オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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★に降り立っていただく事を考えた時から、この章のペロロンは前話の形でご登場いただく事だけは決めていました。
イマジナリーぺロロンを軸に各章が成り立っていると言っても過言ではありません。


第4章 第23話 -緊急4者面談-

 

ショータローは森の拠点で、フェイク・ペロロンによる弓矢の特訓を受けているネイアの様子を見守っている。

 

これは、フェイク・ペロロンによる事案の発生を危惧して…という訳ではなく、弓矢の的として、失敗作のゴーレムを提供していて、ある程度は逃げまわらせないと練習にならないので、その操作をしているためである。

 

興味深いことに、ゴーレムを倒しても経験値が入っている。

唯の石像と、仮初の命を吹き込んだゴーレムでは、その意味が異なるようで、ショータロー目線では非常に低位のゴーレムであるクレイゴーレムやウッドゴーレムでも、ネイアの経験に繋がっているようだ。

 

とはいえネイアのレベルは5を超えたあたりで、ショータロー的には全然安心できる範囲に入っていない。

特性の服のおかげで、物理・魔法防御力と即死耐性だけはかなりあるのだが、回復手段や精神攻撃への対抗策はなく、武器である弓もこの国の訓練兵が使うような非常に低レベルのものである。

 

 

先日、約1年半ぶりにショータローと会った後、ネイアは帰宅後に母にショータローとの会話内容を説明した。

ショータローの『聖騎士団とはまだ会えないが、いずれ自分から女王を訪問する』という答えに、ネイア母は非常に悩んだが、やはり娘とした約束を曲げるわけにはいかないと考え、ショータローの言葉を信じて、聖騎士団へショータローのことを共有するのは見送ることにした。

 

加えて、ネイアがショータローから新たな防具を貰ったこと、そして、弓矢の技術を鍛えるために定期的にショータローの家へ通う事を許可してほしいという旨を説明された。

 

ネイアに与えられた装備は、母の目から見ても明らかに高い能力を持つことが分かり、装備すると目の前に居るというのにネイアの気配が希薄に感じられるほどだった。

 

さすがにこの件は夫にも共有すべきと考え、パベルにもネイアの防具と弓や訓練の件を説明。

パベルは正直、男友達のところに定期的に通うという点に非常に難色を示したが、ネイアの装備の余りの性能の高さと、愛娘が自身と同じ道を歩くかもしれないという嬉しさから、少なくとも一度ショータローと会いたいとネイアに告げた。

 

そしてネイアは、ロザリオを通じてパベルの件をショータローに説明。

ショータローも、人見知りの性格から非常に難色を示したが、パベルには弓兵としての伝手でネイアが今後練習で使う弓矢を準備してもらいたいと考えていたので渋々これを了承。

その次のショータロー家訪問はネイア&パベルでという事になった。

 

 

朝パベルは、妻に数えきれないくらいの回数、『失礼な態度を取らない様に、相手は子供であるから寛容に接するように、睨みつけない様に』と注意を受け、3人分の昼食を持たされて、ネイアと共に広場で待つ。

 

するとしばらくして、誰もいないはずの空間から声がした。

 

「ネイアと…ネイアの父ちゃんであってる?」

 

パベルは一瞬驚いて、その四白眼を見開いたが、すぐに妻と娘に聞いていた『ショータローは透明化が使える』という情報を思い出して心を落ち着けると、声がした方向へ返事をする。

 

「ああ。パベル・バラハという。ネイアの父だ」

 

「おっけ。じゃあ二人とも手を前に出して」

 

不思議に思いながらも、ネイアと同じように手を前に出すと、見えない何かが自身の手を掴んだことを感じた。

 

「転移で飛ぶから、転移拒否をしないでくれ」

 

 

その言葉の直後、周りの景色は一瞬で変わり、森に囲まれたログハウスの扉の前に居た。

パベルは背中に冷たい汗が流れる。

魔法職ではないパベルも、今自身に起きた事の意味が分かる。

これは集団を伴った転移魔法で、確か第7位階だ。

やはり報告で共有されている、神聖系第6位階魔法を使いこなすというのは間違いではないようだ…

 

さらにパベルが現時点で緊張をしている理由として、自身の背中側、ログハウスの外に設置された顔の付いた塔のような石像群。その顔が皆、パベルを捉えている。

娘を溺愛するパバルは、ネイアに関わる全てのことを覚えていると言っても過言ではないが、この像は、だいぶ前に“藍”のご夫人のアトリエでネイアが描いたものだ。

 

