オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
ショータローがネイアの母と会ってから、ある意味、親公認になったことで、ショータローはネイアと遊ぶ時間が増えた。
いつの間にかネイアが装備するようになったリストバンドは、やはりショータローからプレゼントされたものだったようで、ネイア母が聞くと、それは即死耐性がある魔法の装備であると説明された。
普通に購入した場合、どう考えても非常に高額かつ聖なる効果と思われるアイテムを簡単にプレゼントするという事実から、ネイア母の中でのショータローのバックグラウンド予想はより真実味を帯びて行き、一方で遠方の故郷から逃げてきた孤児である可能性が高いことは、その事を本人に確認するのは可哀そうであると考えられた。
ただ少なくともショータローという少年の中で、ネイアはきっと大切な友人なのだろうという事は容易に予想できたので、ネイア母はそれを温かく見守ることにした。
幸い(?)にも、夫のパベルは、活発化する亜人対策のためにカリンシャに詰めていて、しばらくの単身赴任が続いている。
パベルが帰ってきた際には、まず、夫婦間でしっかりとこの少年のことを共有し、夫が娘を溺愛するあまり失礼な行動をとらない様に言わなければと考えている。
また、ネイア母が聖騎士として仕事をしている日中や、学校が休みの日は、ネイアは殆どショータローと遊んでいる様だったが、はっきり言って自身よりも強く、装備の件など、明らかにネイアの安全を考えているショータローはこれ以上ないボディーガードでもあるので、ネイア母は安心してネイアを任せているような状態だった。
ショータローとネイアは、この2-3か月の間、ローブル聖王国の街巡りをしている。
これはネイア母が知らない事である。
ネイアは、ショータローのことを母に説明できたことで、堂々とショータローと遊べるようになった気がした。
その結果、ショータローが提案する『他の都市や町を見てみたい』という要望に応えることにした。
だが、他の街へ行くためには基本的には
はじめて一緒に飛行したときは余りに怖くてショータローにしがみついていたし、透明化でこっそり侵入するときは悪いことをしているという気持ちが大きかったが、初めて出来た友達と秘密を共有しているみたいで何だか嬉しく、また、魔法のことは母親であっても簡単に言ってはいけない気がしていたので、遊んでいる内容は何となくぼかして伝えている。
今日はカリンシャから近いロイツという小都市に来ている。
ネイアは以前、この街の近くで父と共にキャンプをしたことがあり、その時に物資購入のために寄ったことがあるので街のつくりを覚えていて、ロイツの街をショータローと一緒に歩いている。
なおカリンシャには行かないことになっている。
なぜならばカリンシャには現在父親が居るし、何度も行ったことがあるカリンシャではネイアはその特徴的な眼付きのため、覚えられている可能性があるからだ。
そして母から、ショータローと2人で遊んでいる状態をパベルに見られるのは避けた方がいいという助言(?)を受けているので、父親へ情報が届きそうなカリンシャは避けているのだ。
「ネイア、ここだけじゃなくて、いろんな街にあの4体の像がよくあるけど、なんか有名な人なのか?」
「あれは4大神様の像だよ。ホバンスの大聖殿にはもっと大きい像があるんだけど、火と水と風と土の神様の像なんだって。ショータローくんの住んでいたところは4大神様の話って無かったの?」
「聞いたことないなー…それぞれ名前ってあるの?」
「えっと…あるのかもしれないけど私は知らない。大聖殿の司祭様なら知ってるかもしれないよ」
「ふーん…属性ってことは魔法の神的なものなのか?」
「あ、えっと、魔法を使う人にとってはそうだったと思うよ」
「『月』と『陽』と『時』の属性の神はいないのか?」
「え?…あ、そう言えば大聖殿のミューギ司祭様がこっそり教えてくれたんだけど、スレイン法国には後2人、闇と光の神様が祭られているんだって。その神様のことかな?」
「なんか人数違うし良く分かんないな…ちなみにどれが火でどれが水でとか教えてくれる?」
「えっとね…」
ネイアに4大神のことを教わったショータローは、その夜、さっそく一人でこの街に戻ってきて、それぞれの属性に合ったトラップゴーレムに作り替えた。
ただ、火の属性だけは殺してしまいそうな気がしたので、そうならない様にだいぶ加減を調節した。
