オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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バザーさんは、ショータローくんの要求と自身の判断から、最も排除しなければいけない可能性が高い白老から始めることにしました。


第4章 第13話 -白老との交渉-

 

 

『なあなあ、アイツさ、なんで寝る時も装備とか脱がねーんだ?』

 

『俺に聞くな。アイツ(ハリシャ)がそういう奴だからとしか言いようがないだろ…で、どうなんだ、あの金の装飾具は貴様にとって価値があるのか?』

 

『うーん…正直ビミョー。表面は(ゴールド)で、中身はおそらくピンクシルバー鉱じゃないか?こっちに来てからは初めて見るけどレアリティは中位くらいだな。あと、素早さと物理防御を上げる魔法がかかってるな』

 

『それで微妙判定なのか…貴様の基準はどうなっているんだ…』

 

 

現在バザーとショータローは、石喰猿(ストーン・イーター)のハリシャ・アンカーラの寝床と思われる、石造りの祭壇のような場所にいるハリシャを監視している。

もちろん二人とも透明化し、基本的にはショータローによる伝言(メッセージ)で会話している。

 

この場所は山脈谷間の中程に位置し、周囲は奇岩で囲まれているため普通に立っているのは困難な場所であるが、山羊人(バフォルク)のバザーにとっては急斜面に足をかけるのは容易だし、ショータローも飛行(フライ)で浮いているので特に問題はない。

 

またここに至るまでの道には、何人もの石喰猿(ストーン・イーター)の見張が居たが、予想通り透明化看破が出来る者はおらず、逆に飛行(フライ)で飛びながら、ハリシャの部下と思われる者を辿っていけば必然的にハリシャの元までたどり着くので、発見自体も容易であった。

 

だが、たどり着いたはいいがハリシャは殆ど寝床を動かず、装備も脱がずに食っちゃ寝をしているので、ショータロー的には諸々を失敬する隙が無い。

狙いはハリシャの装備と、現時点で見当たらないが、食べるための原石ストックが何処かにあるはずであり、その中には希少な物もあるかもしれないのでこれも探している。

 

この膠着状態がすでに3日続いており、そろそろショータロー的には飽きてきた。

バザーは、ショータローが飽きてきたことを感じ取っているので、『何の相談も無しにいきなり突っ込むとかするなよ』と何度も忠告をしているが、そろそろ何かやらかしそうなのでハラハラしている。

 

バザーとしては、この3日間でハリシャによる石喰猿(ストーン・イーター)達の統治を見ていて、一言で言うと『統治者失格』だと感じている。

 

ハリシャは明らかに他の石喰猿(ストーン・イーター)と異なる体毛・体格で、聞いた話によると奴らが本来持つ種族特性についてもだいぶ強化されている変異種だという。

だが、その強さでもって君臨しているだけで、配下への配慮は無し。

 

特段武具を与えている様子もないし、言葉を掛けて何らかのアドバイス等をする様子も無し。

食い物を運ばせて、若い雌個体を侍らせているだけに見える。

 

ハリシャ自身は様々な他種族のものと思われる肉や渓谷で採れる魚、あるいは良く熟れた果物などを食べているが、配下たちの多くは小さな木の実、あるいは雑魚、そしてハリシャの食べ残しなども食べているようだ。

 

『成程な…奴らは人間の肉を好んで食べていると思っていたが、実際は普段飢えているがゆえに、人間などの捕獲しやすい食料に必死に群がっていたという訳だったか…猿の例外に漏れず雑食ということか』

 

 

バザーは、ハリシャの統治について色々と思うところはあったが、ともかくも今は横にいるもっと厄介な化け物が暴発しないように策を考える必要があると考えた。

 

 

『おい、ハリシャはこのまま見ていてもいつ動くか分からん。なので俺に考えがある。俺の作戦に乗ってくれれば、貴様の目的も果たせる可能性が高い。どうだ?』

 

『…アイツとの会話、お前がするんならいーよ』

 

『安心しろ、そのつもりだ』

 

 

 

***

 

 

 

翌朝、ハリシャ・アンカーラが支配する石喰猿(ストーン・イーター)の居住エリアの入り口に、一人の山羊人(バフォルク)が現れた。

 

 

石喰猿(ストーン・イーター)の者よ!俺は山羊人(バフォルク)の王、バザーだ!お前たちの王であるハリシャ・アンカーラと話がしたくてここまで来た!どうか繋いでもらえないだろうか!」

