オーバーロード <物語の分岐が確認されました> 作:ヒツジ2号
バザーとバラハ家が全員巻き込まれるという最悪の状態となってしまいました。
闇の瘴気が広がる。
ショータローが気づいたとき、その闇は既にバザーとバラハ家の3人を捉えていた。
竜王に最も近い位置に居たバザーとネイアの母は、最初にその異変に気付いた。
力が奪われるわけでもなく、痛みを感じることも無い。
だが、体が、自身の存在が、薄れていく。
ショータローもすぐにその異変に気付く。
自身の首元のWIが輝き、一方で、仲間たちの姿が薄れていく。
「バザー!!」
「これは…そうか…ショータローよ。貴様のおかげで楽しかったぞ…アベリオンのことはヴァージュに任せると、伝えてくれ」
バザーの身体が消失し、装備がその場に落ちる。
「ショータローくん、後は頼みました」
「ネイアのかーちゃん…」
ネイアの母も肉体が消失した
遅れて、やや離れていた場所に居たパベルとネイアに走り寄る。
「ショータロー君…この国を…頼んだぞ」
そう言って、パベルが消失する。
「ネイア…!」
ネイアは薄れていく自分の手を見て一瞬驚いた顔をしたが、すぐにショータローの方を見て、相変わらずの鋭い目つきで微笑んだ。
「ショータローくん、ありがとう」
ネイアの身体も消失した。
「ネイア……みんな…」
バルコニーからその様子を見ていたカルカとケラルトは、言いようのない悪寒が全身を走るのを感じた。
レメディオスが命懸けで作ったわずかな隙をつき、全ての者が連携し、竜王を追い詰めていた。
だが、その竜王が咆哮し、それに続けて黒く赤紫の闇のオーラを放った。
そのオーラは“不吉”そのもので、ショータロー達5名を包み、そしてそのままオーラは広がり、広場を中心に200メートルほどに広がった。
その過程で、ショータロー達の戦いを遠巻きに見守っていた亜人の戦士を中心とした者たちもオーラの領域に取り込まれた。
そしてカルカたちの予想通り、そのオーラは最悪の効果を持っていた。
闇が退いた後、その場に残ったのは、ショータローの命令で突撃した神像の残骸と取り込まれた者の衣服や装備。
赤い衣の女性だけはショータローを庇う様に立ち塞がり、ショータローはその後ろで蹲ったまま動かない。
ショータローの手には、ネイアが身に着けていた装備。
カルカもケラルトも理解した。
竜王は何らかの
そして、それは遺体も残らぬ暴威であったと。
これ程の力…勝てない。
ショータロー殿は消失は免れたようだが、蹲ったまま震えているのが見え、もはや彼も戦う事は叶わぬかもしれない。
残された選択肢は、一つしかない。
「…ケラルト、行きましょう」
「カルカさ…ま……はい。承知いたしました」
ケラルトは、信じられない力で一瞬で奪われた命や、あのショータローがあれほどの状況となるという事を見せつけられ、もはや穏やかではいられなくなっていた。
だがそれ以上に、隣から聞こえたカルカの声が驚くほど凛としていたことで一緒戸惑いかけたが、その表情を見て彼女の―親友の心が理解できたのだ。
「私たちが、成すべき事を成すべき時が来ました。心の準備はよろしいですか」
「はい、カルカ様」
カルカは覚悟を決めたのだ。
自身の生命を賭して、全力の大魔法、
正直、その魔法があの竜王にどれだけ効果があるか分からない。
だが、まだ生きているショータローを少しでも援護するために、聖王家は全力を持って戦う事を決めたのだ。
「この街に残っている聖騎士団へ急ぎ伝える事。このバルコニーからで構わないので竜王とショータロー殿の戦いを見守る者と、ショータロー殿の援護をする者に分かれ、行動を開始しなさい、と。あなたもそれを伝え次第、私たちと共に最奥の儀式の間へ来て
「はっ!!」
ケラルトは部下の神官団員へ、かねてより伝達しておいた作戦が現実となったことを伝える。
都市を覆う半透明の幕が突破できるか分からないが、
街中に潜んでいる亜人たちがその先導役だ。
優柔不断、八方美人と言われてきたカルカ・ベサーレスは、この時初めて、たった一つの目的に向けてただ一点の曇りもなく、己の信念を貫き通す決意が出来たのだ。
「…お兄様、後はよろしくお願いいたします」
カルカは、現在カリンシャで指揮に当たっている兄であれば、次代の聖王として問題なく国を導いてくれると確信した。
そしてそのために、一人でも多くの民を救うのだと、心に誓った。
…消えた。
全てが消えた。
装備を残し、肉体が消滅した。
…知っている。
オレはこのエフェクトを知っている。
ユグドラシルのwikiで見た映像。
とある引退するプレイヤーが重要NPCにあるWIを叩き込んだ。
そのWIは“
消えていったネイア達の様子は、あの様子と酷似している。
油断していた?