また、今まで様々な街で仕掛けてきた像の中に、この4人の像がかなりあったことを思い出し、その後順次、属性に応じたトラップに作り替えていく。
また別の日、今度は聖王国南部の観光をしていた。
聖王国南部の街は、すでにかなり荒らしまわっていて、顔を隠していたとはいえ2人組の子供というだけで警戒される可能性があるかもしれないという事と、大都市のめぼしい像はほぼトラップ化が終了していたので、
以前南部を飛び回っていた頃と比べて、小さな村の周りにだいぶ畑が広がっている気がした。
しかもその畑は花を植えていて、おそらく食料用の野菜ではなさそうだ。
余りにその花が多いので、ショータローはネイアに聞いてみる。
「なあネイア、あの花ってなんかこの国の名産かなんかなのか?」
「え…うーん…違うと思うし、今まで見たことないかも」
「なんかこの辺の畑にめっちゃ植えられてるから、なんかに使うんだと思ったんだけど」
「そうだね、今度お母さんに聞いてみるね。今飛んでいるこの辺りって、どこの街が近いかな?」
「街の名前分からん…あの、南の山の鉱山でウルトラマリンストーンが採れる鉱脈を持ってる貴族みたいなやつの屋敷がある街」
「なんでそんなこと知ってるの…でもそれって藍のご婦人が言っていたマララサかな。ボディポ侯爵のお屋敷がある街だよね?」
「わかんないけどたぶんそう」
こうして、ショータローはネイアと遊ぶ時間が増え、時にはバラハ家で食事を共にし、暇さえあれば聖王国中の街へゴーレムをばらまく日が3か月ほど続いた。
やがて聖王国は雨が多い季節が近づいてきた。
そして、バザーとの約束の100日がそろそろ迫っていることを思い出し、ネイアには、アベリオン丘陵の友達と遊ぶ約束があるから、しばらく家を空ける事を言い、何かあったらネックレスで連絡してくれと言い、バザーの家へ転移していった。
「はろー」
「うおっ…なんだ貴様か。そうか、もう100日か」
「そーそー。どんな感じ?」
「ああ、
「ふーん。
「ああ、奴らは……そうだ、ちょっと待て。その話の前に、貴様。俺の配下の装備やら武器やら根こそぎ奪っただろ?!」
「あ、気づいちゃった?」
「当たり前だアホ!!確かに貴様と契約する前のことだ…水に流すと言ったのは俺だから、その言葉は曲げん。だがな、貴様のせいで俺の配下の戦力はガタ落ちだ!
「えー…もう全部インゴット化しちゃったんだけど…わーったよ。じゃあフェイク・バザーズの他にも護衛のゴーレム出してやるからそれでいいか?」
「…各集落の護衛用と、ロケシュ対策に魔法防御性能があるヤツを出せるか?」
「いいけど、お前の部下が持ってた防具、魔法防御なんか殆どなかったぞ…で、何体ぐらいあればいいんだよ」
「強さにもよるが、俺そっくりのあいつら位強ければ10体もあれば十分かもしれんが」
「35レベルはちょっと時間かかるから20レベル位でいい?えーっと…強さはお前の側近ぐらいかな?その程度ならすぐに作れるし、ストックもだいぶあるから」
「そのレベルの強さの者をすぐに作れるのか…つくづく化け物だな…ああ、まあその強さなら集落ごとに10でいいだろう。ロケシュと闘う場合は俺そっくりのゴーレムを使えばよいだろう」
「おっけー。ちなみに、ゴーレムの形は何でもいい?」
「これ以上、俺そっくりのものは作らないでくれ。部下が混乱している。あと、人間の形も止めた方がいい。アベリオン丘陵にはいないから目立つ」
「分かった。じゃあちょっとドゥエルのとこ行ってインゴット貰ってくるわ。あんま使い道が無い
そう言うとショータローは一瞬で消え、30分後に『フェイク・ネイア』と呼ばれていたゴーレムと供に戻ってきた。
そして、『フェイク・ネイア』と共に造形し、あっという間に50体ほどのアイアンゴーレムを作成していった。
「よし、“アイアン・フェイク・ルベド”シリーズ完成だ!!」
「おい、ショータロー…確かに人間でも
「えっ?!ダメだった?」
「…まあいい。護衛用だから、逆に外敵は警戒してくれるかもしれんな。だが集落の住人達にはコレが危険でないことをちゃんと説明しとかないといかんな…」
「ショータローくン。私、おじいちゃんのところニ、戻った方がいイ?」
「あーそうだな。悪いけど精製の手伝い続けて」
「分かっタ」
「おい、ショータローよ。そう言えば気になっていたのだが、その『フェイク・ネイア』というものはやはりゴーレムなのか?」
「ん、そうだよ。だけど人間そっくりだろ?めっちゃこだわって質感再現してっから」
