オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
ですが、現在の★周りが滅茶苦茶なだけで、4章はシリアス寄りな予定です
前回のコーエン伯爵屋敷侵入と同じ要領で、ショータローとフェイク・ネイアは荷馬車と共に裏口から侵入しようとした。
しかし、屋敷の外周を囲う堀を越えたところにある裏口の門番を見張る衛兵の一人が、怪訝な表情を浮かべたので、ショータローたちは慌ててダッシュし、荷馬車を飛び越えて屋敷内に侵入した。
壁を背に身を潜め、その門番の様子を見ていると、ショータローの予想通りその門番は低位ながら看破魔法を唱えて荷馬車周りでキョロキョロしている。
「うお、危なかったな。やっぱりあいつ看破魔法使ってきやがった。透明化してるけど出来るだけ隠れながら探索しような」
「うン、わかっタ」
言葉とは裏腹にショータローは楽しそうである。
前回のコーエン伯爵屋敷の時は作業感が強く、確かに金属の収集という目的は果たしたが正直ちょっと物足りなかった。
今回の侵入は、相手側に看破魔法を使う奴がいるようなので、
実を言うと前回の侵入では、ミスリルがわずかにあったものの、前提的に碌な金属が無かった。
そのことから、もしかしたらレアリティが高い金属は別の場所に保管されているのかもしれないという疑念があったため、次回の侵入ではもう少しくまなく探してみようという思いがあったのだ。
その過程で看破魔法を使う者をかわしつつというのは、何とも楽しそうだし、久しぶりに得意のゴーレムトラップを作って遊ぶこともしたい。
実のところショータローは人間の姿の時は
だがその場合でも、フェイク・ネイアを完全不可知化する手段が無いし、何より楽しくない。
そう言う訳で、前回よりも難易度が上がったゲームを楽しむことにした。
まずは低レベルの金属類を保管している倉庫を確保して、最低限の金属を確保する。
今回は夜になってからの活動開始ではないので、衛兵の隙をついての行動となる。
必然的に素早い行動が必要となったのだが、フェイク・ネイアもいるし、前回と同様の作業で手慣れたものだったので、その倉庫内のものは2往復で速やかに運びきった。
そして、たった今手に入れた
これら6体への命令は単純。
擬態中のゴーレムに触ってきた者、あるいは攻撃してきた者を捕まえて、先ほど越えてきた堀の中の水へ放り投げる事だ。
この作業が終わると、ゴーレムは自動的に元の場所に戻ってくる。
そして一定時間外部からの反応が無いと、再び箱擬態状態に戻る。
モンスターも含めてこの世界の生物はすごく脆そうだし、ただの悪戯で殺してしまうのは流石に良くないので、捕まえたり放り投げたりも可能な限りダメージは与えないように調整した。
透明化したまま、空っぽの部屋の隅で様子を見ていると、案の定見回りに来た衛兵が倉庫の異常を察知して入ってきた。
なにせ、ついさっきまで箱や武器でいっぱいであった倉庫が空っぽになっていて、部屋の中央に不自然な箱だけが6個置いてあるのだ。
「なっ…!何だこれは?!物資がこれしかなくなっているだと?!…うわっ!!」
箱に触った瞬間、その箱は人型に姿を変え、衛兵を軽々持ち上げると、すたすたと堀の方へ歩いて行った。
そしてしばらくすると「うわー!!」という声と、それに続くバッシャーンという水に何かが放り込まれる音。
「あーはっはっは!!めっちゃ笑えるー!!」
ショータローはその場で笑い転げる。
透明化しているので、どこからともなく子供の笑い声が聞こえるという状態なのだが。
騒ぎを聞きつけて衛兵が続々と集まってくる。
「なっ!倉庫の物資が…!って、ゴーレム?!」
一仕事終えたゴーレムが戻ってきたところに鉢合わせた衛士たちは、当然ながらそれを攻撃する。
また、状況的に、このゴーレムが倉庫内の物資を持ち出したのかもしれないと見えるので、一部の者は残っている箱を守るためそれに体を触れさせる。
「うわっ!」
「ひっ!!」
「なんだこいつら!!」
「たったすけて!!」
衛士たちは次々とゴーレムの両脇に抱えられ、次々と水に放り込まれていく。
ショータローが必死に声を抑えながら爆笑していると、先ほどの門のところにいた衛士がやってきた。
「なんだこの状況は!…ん?透明化した子供??」
