オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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★の魔の手がアベリオン丘陵の亜人たちへ伸び始めます。


第4章 第10話 -★ in アベリオン丘陵-

 

 

 

山羊人(バっフォルっク)山羊人(バっフォルっク)……お、あれかな?』

 

透明化状態でアベリオン丘陵内を飛び回っていたショータローとフェイク・ネイアだったが、だいぶ南に下ったあたりで山羊人(バフォルク)の集団を見つける。

成程、確かに山羊人(バフォルク)達はその身に金属製の防具を纏い、金属製の斧や剣を持っている。

 

ショータローとしては武器防具の類は、比較的金属部分が少なく、できればインゴットなどの方が活用しやすいと考えていたが、貴族屋敷で見た武器の様に、刃の部分のみに金属が使われていて柄の部分は木材のものとは異なり、柄の部分まで全て金属製の武器が多くみられる。

 

これは人間種と亜人種の筋力の差によるもので、低レベルの人間だと総金属製の武器は重いので、木材が使われることがあるという差による。

また武器防具以外にも生活の中で金属を使用する人間と異なり、簡素な家で文明的な生活を必要としない亜人種の方が金属を武器防具に使用しやすいという理由もある。

 

ともかくもショータローは、結構な量がありそうな山羊人(バフォルク)達の金属を頂くことを考えたが、彼らはそれを装備している状態なのでこっそりと奪う方法が思いつかなかった。

 

いつかの貴族の屋敷の様に、夜間にこっそり持ち帰ろうと思って日が落ちてから行動を開始したのだが、あいにく山羊人(バフォルク)はどちらかと言えば夜行性であったため、彼らの動きはむしろ活発である。

 

仕方ないのでショータローは山羊人(バフォルク)のテントの位置を確認しながら飛び回り夜が明けるのを待った。

 

空が白み始めた頃、山羊人(バフォルク)達は少しずつテントに入っていく。

一部の者はテントの前に立ち、おそらく見張りをしているようだ。

 

ショータローはニヤリと笑うと、片っ端からテントの中へ忍び込む。

やはり山羊人(バフォルク)達は透明看破はできないようだ。

 

 

テントの中には山羊人(バフォルク)達が雑魚寝をしている。

子供を入れた家族らしき集団も居れば、大人たちのみの集団もいる。

基本的に装備は脱いで、部屋の隅や壁に立てかけられている。

 

 

こうなれば後は簡単だ。

フェイク・ネイアと手分けして無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)にぶち込むだけの簡単なお仕事。

順調に装備品は接収されていき、残るは山羊人(バフォルク)の戦士たちが詰めていると思われるエリアのテントのみとなった。

 

ここを最後にしたのは、彼らは交代で見張りを行っていて、テント内でも眠りが浅そうな者や防具をつけたまま横になっている者が居て、単純に難易度が高そうだったからだ。

流石に武器は手に持っておらず、壁に掛けられているので、まずはそれらを回収する。

そして次に脱がれている防具を回収すると、ちょうど見張りの交代の様で、外から山羊人(バフォルク)が数人戻ってきた。

 

 

「ふー…さて俺も休むか」

「おーい、交代だぞ」

「ん?俺の武器はどこだ?」

「俺は知らねーぞ。バザー様に頂いた武器をなくすなど有ってはならんぞ」

「いや、休む前は確かにここに置いといたんだが…」

 

 

何だか雲行きが怪しくなってきたので、ショータローはさっさと外に出て、最後に最も大きなテントに忍び込む。

そこには銀色の体毛で明らかに他の個体より一回り大きい山羊人(バフォルク)と、3名の大人の山羊人(バフォルク)、そして同じく数体の子供の山羊人(バフォルク)が居た。

 

ベッドの上に横になるそれらのうち、一回り大きい個体がむくりと起き上がり、正確にショータローに折れた武器の破片のようなものを投げてきた。

 

ショータローは『あれ?バレてる?』と思いつつも、その投げられた破片を手でキャッチし、無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)にしまい込む。

破片は金属だったのだ。

 

 

「なっ…人間のガキどもか?!お前たちは下がっていろ…何者だ貴様!」

 

「あれ、やっぱりバレてるな」

 

 

