オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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編集方法教えていただいて感謝します!

昨日は風邪をひいて寝込んでしまったのですが回復したので続きを投稿します。




第1章 第4話 -タブラさんのアトリエ-

 

アンダーカバーとして設定した“錬金術師”としての商売を始めるために、タブラたちはアーウィンタールの薬師たちが集うエリアに調査に来ていた。

 

そこで分かったことは以下の2つ。

・『薬師組合』というものが存在し、薬品を売ることで生計を立てるものはこの組合に所属することが一般的

・少なくともこの町の薬師たちが販売している薬品は、ユグドラシルに比べて非常に質が低い

 

『薬師組合』については、所属は強制ではないという。しかしながら、所属しなければ薬品の原料の調達や製造方法、調合器具などの融通といった恩恵が受けられないという。

これについては、タブラは特に問題にならないと考えていた。

アイテムボックスには、ユグドラシル産の原料・作成済みの薬品が山ほど入っているし、タブラはスキルで調合ができるので器具は不要だ。

 

タブラは、ロキの指輪(リング・オブ・ロキ)で人化ができるようになったことで、人間の姿の時は追加で40の職業レベルを取得できるようになった。

彼はもともと、強さを突き詰めたガチビルドというわけではなく、脳食いという深淵なる錬金術師という、ある意味でドリームビルド寄りだったので、この追加の40レベルも“錬金術師”としてのレベルを上げる方向に舵を切った。

その結果、採集も生産もできる錬金術師として、ドルイド系統のレベルを上げ、錬金薬の生産も可能になるクラスを取得した。

そういう意味でフールーダと共有したカバーストーリーはとても理に適っている。

 

ただし、『この町の薬品のレベルが非常に低い』というのは問題だった。

まず、売られている最大効果の回復薬ですら、アイテムボックスに入っている最も低レベルの『下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)』より低レベルなのだ。それに色が違う。赤いポーションというのはここには存在しないのかもしれない。

 

タブラは薬師組合所属の店で売られている全ての薬品をメモし、店を後にする。

自身の店で売るのは、薬師組合の店で売られておらず、そこまでレベルが高くない薬品のみでなければならない。下手にレベルが高い薬品を売って悪目立ちするのは得策でないし、組合に所属していない店が競合となるような販売をするのも好ましくないだろう。

 

とはいえ、アイテムボックスに入っている薬品もその材料も無限ではないし、いずれは原材料の調達手段を考えなければならないな、と頭の片隅にメモをした。

 

 

「それでは、出ましょうか。ノアー、ルゥオン」

 

「「はい、お父様」」

 

3人は薬師組合の通りを後にし、中央通りへ出た。

多くの通行人が3人を、正確に言えば、アルベドとニグレドを、凝視しているのが分かる。

絶世の美女として作成したアルベド、今は人の皮膚を張り付けた顔をした妹によく似たニグレドは、注目の的の様だ。

本当のことを言うと、見とれている直後にニグレドが本性表し、ホラーイベントが開始する様を見てみたいという気持ちがあるのだが。

 

自慢の娘たちが好意的にみられるのは悪い気分がしないが、変な者たちに絡まれても困る。

休憩を兼ねてどこかお茶ができる店に入ろうとしていたタブラだったが、一本入った道にある酒場兼宿屋のような店ではなく、中央通り沿いで、品が良い女性給仕のいるカフェのような店に入ることにした。

 

「いらっしゃいませ」

店のスタッフと思われる品の良いエルフの女性が注文を取る。

 

「紅茶を3ついただけますか」

 

「畏まりました」

 

女性はエルフの特徴である長い耳が左右に飛び出た顔をくるりと回し、厨房へ紅茶のオーダーを入れている。

紅茶が届いたのち、タブラはニグレドに伝言(メッセージ)で指示を出す。

 

『少し今後について話をしたいと思います。私たちの周りに静寂(サイレンス)をかけてください』

 

『畏まりました』

 

瞬間、周囲の音がシャットアウトされたかのように静寂に包まれる。

 

