オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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タブラ様はご本人のINTも高いので、本当にイージーです。

ですが一方でド派手に戦う感じはないかもしれません。


第1章 第3話 -アンダーカバーと行動指針-

 

パッカ パッカ パッカ パッカ……

 

街道を、黒いベールを掛けられ額に2本角が生えた馬に曳かれた馬車が進む。

やがて馬車は検問所に入り、中では知性をたたえた鋭い眼と長く伸びた髭を垂らした風貌の老人が、馬車の中の人物を迎える。

 

「ようこそ、パラケル殿。流石はフラメルのご子孫、面影がありますな」

 

「では貴方がフールーダ様ですか。この度はお出迎え感謝いたします」

 

検問官には、この二人の正確な関係性分からなかったが、少なくとも外から来た“パラケル”と名乗る男とその家族と思しき女たちは、この国の最重要人である逸脱者にして主席宮廷魔術師の知り合いであるという事が見て取れた。

差し出された紹介状も特に問題なく、パラケル一行はアーウィンタールの門をくぐった。

 

当然だが彼らの、一連の会話は演技である。

 

 

***

 

 

皇城から無事に城下に降りたパラケル一行は姿を隠したまま、一旦空き家となっている元貴族邸宅まで向かった。

フールーダが扉を閉めると、パラケルは完全不可知化を解除し、フールーダと向き合う。

 

「フールーダ翁、確認したいのですがこの都市に入るには、普通は検問などが必要なのではないですか?」

 

「はい、まさにその通りです。ですが私が口添えすればそのような雑事不要でございます!」

 

「いや、お申し出は有り難いですが、あなたの権力でもってそこまでしていただく事は、後々影響が出るかもしれません。もう一度不可知化にて一旦都市の外まで出ますので、旅人として正式な形で門をくぐりたいと思います」

 

「なんと…確かにその方がジルも怪しまないかもしれませぬな…」

 

「そうでしょう。では、私たちの関係に関するカバーストーリーですが……」

 

 

 

100年近く前、フールーダは実際に浮遊都市(エリュエンティウ)に赴いたことがあったという。

しかし、その時は結界に阻まれ浮遊都市(エリュエンティウ)に入ることは叶わなかった。

都市は上空に城が浮遊し、そこから落ちてくる無限の水により、砂漠の中にあるにもかかわらず潤っていて、結界の外にも、その水を頼りに生活する住人が無数にいるという。

 

その情報をもとに作られたストーリーは以下の通り。

 

当時フールーダは、結界外の集落にしばらく留まり、何とかして浮遊都市に入れないか色々と試した。結果的に入ることはできなかったが、その時集落の“フラメル”という男に世話になった。この男は第4位階までの魔法を行使できる人物であり、フールーダの良き友人となった。

しかしいくら試しても結界を破ることはできず、ついに諦め帝国に帰る時が来たとき、世話になったフラメルに何か礼はできないかと申し出たところ、いずれ自分自身か自分の子孫が帝国へ赴くことが有ったら、その時はもてなして欲しいというものであった。

 

それから月日が流れ、フラメルの一族は集落から離れ放浪生活となり、その子孫であるパラケルがいずれかで安定して定住するため、先代から伝えられてきたフールーダを頼って帝国を訪れた、というものである。

 

 

100年前という事で当時のことを知る人間は生きていないし、これで皇帝が何か怪しむようであれば、それはその都度魔法で対処する、というものだ。

思い付きの案であったが、アルベドも特に問題ないと判断したために採用した。

 

ちなみに、検問の件も皇城を出た後に、不可知化状態のニグレドによる探索魔法で検問所を見つけ、思いついたものである。

現在のタブラは、“パラケル”として人間になっているので、集合知を持つ脳食いと比べると頭の回転が遅くなっている。

タブラ自身がそれを感じたので、伝言(メッセージ)によりアルベドとニグレドから助言を貰いながら話を進めている。

 

一通りカバーストーリーをフールーダと共有できたところで、タブラは一つの指輪を取り出した。

 

「フールーダ翁、とりあえずここまで安全にお連れいただき感謝いたします。これはお礼と、そして今後の我々の関係がうまくいくために、貴方にお渡ししたいと思います」

 

フールーダの目が驚愕に見開かれる。

瞬間、タブラはフールーダに“獅子ごとき心(ライオンズ・ハート)”を三重にかけて続ける。

 

「この指輪には、中程度の精神安定効果とわずかな賢さの上昇をもたらす効果が付与されています。毎度発っきょ…興奮されていては私たちの関係を疑われる可能性があると思いますので、翁さえ良ければ常に装着いただきたいと思いますがいかがでしょうか」

