オーバーロード <物語の分岐が確認されました>   作:ヒツジ2号

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4章長くなり過ぎなので、はみ出した部分は閑話にしました。


閑話1 聖王国復興計画

 

 

ホバンスに“神”が降臨してから、1か月程の時間が経っていた。

 

 

 

1か月前、“神” と呼ばれた存在が転移(テレポーテーション)で去った後、その場には微妙な空気が流れた。

 

法国から来たという純銀の聖騎士は頭を抱えて、なんとか“神”と連絡を取れる方法は無いかとその場にいる者に問いかけたが、連絡手段を持つバザーとネイアがゴーレムやアイテムを用いて何度呼び掛けても返事がなく、その他の者は伝言(メッセージ)転移(テレポーテーション)等の手段を持ち得ていなかった。

 

その後、法国から聖王国に派遣されている2名の者も駆け付けたが、ショータローと面識のある者は転移(テレポーテーション)等を使用できず、使用できるもう一方の者はショータローと面識がなかったので、結局その場で連絡を取ることは出来なかった。

 

最大限の謝罪をする部下2名の様子を見て、最初は酷く落胆していた純銀の聖騎士もやがて「…いえ、あなた達に責任があるわけではありません」と述べた。

 

そして、自身は本国でしなければならないことがあるとのことから、部下の1名であるミューギに、“神”と連絡が取れた場合はすぐに知らせる事と、聖王国の復興を手助けすることを言いつけ、もう1人の部下と共に転移していった。

 

 

 

 

そして現在、ホバンスの王城では聖王国の復興を含め、今後のするべき事についての会議が行われている。

 

この場に居るのは、聖王女カルカ・ベサーレス、神官団団長ケラルト・カストディオ、聖騎士団団長レメディオス・カストディオ、弓兵隊兵隊長パベル・バラハ、聖騎士団員ロサンタ・バラハ(ネイア母)、弓兵隊員ネイア・バラハ、アベリオン統一国王バザー、そしてホバンス大聖殿の司祭ミューギである。

 

ここにその他の要人、例えばカスポンドなどが含まれないのには訳がある。

それは、スレイン法国の最重要秘匿事項である純銀卿をすでに目撃し、“神”たるショータローとの関係をある程度知ってしまった者達であり、その他、純銀卿を目撃している神官団員たちには箝口令が敷かれている。

 

 

「皆さま、お集まりいただきありがとうございます。また、カルカ聖王女陛下、本日のためにこちらのお部屋をお貸しいただき感謝いたします。さて、純銀卿および本国の会議にて今後の我々の動きについて指示がありましたので、皆様へお伝えいたします」

 

ミューギが会議の参加者を見渡しながら説明をはじめる。

 

 

「あの日、純銀卿が仰られたように、我が国は可能な限り貴国の復興に力をお貸しいたします。ですがその活動は余り目立つ形では行わない事といたします。理由といたしましては、“神”の降臨、並びに我が国の私を含む特殊部隊の存在は我が国の内部においても秘匿事項であること、また竜王による攻撃、並びに聖王国南部の被害は甚大であり、このことが大々的に他国に知られれば、犯罪者組織や領土的野心を持った国に狙われる可能性があります」

 

「一つ宜しいでしょうか、ミューギ殿」

 

「はい、勿論でございます。ケラルト神官団団長」

 

「ありがとうございます。仰る犯罪者組織ですが、残念ながらこの度の竜王の侵略によって生き残った北部聖王国の国々では、リ・エスティーゼ王国の犯罪者組織である“八本指”と思われる者達が麻薬を流通させてしまっています。既に見つけた麻薬畑は焼き払いましたが避難の際に無人となった小都市を中心に、犯罪者と思しき者達が住み着き、スラムのようなものを形成しています。犯罪者組織には情報は知られてしまっているのではないでしょうか」

 

