LCB、シャーレの先生になる   作:ハーメルンのTakamagi

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評価、感想、ありがとうございます!
未だ段落分けに悩んでいる管理人です。


便利屋、そして銃弾

「校舎より南15km地点付近で大規模な兵力を確認!」

 

 

 静かな教室に、アヤネの切羽詰まった報告が響き渡った。

 

 

「はぁっ!?なんだよ、そろそろ帰ろうって考えてたのによ」

「まさか、ヘルメット団が?」

「ち、違います!ヘルメット団ではありません!……傭兵です!おそらく日雇いの傭兵!」

 

 

 シロコはいつもの襲撃かと予想していたが、アヤネが慌てながらそれを否定した。

 

 

〈傭兵か……勝てるのそれ?〉

「何ってんのさ〜。まあ高いには高いけど、日雇の傭兵の実力はたかが知れてるものだよ〜」

 

 

 傭兵という集団に、あまり勝てようなビジョンが見えなかったが、ホシノがそう言うのならそうだろう。

 だが、雇うのに多額の資金が必要なのは、どこの世界でも同じようだ。

 

 

「しかし、一体誰が?」

「……相手の事情を考えるのは後です!先生、出動命令を!」

〈わ、わかった。出動しよう……〉

 

 

 解せない気持ちのまま、今は迫り来る危険に備えて、私たちは校門へと走り出す。

 

 校舎から抜け出し、校門の前にたどり着くと、視線の先には大量の傭兵の生徒と、どこか見覚えのある集団が立っていた。

 

 

「あれ……ラーメン屋さんの……?」

 

 

 そう、今日柴関ラーメンで出会った四人組だ。いや、再会が思ってよりも早かったのだが……。

 

 

「誰かと思えばあんたたちだったのね!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」

「あははは、その件はありがと。でも、それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」

「残念だけど、公私ははっきり区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」

 

 

 リーダー格の赤髪の生徒は、気まずさで口をつぐんでいた。

 その代わりとして、白い髪の生徒とツートンカラーの髪の生徒が、分別をつけて切り捨てて物言う。

 

 

「……なるほど、その仕事が『便利屋』だったんだ」

〈便利屋、か……〉

 

 

 彼女たちの素性は、まさに便利屋に適している。受けた依頼は必ず遂行する、その芯が強くあるのだ。

 

 しかし便利屋──都市で言うところの「フィクサー」か。都市にも星の数ほど存在していた、金で依頼をこなす解決屋たち。おそらく同類だろう──都市ほど血生臭くなく、自分の意思でやっていることは除いて。

 

 

「もう!学生なら、他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」

 

 

 ノノミが便利屋について言及すると、今まで口を閉ざしていた赤髪の生徒が、唐突に慌てながら弁明を始めた。

 

 

「ちょっ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書きだってあるんだから!」

 

 

 そう口を利いて、彼女は自慢げに語り出す。

 

 

「私が社長で、あっちが室長。それで、こっちが課長──」

「はあ……社長。ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ……」

 

 

 赤髪の生徒はうつつを抜かして次々と肩書きを紹介するが、側に立っていたツートンカラーの生徒が、冷静に正論を言い放った。

 

 

「おうおう、御託はここまでにしようぜ」

 

 

 相手の茶番劇に、痺れを切らしたヒースクリフが一歩前に出て、割って入ってくる。

 

 

「だ、誰なのよっ!?」

「はぁ?あん時のラーメン屋で見てなかったのか?」

「社長、見えてなかったの?」

「う、うるさい!居るのは分かってたけど……まさか新しい対策委員会の仲間!?」

「違げぇよ。いや、あながち間違いじゃないか……まあ、いいさ。とりあえず、お前らは敵なんだろ?だったらこっちは相手するだけだ」

「ん、ヒースクリフの言う通り。倒した後に、口を割らせてもらう」

 

 

 今にでも火薬の匂いで充満しそうな、重い雰囲気へ移り変わっている。

 

 私は懐から、シッテムの箱を取り出した。

 

 

〈……アロナ。生徒への指揮の援助、頼むよ〉

「分かりました!私に任せてください、先生!」

 

 

 そして次にPDA端末に持ち替え、懐に持ち込んでいた「人格牌」取り出す。

 

 

〈みんな、準備はいいね?〉

 

 