何処かで侮っていた?
まさか
…オレのせいだ。
ショータローはその場に膝をついた。
今目の前で消えていったネイアの服や装備をその手に抱いた。
頬を、熱いものが伝った。
どうすればよかった?
ネイアとバザーと、その家族を連れて、どこか遠くへ逃げておくべきだった?
ちがう、ネイアに、バザーに嫌われる事なんて気にせずに、異形の本性となって速やかに全力戦闘に入ればよかった?
いや、それも違うだろ。
ネイアもバザーも、『オレが人でなくても構わない』と言ってくれてたじゃないか…
オレが異形となっても、きっとあの二人はオレを嫌ったりはしなかった。
オレは怖かったんだ。
この世界で、やっとできた対等な友達に、嫌われるかもしれないと勝手に考えて、その結果がこれだ…
オレは…忘れてしまったのか…
家族の言う事をすべて無視して、進みたい道に進むと決めた時に、恐れないと決めたはずだったじゃないか…
ご先祖様が言っていたように、怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むと決めたじゃないか…
嫌われても、自分の価値観で進むと決めたじゃないか…
そうだ…そうだった。
ショータローは、首に巻いたチョーカーの太陽にシンボルを握りしめた。
…忘れていた。自分の姿をありのままに直視することこそが強さだった。
まだ、オレは終わっていない。
でたらめをしてやる。
破壊して、創造してやる。
見ていてくれ…ネイア、バザー!!
「ゴミムシ共が、やっと消えたか…フン、やはりそこの女とガキはゴーレムか何かだったか。貴様らを壊して、やっと五月蠅い子蝿も消えるというものだ」
なぜならば、その力は、自身が持つ最大の切り札であり、触れた者を消滅する力であると知っているから。
蘇生の効果を持つ
滅んだ仲間はこの魔法をさらに研究して、非常に遠距離まで打ち出せる<滅魂の吐息>という魔法を完成させていたが、この魔法でも効果は充分だ。
ともかくも、鬱陶しい2体のゴーレムを破壊しておこうと、
「最早、貴様らを壊せば終わりよ。大人しく消えるがいい。貴様らのせいで失った魂はこの街の者全ての命で賄うとしようではないか」
そう言って尾を振り下ろそうとしたとき、女のゴーレムの後ろから、ひどく穏やかな声が聞こえた。
「ああルベド、済まなかったな、無理させて。しばらくは防御モードだ。攻撃40%低下、防御40%上昇」
そして、今まで座り込んでいたその子供は、ゆっくりと立ち上がり、静かにその指に嵌めた指輪を外した。
ケラルトの命に従い王城のバルコニーからその様子を見ていた聖騎士団の者、また、先ほどの闇のオーラの領域の外に居たことで助かった者。
それらの者達は、確かに見た。
暴威の限りを尽くし、おそらくは死を撒き散らしたその黒き竜の前で、赤い衣の美女に守られながら座り込んでいた少年は、静かに立ち上がり、そしてその姿を天使に変えた。
「なっ…天使…だと?貴様、子供型のゴーレムか何かではなかったのか?いや…召喚したのか?天使ごときを召喚したところで、貴様らのような玩具など取るに足らん!!」
天使は浮き上がり、その黒き竜を見遣る。
そして、威厳に満ちた良く通る声で言葉を紡いだ。
「私こそ、諸天の一切を動かす
白い光が黒竜を中心に集まる。
次の瞬間、赤い衣の女が、天使を抱き抱え、上空へ舞い上がる。
それに続く核熱のごとき爆発。
その光はどこか神聖で、遠くから見ていた人間や亜人の心に、不思議な、感動のような感情を湧き起こした。
アイテムでカルマ値を常に上限(+500)で固定させている、るし★ふぁーが叩き出す
さらにこのクラスの特殊スキルを獲得するには、ゴーレムクリエイトに関わるスキルや魔法を取っていく必要があり、これを極めようとすると、せっかくの
るし★ふぁーはそもそもこの
