オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
結局彼が満足するような高レベルの金属はありませんでしたが、かなりの量の素材を確保できました。
前回バラハ父娘と“ご老”と会って数か月ほど経った頃、ご老側から急ぎ伝達事項があるとのことで早馬がやってきた。
早馬はカリンシャにて情報を聖王女派閥へ渡す。
なぜならば、ちょうどその際にカリンシャにて会議が行われていたからだ。
議題は、アベリオン丘陵に棲む亜人どもの勢力バランスの乱れについてだ。
昔より聖王国は、国土東側のアベリオン丘陵に棲む亜人たちにより様々な被害を受けてきた。
しかしこれに備えて要塞線を築き、また、丘陵に近い街には常に部隊を敷くことで近年は大規模な亜人被害は減っていたと言える。
しかしアベリオン丘陵のさらに東にあるスレイン法国は、亜人に対しても比較的融和策をとろうとする傾向があり、言葉が通じる亜人はまずは話し合いから始める。
この結果、アベリオン丘陵内で比較的頭が良い亜人部族は言葉巧みに法国を躱し、丘陵内でその数を増やし続けている。
一方で法国は、聖王国と比較しても強い戦闘力を持つ個や部隊があるようで、好戦的な亜人や、単純に人間種に敵対的な亜人に対しては充分に対処してきた。
さらにアベリオン丘陵南にあるエイヴァーシャー大森林は
アベリオン丘陵北はリ・エスティーゼ王国なのだが、間に高い山脈があるので、亜人たちはこの山を越えることは滅多にない。
以上の状況が150年近く続いていることから、丘陵内の亜人人口は過密状態になりつつあり、力のある部族が丘陵の外に溢れ始めてもおかしくないのである。
そして最近良くないニュースが入ってきた。
丘陵内の
これは
奴らは長年の経験から、法国や大森林へ大規模侵攻する可能性は低い。
これは、法国内に強力な部隊ないしは個の戦闘力が存在し、決して勝てないことを知っているからだ。
では、聖王国はというと、聖王国も聖騎士団や神官団などの比較的強力な部隊は存在するが、法国と必ずしも友好的ではないため、法国の援助を最も得づらい状況にある。
これはカルカ以前の聖王が、法国の亜人に対する姿勢や宗教観の違いから、法国を遠ざけてきたためである。
自身の領地や利益のためにある程度の悪徳を行いたい願望のある南部貴族からしても、純粋な善性をもって対処してくる法国を受け入れたくないという気持ちがあったため、これまでの南部貴族の推薦を受けて戴冠した聖王は、そういった南部貴族の意見を取り入れざるを得なかった。
法国としても、実情としてはアベリオン丘陵の状況を楽観視しているわけではない。
丘陵内の緊張が高まっていき、いずれは聖王国が侵攻を受ける可能性ももちろん理解しているために、数年前、割と強引に神殿勢力としてカルカを推して聖王女につけた。
その結果、北部の主要都市の教会には法国から派遣された比較的高位の神官が駐在するようになったし、今回の
「では、今回得られた情報を共有いたします。前回、
カリンシャに設けられた執政のための建物内で、まずは神官団団長のケラルト・カストディオが喋る。
この街は聖王国の首都ではないが、アベリオン丘陵との境界線である南北に長く伸びる要塞線の南部側かつ、最も丘陵に近い位置にあるため、緊急時に備えて聖王女派が執務を行うための建物がある。
「では、私から説明させていただきます。我ら聖騎士団とパベル兵士長の弓兵部隊での合同部隊により、要塞から100㎞程東の付近に存在する
ケラルトの言葉を受けて、聖騎士団の副団長であるイサンドロ・サンチェスが答える。
本来この場にいる聖騎士団団長であるレメディオス・カストディオが説明すべきなのだが、彼女はリソースを武力側に振り切ってしまった者なので、このような会議の場では腕を組んでうんうんと頷くだけの存在である。
「クソッ…
その置物であるはずのレメディオスが、たまらず感想を漏らした。
彼女の妹であるケラルトは、そんなある意味真っすぐな感想を言える姉の純粋さとあまりの考え無しの発言に少し溜息を吐きつつ補足する。
「姉さま。それは以前も言いましたが難しいですよ。
レメディオスはまだブーブー文句を言っているが、さすがの彼女であっても正面突破できる案件でないことは分かっている。
いや、前回の報告の後には分かっていなかったので、ケラルトとカルカが懇切丁寧に説明し、とりあえず分かったという感じなっている。
「神官団長、私からも報告があります。南の老侯から早馬で届けられた情報です」
「…パベル兵士長、ご説明ください」
“老侯”からの急ぎの情報と聞いて、レメディオスを除く会議に参加する者は再び緊張する。
老侯が急ぎ伝える案件となると、南部貴族の計略や南部における問題発生であることが殆どだからだ。
前回共有された案件は、南部にとある犯罪者集団が入り込み、麻薬を売りさばき始めた可能性が高いことを伝えるものであった。
しかもこともあろうか、南部貴族では老侯の次に力を持つとされるボディポ侯爵や、その派閥であるコーエン伯爵の領地で広がり始めていて、この犯罪者集団を招き入れたのがボディポ侯爵派閥の可能性があるという頭が痛くなる内容だった。