「あ、やっべ。行くぞ!」
「うン、わかっタ」
「あ、こら!待て!」
屋敷内に逃げ込んだショータローたちと、衛士の追っかけっこが始まった。
今のところ看破魔法を使えるのは追いかけてきている者だけのようだが、その衛士は走りながら廊下にいる者に指示を出し、何人かが一緒に追いかけてくる。
ショータローもゴーレムであるフェイク・ネイアも、疲れるということは無いのでどこまでも逃げ続けることはできるのだが、このままでは面白くないなと考えた。
適当に扉を開けて逃げ込むと、その部屋は食事用か応接用か分からないが長テーブルと複数の椅子が置いてある広い部屋であり、装飾の付いた甲冑が何体か飾られている。
時間が無いので最も早くできる
『近づく者・足止め・プロレス・非殺傷』と命令された甲冑付き銅ゴーレムは、部屋に飛び込んで追いかけてきた衛兵に手四つでワキワキと近づき、驚き怯える衛士を次々と捕まえてはプロレス技をかけていく。
唯一看破魔法を使える衛兵はレッグスプレッドをかけられて恥ずかしい体勢をさらしながらも、「誰か!領主様に侵入者がいるとお伝えしろ!!仮面をつけた黒髪の子供が二人だ!!」と懸命に叫んでいる。
戦闘力の無さそうな初老の執事のような者が急いで走っていくのが確認できたので、ショータローたちは、しめしめと透明化のままその後についていく。
階段を上り、一番奥の部屋までたどり着くと、執事のような男は扉をノックして中の者へ声をかけている。
中の者の許可があったのか、執事が扉を開けたところで中に滑り込むと中には豪華な衣装を身に着けた中年の男が一人。
「なんだこの騒ぎは!」
「はい、ご主人様、衛士長によりますと、屋敷内に透明化した侵入者が入り込んだようでございます!侵入者は子供と思われる者が2人、それと、倉庫と大広間でゴーレムと思われるものが暴れております!」
「なっ…何だと?!え、衛士長はどうなっている!」
「はい、大広間で甲冑のゴーレムと戦っておりました!」
「くっ…!透明化した者となると衛士長か、宝物倉庫の魔道具を使わないと見破れん…お前は急いで宝物倉庫へ行き透明化看破のネックレスを持ってこい!」
「はい!ただ今!」
そう言って駆けだしていく執事を見て、ショータローはフェイク・ネイアに
残されたフェイク・ネイアは部屋の主が見ていない方向の物を少しずつ袋に納めていく。
一方ショータローは執事が
なお、この彫刻擬態ゴーレムの最初の犠牲者は
目が覚めた執事は、その直後彫刻像が襲い掛かってくるというトラップにより、ショックの余り一度心臓が止まったのだが、『非殺傷』と命令されていたゴーレムが焦って心臓マッサージを行ったことで一命をとりとめた。
館の主であるグラネロ伯爵は、執事の帰りを待っていたが、それよりも早く、ゴーレム被害を運よく受けなかった幾人かの衛士が護衛のために入ってきた。
「伯爵さま!ご無事ですか!!」
「お、お前たち!侵入者は捕まえたか?!」
「申し訳ありません、まだでございます!館内には複数のゴーレムと動く甲冑がおります!伯爵さまの護衛のために参りました!」
「くっ…衛士長はまだ来ないのか?!」
「はっ!衛士長は動く甲冑と交戦中であります!」
そんなやり取りをする者たちの背後では、フェイク・ネイアがせっせと
開いているドアの隙間からするりとショータローが侵入し、フェイク・ネイアと合流した。
首には戦利品の透明化看破のネックレスがかかっている。
「おー、ちゃんと看破してるな。こんな効果だけ付与した低レベルなアイテムとか逆に面白いな…で、どんな感じ?」
「だいたイ、終わったヨ」
部屋隅でコソコソと会話をしていると、先ほど部屋に入ってきた衛士の一人が、その部屋の隅を見て怪訝な表情を浮かべる。
「子供…?」
「おい、あれって…!」
「おい、お前たち!!」
ショータローは『あれ?』と思った。
だが何ということは無い。
単純に透明化の魔法効果が切れていたのだ。
「き…貴様らが我が屋敷に侵入したガキどもか!!」
豪華な衣装を身に着けた男が叫ぶ。
ショータローは概ね目的も果たせたので、もういいかなと思って調子に乗る。
「くっくっく……我々は、悪徳の限りを尽くし民を虐げる愚かな貴族に仇成す者なり!これは、天誅である!!!