ネイアはあの顔から魔法が出て、モンスターを倒してくれると言っていた気がする。

その像が今、自分を向いている。

 

そして扉の前に佇む、女神のような形状の像。

こちらも明らかにパベルだけを見つめている。

そしてその眼には、無機質ながらも『警戒』の色が浮かんでいる。

 

 

「フェイク・ルベド・ワン、この人は警戒対象外だ。対象外登録を全てのタワー・オブ・サンとウルフ・ゴーレムにも設定しろ」

 

「畏まりましタ」

 

 

その瞬間、明らかに女神像の目に浮かんでいた警戒の色は消え失せ、森側にある石像群の顔が別方向に向き直った。

いつの間にか声を発した子供が姿を現しており、その子供は仮面をつけたまま扉を開け中にパベルとネイアを招く。

 

 

 

 

***

 

 

 

現在、ネイアはパベルとショータローに見守られながら、フェイク・ペロロンによる弓矢のレッスンを受けている。

標的は、ショータローが即席で作ったクレイゴーレムだ。

 

パベルの目から見て、ネイアの弓の腕前は明らかに上がっている。

弓兵部隊の下級兵といって差し支えない状態で、この2時間ほどで、その実力はさらに上昇しているような気がする。

 

 

パベルは正直、子供との会話が得意ではない。

それは子供がパベルの顔を怖がり、泣き出してしまうからだ。

パベルとしては別に怖がらせるつもりはないので、頑張って笑顔を作ろうとするが、それが逆効果で、子供はその殺戮者の顔にどんどん恐怖感を覚える。

 

なのでショータローとの会話も上手くいかないかもしれないと考えていたのだが、驚くことにショータローはパベルの顔については完全スルーだった。

むしろショータローとしては、ネイアに似ている顔だったので安心感を覚えたまである。

 

そう言う訳でいい意味で肩透かしを食らったパベルは、予想よりもうまくショータローと会話をすることが出来た。

ショータローはどうやら、自身が弓を使う職業でないために、ネイアが使う弓矢を用意できないので、その調達をパベルに依頼したいと考えているようだ。

 

パベルとしては、それは全く問題ないし、むしろ娘のために弓矢を買い与えるなど嬉しくてしょうがないイベントなので、二つ返事で依頼を受けた。

 

どうしても『娘の男友達』という属性については思うところはあるのだが、このショータローという少年は、人見知りでぶっきらぼうな感じではあるが、話してみると悪人ではないし、何よりネイアのことを友人として大切に思っているという事は理解できた。

そして、この数時間のやり取りで、伝え聞くロイツでの戦闘も、あながち間違いではないかもしれないと感じた。

 

加えて、外見や素振りは確かに年相応なのだが、知識や言葉の端々などから精神的な年齢は非常に高いのではないかと感じる。

 

いずれにしろ、装備の件や、そもそも最初にネイアの命を救ってくれたことについて、改めて礼は言わないといけないと思い、ショータローの仮面の目の辺りをはっきりと見つめて向き直る。

 

 

「礼が遅くなって申し訳ないが、ネイアの命を救ってくれただけでなく、その後の装備の事なども本当にありがとう。心から感謝している」

 

 

するとショータローは少し面食らったように一瞬固まったが、すぐに『いや、別に…』とそっけない返事を返した。

 

そして逆に、ショータローはパベルの顔を少しのぞき込むと、少し考えた後に疑問を投げかけた。

 

 

「パベルさんて…バザーが砦の近くで戦った時、砦の上に居た?」

 

パベルの目が再び見開かれた。

パベルも気づいていた。

この少年のこの仮面。

あの砦での決死の戦いの際にバザーの前に突然現れた少年。

 

だが本人の意向で、聖王国との交渉は今は行わないという事だったので敢えて触れないでいた。

しかし、彼自身の口からそのことを告げられる。

これは踏み込んでもいいという事だろう。

 

 

「ああ…娘からどこまで聞いているか分からないが、弓兵部隊の兵士長をしている身なのでね。あの日は砦の上に居た。やはりあの日、バザーと供に居たのは君だったのか?」

 