「やはりそうなのか…しかし、モデルが居るのか?もしかして前に言っていた人間の友達とやらか?」
「ああ、そうだよ。そうだ、なんか用事あって聖王国に来ても、この『フェイク・ネイア』モデルの人間とその仲間にはぜってー攻撃すんなよ?」
「ああ、というか、人間の国へ行く予定はないがな。ただ、問題なければ仮面を取って見せてもらっても良いか?正直俺には人間の違いが良く分からんからせめて顔に特徴があれば多少は区別できるかもしれん」
「ああ、そっか。フェイク・ネイア、仮面取って髪色戻して」
「分かっタ」
金髪で恐ろしく鋭い目。
他種族であるバザーでも、その顔はどこか悪鬼のごとき印象を受けた。
だがそれ以上に、この目には覚えがある。
以前、遭遇戦となってしまった人間の戦士との戦い。
それに割って入り、戦いを中断させ、結果分が悪いと考えたバザーに退却を選ばせた有名な人間の弓兵。
“凶眼”によく似ていた。
あの者との関係は分からないが、とりあえず“凶眼”も含めて、今後は戦闘をしない様に心がけようと考えたのだった。
集落に天使型ゴーレムを配置して、住人にその安全性を説明していく。
命令方法などについてはショータローの助言が必要なため彼も同行しているのだが、相変わらず透明化で身を隠し、直接の説明は全てバザーが行っている。
まあ、移動は転移と飛行で一瞬なので、それくらいはやってやっても構わないのだが。
その様な雑事が終わり、バザーはショータローと共に
集落は丘陵南部の沼や湿地が広がるエリアにある。
近くには水を必要とする種族であるスラーシュや
「
「敵対してんのか?」
「いや、こいつらは独特の魔法を使う種族ではあるが、好戦的ではなく比較的理知的な部類だ。死肉を食べる性質があるが、
「ふーん」
しかし、しばらくして湿地帯に入るとバザーは首をかしげる。
「おかしい…スラーシュや
そして、今回の目的地となる
「バカな…
***
ホバンスの王城。
しとしとと雨が当たる窓の中で、神官団団長のケラルトと女王カルカは深刻な顔で会議を行っていた。
「カルカ様、聖騎士団のイサンドロ・サンチェスの指揮下にある聖騎士から報告があった南部の花の件ですが…」
「…確認が取れたのですね?」
「はい…懸念していた通り、花はライラの花。リ・エスティーゼ王国で急速に広がっている麻薬、通称“黒粉”の原料です」
「なんということ…それでは南部にはすでに例の犯罪者組織が?」
「入り込んでいるとみて間違いないかと思います。ただ、栽培自体は僻地の村周辺で行われており、それら村の中に犯罪者組織の者が住んでいるとは考えづらいかと。村人は強制か騙されてかは分かりませんが、ライラの花を育てる事だけを行っていて、犯罪者組織とつながりがある商人へ販売するのかと思われます。すでに多くの村は、畑が全てライラ畑となっていて、彼らの収入の全てになっている可能性もあります。また、老侯の報告によれば、多くの畑は既に1度目の収穫は終わっており、黒粉の生産は始まってしまっていると考えられます」
「麻薬など…もっての外です!そのようなもの、国民に悲しみしか生みません!速やかに対策を取り、栽培している村人には別の仕事を与え、花は焼いてしまわねばなりません…神官団を動かすことは出来ませんか?」
「村は殆どがボディポ侯爵領とコーエン伯爵領内です。奴らが犯罪者集団を引き込んだのは間違いないと思いますが、自領内の村を聖王家として接収することには確実に反対するでしょうし、その間に2回目の収穫が始まってしまします…これはもはや明らかな犯罪行為として強権を発動するか、最悪、村人は切捨てる覚悟で、聖騎士団か冒険者等への依頼などで焼き払ってしまった方が良いかもしれません」
「それは……例え南部であっても、村人を…国民を犠牲にするなど…」
そこまで話したとき、部屋の扉が強くノックされた。
「陛下!!ケラルト神官団団長!!緊急事態でございます!!」
「どうしましたか?」
ケラルトが扉を開けると、汗だくで真っ青な顔をした兵士は跪き、速やかに伝令を伝える。
「申し訳ございません!!ですが緊急のためこのまま失礼いたします!!カリンシャより早馬がありました!亜人の大群が雨にまぎれて城壁に攻め入り交戦中です!!確認できた亜人はスラーシュと
カルカの脳裏にも、ケラルトの脳裏にも、かつて国に大きな被害を出したスラーシュの侵攻とそれに続く最悪の悲劇が蘇った。
亜人と人間の戦いが始まってしまいました。