タブラは、先ほど薬師組合で考えたことを娘たちへ共有する。

「……という訳で、今の住居では限られた薬品のみを売っていこうと思いますが、素材の枯渇に備えて材料の調達も必要になると思われます。いつまでもフールーダからもらった金貨にのみ頼り続けるわけにはいきませんし、同時にナザリックに帰還するための情報収集もしたいところ。何か良い案があれば意見をしてください。この姿の時は本来の時のような十全な思考ができませんので、お前たちの賢さが頼りです」

 

「畏れな…いえ、お父様、それでは、私から提案ですが、冒険者組合かワーカーという者たちを使うのはいかがでしょうか。彼らは依頼を請け負うことを生業にしているとフールーダが申しておりました」

 

「ふむ、ノアー…しかし、依頼をするとなると、そこでまたかなりの金額がかかるかもしれませんね」

 

「お父様、それでしたらいっそのこと、私たちが冒険者やワーカーとなってしまえば、この町の外へ行くことも不自然ではなく、かつある程度の報酬も得られるのではないでしょうか。あとは……あまりお勧めしませんが、闘技場なるものがあると聞きました。闘技場で勝ち進めばある程度簡単に金額を稼ぐことができると思います。ただ、“目立たずに”という点においては難しいかもしれません」

 

「なるほど…確かに闘技場は目立ってしまいそうだ。しかし一度見ておいてもいいかもしれない。今日はまだ日が高いし、この後行ってみようか。運が良ければ1試合くらいは見られるかもしれない。冒険者とワーカーについては、そもそもどちらを活用するかという点も問題だ。フールーダの話では、冒険者は組合が斡旋していて、基本的には身分が保障されるからまっとうな仕事が殆どだが、ワーカーというのは身分保障がない分ある程度汚れ仕事も請け負うとのことだ。それぞれについて、どのような人間がいるのかというのも見極める必要がありそうだ」

 

そこまで言うとちょうど静寂<サイレンス>の効果が切れた。

再度、静寂<サイレンス>をかけようとしたニグレドを、タブラは手を挙げることで制した。

「それでは、闘技場とやらを見に行こうか…それにしても“本物の”紅茶というのは美味しいものですね」

 

 

***

 

 

闘技場は熱狂の声が上がっていた。

今日の最終試合は魔獣戦であり、注目の新人ワーカーチームが戦うとあって、派手な試合が見たい観客のみならず、古参のワーカーチームも、後輩であり商売敵になるかもしれないチームの実力を図るために観戦していた。

 

「さて、お待たせしました!!本日の最終試合は期待の新人ワーカーチーム、『フォーサイト』の登場だ!!はたして彼らは魔獣の群れを打ち倒すことができるのか、はたまた魔獣の牙の餌食となってしまうのか?!」

 

魔道具で拡声されたアナウンスとともに、四人の者が闘技場に入ってきた。

金髪にわずかに赤髪が混ざる若い双剣を持った男。おそらく彼がリーダーか。観客に対して手を振っている。

その後ろに比較的がっしりした神官風の男。手にはメイスを持っている。

横にエルフの女性。弓を持っている。いや、耳が少し短いからハーフエルフかもしれない。

そして一番後ろにまだ幼いと言ってよい、金髪の少女。杖を持っているのでおそらく魔法詠唱者だろう。

 

『なるほど、彼女がフールーダが言っていた“お隣様”ですか』

 

タブラは、“お隣様”との偶然の邂逅と、さらにはワーカーという者たちの様子を一度に確認できそうなことに少し笑顔になる。

 

ウルフ型魔獣が5体、タイガー型魔獣が1体、タートル型魔獣が1体だった。

アナウンスで魔獣の説明があったが、正式な名称は聞いたことが無かったので、ユグドラシルのモンスターとは完全に一致していないようだ。

 

試合は、多少ぎこちないながらも4人の連携がうまくとれており、危なげなく魔獣は数を減らしていく。

 

少女と神官の男が魔法で足止めをして、弓の女性とリーダーの男が中距離&近接で1体ずつ集中攻撃をしていく。

タブラにとって新鮮だったのは、倒された魔獣は死体がそのまま残り、黒い霧になって消えてアイテムやデータクリスタルがドロップ、という演出が発生しないことだった。

 

この世界が“ゲームでない”のならば、それは当たり前のことなのだが、どこかにあった“ここはユグドラシルとは異なるゲームかもしれない”という考えは、この試合によって、タブラの頭の中から完全に無くなった。