「ええ、その通りです。ですが犯罪者集団のネットワークを通じた情報共有はあくまで裏社会で行われ、正式な形では表社会へは伝達されません。“八本指”については例外で、かの組織はリ・エスティーゼ王国の表社会にも太いつながりを持ってしまっているので、情報自体は伝達されてしまうかもしれませんが、表社会、例えばリ・エスティーゼ王国の貴族や王族がその旨を聖王国へ問うてきた場合は逆に問い直せばよいのです。“そのような事実は無いが、その情報はどこから得た者か?”と。これは聖王女であるカルカ様から問う事で、国同士の問題として牽制することが出来るでしょう」

 

「ですが、すでに聖王国内に居ると思われる犯罪者は?彼らは我が国内で今後も何らかの問題を起こすかもしれませんし、またリ・エスティーゼ王国の“八本指”本部とやり取りし、我が国内へ麻薬の供給を始めるかもしれない」

 

「はい、仰る通りですね。ですので我が国が特に力をお貸しする点は以下の2つ。1つ目は聖王国内へ流入する人、物資の正確な記録と検疫。2つ目は現在の聖王国民の戸籍の作製」

 

「戸籍…ですか?」

 

「はい、まず1点目から説明いたします。聖王国内に存在する麻薬畑はカルカ聖王女陛下の号令の下、“神”ショータロー様がバザー統一王陛下へ下賜されたゴーレムを用いて順調に焼却されるとともに、麻薬の使用や流通に関与した者に対する厳罰が法整備されたため、国民の多くは麻薬の使用や流通に関与することを避ける筈。特に南部は現在人が住んでいない状態のため、ほとんどすべての畑は焼き払われたとみて間違いないでしょう。また、ご存じの通り既に中毒となっている者を見つけた場合は、神官団並びに聖殿によって保護され、場合によってはスレイン法国に運ばれる手筈となっております」

 

(レメディオスを除く)皆が納得の表情を浮かべたところでミューギは続ける。

 

 

「竜の襲撃に備えて、一時的に国民は北部4都市に集中している状態。この状態の間に、国民すべての戸籍を作ることで、元々この国の国民ではない者、つまりは他国からの流入者を割り出すことが出来ます。戸籍とはその者の生まれの記録というだけでなく、今後は家を借りる際、引っ越す際、あるいは真っ当な仕事をする際もその戸籍を確認し、そこに記載をしていきます。そうなれば悪意を持って侵入している者、つまりは犯罪者集団に属する者は追及を嫌い、戸籍を作成される前に本拠地に帰るか、まだ戸籍調査が行われていない小都市へ逃げるでしょう。結果、4都市の戸籍が完成する頃には、この4都市からは殆どの犯罪者集団の者を締め出すことが出来るようになります」

 

「なるほど…ですがそこまで詳細な戸籍の作製は聖王国では今まで行われていませんでした。私の配下の神官団や王城や各都市の事務官を総動員してもかなり時間がかかるかと…」

 

「ええ、ですからその部分の人員は我がスレイン法国から出します。幸い我が国の戸籍制度はおよそ150年前から非常に細かく整備されていて、関連する事務官はある程度個人の情報、例えば名前などを調査する魔法を使用できます。実を言うと私は本国でこの制度を作成した者の一人です。私の号令の下、4都市へ必要な事務官を送り同時にこの戸籍作成を開始します。そして作成開始から1か月程は都市への許可のない出入りは禁止として、犯罪者集団による工作を防ぎます。この間、都市の入り口および聖王国とリ・エスティーゼ王国の国境は検問を強化し、人員や物資の流入を監視。また、都市内では犯罪者集団による活動を抑え込むためにバザー陛下が指揮するゴーレムによる監視を付けます。バザー陛下よろしいですか?」

 