どうやら透明化は通じていないようであることと、すでにバレているようなので、ショータローは一旦透明化を解除する。

その大きな山羊人(バフォルク)である豪王バザーは、妻と子供たちを部屋の奥に下がらせると、素早くベッド横の防具を纏い臨戦態勢をとる。

 

 

「俺様が持つ第二の目の指輪(リング・オブ・セカンドアイ)は、そのようなまやかしなど見破るのは容易い。いや…貴様…なぜ愚かな人間のガキどもがこんなところまで来た?この“豪王”バザー様の私室に忍び込んで生きて帰れるとでも思っているのか?」

 

 

言葉とは裏腹に、バザーは油断なく目の前の人間たちを見る。

先ほど投擲した、以前破壊した人間の剣の破片は、確かに子供に当たったように見えたが、子供はダメージを負った様子もなく、ついでに言うと投げた破片が消えたように見えた。

 

相手は2人。

正直人間の性別は分かりづらいのだが、言葉を発した方は少なくとも雄のガキ。

もう一人は先ほどから全く言葉を発さない。

それどころか、人間特有の匂いや気配すら感じられない。

まるで人形のようだ。

二人とも、泣いたような笑ったような仮面で顔を隠しているが、鎧のようなものは着ていないし、武器も構えていない。

 

であるのに、“豪王”と恐れられる自分の前に特に気負うことも無く現れ、先ほどの武器破片の投擲に対しても謎の方法で切り抜けた。

それでいて、不思議と強者の気配は感じない…余りに不気味。

 

 

「お前、闇小人(ダークドワーフ)から金属武器を購入してる?」

 

 

子供が急に喋った…意味不明である。

いや、確かに闇小人(ダークドワーフ)からは物々交換で武器を仕入れている。

だが、この子供が言っていることは、自分が発した言葉に対する回答ではないし、やはり自分を恐れているという雰囲気が無い。

 

 

「お前の武器、ブルーライトメタルとシルバーメタル使ってるよな?それも闇小人(ダークドワーフ)から買った?」

 

 

仮面をしているので目線を追うことはできないが、おそらく手の中にある砂の射手(サンド・シューター)のことを言っている。

確かに砂塵嵐(サンドストーム)発動の触媒として、特殊な金属を使っている。

 

 

「鎧は、動物系素材に魔法がかけられているのか。金属は無さそうだが、活用はできそうだな…小さな盾はオリハルコンとアダマンタイトを使っているな…それらも闇小人(ダークドワーフ)か?」

 

 

亀の甲羅(タートルシェル)の鎧と、ランザの勲し(ランザ・オブ・メリッツ)のことを言っていると思われる…言っていることは間違っていない。

なんだ、『活用』って。

 

人の話を全く聞かずに、淡々と武器防具のことを解説していく者。

余りに不気味。

 

バザーは背中に冷たい汗が流れるのを感じる。

 

しかし、自身は山羊人(バフォルク)の王。

その誇りが、恐怖する体を奮い立たせる。

 

 

「オオオ!!誇り高き王の寝所に忍び込んだ盗人よ!生きては帰さん!!武技!!<剛腕豪撃>!!!」

 

 

バザーはとっさに掴んだ剣を、その得体の知れない子供に叩き込む。

が、剣は何かに弾かれ、お互い弾き飛ばされるように距離を取る。

 

 

「おお、意外と力あるな!レベル35くらいか?」

 

 

子供は手に、彫刻用の小さなノミを持っている。

まさかアレにはじき返されたというのか…

 

 

「なあこれってPvPでいいか?勝った方が負けた方の武器貰うってことでいいか?」

 

 

子供の得体のしれない態度に、バザーは本能的な恐怖を感じる。

しかし一方で王としての誇りもある。

しばしの沈黙の中、バザーは悩む。

そして“交渉”という選択肢を選ぶことにする。

これは彼のカルマ値が善寄りかつ、比較的冷静な判断ができる性格であったから選べたと言える。

この判断は結果から言うと彼の命を救い、その他の多くのアベリオン丘陵の亜人たちの運命を決めることになる。

 

 