 

「おお…わたくしめなどにこのような……!」

 

タブラは再び“獅子ごとき心(ライオンズ・ハート)”をかけつつ、素早く指輪をフールーダの空いている指にはめた。

瞬間、涙と狂に濁っていた眼は澄み、ふぅ…と一つ息をつくと、フールーダは元々の賢者然とした態度で言葉を発した。

 

「ありがたく頂戴いたします。おかげさまで今までに無いくらい穏やかに物事を考えられそうですじゃ。検問の件も、パラケル殿の言う通り。興奮し、注意を払えていなかったことお詫びさせていただきますじゃ」

 

タブラはフールーダの様子を観察し、『なんか喋り方が老賢者風になったし、これなら大丈夫かな』と考え、声を上げた。

 

「ノアー、ルゥオン、姿を現しなさい」

 

パラケルの言葉の後、一拍おいて、彼の左右に美女と言って差し支えない女性が二人姿を現す。

 

「紹介いたします。こちらは私の娘たち。黒い服を纏っているが姉のノアー、白い服が妹のルゥオンです。親心から、娘たちを万が一でも危険な目に合わせたくないと思い、今まで姿を隠しておりました。そしてこの娘たちや私を隠していた完全不可知化は第9位階魔法。お分かりと思いますが他言無用です」

 

お淑やかにお辞儀する二人の淑女。

いやそれよりも、今この御方は“第9位階”と仰られた。

真に神の…神の領域の魔法……

心から止めどなくあふれてくる感動。

しかし御方から下賜された神代のアイテムと言ってもいい指輪のおかげか、頭の中はとてもクリアであった。

 

その様子をタブラは注意深く観察していた。

もしまた狂を発するような素振りがあれば再び“獅子ごとき心(ライオンズ・ハート)”を多重がけして…

というかこのマジックアイテムも効かないレベルであったら、もうこうやって会う時は“魅了(チャーム)”か何かをかけて、後で情報のすり合わせをするしかないかなと考えていた。

 

しかし逸脱者と言っても所詮はレベル50以下の人間。

“中程度の精神安定効果”はもはやリアルにおける強力な向精神薬レベルなのだが、何とか効果を発揮してくれたようだった。

 

その後、先ほどのカバーストーリーに“二人の娘”の存在も加えて、無事彼らの密談は終わったのだった。

 

 

 

その3日後、フールーダは本当にとんでもないスピードで屋敷を購入し、“恩人”の子孫であるパラケル一家は正式にその屋敷に住むこととなる。

幸運にも皇帝ジルクニフは、無能な貴族の粛清やその後始末および官僚がいくらかいなくなったことによる執務の増加で、速やかにこの“フールーダの知り合い”を疑うことはなかった。

ただし有能な皇帝にとって、第4位階の魔法詠唱者というのは十分戦力になり得る存在であるとの理解だったので、心の片隅にメモを残し、後日話す機会ができたら話そう、ぐらいの興味となった。

 

 

***

 

 

「タブラ・スマラグディナさま、屋敷の結界は完了いたしました。またフールーダに下賜された指輪ですが正常に追跡できております。指輪の位置から考えて、肌身離さず持っていると考えて良いかと思います。また、第5位階の探知阻害領域に入った時のみ、彼らの魔法防御ではカウンター不可の探知で本人の音声を拾うことができるよう設定完了いたしました」

 

「ありがとう、ニグレド。さて、それではこれから先のことについて話しましょう」

そう言うと、タブラは脳食いの姿に戻る。

 

それを見て娘たちはすかさず跪く。

 

「まず、私たちの関係は、対外的には“人間の親子”です。お前たちは二人ともとても優秀でそれを理解しているようですが、私が人間の姿の時は、人間の親子として自然な態度をお願いいしますという事を改めて言っておきます」

 

「「はっ」」

 

「それと、今後の私たちの活動ですが、フールーダからの情報から考えれば、この世界はどうやらユグドラシルではない。それではこの場所は何だと思いますか?」

 

アルベドが顔を上げ、意見を述べる

「はい、恐れながら、私はお父様と先ほどの城に転移するまで、ナザリック地下大墳墓の外に出たことはありませんでしたので、このように人間種のみが暮らす街を存じ上げていません。以前御方々の話されていた内容の中には、ユグドラシルには人間種が多数住み、支配している世界があるというのを記憶しています」

 