「うむ…俺は構わん。城壁のおかげで我が国へのアンデッド流入は僅かであるし、ローブル聖王国以外の人間国家はおそらく安易に我が国へ足を踏み入れぬだろうから、その間の我が国の守りを強化する必要はない。だが黙って聞いていたが、この作戦、確かに犯罪者や麻薬を隔離するという意味では有効だが、かなり強硬な策であると感じた。我らのような亜人は強き王に服従する性質の者が多いから問題は無いだろうが、貴様たち人間はそうではないと聞いている。この作戦は貴国国民に何らかの遺恨となり、今後の国家運営の足かせになるという懸念は無いのだろうか」

 

 

ケラルトやネイアの母も、真にバザーと同じ懸念を持っていた。

何よりこのような強き政策—これは短期間に複数の法案を作成して、国民の生活を一時的に制限することになる―を、優しいカルカが実行できるだろうか、と考えた。

 

 

だが、そのバザーの問いに答えたのは、カルカ自身だった。

 

 

「バザー陛下、皆さん。皆さまのご懸念は承知しております。ですがこの計画の大筋は、わたくしからミューギ殿に提案させていただきました」

 

その言葉に、ケラルト、ネイアの母だけでなく、パベルも目を見開き驚く。

レメディオスだけはすでに最初の方で頭から煙が出ていて、理解は不可能と思考を放棄したため、今は腕を組んでウンウンと頷く機械になっている。

 

カルカは続ける。

 

 

「戸籍のこと、ミューギ殿からご提案いただき、そのうえで現在の、我が国の国民が4都市に集中している状態の今こそ、この国に巣食う悪意を一掃する絶好の機会と捉えました。先ほどのミューギ殿からご説明頂いた4都市の戸籍作成の後、今度は北部の小都市の戸籍作成開始を始めます。既に4都市は戸籍が出来、人の流入も厳しく監視できる状況では、犯罪者はこの4都市に戻ることは難しいでしょう。彼らがとる選択肢は、本国へ帰るか、都市から離れて何処か例えば森などに潜伏するか、あるいは犯罪を諦め良民となるかです。南部へ逃げるのは難しいでしょう。南部は現在人が住んでおらず、ショータロー様が清めたデボネを除きアンデッドが徘徊していますから。ですので南部のアンデッドの本格的な殲滅は、小都市を含めた北部の戸籍が完成してからとなります。皆さまの懸念通り、民の移動や自由を一時的に制限することで、不満は出るでしょうし、中には聖王家に対する不信感を持つものもいるでしょう…ですが、“誰も泣かない国”を作るためにはこれは必要なことです。それに私は、私の民を信じております。いずれ国がふたたび安定したとき、私たちの真意を誠意をもって説明すれば必ず理解してくれると信じているのです。そのために一時的に批判を浴びることなどを、どうして恐れる必要がありましょうか」

 

 

カルカの強い意志を宿した目を見て、その場の3人は理解した。

自身の命も賭して大きな国難を経験したことで、カルカはその優しく民を想う気持ちはそのままに、批判を恐れず信念を通す強さも身に着けたのだと。

 

 

「それとミューギ殿、リ・エスティーゼ王国との国境付近の警備と検問について、我が国への流入は厳しく制限するのは賛成ですが、流出についてはそこまで厳しくしなくても良いと思います。犯罪者集団がお帰りいただくのであれば、それは歓迎すべきことでしょうから」

 

 

ケラルトたちは、その言葉でカルカが思ったよりも強かさを身に着け、今後は場合によっては非情な判断も下せるかもしれないと理解した。

極論を言うのであれば、その言葉はつまり『自国から犯罪者が一掃されるのであれば、それが他国へ流れても知ったことではない』という気持ちが見え隠れしていたから。

 

 

「…えー、ともかく申し上げました作戦はカルカ聖王女陛下のご賛成を頂いているものです。次に、これらの作戦が終わったのちの聖王国南部の復興計画のご相談です。これについてはアベリオン統一国への更なる協力を要請する形となるので、カルカ聖王女陛下からご説明頂けますか」