 私が確認を取ると、仲間たちは力強く頷いた。それと同時に、私は人格牌を端末のスロットへと差し込む。

 

 

〈それじゃあ、戦闘開始!〉

 

 

 硝子が割れる音と共に、戦いの火蓋が切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キヴォトスの戦闘は、主に銃撃戦で構成されている。近接武器を携えている囚人たちにとって、あまりにもリスクが大きすぎる戦いだ。

そのことを危惧したダンテは、ヒースクリフにとある人格を被せた。

 

 人格を被せたと同時に、ヒースクリフの姿が一瞬にして変貌する。

 薄汚れたシャツは、戦闘に特化させた黒いスーツへ。そして手にはバットの代わりに、無骨な長身のライフルが握られていた。

 

 

「えっ!?い、一瞬で服が!?」

「手品……?いや、光学迷彩?」

 

 

 目の前で起きた超常現象に、セリカたちが目を丸くする。

 だが、変身した当の本人は、彼女たちのざわめきを気にする素振りすら見せない。ただ真剣な面持ちで、初弾を放った。

 

 重く乾いた音が響き渡ると同時に、先行していた傭兵の生徒がばたんと倒れ伏せる。

 

 

「……おおっ。ナイスだよ〜、ヒースクリフ君!このままパパッとやっちゃって!」

「気安く頼るんじゃねぇ!弾が少ねぇんだ、そっちも撃って数減らせ!」

 

 

 便利屋68と傭兵集団の猛攻に対し、ヒースクリフと対策委員会の即席タッグが応戦していた。

 いつも通りに、ヒースクリフが無鉄砲にバットを掲げながら突っ込むのかと予想されたが、今回は違う。

 

 

「弾倉を交換する。うまく隠せよな?」

「はいよ〜。任せて〜」

 

 

 一個の弾倉を使い切ったヒースクリフが物陰に隠れ、ポニテールを砂風にたなびかせながら、巨大な銃火器に一発ずつ丁寧に銃弾を込める。

 そして彼が無防備となっている間、ホシノが巨大な盾を構え、攻撃を防いでいた。

 

 終止符事務所フィクサー、ヒースクリフ。

 

 都市において滅多に見かけない、銃火器を専門とするフィクサーの人格。

 高額な銃弾を浪費させないために、「一撃必殺」に特化させた戦闘スタイルは、弾幕で圧倒するキヴォトスの戦場においても異質な輝きを放つ。

 

 ──しかし、彼が完全に万能というわけではない。都市の戦闘では、このような悠長なリロードは命取りだっただろう。近接攻撃が主流になっている以上、懐に入れれば終わるから。

 

 だがここでは、隙が生まれやすい銃撃戦。その上、前線を支える頑強な盾がいる。

 状況が奇跡的に噛み合っていたのだ。

 

 

〈相手の攻勢が弱まった。シロコ、ノノミ。掃討〉

 

 

 敵の勢いが弱まった頃、インカム越しに合成音声、そしてヒースクリフの脳内にダンテの声が響く。

 

 

「ん、ドローンを起動する」

「分かりました〜♪」

 

 

 その意図を汲み取り、シロコはドローンを浮上させ、路地一面を爆撃。

 ノノミはミニガンを持ち上げ、圧倒的物量の弾幕で敵を牽制する。

 

 

『皆さん!敵の重心はここから約200m離れています!ここからの反撃は難しいと思いますので、前進してください!』

「よし!前進するわよ!」

 

 

 セリカの高機嫌な声が上がり、一行は戦線を押し込んだ。

 滞りなく便利屋の元まで辿り着くかと思われたが…………。

 

 

「きゃぁっ!?地雷!?」

「狙撃……中々に的確」

 

 

 彼らの身を襲うのは、傭兵たちの弾幕に加え、そこら中に仕掛けられた地雷、そして赤髪の生徒──陸八魔アルのスナイパーライフルによる狙撃。

 

 

「ほほ〜う、短い時間でここまで地雷を仕掛けるとは。一筋縄にはいかないね〜?」

 

 

 ホシノは後方にヒースクリフを立たせたまま、尚盾を構え前進しながら、ヘラヘラと軽口を叩いた。

 

 

「くふふ、こっちも趣味でやってないからね〜?」

 

 

 対して地雷を仕掛けた本人である白髪の生徒──浅黄ムツキも、悪戯っぽく笑いながら続ける。

 