「ふむ…」

今のアルベドの言で明確に分かったことがある。

NPCには転移前の、今のように自律して喋りだす前の記憶がある。

 

「ニグレド、お前も同じかい?」

 

「はい、恐れながら、私も同じです。タブラ・スマラグディナ様と転移する前は、ナザリックから出たこともありませんし、正直に申し上げますと、それ以前の記憶はなぜか断片的で、私が今の私とは異なる存在だったような気さえします」

 

「アルベドはそういう感覚はあるかい?」

 

「はい…実は私もそのような感覚があります。なんというか……昔の私は人間種に対して今以上に忌避感が強かったといえ、正確に言えば憎んでいたと、殺したいとさえ思っていた…そのような気がします」

 

「なるほど…ところでアルベド。お前はモモンガさんのことはどう思っている?」

 

「え………あの……し、至高の41人を束ねる御方で…私に祝福を与えてくださった……愛しい…お方…です」

 

「ふむ」

 

今のやり取りで更に分かったことは、彼女たちNPCは自身の設定であるフレーバーテキストに忠実であると思われる。

また、おそらくだがカルマ値の影響を受けている。

 

「分かった。確定的な証拠はないが、この世界はおそらくユグドラシルとは異なる場所だ。ユグドラシルには全部で9つの世界があった。その中にはアルベドが言った“人間種が多く支配している世界”もあった。私はそのすべての世界に赴いたことがあるが、ここはそのどれとも違う」

 

「すべてに…」

「さすがお父様です…」

 

「そこで私は、この世界はユグドラシルとは異なる世界であり、理由は分からないが私たちはその異世界へ転移していしまったと考える。いま私たちがすべきことは主に二つ。一つは帰還する方法を探すこと。もう一つは私たちと同じようにこの世界に転移してきてしまった仲間を探すこと」

 

「御方々が…同じくこの世界に…?」

ニグレドが驚愕の顔を浮かべた。

 

「ニグレド、思い出してごらん。フールーダが言っていた“六大神”、“八欲王”、“十三英雄”、それに彼らが使う魔法も我々と同じ。これはつまりどういうことか、アルベド、分かるかい?」

 

「はい、その者らは、私たちと同じようにユグドラシルからこの世界に来た。その結果、この世界にも私たちと同じ魔法が存在する?」

 

「そうだ。それに言葉についても違和感がある。気づいたかい、彼らは私たちとは違う言葉をしゃべっていた。しかし、私たちにもその言葉がなぜか理解できている。次、この世界の者と喋るとき、彼らの口元を見てみるがいい。言葉とそれを発音する口の動きが合っていない」

 

「それは…どのような意味を持つのでしょうか?」

 

「お前たちは知らないかもしれないが、一部のワールドアイテムには世界の理を変えるものがある。この世界に過去に訪れたユグドラシルの者が、そのワールドアイテムを使い世界の理を変えて言葉の垣根を無理やり無くした可能性がある」

 

「そのようなことが…!」

 

「ああ、ワールドアイテムの効果は私やモモンガさんでも全てを把握できているわけではない。不意を突かれてワールドアイテムで攻撃した場合、私ですら滅ぶ可能性は充分にある」

 

その言葉をタブラが発すると、部屋の温度が急激に下がった気がした。

「ゆ…許せません、そんなこと…至高の…いえお父様にそのような危害が及ぶなど…!」

「そのような輩にお父様は討ち取らせません…!私が必ず盾となってお守りします!!」

 

「落ち着きなさいお前たち。それに対抗する手段はある。ユグドラシルから転移する直前にお前たちに渡したワールドアイテム。これを装備していれば、ワールドアイテムどうしの攻撃は相殺できることとなっている。もちろん例外は存在し必ずというわけではないが…なので、それらは大切に持っていなさい。当然私も一つ持っている」

 

「なんと…私たちにそのような至宝をお渡しいただいていたのですね……それにこのような事態まで見越したご判断力……至高の御方の…お父様の智謀は私ごときでは足元にも及びません…」

 

「これは…ワールドアイテムだったのですね……このような至宝を…本当に私たちが持っていてもよいのでしょうか…?」

 

「お前たち、当たり前だろう。お前たちは私の自慢の大切な娘だ。だから、私のことを大切に思ってくれるのならば、同じくらい自分たちのことを大切に思ってくれ」

 

タブラの言葉にさめざめと泣く娘たちを両手で抱きながら考える。

そう、まるで、このような事態になることを想定したかのように準備がなされているという事に、何らかの意図があるのかもしれないと。

 





現実でマル向の乱用はダメ絶対。
捕まります。
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