そこで注目したのが、カルマ値が高いほど高火力が出せる
「おお、ルベド、サンキュー。そうか、この世界だと自分の魔法でダメージ受けんのか…防御設定にしておいて良かったわー」
「ハイ、マスター」
彼もまた、ここまで広範囲魔法を放っていなかったためにフレンドリーファイア解禁に気づいていなかったが、彼の場合はどこかの山羊と違ってルベドという強力なサポーターが居たために難を逃れることが出来た。
だが、その光景は、現地の者から見れば宗教画の1ページにしか見えない。
すでに
死を撒き散らした悪しき黒竜の眼前に、真の最高位天使が降臨し、神の怒りたる神聖な聖光の核撃を放ち、自身は赤き美女に抱かれながら天に昇る。
実際その場では、どこか気の抜けたるし★ふぁー達の会話が行われていたが、その声は当然見守る聖騎士には届かない。
そして、最高位天使の聖なる戦いはまだ終わらない。
「ルベド、やっとお前を解き放つことが出来るな。モード【
「ああ……パパ、お久しぶりです」
「うわ、すっげ!80%開放になるとこんなに流暢に喋るのか…えっと、ルベド、それじゃまず攻撃50%、防御50%に割り振った状態で神聖系を乗せた剣撃を、あのクソドラゴンにお見舞いして。そんで一旦戻ってきて上空で待機。オレがゴーレムで連続攻撃を始めたら、その攻撃の合間を縫ってザクザク攻撃して」
「はい、わかりました。お任せ下さい」
地上から、その昇天した天使を見上げていた亜人たちは、確かにその瞬間を見た。
天使を抱きかかえていた赤い衣の女の背から、やはり赤く染まった美しい4枚の羽が生えた。
羽が生えたぶん、女の身体は一回り小さくなった。
そして輝く赤きオーラを纏い、急降下していく。
突然の爆発を受けた
この力、あの赤い女と同等かもしれない。
爆発に伴う光の奔流が薄れてきたところで気配がする上空を見上げると、そこには2体の天使。
この世界では、天使というのは基本的には召喚モンスターであるため、
次の瞬間、赤い4枚の羽を生やした天使の少女が、自身をめがけて一直線に降下してくる。
その余りの速さに、体をよじって避ける事しかできず、剣撃は右の腕に直撃する。
「グッ…グオオオオ!!!」
先ほどの赤い女程度のダメージを想像していたが、それとは桁違い。
明らかに剣は深く刺さり、血の流れない黒い肉が深く裂ける。
身体をよじったからまだ良かったものの、腹や首に受けていたら、かなりの魂を失っていたかもしれない。
「あーこれ使うの久しぶりだなー……クラススキル “
バルコニーの聖騎士たちが空を見渡すと、都市全体の空を覆う様に巨大な九重の円盤が出現した。
そしてその円盤が回り出すと、新たな奇跡が起きた。
先ほど黒竜に体当たりして消滅していった神像や天使像が、時を巻き戻すようにその形を再構成してく。その中にはひと際強かった山羊頭の悪魔や漆黒のローブを纏った
それらが、再び、一斉に黒竜に向かって攻撃を仕掛けていく。
「クソザコ共がァァ!!何度来ようと同じことだ!!」
召喚されたと思われる天使の思わぬ強力な攻撃に、さらに怒りを覚え、攻撃をしてくるゴーレムを薙ぎ払う。
薙ぎ払われたゴーレムは砕け散るが、すぐにまた再構成をして襲い掛かる。
邪悪な竜に天誅を下す不死の天使軍団。
それを見ていた者達には、その様に認識された。
「クソッ…何てしつこいゴミ共だ…グアッ!!」
20-30程度の弱いゴーレムの特攻の隙間に、不意に60レベル台の一撃が入り、その攻撃で怯んだ隙に今度は明らかに100レベルかつ弱点である神聖魔法を乗せた剣撃が入る。
剣撃は明らかにあの赤い天使。
しかし無数のゴーレムの隙間を縫ってくるため捉えることが出来ない。
クラススキル “
ゴーレムクラフトに特化したこのスキルは、発動中はMPを消費し続けるが、その間は特定エリア内の自身が作成したゴーレムを無限に再生して、設定した行動を取らせ続けることが出来る。