 

「じゃあ、これはどう?」

 

 

 彼女の掛け声と共に、ホシノとヒースクリフの頭上に、黒い物体が飛来した。

 十中八九、爆弾だ。

 

 

「どけ!」

 

 

 ヒースクリフが前に出て、ライフルの銃口を空に向ける。そして、飛来する黒い物体に向かって火を噴くと、物体は案の定空中で爆散し、黒い煙を撒き散らした。

 

 

「ふーん?あの男、結構冴えるじゃん?」

 

 

 爆風でなびく髪を押さえながら、ムツキは目を細めた。

 その視線は、煙の向こうで不機嫌そうに得物を構えるヒースクリフに注がれている。

 

 ……あの、眉間に皺を寄せた顔。

 正確無比な射撃と、融通が効かなさそうな雰囲気。

 ムツキの脳裏に、外見も少し似た「揶揄い甲斐のある風紀委員」の顔が重なった。

 

 彼女は口元を三日月型に歪める。

 今の彼が脅威なのは、手前の盾に守られているからだ。ならば──。

 

 

「ムツキ、そんな軽口叩く余裕はないよ」

 

 

 ツートンカラーの髪の鬼方カヨコが冷静に釘を刺すが、ムツキは楽しげにバッグの中身を探り始めた。

 

 

「大丈夫大丈夫〜。ちょっと実験してみるだけだし」

「ど、どうしますか!?私、行きましょうか!?」

「待ってハルカ。無闇に出たら撃ち抜かれるよ」

 

 

 カヨコが紫髪の生徒である伊草ハルカを静止する横で、ムツキは三つのバッグを同時に放り投げた。

 

 

「それじゃあ……これならどうかなっ?」

 

 

 放たれた爆弾は、ヒースクリフを狙ったものではない。

 一つはホシノの足元へ。残り二つはヒースクリフの左右へ。

 彼を守る盾と狙撃手を物理的に引き剥がす、いやらしい配置。

 

 全てを迎撃することは不可能だ。

 

 

「ちっ……!オレは後ろに下がるぞ!」

「えっ?待って、こっちに──!」

 

 

 意思疎通は爆発に掻き消され、炎が壁となって視界を塞ぐ。

 このままでは爆風に巻き込まれる──そう判断したヒースクリフは、ライフルと弾薬箱を抱え、唯一開いていた後方の路地へと飛び込んだ。

 

 だが、それこそがムツキの狙いだった。

 

 

「ビンゴ♪」

 

 

 そんな小悪魔的な声と共に、入り口付近の住宅の壁が爆破され、崩壊した瓦礫が退路を完全に塞いでしまう。

 

 

「なっ……!?」

 

 

 ヒースクリフは今置かれている状況を、積み重なる瓦礫と砂埃で理解し、インカムを通じて報告した。

 

 

「……おい、時計ヅラ!完全に分断されちまった!」

〈えっ!?大丈夫!?〉

「ああ、身体はなんともねぇが……」

 

 

 インカム越しに焦るダンテを聞き流し、彼は忌々しげに頭上を睨む。

 視線の先には屋根の瓦を滑り、軽やかに路地に着地する悪戯っ子の姿があった。

 

 

「……便利屋の一人と遭遇した。時計ヅラはとりあえずあいつらの面倒を見てくれ」

〈分かった……死なないでね?〉

 

 

 通信を終え、ヒースクリフは手際良く弾倉を確認する。

 残り七発。極めて不利だ。

 

 

「おやおや〜?もう弾切れかな?」

「まあ、あるにはあるがな」

 

 

 彼は言葉を濁し、ライフルの銃身を短く持ち直した。

 正確に言えば弾薬はまだ、手にしている弾薬箱の中にしまわれている。もっとも、彼女がリロードする隙を与えるとは思えないが。

 

 

「そっか。でも、ここなら誰も助けに来ないし、その長ーい銃も取り回しにくいよね?」

 

 

 狭い路地裏。長身のライフルには不向きな閉所。そして、退路なし。

 

 

「さあ、私と遊ぼうよ、お兄さん?」

 

 

 ムツキが楽しげに鞄から爆弾を取り出し、一つ、二つ、三つ。放物線を描いてヒースクリフの元へ放り投げる。

 当然、ヒースクリフは迫り来る死から逃れるべく、冷静に引き金を引いた。

 