 

 

「承知いたしました」

 

 

『アベリオン統一国への協力要請』という事で、バザーも顔を引き締めてカルカの説明を聞く。

 

 

「南部聖王国は、デボネを除きアンデッドが日々新たに発生している状態ですので、すぐに民が移住するのは難しいでしょう。ですのでショータロー様から下賜されている3体のゴーレムを中心としたアンデッドの殲滅が最優先となります。そこで、我が国としてはゴーレムの指揮権を持つネイア、パベル、ロサンタ、レメディオスのいずれかを中心としたアンデッド殲滅部隊を編成し、バザー陛下にもお力を貸していただきたいと考えています」

 

 

ここまで、真剣ながらも『大人たちのお話、難しいなー』とどこか他人事のように聞いていたネイアは、突然自分の名前を聖王女に呼ばれたことでビクッと肩を跳ねさせた。

 

その様子をロサンタ、パベルは冷や冷やしながら見ていて、バザーは小さく笑い、ケラルトは『まあそうでしょうね』と冷静に考え、レメディオスは何も考えていない。

 

 

「あっ…あのっ…聖王女陛下、あの、私は弓兵隊員のネイア・バラハでございます!その、ご指名大変ありがたく存じます!私にどこまでできるか分かりませんが、精いっぱい頑張らせていただきます!」

 

 

ロサンタやケラルトは『あー…やれやれ』と感じ、バザーは一層笑顔を深め、レメディオスはなぜかウンウンと大きく頷く。

 

そこでパベルが発言の許可を求めてから話し始めた。

 

「聖王女陛下。これは決して親心からというものではなく、弓兵部隊の兵士長としての意見なのですが、ネイアは確かにアンデッドに非常に有効な聖属性攻撃に特化した弓の技を持ちますが、これまでは街の守護を務めてきたために実践的な経験が不足しています。南部にて部隊を率いる前に、北部の街の外に現れているアンデッドの討伐などである程度経験を得てから向かうというのはいかがでしょうか。もちろん南部でのゴーレムを使った作戦については私も参加いたしますので」

 

「カルカ様、パベルの意見、私も賛成です!以前ネイアの聖弓撃を見ました。あれは善に満ちた素晴らしい攻撃ですが、ネイアのフットワークはまだまだ改善の余地があります。いっそ我が隊と共に北部のアンデッドどもを撃退することで経験を積むのはどうでしょうか!」

 

この日のレメディオスの最初の発言は彼女らしくとても脳筋に満ちたものであった。

つまり、自分もアンデッドを倒して回りたいし、ネイアの弓は聖なる力を内包していて好感が持てるので、何なら一緒に戦いたいというものだった。

 

困ったことにネイアは、レメディオスの脳筋過ぎる点を正確に理解しておらず、先の戦いでは、自身を犠牲にして戦った聖なる騎士のお手本としか見ていないので、むしろ彼女の提案を光栄に感じている。

 

この後、焦ったパベルとロサンタによって、レメディオスの困った点の影響を受け過ぎないようにしようと、なんとかその部隊には自分たちも参加させてもらうという事で丸く収まった。

 

話があらかた整理がついたところで、そもそもネイアの強さが、南部でのアンデッド退治をしても問題ないかという点を確認する必要があるとミューギが提案した。

ネイアの活躍は聞いていたが、ミューギからすればネイアは、たった3年前までは殆ど戦うことのなかった子供という認識があるのである。

 

ネイアの詳細な強さや、今後の成長可能性を探るという意味でもこれはとても有用なので、パベルも了承。

ミューギは自身の魔法によってネイアの職業レベル構成を確認する運びとなった。

 

 

「では、ネイアさん。これからあなたへ職業解析(アナリシス・ジョブ)という魔法をかけて貴方の職業構成を確認します。痛かったりすることは無いので、緊張せずに座っていてくださいね」

 

「は…はい。ミューギ司祭さま」

 