 

 

突然の訪問者に、入り口を警備していた石喰猿(ストーン・イーター)の見張りは驚き怯えていた。しかし、すぐに震えながらも声を上げる。

 

 

「バ、山羊人(バフォルク)のバザー殿!わ、我らの王たるハリシャ・アンカーラ様は現在ご自身のお住まいにて休まれている!貴殿のご訪問をお伝えするのでお待ちいただけないだろか!」

 

「ああ、勿論だ。突然来たのは俺の方だからな。是非とも繋いでくれると助かる」

 

 

それから3時間程して、10名ほどの石喰猿(ストーン・イーター)達が現れた。

 

「我々は、ハリシャ・アンカーラ様から仰せつかり、貴殿をハリシャ・アンカーラ様の元へご案内する役の者だ。どうか我らについてきていただけるか?」

 

「ああ、突然の訪問にも関わらず感謝する。それでは行こうか」

 

 

 

そのまま、バザーは10名の石喰猿(ストーン・イーター)と共に山岳地帯へと入っていく。

歩いていく方向は、確かに昨日まで監視していたハリシャが居た方角だ。

偽りの行先へ連れて行くつもりはないらしい。

 

しばらく歩くと渓谷の中に複数の奇岩が見られるエリアに入る。

少々足場の悪いそのエリアに入ってしばらくした後、バザーの背後を歩いていた石喰猿(ストーン・イーター)の2名が突然何の言葉もなく、石を吐き出して攻撃をしてきた。

 

バザーは難なくそれらを躱すと落ち着いた表情を崩さずに警告する。

 

 

「ふん、その程度の攻撃、この俺様に届くとでも思ったか。そしてこれはハリシャからの差し金か?俺は部下も連れず、対等な交渉のために訪れたというのに」

 

「くっ…クソッ!!貴様のような他種族の者をハリシャ様の元へお連れするわけにはいかないのだ!!貴様は俺達が処理させてもらう!!皆、行け!!」

 

 

言葉だけを聞くと忠臣のそれであるように聞こえたが、多くの部下を束ねてきた王であるバザーの目には、その言葉を発する石喰猿(ストーン・イーター)の目に嘘と脅えがあることを感じていた。

 

だが情けを掛けるつもりはない。

 

 

「愚か者が」

 

そう言うと、四方から飛んできた石を砂塵嵐(サンドストーム)で吹き飛ばし、速やかに石喰猿(ストーン・イーター)達と距離を詰めて危なげなく斬り捨てていく。

 

そして最後の一人になった石喰猿(ストーン・イーター)の眼前に剣先を向けながら言葉を述べる。

 

 

「もう一度問う。俺は交渉に訪れたと言ったはずだ。これはハリシャの命令によるものか?それとも貴様たちの暴走によるものか?」

 

「くっ…!」

 

もはやどうあっても逆転は無いと悟った眼をした石喰猿(ストーン・イーター)は、怯えた表情のまま固まる。

そして何事かを喋ろうかと表情を変えた瞬間、その顔に彼方より飛来した石がめり込み絶命する。

 

 

「ヒヒヒ。心配してきてみれば…これは迷惑を掛けましたな。豪王よ。部下が勝手に暴走した様じゃ。あんたが部下を殺したことは目を瞑るで、どうか許してもらえんじゃろうか?」

 

「白老…ふん。まあいい。水に流そうではないか。それで、俺は貴様と話がしたくてここまで来たのだが、ここで話を始めてもいいのか?」

 

「ヒヒヒ。いやいや、せっかくの客人じゃ。ちゃんと家まで案内するでな、着いてきな」

 

「良かろう」

 

 

 

ハリシャはバザーを伴い、昨日ショータローと共に監視していた石造りの祭壇まで戻ってきた。

バザーとしてはこれは意外だった。

 

この場所はハリシャのプライベートスペースだと思っていたので、敵対するにしろ話し合うにしろ、もっと対外的な場所に案内されると想定したのだ。

 

ハリシャは、昨日まで座っていた場所と全く同じ場所に腰を下ろし、バザーは促されて祭壇の端に立つ。

 

 

「ヒヒヒ。それで、交渉とはどういう内容じゃな?」

 

「ああ、単刀直入に言うが、同盟を組まないか?このアベリオン丘陵は余りに多くの種族が覇権争いを続けていて、膠着状態が長年続いている。十傑と呼ばれる我らのいずれかが同盟を組めば、パワーバランスは傾くだろう。そのための同盟だ。丘陵を手に入れた後に、同盟者で領地を分割すればいい」

