本を渡してくださった。

御方が『アルキドクセン』と呼んでいたその写本は、今はまだ読むことはできないが必ず解読し、魔法の深淵を除く。

 

「フールーダ翁、貴重なお話感謝いたします。伺ったお話から、しばらくは自国へ戻るのは難しいと判断しましたので、この国で住む場所を探したいと存じます。先ほど話したように、私の本業は錬金術師。この錬金術を用いて業を為しながら、生活できる場所をご存じないでしょうか」

 

「用意します、用意しますとも、わが師よ!!あ、いや、“師”と呼んではいけないのでしたな。パラケル殿…そうですな。では貴方様は遠方より訪れた私の友人で高名な薬師であるということにしましょう。私がお仕えするジル…皇帝にも矛盾なきよう説明しておきます。それで住む場所ですが、空き家になっておる元貴族の屋敷などいかがでしょうか。買い取ってしまいますので、内装は薬師として改造なさって構わないでしょう。ただし、この説明をするとなるとジルは貴方に興味を持たれます。貴方様の秘匿が露わになるのは私としても不都合。そこで、第4位階までは使用できるという事にはしていただきたい。そうすれば私と知り合いという事も納得してくれましょうぞ」

 

「それで構いません。フールーダ翁。大変助かります。それで、私はどの国から訪れたと説明すればよいでしょうか。なにぶん、このあたりの地名はさっぱりわかりませんので」

 

「そうですな…では遥か南にある“浮遊都市(エリュエンティウ)”とすればよいかと。あそこは常人では辿り着くことはできません。細かい話は後日いたしましょう」

 

「分かりました。本当に助かります。早速ですがこの城から城下へ向かいたいのですが、翁と一緒に出るのはまずいでしょう。私は完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)にて姿を消しますので、一旦城下まで導いていただけますか」

 

「“完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)”……!それは…それはいったい何位階の…?」

 

「そうですね…ではこの魔法については私が安心して生活できる住居を見つけた際にはご説明しましょう」

 

「分かり申した!パラケル師よ!!それではすぐに物件を買い取ります!!すでにアテは有ります故!!」

 

「師……まあ分かりました。それではお願いします」

 

「は、そういえば一点だけ注意いただきたいことがございます。私のタレントと同じ才能を持つものが居ります。最近まで私の弟子だったのですが愚かにも帝国魔法学院をいつの間にか辞め、ワーカーなんぞに成り果て小金を稼いでおります。ご用意する物件はその者の自宅の隣ですので、御力の隠蔽は常に必要かと存じます」

 

「成程。翁のような才能を持った方がもう一人いらっしゃるのですね。その方のお名前は?」

 

「はい、その者は現在13歳の少女。名は“アルシェ・イーブ・リイル・フルト”と申します」

 





アルシェちゃんの年齢でいくつか察していただければと思います。
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