 

ミューギがネイアに手をかざすと、その手が淡く光った。

確かに痛いなどの異常は無かったが、ミューギが震えているのを見て、ネイアは驚く。

 

「ミュ…ミューギ司祭さま、大丈夫ですか?!」

 

「ああ…すみません…ネイアさん…とても、とても成長しましたね…そして貴方は神に愛された存在だったようです…」

 

 

涙を浮かべるミューギが説明したネイアのレベル構成は以下の通り。

 

セイクリッド・アーチャー 6レベル

コネクター 2レベル

アンカー・オブ・るし★ふぁー 4レベル

 

 

 

その後、カルカたちは何度も議論を重ね、聖王国の復興は始まる。

 

スレイン法国は、早い時期での他国からの干渉を防ぐため、現時点では、アベリオン統一国とローブル聖王国の和平協定を含む、歴史的な人間と亜人の新たな関係についても秘匿事項として、これは近隣国へ知られることは無かった。

 

北部聖王国の犯罪者集団追放の計画も概ねは成功と言えた。

 

八本指の麻薬部門長であるヒルマ・シュグネウスは、ある段階でこれ以上聖王国での麻薬販売は難しいと判断し、聖王国内で製造した麻薬現物とその技術の一切をリ・エスティーゼ王国へ引き上げさせた。

 

これは麻薬部門にとってマイナスであったかと言えば、実はそう言う訳でなく、この聖王国での数年にわたる麻薬の栽培と販売は、かなりの量の麻薬現物の確保と共に、製造販売のノウハウを得て、この次はリ・エスティーゼ王国を蝕むのである。

 

カルカにとって唯一残念だったことは、犯罪者組織の人間は誰一人として良民として改心することは無く、悉くが八本指として王国に戻るか、移動の時期を逸して聖王国内のアンデッドの手にかかることとなった。

 

 

北部聖王国の戸籍が完成した後、まずは北部内のアンデッド討伐が行われた。

これにはバザー陣営の亜人たちは参戦していない。

なぜならば地理的にリ・エスティーゼ王国に近い北部領域で、亜人と人間が共同で戦う事を王国の者に見られることを避けるためである。

 

カルカとミューギの情報操作は功を奏し、近隣諸国は『国土にアンデッドが多数出現するようになっている』以上の情報は伝わっていない。

 

国境付近でアンデッドが増えた、リ・エスティーゼ王国の一部の貴族は文句を言ったが、聖王国は他国の一貴族からの進言などに反応を示さず、結局この貴族はランポッサ王を攻撃する口実として利用する。

 

無実たる領民が被害に遭うのは忍びないという事で、王国の慈悲深い第三王女は私財をもって王国の冒険者チームにアンデッド討伐を依頼し、法国の一部隊もこれに協力する。

 

 

北部聖王国でのアンデッド討伐により特に成長したのは言うまでもなくネイアであった。

彼女は、彼女自身と彼女が指揮権を持つ鳥型の亜人の像による、聖なる力を込めた弓撃で凄まじい数のアンデッドを倒していく。

 

ミューギの発見してしまった神の名が刻まれた職業については、速やかに部隊内に広まり、その技術も相まって聖女のようなアイドルのような扱いを受けるようになる。

恥ずかしくてしょうがないと感じたネイアはこっそりショータローに連絡し、フェイク・ネイアの付けている仮面を借りても良いかと確認する。

 

人見知りMAXのショータローは、ネイアの気持ちが良く分かるとばかりにこれを許可。

 

以降ネイアは“嫉妬マスク”で顔を隠して行動することで、人からさらされる視線を少し気にしないで済むようになったが、今度はこの仮面がショータローとお揃い且つ彼の作製したフェイク・モモンガさんと同じであると気づかれ、聖王国の中枢からの神聖視が確実となる。

熱狂的なファンが弓兵隊に志願し、彼女はいつの間にか大所帯を指揮する立場となった。

 