 正確無比な射撃が空中で爆弾を撃ち抜き、爆炎の花を咲かせる。

 だが、それこそが泥沼の始まりだった。

 

 狭い路地裏での爆発。その衝撃で周囲の老朽した壁が崩れ落ち、ヒースクリフとムツキの間に、次々と瓦礫の山が築かれていく。

 皮肉にも、ヒースクリフの迎撃が、ムツキにとって都合の良い強固な遮蔽物を作り出してしまったのだ。

 

 

「あはっ!これじゃあ射線は通らないね!」

 

 

 瓦礫の山の向こうから、彼女の勝ち誇った声が響く。

 ヒースクリフは舌打ちをした。こちらの射線は通らないが、あちらは山なりに爆弾を投げ込める。地形戦、そして消耗戦においても、完全に詰みの状況だ。

 

 

「ちっ、手持ちの通常弾じゃ、あの瓦礫は貫通できねぇ」

 

 

 漏れ出る言葉と同時に、瓦礫の方向から銃弾の雨が襲いかかる。彼は弾薬箱の物陰に隠れ、かろうじて弾丸を避けていた。

 

 ヒースクリフは弾倉を確認する。残弾は僅か。

 牽制射撃で削る余裕はない。かといって、このまま爆撃され続ければジリ貧だ。

 

 打開策は一つだけ。

 今、彼が遮蔽物として代用している、弾薬箱の中にある、虎の子の一発。

 

 

「ここで使うしかねぇか……」

 

 

 ロジックアトリエ製高速粉砕弾。

 一発で都市の裏路地を買い取れるかもしれないほどの高価な代物であり、無論外せば相応のペナルティが課せられる劇薬。

 

 

「……ま、当てりゃ文句はねぇだろ」

 

 

 あくまで人格の能力の一つだ。使えるものは全部使おう。

 

 弾丸の雨が止んだ瞬間、彼は遮蔽物にしていた弾薬箱を、足で強引に蹴り出し、地面に固定させた。

 そして、ライフルの銃身をその上に置き、銃架として安定させる。

 

 装填するのは、銀色に鈍く輝く凶悪な一発。

 

 

「お兄さ〜ん?出てこないと、このまま埋めちゃうよ〜?」

 

 

 瓦礫の向こうから、勝利を確信したムツキの挑発が飛んでくる。

 分厚く硬い瓦礫の集合体。どんな銃でも貫通は不可能。絶対的な安全圏。

 

 ──そう、信じている声だ。

 

 

「……上等だ。その減らず口、まとめて塞いでやるよ」

 

 

 磁気レールがキュイインと高周波を唸らせると同時に、ヒースクリフの指が引き金を引き、

 

 

「……一点狙いだ」

 

 

 推進剤の爆発音が響き、強烈な反動が肩へ余すこと無く伝わってくる。

 

 

 

「えっ────!?」

 

 

 大気を引き裂くような咆哮。

 ヒースクリフのライフルから放たれたロジックアトリエ弾は、分厚い瓦礫の山を豆腐のように貫通し、消し飛ばした。

 

 ムツキの視界が、爆風と粉塵で白く染まる。

 遮蔽物ごと吹き飛ばされた彼女の体は、枯れ葉のように宙を舞い、路地裏の奥へと叩きつけられた。

 

 

「お、おお。結構飛んだな」

 

 

 硝煙の向こうで、ヒースクリフはその様子に呆気に取られながらも、口の端を吊り上げ、空薬莢を排出する。

 路地裏に乾いた音が響いた。

 

「オレだ。便利屋の一人、無力化したぞ。そっちはどうだ?」

〈ヒースクリフ!そっちの方ですっごい音したけど、大丈夫なの?〉

「ああ、大丈夫だ」

 

 

 ヒースクリフはインカムで報告しながら、重厚な持ち物をなんとか抱え直し、入り口を塞ぐ瓦礫を乗り越えていく。

 

 

『よかったです……。現在、こちら側がやや有利の戦況ですが……ヒースクリフさん、手を貸していただけませんか?』

「うし、分かった。ここを脱出次第、迅速にそっちへ向かう」

『お〜、それらしいこと言うじゃん?』

「……お前は目の前のことに集中してろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 便利屋との激戦は、意外な形で終わりを告げた。