 

試合が終わり、神官の男が仲間の傷をいやしつつ、チームメンバーは観客の歓声に応えている。

 

ふと気づくと、観客席の隣に座っていた若い男が、苦虫を嚙みつぶしたような顔で面白くなさそうに「フンッ」と息を吐き、続けてこちらを、正確にはアルベドとニグレドを舐めるような視線で見ている。

しかし、自分たちのさらに奥にいる5人ほどの集団の中の男が咳払いをすると、「チッ」と舌打ちをして出口の方へ消えていった。

 

「失礼、余計なお世話だったかな」

先ほど咳払いをした、ドワーフのようにがっしりとした体形の人間の男が話しかけてきた。

 

「いえ、そのようなことは。ただ、先ほどの方の気を悪くするようなことをした覚えはないのですがね」

 

「あ、いや。実はなちょっと訳ありでな。汝には関係ないというか災難でしかないのだが、先ほどの男は女癖が悪いことで有名でな。大方、お連れの方々が美しかったので、あ奴ちょっかいをかけようとしていたのであろうよ」

 

「成程、お助けいただきありがとうございました。先ほどの方は知り合いなのですか?」

 

「あーいや、知り合いというほどでは無いのだがな…我はワーカーチーム“ヘビーマッシャー”のリーダーを務めているグリンガムいうものだ。先ほどのやつはワーカー…というかワーカーのなり損ないで、名を『エルヤー』と申す者。奴は剣の腕は確かなのだが、どうも性格に難ありでな。最初は先ほど闘技場で戦っていたワーカーチーム“フォーサイト”に加入したいと申していたようだが、イミーナ嬢、あの弓を持っていたハーフエルフの女性だ。彼女にちょっかいをかけて、それがあまりにしつこかったという事で、チームの加入もご破算になったというわけだ」

 

「ああ、だから彼らの試合を苦い顔で見ていた訳ですね」

 

「で、あろうな。ただの逆恨みなのだが…そう言う訳で奴はたまにこの闘技場での試合に参加はするが、チームを組んでくれる者もおらず、ワーカーとしての活動はできないでいるのだ」

 

「ふむ…いずれにしろ面倒ごとに巻き込まれずに助かりました。実は私は最近このアーウィンタールに引っ越してきた者で、名前はパラケルと申します。こちらは私の娘のノアーとルゥオン。私は錬金術師なので近く自宅のあるウェルリッツ住宅街の一角で薬品店を開業する予定です。お礼もかねてお安くお譲りしますから、一度ご来店ください」

 

「これは良き出会いであった。しかしその住宅地は貴族の住居が並ぶ区画と理解しているが、もしや貴族の方であったか?」

 

「いえ、そう言う訳ではありません。私の先祖がフールーダ様と親交がありまして、このアーウィンタールに引っ越すことを相談したら、そちらの住居をあてがっていただいたのです」

 

「なんと……それは中々幸運なこと。それに帝国主席宮廷魔術師のお知り合いとあれば、品質も信用できそうだ。ぜひ足を運ばせてもらおう」

 

グリンガムと名乗った男は、住居の話をした際、チラと闘技場内の少女-アルシェ-に目をやった。

そのことから、アルシェという少女の素性はある程度有名なのか、あるいはワーカーという職業上、関係する者の情報収集は怠らないという心構えがあるかという事が伺えた。

 

 

闘技場にて予想外の収穫もあり、時間も遅くなっていたため、タブラたちはその足で自宅へと戻った。

そして“上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)”の呪文を用いて、住居の一角を店舗風に改装し、『アトリエ・パラケル』との店名を掲げた。

 

翌日、さっそく店舗に訪れたグリンガムは、「店舗名が読めぬが何と書いてあるのか?」と尋ね、この世界では文字が異なることを忘れていたタブラはグリンガムに現地語での文字を教えてもらい、店舗名や店舗内の文字を修正し、実際に開店となったのはそれから3日後であった。

 





アルシェの家がある住宅地の名前を色々探したのですが、見つけられなかったので適当な名前にしてしまいました。

このあたりから、至高の御方が複数人転移した影響で、原作とは設定のズレが出始めます。

よろしくお願いいたします。

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