 

「ヒヒヒ、成程成程。硬直状態というのは確かにあんたの言う通りじゃな。だがいくつか確認せねばならん。同盟というのは他の誰かにも声をかけるのか?」

 

「現時点では貴様にしか声をかけていないな。単純に貴様の部族とは居住地が近いのと、食い物が被らんと思ったのだ。俺たちは基本的には草食だが、貴様らは肉を好んでいるだろう?」

 

「ヒヒヒ。食い物についてはそうじゃな。同盟についてはあまり多くすると領土の取り分が減ってしまうので数は増やさぬ方が良いと思うぞ?」

 

「他に誰に声をかけるかは貴様の方で考えてもらっても良い。他には?」

 

「ヒヒヒ、そうじゃな。同盟相手の強さというのは知っておきたいところ。あんたの部下にどれほど強い者がいる?同盟相手として安心できるのか知っておきたいのでなぁ」

 

「ふん。貴様も教えるのだぞ。俺の方は側近が20程。これらは俺には及ばないがある程度の強さはある。後はそこまで強くは無いが、戦える戦士階級の者が100程だ」

 

「ヒヒヒ…そうかそうか。こちらは先ほどアンタに殺されてしまったような10名ほどのチームがあと5つ。戦えるだけのものであれば同じく100くらいじゃろうかの」

 

「かなりの数が居るのだな。このような渓谷にそれほどの部下が棲んでいるとは」

 

 

そう言ってバザーは、目線をハリシャから外し、祭壇の外側である渓谷の崖を見遣る。

その様子を見たハリシャは気づかれないようにニヤリと笑い、自身が座る石床に隠された保管庫にそっと手を伸ばして、とっておきの原石を飲み込む。

 

 

「ヒヒヒ、良い景色じゃろ。この絶景を見るためにこの場所に家を造らせたのじゃ」

 

そう言いながら、今飲み込んだ石で得た攻撃力の上昇を感じながら、種族スキルである石の吐き出しを3連続で発射した。

不意を突いた3連の石で、バザーは大ダメージを追い崖下に落ち、隠れている部下たちが追い打ちをかけるように攻撃をして息の根を止める算段であった。

 

多少多めに言っているであろう、バザーの部下の戦力も把握し、バザー亡き後に簡単に制圧できるだろうと踏んでいた。

そして雑食である石喰猿(ストーン・イーター)としては、山羊人(バフォルク)も美味しく頂けると考えていた。

 

しかし、排出した石はなぜかバザーまで届かず、空中で静止している。

 

 

「ヒ…な、なんじゃ?!」

 

「ふん、やはり裏切ったか。愚か者が」

 

そう言ってゆっくりと振り返ったバザーは、ハリシャをその視界にとらえる。

 

 

「ヒヒ、お前たち!一斉に攻撃しろ!!」

 

 

すかさず、隠れた居た者たちが攻撃…しなかった。

何故か彼らは皆、深い眠りに落ちていたからだ。

 

「クソッ…どういう事じゃ!!」

 

そう言ってハリシャは、ゆっくりと近づいてくるバザーに対抗するために、防御力を上昇させる、とっておきの原石であるダイアモンドを取り出し、飲み込もうとした……が、そのダイアモンドを掴んだ手が動かない。

 

そしてダイアモンドを掴んだ指が、信じられない力で一本ずつ開けられていき、ダイアモンドは闇にのみ込まれるように消失した。

 

 

「いいか?」

 

バザーが喋る。

しかしその目線はハリシャを見ていない。

まるで目に見えない誰か(・・・・・・・・)に向かって話しかけている様である。

そして、その“誰か”の声がどこからか聞こえる。

 

「いや隠し保管庫の原石に当たるから、そっちに投げるわ。あと防具に当てるなよ。弱体化掛けてやるから」

 

「ヒ…え…何じゃ?!」

 

 

その直後、ハリシャは何者かに持ち上げられている感覚を覚え、そのまま祭壇の端へ放り投げられる。

そしてその直後、「肉体弱体化(ナチュラル・ウイークニング)」という声が聞こえ、自身の体が弱体化してくのを感じた。

 

気づいたときには、ハリシャの首から上は胴体と離れ離れになっていた。

 

 




やっぱりハリシャは駄目でした。
次行きます。
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