誰もが、『亜人対策でクソ忙しい時に余計なことしないでくれ』という思いと、そういう時だからこそ、南部貴族が計略を立てて、聖王女派を攻撃しようとしていると考えていた。
しかし、パベルから語られた内容は想像とは少し違うものだった。
「南部の複数の貴族屋敷にたて続けに強盗が入り込み、金属やマジックアイテムが盗まれるという事件が多発しているようです。強盗に入られた貴族たちは隠しているようですが、老侯が各街に置いている情報提供者によると、盗賊団は子供2人で、どうやら魔法行使とゴーレムの使役が出来るようです。現時点で被害が出たことが分かっているのは、ボディポ侯爵屋敷、コーエン伯爵屋敷、グラネロ伯爵屋敷で、コーエン公爵屋敷はすでに2回侵入されているようです」
一同、想定外の情報にどうコメントしていいか分からなくなったが、特に何も考えていないと思っていたレメディオスが意外と核心を突いた意見を言った。
「ん?パベル、盗まれているのが金属やマジックアイテムと言ったが、それらは何のために盗んでいるんだ?」
そのレメディオスの言葉を聞いて、ケラルトをはじめとした頭脳班がある可能性に気づく。
「パベル兵士長、老侯はこの事件の犯人は盗品を軍事利用しようとしていると見ているという事ですか?」
「早馬ではそういった可能性も示唆されていましたが、被害に遭っているのが特に北部聖王国に敵対傾向がある南部貴族であるため、現時点では目的が分からないとのことです…被害に遭っているということ自体が実は虚偽で、何らかの軍事行動のために秘密裏に素材を集めているという可能性もあるかもしれませんが、それにしては南部貴族間で情報共有をしていないのが不自然ですし、消えた金属の行方も不明とのことです」
「パベル殿、その犯人が子供という事だが…その子供が亜人という事は無いのだろうか?」
そう声を上げたのは聖騎士団のもう一人の副団長であるグスターボ・モンタニェスである。彼の意見も尤もである。
子供2人だけで、貴族の屋敷に何度も侵入し、魔法の行使やゴーレムの使役を行ったとなると、報告してきた老侯には申し訳ないが、その“子供”という情報も怪しいと考えてしまう。
しかもつい先ほど、
「早馬の情報でそこまで細かい情報は無いのですが、2人の子供は仮面をつけてはいるものの人間に見えたという事らしいです。仮面をつけて顔を見せない事から、被害があった屋敷では“顔なし盗賊団”などと呼ばれているとか…」
応えるバベルは、まさかその犯人の片割れの顔が、愛娘と同じだとは想像もしてはいない。
報告書には“少年らしき2人”と記載があるので猶更だ。
「はぁ…現時点ではそれ以上の情報は無いという事ですね。ですが、ただの子供がそれだけのことをして、さらにゴーレムを使役したとなると、その背後には何らかの者が付いている可能性が高いでしょう。南部に入りこんだ犯罪者組織というのが関与しているという可能性も視野に入れましょう。そして、南部から北部へ物資や武器を運ぶとなると、ここカリンシャを通過するか、海路を取る可能性が考えられます。カリンシャの城門での検査の強化と、ラン・ツー・アン・リン殿率いるマーマン部族の方々へ、そのような船がいないか注意していただくよう伝令を行っておくべきかと思います。カルカ様、いかがでしょうか」
「ケラルトの言う通りです。城門の検査強化とマーマン部族への協力要請は早急に行いましょう。また、
会議が終わり、それぞれがそれぞれの仕事を開始する。
パベルは、今回の任務は正式かつ急ぎのため、娘を伴うために一度ホバンスに戻ることなく直接南部へ向かう事となった。
家族に会えいない時間が延びることに対する寂しさと同時に、娘を多少なりとも危険な旅路に伴うという不安要素が無いという安堵感もある。
いずれにしろ、いつも通り慎重かつ速やかに任務を遂行するため、パベルは南部への旅路を急ぐのだった。
同じ日の朝、実に数か月ぶりにショータローからの
ショータローが言うには、
そのために、ホバンスまでの道を間違えないようにこまめに
友達が遊びに来るという今までの経験にないワクワクと、到着は少なくとも10日後とかになるだろうからそれまでに案内するお店とか考えておこうとか、色々なことを考えていたが、最初にメッセージがあった日の夕方、それっぽい街まで来たから門の外まで来てくれないかという信じられないメッセージを受けた。
ネイアは、門番の人に、『ちょっと外の景色を見たらすぐに戻ります』と言って門をくぐらせてもらい、半信半疑で辺りをキョロキョロしていると、誰もいない場所から声がした。
「お、ネイア久しぶり」
「え?!ショータローくん?!どこ?!」
「あ、今透明化してるけど、お前の目の前にいる。今透明化解除するから」
そう声が聞こえた後、目の前に突然人が現れた。
その人は鏡で見慣れた顔、ネイア自身だった。
「きゃあああああ!」
突然現れたドッペルゲンガーを見て、ネイアは悲鳴を上げた。
最後のネイアの悲鳴を上げる画は、楳●かずお先生作品の感じで想像しています