MPの消費量や、対象となるゴーレムのレベル上限、そして再生までのクールタイムは、ゴーレムクラフトに関連するスキルや魔法の取得数でより良くなっていく。
なので、ユグドラシル時代は、大量に何かをクラフトをする場合などの作業を短時間で行うことが出来る便利スキルのような認識だった。
しかし、
結果、今のるし★ふぁーが行使するこのスキルは、100レベルを相手にしても充分戦えるものになっていた。
身体に増えていく深い切り傷。
内包する魂は減り続けている。
恐らく残りは150万程度。
だが一方であの2匹の天使を葬れば形勢は逆転する。
なぜならばタイミング的に考えても、こいつらは正真正銘最後の切り札だろう。
他に、自身にダメージを与えられる存在など居なかった。
なんとかしてこの2匹を殺してしまえば、あとはこの都市の人間や亜人の魂を吸収し、体を休めればいい。
少々無理をすることになるが、70%程度の状態で“吸魂”を放つ。
となれば急がなければならない。
残る魂のうち100万、勿体ないが、あの2匹を殺しきるには、もう一度これを使うしかない。
「オオオオオオオオ!!!」
小五月蠅いゴミゴーレム共がついてくるがお構いなしだ。
好都合なことに、あの赤い天使は素早く移動して、上空の天使を守るために張り付いた。
「この俺をここまで虚仮にしてくれたこと、後悔するが良い!!<滅魂の瘴気>!!!」
ホバンスの民は上空で放たれた2度目の闇のオーラに絶望した。
そのオーラは、地表にはほとんど届かなかったが、明らかにあの2天使はその闇に取り込まれたからだ。
天使が消えた後、始まるのは間違いなく蹂躙。
全ての者は絶望と、僅かな希望を祈り、手を合わせて空を見上げた。
闇のオーラが薄れていく。
いや、そのオーラは切り裂かれた。
切り裂いたのは、赤き翼の天使の少女。
その背後に浮かぶ最高位天使は両手を上げ、再びゴーレムたちが黒竜に群がる。
「…バカな!!!貴様ら…やはりゴーレムなのか?!」
「聞いていなかったようだな…もう一度教えてやろう。私こそ、人と亜人と共に歩む異形、
「世界に…一つ…だと」
そうだ、七彩が言っていた…“世界に一つ”…“ワールドアイテム”を持つごくわずかなプレイヤーには、
この者は…プレイヤー…それもワールドアイテムを持つプレイヤー…!!
自分が誤った選択をしてしまったことを。
残る魂は50万程。
赤い方の天使の攻撃で、その残りもじわじわと減らされている。
そもそも
このままでは…
「オオオオオオオオオオオ!!!!!」
黒き竜は自身が作り出した透明のヴェールたる障壁を自ら破壊して、南を向けて飛び去った。
「ルベド、あのクソドラゴンを追いかけろ。絶対に許すな。必ず息の根を止めろ。オレもやるべきことが終わったら追いかけるから座標を送りながら奴を追え。ステータスはオートモードに変更」
「分かりました。パパもご武運を」
赤き光が線となって、黒い竜が消えた南の空に飛んでいく。
それを見守っていた人や亜人は、今まで起こったことが夢か何かだったかのように、しばらく呆気にとられていた。
しかし、やがてそれが現実だと理解し始めると、皆一様に空の天使に手を合わせた。
危機は去ったのだ。
だが、歓声を上げる気持にはなれない。
多くの者が死んだ。
広場を中心に多くの道や家々が壊された。
街の外ではアンデッドが多く出没し、毎日幾人もの人間が犠牲になっている。
だから彼らにできることは、ただ手を合わせる事だった。
天使はしばらくの間、彼方の空を見つめていた。
だが長い時間が過ぎた時、天使は再び声を上げた。
「オレはもう決めたんだ。オレ自身が決意し、貫くことを。モモンガさん、たっちさん、みんな。たぶん、みんな怒るだろうけど、オレはこれを使う。ここでできた友達は、オレにとってどうしても譲れないものなんだ」
