怪奇探偵 葦川 昭一 ―気になる怪奇現象、証明します。 作:山瀬 鳴
カクヨムにて先行公開しておりますのでそちらもどうぞ。
「それにしても、鴉の老人ってなんですか?偶に聞きますけど、よく知らないっていうか…」
「そうですね。警察が来るまで時間もありますし、説明しましょうか」
—鴉の老人。
—鴉の羽で出来た上着を身に纏い、鴉と共に現れる80代程の男性。
—白髪、白髭で、目は鴉のような黒一色や赤、果には眼球が存在しないと様々。
—伝承地域はここ
—会話は不可能、基本的に鴉の鳴き声のみ発話可能で、鴉と意思疎通が出来るかどうかは不明。
—一部では歯が鴉の嘴のように黒光りしていた、杖を持っていたという証言あり。
—基本出会うと老人と共に鴉に食い殺されるという結末を終える為会ったことがある人物がいるかどうかの真偽は不明。
「…まぁ、ごく一般的な都市伝説…というか、噂話ですね」
「そう…ですね」
「ただ、この鴉の老人には一つ、一般的な都市伝説と大きな違いがあります」
「…それは?」
「具体的な被害者がいるということです」
—鴉の老人の仕業とされる被害者は確認されているだけで5名。今回の三原氏含め6名となる。
—第一被害者、
—第二被害者、呉椙 拓郎。ソフトウェア開発会社勤務。霊崎市在住の46歳男性。事件発覚は去年9月。会社に無断欠勤していると自宅に電話をした事で行方不明と判明。その後捜査を開始するが足取りを終えず。その後点検のため会社ビルの管理会社社員が屋上に向かった所、内臓と眼球が消失した姿で倒れていたのを発見。そのまま通報へと至った。遺体には無数の鴉の羽が付着していた。司法解剖が行われたが、結局死因は不明だった。
—第三被害者、
—第四被害者は
―第五被害者は
「…と言うのが今まで起きた関連事件です」
「ちょっと待って。私ニュース見てるけどそんな事件一切言ってなかったんだけど?」
「そりゃそうでしょうよ。内臓と眼球を抉り抜いて持ち去る怪死事件なんて世間一般に出したら過度に恐怖を煽ることになるだけじゃないですか」
「た、確かに…」
「それに、まだ元凶がわかっていないのに、何を警戒させるんですか?」
「げ、元凶って…何よその言い方…」
「幽霊、妖怪、UMA…鴉の老人の正体がわからない以上、何が出るかわからないでしょう?」
「き、急にオカルトっぽい話に…」
「怪奇探偵ですのでね。ありとあらゆる可能性を見なければいけないのですよ」
そう言いながら手帳にメモを取る彼。そういえば朝に見た制服っぽい服装ではなく、チェーンブローチ付きの刺繍入りスーツにフード付きトレンチコートという着こなしだった。随分とオシャレな着こなししてるな…でも人を選ぶのは確定だよなぁ…
「何を見ているのですか?」
「あぁいや。その、着替えたんだなぁって」
「あぁ、潜入捜査の為に弓木市の公立高校の制服を着てたんですよ」
「せ、潜入捜査?」
「高校の図書館に少し用がありましてね」
そう言いながら謎の石がついた何かを取り出した。
「それは?」
「ペンデュラムです。これで霊的なエネルギーを測ります」
「き、急にスピリチュアルな話し始めたんだけど!?」
「だから言ってるでしょう?怪奇現象を調べるなら科学もオカルトも使わないと何も理解できませんよ」
静かにペンデュラムを揺らしその軌跡を見つめる葦川さん。ペンデュラムは最初円を描くように揺れていたが次第に円が歪み始め、段々と揺れが収まっていく。
「…これは…」
「…これは?」
「なんなんでしょうねこの軌跡…」
「えぇ…」
困惑した表情を浮かべる葦川さん。
「いや、普通なら何か探知すれば探知した場所を指し示すはずなのに…不規則に揺れただけ…?妙だな…」
「…私の方を向いているように見えるのは気の所為ですかね…?」
「…どうだろうな…なんとも言えない…」
大丈夫なのか…この探偵…
「さて、そろそろ警察が来るか。君も付き合うことになるだろうが、まぁ私に任せてくれ給え。というか死体を勝手に弄っているから事情説明も必要だろうからな」
「…そういえば、なんで世間公表されていない事件について知ってるんですか?」
「警察から聞いたに決まっているだろう。そうだ。彼について少し聞かせてくれないか?」
「…三原先輩についてですか」
—三原先輩…えっと、名前は確か
「…このくらいしか思いつきませんね…バイト先の先輩ってだけで個人的に何か深い関わりがあったわけではないので…多分他のバイトの人や大学の人に聞いたほうがいいと思いますよ」
「いや、とりあえずは十分だ。だが…」
「えっと…なんですか?」
「君の父親の件もあるし、君自身に何か事件との関連性があるかもしれない…と思ってね」
「疑ってるんですか?」
「そういう訳ではない。君が標的にされているかもしれないという話だ。呪いか、厄災か…まぁ可能性の話だが」
「そんな…他人に恨まれるようなことなんて…」
「あくまで可能性の話だよ。さて、そろそろ警察が来てくれたようだ」
確かに遠くからパトカーのサイレンが流れてきている。
「とりあえず、今日は事情説明が終わったら君は帰りなさい。明日か明後日…時間があれば、詳しく話が聞きたいが、構わないかい?」
「あ、えっと。はい。わかりました…明後日なら」
「では後で連絡してくれ。電話番号は名刺に書いてある」
その後、葦川さんが警察に事情説明をし、私には多少の質問をした後に家に帰された。
葦川さんを見た警察の人がまたお前かと言った発言をしていたのはよく覚えている。