「あー、うん。その、なんだろう。ネイアが悲しむからあんまり危険な場所へ行かない方がいいと思うけど」

 

「…あいにく、言ったように兵士長という身分なのでね。そう言う訳にはいかないんだ…君こそ、亜人種と供に居て大丈夫なのか。娘も、友達が危険な目に遭うというのは嬉しくはないと思うのだが」

 

「バザーは友達だから大丈夫だな。あとレベル的に危険は無さそうだから」

 

「君は…いや、どうしてバザーと友達になったのか教えてもらえるか?バザーは聖王国では、アベリオン丘陵の十傑の一人で危険な亜人という事になっているのだが…」

 

「あ、えっと、バザーのところに金属…いや、遊びに行って、それで何となく友達になっただけだ。バザーは人間は食わないって言ってるし、丘陵を統一したら人間の国とお互いに攻め込んだりはしない協定を結びたいって言ってたけど、危険って認識なのか?」

 

「……そうか、いや…そうだな。私は一度バザーと闘ったことがある。部下の者とバザーが遭遇戦になってな。部下が負けそうだったから助けに入って、そのまま少し戦ったが、結局お互い身を引いた。強さを持つ亜人は危険という認識だな。力で劣る人間が、山羊人(バフォルク)から攻め込まれたら、対抗できる者は少ない。だから多くの国民は亜人から協定と言われても俄かには信用できないのかもしれない」

 

「オレは、人間とか亜人とか関係なくネイアとかバザーと友達になった。人間が亜人とは友達になれないのか?例えばオレが、人間じゃなく、亜人とか…異形種とかだった場合、オレはネイアとかバザーとは友達になれないか?」

 

 

その言葉を聞いて、パベルは少しだけ少年のことが理解できた気がした。

彼は他人を、本当の意味で外見では判断していないのだ。

言うなれば、魂で判断している。

だからパベルの顔も全く怖がらないし、亜人王のバザーとも友達になれる。

逆に言うと、彼が殺した蛇王(ナーガラージャ)達は、魂として許しえない存在だったのだろう。

 

勿論、それが出来る力を持っているという事も重要ではあるのだが。

 

これはつまり、彼が聖王国の味方となるためには、聖王国が魂として正しい在り方を体現できているかが問われるという事だ。

 

『夜の番人』として、多くの敵対的な亜人を狩り殺してきた自分にとっては、遥か昔に忘れてしまった考えかもしれない。

いや、度重なる敵対的な亜人との戦いを経験してきた、この国の上層部にとっては、すぐに受け入れるのは難しい考え方かもしれない。

特に聖騎士団団長当たりなどは、全ての亜人を悪と断じている節がある…

 

しかし、これは大きなヒントである。

彼—ショータローという弩級の戦力が聖王国の守護者となるために、絶対的に必要な条件の片鱗を見ることが出来た気がした。

 

同時にそんな彼が、娘のことを友人として大切にしているという事実に、パベルは誇りを覚えた。

 

 

「ショータローくん、おそらくだが君の考えは正しい。君の様に外見に全く囚われず、ただ魂の有り様だけを見つめて他人と接することこそが、本当は正しいのだろう。だが、この国の大人たちは亜人というだけで恐れてしまう者も多い。私もバザーと対峙したときは、彼と碌に話もしなかったから、彼がどのような人物か理解できていなかったな」

 

「じゃあ、バザーが実は良い奴だったら、パベルさんも友達になれるか?」

 

「ん…?まあじっくり話してみて、彼が人間と敵対しないというのなら可能かもしれないな」

 

「…そうか。ちょっと待ってて」

 

 

そう言うと、ショータローは自身の指を頭に当て、ブツブツと呟き始めた。

 

 

 

 

『おーい、バザー。聞こえるか?』

 

「ん…ショータローか。ちょうど良かった。俺からも連絡することがあったのだ」

 

『マジ?どうしたの?』

 

「いや以前言った、丘陵の残りの十傑だが、どうやらあちらも部族で同盟を組んで、俺たちと交渉をしたいと言って来たのだ。これはもしかしたら全面戦争になるかもしれん。大事な局面だから貴様を含めて交渉に臨みたいのだが…」

 

『マジかー…それって急ぎ?』

 

「いや、これはアベリオン丘陵の命運を決める重要な交渉になるからな…あちらも暴走するようなことは無いだろうし、見張りの様子でもすぐに攻め込んで来る感じではないようだ。だがまあ…10日以内には交渉に応じる回答はすべきだろうな」