 

 

 キーンコーン、カーンコーン。

 

 

 どこか気の抜けるような、下校のチャイムが戦場に鳴り響く。

 その瞬間、今まで激しい弾幕を張っていた傭兵たちが、ぴたりと射撃を止める。

 

 

「……あ、定時だ」

「今日の日当だとここまでね。あとは自分たちで何とかして。みんな、帰るわよ」

〈…………?〉

 

 

 傭兵の一人がそう告げると、他の傭兵たちも「お疲れー」と銃を収め、そそくさと撤収準備を始めてしまった。

 

 

「は、はあ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!」

 

 

 社長と呼ばれた生徒の制止も虚しくも届くことはなく、傭兵たちは負傷者含め一人も残らずこの場を後にした。

 残されたのは、静寂と、便利屋たちだけ。

 

 

「……こりゃあ、ひどい有様だな?」

「うへぇ、これも日雇いを雇ったばかりに……」

「……同情するわ」

 

 

 敵ながらあまりにも不憫な状況に、ホシノやヒースクリフも毒気を抜かれてしまっている。

 

 

「あ、あわわ……しゃ、社長……どうしましょう……!」

「く、くうぅ……!」

 

 

 以前の戦闘で、狂犬っぷりを発揮していた紫髪の生徒がオロオロし、社長が頭を抱え唸る中、瓦礫の山からひょっこりと人影が現れた。

 

 

「はぁ……時間内に終わらなかったけど……ムツキは?」

「ごめん〜、ちょっと寝てた〜」

「ね、寝てた?」

 

 

 服は焦げ、肌は少し煤けているが、ケロリとした顔でムツキが歩いてくる。

 

 

「……ここのヤツは固いと分かってたが、ロジックアトリエ弾を喰らって、ここまで直るのが早いもんなのか?」

「いやぁ〜まだ体が麻痺してるよ?にしても、あの攻撃、結構刺激的だったよ?」

〈……化け物?〉

「あはは、それはお互い様かな〜?」

 

 

 ムツキと呼ばれた生徒は悪戯っぽく笑い、集合する便利屋の元へ駆け寄っていった。

 

 

「ん、それでどうするの?このまま敗戦までいく?」

「あ……うう……」

 

 

 シロコの容赦ない追撃に、社長は長い間唸り長考すると、勝てないと見込んだのか大きな声でこう告げる。

 

 

「こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!!」

「あはは、アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」

「うるさい!にげ、じゃなくて、退却するわよ!」

「はい!分かりました!」

「はぁ……」

 

 

 結局のところ、便利屋たちは尻尾を巻いて逃げてしまった。

 

 

『えーっと……敵戦力の撤退、確認できました』

〈戦闘終了、かな?〉

 

 

 私は戦闘終了の合図を告げ、PDA端末に差し込んでいた人格牌を抜き取った。

 

 

「ふう。やっと終わったか」

 

 

 それと同時に、ヒースクリフの姿が硝子の音と共に元のシャツの姿へと戻る。

 

 

「……一体、ヒースクリフさんの体はどうなっているんですか?」

 

 

 目の前で起きた、何の説明もない超常現象に、ノノミが恐る恐る口を開いた。

 対して、ヒースクリフは面倒そうに頭を掻く。

 

 

「説明は得意じゃねぇしな……今度、頭良さそうなやつに聞いたら良いじゃないか?」

『投げやりですね……』

 

 

 生徒たちはよっぽど私たちの技術に興味津々のようだ。ただこういうの会社の内部事情って、部外者にペラペラと話して良いことではない気がする。

 

 

〈詳しい説明はまた今度だね……〉

「そっか」

 

 

 露骨に残念そうな顔をする生徒もいるが、今は言葉を濁しておくしかない。

 

 

『しかし困りましたね……妙な便利屋にまで狙われるとは、先が思いやられます……一体何が起きているのでしょうか……』

「少しずつ調べるとしようか。まずは社長を名乗っている子の身元から洗ってみたら、何か出てくるよ、きっと」

〈とりあえず、まずは帰還してから話しようか〉

 

 

 得体の知れない対策委員会の敵。そして、少しずつ見え隠れする裏の事情。

 情報を整理し、次なる一手を考えるために、私たちは夕暮れの校舎の中へと戻っていった。




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