パベルは娘がアイドル的にもてはやされるのは嬉しいが同時に、変な虫がつかない様に文字通り目を光らせており、一方でネイアは新たに指揮官系と教祖系の職業スキルが生えてきている。

 

いずれにしろ彼女はもう、自身の目つきの事は気にすることは無くなった。

顔を隠しているのは目つきのせいではなく、街中で見つかるとサインを求められるからなのだが、仮面をつけていてもそれは変わらないし、むしろ目立つという事に彼女が気づくのはまだだいぶ先である。

 

 

北部のアンデッドが概ね狩り終わると、その次は南部である。

南部は他国と距離があるため、バザーをはじめとした亜人軍団もともに作業をし、その狩りの速度は飛躍的に上がった。

 

その時点で南部には人や亜人がおらず、ゴーレムを使った広範囲の攻撃を行っても人的被害が出ないからという点も大きい。

 

 

聖王国南部が平和を取り戻したのち、かつて街があった場所に改めてインフラが形成されていく。

 

街の周りには大規模な畑や農場、家畜の飼育が行われ、この農場の産物はアベリオン統一国との重要な交易品となる。

 

一方でアベリオン統一国は主に鉱物資源や薬草資源を提供し、同時にインフラ整備の人手として多くの亜人は聖王国南部へ出稼ぎに行き、南部の多くの街は人と亜人が共に暮らす都市として発展していく。

 

この過程で、アベリオン統一国王にはローブル聖王国から九色の一色でかつ永世名誉称号の“金”が送られる。

 

同時に神に愛され、聖王国では知らぬものが居ない聖なる弓使いとなったとある少女には同じく九色の一色である“赤”が送られるのだが、これはまだ先の話である。

 

 

ショータローは、聖王国を旅立った後、1週間ほどしてからこっそりとネイアとバザーに連絡した。

そして、自身のことは純銀の聖騎士やその仲間には今はまだどこにいるか内緒にしてほしいと伝え、その後は2人とはこっそりと定期的に連絡を取り合っている。

 

ショータローが公的に聖王国に再び足を踏み入れるのは、南部聖王国のアンデッド掃討が佳境に入ったころである。

 

先に述べた南部都市の再生やインフラの整備にはショータローの協力が多分に含まれることになるのだが、それはまた後日のお話である。

 

 

 

ホバンスの戦いの後、一旦自国に戻ったバザーは、その側近たる魔現人(マーギロス)から、しつこいくらい“天使様”に関する質問攻めにあった。

ショータローに確認したところ、『良く分かんないけど、どこからたっちさんに情報いくか分からないからとりあえず黙ってて』と言われ、心の中では『そういうの一番困るんだが』と思いつつも、バザーも本能的に会わせない方がいいと感じたので、毎回なんとか誤魔化している。

 

一方、ミューギ司祭は、個人的にカルカと会った際、何度も純銀卿のことについて聞かれ、どうにかしてもう一度会えないかと問いつめられる。

カルカは『どうやら純銀卿の御仲間たる神に国を救っていただいただけでなく、私の命も救っていただいたので、直接お礼が言いたい』と言っているが、何となくそれ以上の感情を抱いている気がするので、申し訳ないと思いつつも毎回誤魔化している。

 

聖王国首脳と統一国首脳での意見交換会の際、その魔現人(マーギロス)とカルカは運命的な出会いをしてしまい、それぞれの思い人に対する話題と美容に関する話題で大層盛り上がり、お互い個人的な友人となったようだ。

 

この友人関係は亜人と人間の関係が良好なものであるという点では素晴らしいのだが、いずれ何かの問題…神に対する不敬な何か…を起こすかもしれないと、バザーとミューギは胃が痛くなる日々であったという…。

 

 




★と深くかかわったネイアとバザーを中心に結局振り回され続けます。

次回から5章で新しい御方のお話になります
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