 

『おっけー。てかオレも参加必要?お前に預けてるゴーレムで戦力的には大丈夫なんじゃないの?』

 

「いや…なんというか。貴様がロケシュを倒したことが伝わっているみたいで、貴様も十傑の一人みたいに言われてるぞ。あちら陣営の参謀は十傑の一人のヘクトワイゼスという者なのだが、その者が、交渉には俺の他、【氷炎雷】、【灰王】、【螺旋槍】、【仮面鬼】を連れてこいと言っている。【仮面鬼】という者は知らんと言ったら、【七色鱗】を素手で裂いて殺した新たな十傑だと言っていたぞ」

 

『うわ…マジかー……じゃあついていくけどお前が司会進行しろよ』

 

「元よりそのつもりだ」

 

『おっけ。じゃあさ、こっちの要件だけど、お前パベルっていう弓兵の人間知ってる?』

 

「名前は知らんが…もしかして“凶眼の射手”の事だろうか?」

 

『分かんない…ちょっと聞いてみる』

 

「は?貴様今何して…」

 

 

ブチッ

 

 

 

「パベルさん、パベルさんって亜人たちに“凶眼の射手”って呼ばれてる?」

 

「な…え…?ああ、えっと…呼ばれているかもしれんが…それがどうしたんだ?」

 

「あ、ちょっと待ってて」

 

「??」

 

 

 

『バザー』

 

「…おい貴様、いきなり伝言を切るな。あと今何してる?」

 

『その“凶眼の射手”って呼ばれてるっぽいパベルさんと話してるんだけど、バザー勘違いで一回戦ったことあるんだろ?パベルさんもバザーとじっくり話してみて、お前が良い奴だって理解できれば友達になれるかもって言ってるから、今こっち来て話してみない?』

 

「…いや貴様マジで言ってるのか?突然すぎるぞ?」

 

『いずれ聖王国と交渉するんだったら今でも後でも変わんなくね?』

 

「…それは貴様の言う通りだが…」

 

『じゃあ今行くね!』

 

「おい!!」

 

 

ブチッ

 

 

 

「パベルさん、今バザー呼んでくるからさ、一回じっくりと話してみてよ。あいつ良い奴だから」

 

「は…え…?バザーを?どういうことだ?」

 

「大丈夫、ちゃんと攻撃とかしないように言っとくから、パベルさんも絶対攻撃とかしないでよ。あ、ネイアも紹介するか。ネイアー!!」

 

 

「どうしたの?」

 

「前言ってた、友達のバザー呼んでくるからみんなで話しようぜ。あいつ良い奴だから攻撃とかすんなよ。あ、フェイク・ぺロロン、一旦訓練休憩。そんで治安維持モードで待機」

 

「畏まりましタ」

 

 

「じゃあちょっと待ってて!」

 

 

そう言ってショータローは消えた。

パベルは余りの展開に呆然としながらも、そーっとネイアをかばう位置に移動した。

 

 

 

「はろー!!」

 

「ひい!何じゃ?!」

 

「あ、ナスレネ。めんごめんご。ちょっとバザー借りるけどいい?」

 

「貴様…突然すぎるぞ!あと他の者が居るかもしれないとか考えて転移をして来い!」

 

「悪い悪い。じゃあさ、オレの家まで行くぞ。パベルと、あと友達のネイアもいるけど、絶対に戦闘したり脅したりすんじゃねーぞ」

 

「はぁ…貴様は言い出したら聞かんからな…ナスレネ、こいつは例の【仮面鬼】だ。こいつは転移が使えるのだが、これから俺はこいつと共に人間の協力者と協議をしてくる。今日中に戻ると思うが、その間に万が一のことがあれば指揮を任せる」

 

「わ…分かった」

 

「おっしバザー、上位転移(グレーター・テレポーテーション)で飛ぶから手を握ってくれ」

 

「うむ」

 

 

バザーと【仮面鬼】は瞬時に姿を消した。

 

 

「何だったのじゃ……天使様…?いや…そんはずはないか…」

 

 




パベルさんが、ちゃんと話し合えば種族を越えて友達になれるかも的なことに賛成してくれたのがちょっと嬉しかったので、★はついつい本来のハチャメチャが出てしまいました。
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