そう言うと、天使は一度腕の中のネイアの装備を横抱きに変え、首元の太陽のモチーフに触れた。
「
それはアインズ・ウール・ゴウンが所有する二十の1つ。
使いきりであるが、ゲームバランスを崩しかねない強力な効果を内包するもの。
瞬間、世界は夜になった。
誰もがその異常事態に驚きの表情を浮かべた。
次に天使の胸元付近に白い光が灯る。
光は急激に輝きを増し、世界は一瞬で神聖な白に覆われた。
天空に四芒星のシンボルが現れる。
そして空から鐘の音が鳴り響く。
余りの出来事に人々はただ茫然とその様子を見守る。
鐘の音が一鳴りするごとに、地上に光が灯る。
光は人の姿を形作る。
それは皆、この戦いで命を失った者。
竜王の激しい攻撃に巻き込まれた者の遺体は、傷が消え、千切れた個所は繋がり、再び目を覚ます。
黒き瘴気に巻き込まれて消えたはずの亜人が、人が、その姿を再び現し何事もなかったように目を覚ます。
上半身から引き裂かれたレメディオスは、時間を巻き戻すように再び体が繋がり、その正義の色を讃えた目を開く。
そして装備を残して消えた4名の勇者たちも、その存在を取り戻す。
バラハ夫妻は光に包まれながら、再び体が再構築されていき、目を覚ました。
お互い目線を合わせ、辺りをキョロキョロと見遣ると、やがて空に浮かぶ天使を見つける。
そして、お互い、示し合わせたように手を合わせ、目を瞑り祈った。
バザーはその三日月形の瞳孔を再び開く。
まさに今、消えたはずの身体が再生されていく。
驚きと共に立ち上がる。
そして空を見遣ると、神聖な白き光を放つ光源に輝く天使を見つけ、呟いた。
「そうか……俺は神と友人になっていたのだな」
ネイアは満ち足りていた。
確かに寂しさや死への恐怖はある。
だが、優しく誇れる家族に育てられ、誰よりも大切な友達が出来、そして自身が見つけた正義のために生きることが出来た。
そして最後は、大切な友達に“ありがとう”と言うことが出来た。
自分の身体が、心が、魂が、消えて行く。
意識は闇に落ちていく。
…筈だった。
恐ろしく神聖で眩しい光が体を包み、時間が巻き戻されるように感覚が戻っていく。
もしかしたら私は天国というところへ来たのかもしれない。
そうして目を開けると、体は神聖な光を纏う天使に抱かれていた。
最初は“ああ、やっぱり天国だ”という思いがあった。
でもそれ以上に、自分を抱きかかえこちらを見つめる天使は、自分が良く知っている友達にしか見えなかった。
「…ショータローくん?」
「オレだって…分かるのか?」
「うん…なんでだろ?」
「……人の姿も、この姿も、どちらもオレの本当の姿だ。ネイアは…」
「どっちのショータローくんも、私の友達のショータローくんだよ」
「…そうか」
それは二十の名に恥じない究極のアイテム。
戦闘中あるいは戦闘後に
これは蘇生や回復ではなく、文字通り、味方陣営だけ全くダメージを受けていない状態に戻るという事。
つまり、例えばWIで解けない魅了を施されたNPCも、
一度きりの使いきりということと、そこまで追いつめられることが無かったという事から、AOGでは最後まで使用されることは無かった。
輝きを亡くした太陽は、どこからともなく現れた輝く狼の群れに飲み込まれ、そのエフェクトと共に消滅した。
少女を抱きかかえ飛翔する熾天使。
地上では、人も亜人も皆祈りをささげた。
ある人間は膝をついて感謝の祈りを捧げ、ある
興奮している
城のバルコニーでは、多くの者が跪き、涙を浮かべながら祈りを捧げた。
その中心には同じく膝をついて祈りを捧げる、神官団団長と聖王女の姿。
そしてもう一人。
純銀の鎧に身を包み、飛翔する天使を見つめる者。
その者は静かに呟く。
「…やっと、見つけました」
4章は恐らくあと1話で終わりとなります。