「ま…待て。そのぴーぶいぴーというものは何だか分からんが、貴様が他人の家に勝手に入ってきたことに問題があるとは思わんのか。確かに俺は今貴様に攻撃をしたが、貴様が寝込みを襲ってきたと考えたら、俺の反応は間違っていないと思うが?」

 

「…確かにそうだな」

 

「そうだろ。貴様は知らんのかもしれんが俺は山羊人(バフォルク)の王、バザーだ。勝手に他種族の王の寝床に入りこんできたんだ。名前ぐらい名乗ったらどうなのだ?」

 

「…ショータローだ」

 

「ショータローか…貴様、人間か?貴様の目的は何だ?」

 

「…山羊人(バフォルク)闇小人(ダークドワーフ)から武器や鉱物を仕入れていると聞いた。オレは金属とかの素材に興味あるから見てみたいと思ったんだ」

 

 

バザーは、目の前の子供?が言っていることは分かるが、言っていることが分からなかった。

 

ちょっと金属に興味があって、噂程度に聞いた闇小人(ダークドワーフ)を訪ねるために、“豪王”の寝床に忍び込むバカがどこにいるというのか?

いや普通に、殺されるとか考えないのか?

 

…考えなかったのだろうな。

なぜならば、この子供はおそらく異常に強い。

 

また、この者は『人間か?』という問いには答えていない。

もしかしたらこいつらは、人間ではないのかもしれない。

というか、亜人種のど真ん中にたった2人でやってきた者が人間と考える方が不自然だ。

“交渉”を選択した自身の判断は、おそらく正しかった。

 

 

「なあ、闇小人(ダークドワーフ)のこと知ってるか?」

 

「ま…待て。それを答える前に、俺と貴様で契約をしないか」

 

「契約?…何だよそれ」

 

「まずはお互い不可侵の契約だ。俺は最初こそ貴様とぶつかったが、これまでのことは全て水に流し、今後はお互い攻撃や敵対行為を取らないというものだ」

 

「他は?」

 

「それと、闇小人(ダークドワーフ)のことを教える代わりに、貴様も俺の頼みを聞くというものだ」

 

「なんだよ、頼みって」

 

「…俺はいつまでも山羊人(バフォルク)のみの王で居るつもりはない。いずれは他種族を屈服させ、統一王になるつもりだ。そのために協力してほしい。何、貴様が嫌という事を無理にさせるつもりはない」

 

「…それって人間の国とかに攻め込むのか?」

 

ショータローの脳裏には、一瞬、友達になった少女の顔が浮かんだ。

 

 

「いや、今そんなことをすれば、背後から他の十傑に刺されて山羊人(バフォルク)は滅ぶだろう。少なくとも俺の代で成し遂げたいと考えているのは、このアベリオン丘陵の亜人の統一よ…貴様はオレに匹敵するほど強そうだ。共に戦えとは言わんが、俺と敵対することなく、時には協力してくれ」

 

「ふーん…ま、協力ぐらいだったらいいけど。ちゃんと闇小人(ダークドワーフ)に繋いでくれたらな」

 

「よし、では契約成立だ」

 

 

バザーは内心安堵しながら、おそらくは種族の命運を左右する交渉が上手く行ったことに胸をなでおろした。

少なくとも“敵対しない”という事は約束できたのだ。

後は闇小人(ダークドワーフ)をうまい事紹介してやればいい。

 

実のところこの契約は『今までのことは水に流す』という内容だったので、ここまでのことはチャラにするということになる。

つまり、ここまでにショータローが働いた武器防具の盗難はチャラになってしまったのだ。

部下たちは武器類をなくしたことを王に報告するという事に躊躇いまくって、報告自体が非常に後になったために、バザーがこの事実に気づくのはだいぶ遅くなってしまった。

 

 

「よし、それでは貴様を闇小人(ダークドワーフ)へ紹介してやる。だが奴らは気難しい者が多いから、奴らに相手にされなかったとしても俺に文句を言うんじゃないぞ」

 

 

バザーとショータロー一行は、北の山へ向かって出発した。

 

 




バザーってカルマ値善で戦闘狂寄りながらも種族内では結構いい王様ぽいですよね。
相手が悪魔やアンデッドでなく、まだ話が出来そうな、外見が子供の不気味な強者の場合は、逆に冷静に対処できるのではないかと思うんですよ。
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