「ぐああああ!!!」
「ぎゃあああああ!!!」
「目ぇ!目がぁあああ!!」
その場にいた、ショータローとフェイク・ネイアを除く全ての者が、
ショータローは、その隙に、その部屋の中の椅子や立像に悪戯をしかけ、
閃光が収まり視界がやっと戻ったころ、その場にいる者たちは何もできずに立ち尽くしていた。
衛士などの戦闘を生業とする者たちは、一応構える姿勢をとったが、すでに先ほどの子供たちの姿はない。
「逃げた…のか?」
「おそらくは…」
グラネロ伯爵を含めた全ての者があまりの出来事に呆然としていたが、やがて侵入してきた者たちの容姿を共有する。
「子供…だったよな?」
「背格好から、おそらくは…」
「黒髪の少年2人だったと思います」
「ああ、泣いているような笑っているような妙な模様の仮面をかぶっていた」
「一応顔を隠していたという訳だ…“顔なし”と言ったところか」
「お…お前たち!見ろ!!あ奴らはこの部屋の貴金属や金貨などを盗んでいったぞ!!すぐに人相を伝えて街中に手配しろ!!どこのガキだか知らんが思い知らせてやる!!」
怒りに任せた声で怒鳴るグラネロ伯爵は、ドカッと自身の椅子に座り込む。
その瞬間、ショータローの残していった悪戯の一つである“椅子型ゴーレム”が起動した。
『座った者・体固定・屋敷内廊下を走り回る・非殺傷』
と命令を書き込まれた椅子型ゴーレムは、グラネロ伯爵が気を失うまで屋敷の中を走り回り、その後は伯爵を放り出して手近な部屋でまた椅子に擬態し、幾度となく犠牲者を生み出し続けた。
倉庫の6体のゴーレムも幾度となく犠牲者を堀の水へ投げ込み続け、結局誰もゴーレム自体を倒すことが出来ず、倉庫自体が閉鎖された。
甲冑ゴーレムは、金属を3回叩く音を出すと止まることが偶然発見されるまで、近くの人間にプロレス技をかけ続け、その後は大広場も閉鎖された。
その他、宝物倉庫や様々な場所にしかけられたビックリ系ゴーレムも、誰も解除することが出来ず、グラネロ伯爵を含めた全ての屋敷の住人はビクビクしながら暮らすことになったのだった。
グラネロ伯爵は、自身が治める街をくまなく調べさせ、賊として侵入した子供たちと同じ特徴の者を探したが、ついぞ見つからなかった。
しかしながら伯爵は捜査の手を他の街に向けるとか、他の南部の貴族に共有するということは無く、ただただ泣き寝入りするしかなった。
これは、南部貴族の多くは北部の聖王女派とは対立しているとはいえ、一方で同じ派閥に属していない者同士も仲が良いわけではないので、自身の弱みを他の者へ伝えることを嫌ったことが原因である。
この情報の秘匿が原因で、南部貴族の多くがショータローたち、世に言う『顔なし盗賊団』の被害を受けることになるのである。
「いやー、マジで楽しかったなー!次は山脈の東の方行ってみよー!!あっちも、なんかでっかい街あったから領主とかいるかもな!!その後は最初に入った城みたいな屋敷にもっかい行くか!!」
…次なる標的はボディポ侯爵屋敷である。
「それにしても、ほんと碌なアイテム無かったよなー…まあいいや、盗ってきた金属とアイテムを一緒に素材にしてゴーレムつくろー!フェイク・ネイアもアイテム組み込んでバージョンアップさせるからな!」
「ありがとウ」
ショータローは、リアルネイアに連絡することなく、また1か月ほど森の中の拠点にこもって、この世界基準ではさらに厄介なゴーレムを制作してくのであった…。
本人が知らん間に、本人をかたどったゴーレムが南部の盗賊団の一員とされていたことを知ったら、おそらくネイアは卒倒するだろう。
いや、もっと言うと彼女のパパが怒り狂うだろう。
そんな事は微塵も考えず、トラブルメーカーは鼻歌交じりでゴーレムを作成してくのだった。
力がある子供が調子に乗るとこんな感じだと思うんですよね