怪奇探偵 葦川 昭一 ―気になる怪奇現象、証明します。 作:山瀬 鳴
カクヨムにて先行公開しておりますのでそちらもどうぞ。
「ここが拓郎さんの職場のビルですか」
「そういえば、初めて来ました」
「まぁ、父親の職場なんてそうそう来ることありませんよね。では行きましょうか」
颯爽とビルに入ろうとする葦川さん。
「え、許可とかは…」
「取ってあります。早速、行きましょう。事件現場の屋上へ」
◆◆◆
「結構ゴチャついていますね。屋上というからには柵とかで囲われていると思っていたのですが…まさか本当にただの屋上だったとは」
「点検のためだけの足場しかないんですね…お父さんはどうしてここに…」
「それを知るために来たんでしょう?さ、調査開始です」
そういうといつか見たあのペンデュラムを取り出した。
「揺れろ、ペンデュラム」
その軌道はまた円を描き…
〝カァ〟
一匹のカラスを指し示した。
「鴉…やっぱり鴉ですか」
「…あの、少し思ったんですけど」
「はい。なんでしょう」
「鴉が正体なんじゃないかって…いや、そんな理由無いですよね。鴉が化けてるなんて…」
「いや、案外正解かもしれません」
「えっ?」
「化け猫、狒狒、大蝦蟇、土蜘蛛…マイナーな所ではハンザキというオオサンショウウオという怪異もいます。動物の怪異というものは意外と沢山いるものです。動物というものは長生きすれば怪異に変化する…そういう話も多いです」
「へぇ〜」
「今回の鴉の老人も、長生きした鴉が人の姿を得て、人を喰うという行動をしているのかもしれません…いや、そういう事なら辻褄が合いますね…私はてっきり…」
「?」
「いえ…少し長くなりますが、聞きますか?」
「は、はい」
「鴉の老人は内臓や眼球を喰う…内臓は眼球というは野生動物が死体を食う際よく食べられる部位なんです。鴉も屍肉を食べることあります。柔らかい部分を好き好んで食べているというわけですね。そこも鴉の習性というわけです。そして鴉を使役した点。鴉は知能が高く集団行動をすることに起因しているのでしょう。集団で長生きした鴉達が一体のボスを元に数多くの化け鴉を引き連れて襲ってくるのが鴉の老人の正体だったのでしょう…」
「は、はぁ…」
「だとすれば…うん…可能性が増えました。次に行きましょう」
そう言って階段から下に降りそうな葦川さん。
「あ、少しいいですか?」
「なんでしょう」
「お父さんが見つかった場所ってわかりますか?」
「あぁ、そこです」
「ありがとうございます」
私は静かに手を合わせた。
「あぁ。配慮が足りてませんでしたね」
葦川さんは先に階段を降りていた。
「さて、次に行きましょう」
「次って?」
「第四被害者の中島 ユエ氏のお宅…つまり事件現場です」
そう言いながら弓木市行きの切符を二枚取り出した。
…ん?二枚?
「え。まさか、私が来ることを予測していたんですか?」
「えぇ。電話をいただいた時から。最悪返金して貰えるので」
「準備が良すぎる…!」
「では駅へ行きましょう。歩いて間に合います」
◆◆◆
「ここが中島家…いえ、中島邸でしょうか」
「凄い大きい家…」
本当に邸宅じゃん…
「では、挨拶に行きましょうか」
「え、どこに?」
「遺族の方ですよ」
「あぁ」
そう言うと葦川さんは中島邸の戸を叩いた。
「ごめんください。葦川です」
「あぁ、葦川さん。どうもおいで下さりました」
そういうと40代くらいの女性が玄関を開けた。
「こちら、中島 ユエ氏の娘の
「麻上 小穂です。そちらは?」
「あぁ。重要参考人の呉椙 茜さんだ」
「あ。呉椙 茜です」
しどろもどろになりつつも、私は頭を下げた。
「で、小穂さん。早速ですが中を拝見したいのですが」
「あ、はい。こちらです」
◆◆◆
「母が死んでから、家を管理する人が居なくなってしまったので…長女である私とその一家がこの家を譲り受けたんです」
「へぇ…そうだったんですか」
「はい。この家は大切なものなので…あぁ、付きました。こちらが我が家の縁側になります」
「ほうこれが…」
「…居ますね。鴉」
そこには古くからあるようなものだが、時代の流れによってガラス張りになった縁側があった。
そして、そのガラスの外。
〝カァ〟 〝カァ〟
「やはり、あの事件依頼来るんですか?鴉」
「はい…CDとか、最近は鴉除けの凧なんてものもあるので、吊るしてみたりしているのですが…」
「それでもまだ鴉は来る。と」
「そうなんです…もう鳴き声が酷いって何度も苦情が来て…行政にも連絡しているのですが、取り合ってもらえず…」
「まぁそうでしょうねぇ…」
「もう何度言っても直らないからってお隣さん毎回文句を言ってきて困ってるんです…私達も煩くて寝れないのに…」
「た、大変ですね…」
確かに小穂さんの目には深い隈が浮かんでいた。
「…小穂さん、質問なんですが」
その時、深く考え込んでいた葦川さんが顔を上げた。
「事件発覚の際、来ていたのは騒音被害だけですか?悪臭の話は無かったんですか?」
「?はい。その当時も騒音被害だけでした…というか悪臭なんて聞いてませんが…」
「…おかしいですね。何故
「…確かに…なんでなんでしょうか…」
「それを解明するんですよ」
そういうと葦川さんはガラッとガラス戸を開け、外に飛び出した。
手に持つのは…
「え、虫取り網?」
「どこから持ってきたの…?」
虫取り網を振り回し始めた。え、もしかして鴉捕まえようとしてる?虫取り網で?
「うおおおお!手掛かり寄越せぇぇぇぇ!!!」
「馬鹿だ!ここに来て真正の馬鹿になってる!」
なんで急にIQが3になってるの!?馬鹿なの!?いや馬鹿でしょ!?
「ふ、フフフ」
「?麻上さん?」
「いえ、なんか、微笑ましくて」
…まさか、麻上さんの為に?少しでも、笑わせる為に?
「…ただの馬鹿じゃないのか」
「うおおお!ここで情報くれないと捜査が手詰まりになりかけるんだぁ!!!!!」
「やっぱ真正の馬鹿だ!」
◆◆◆
中島邸での調査を終え、お土産でなんか高そうなお菓子を頂き、私たちは帰路についていた。
「結局捕まらなかったか…」
「いや当たり前ですよ」
なんで野生動物を虫取り網で捕まえることができるなんて思ったんだろうこの人…やっぱりこの人ただの馬鹿なんじゃないのかな…探偵なのも嘘なんじゃないかって思えてきた…
「済まないね。今日は付き合わせてしまって」
「あ、いや。大丈夫ですよ。バイト先も今休業中ですし…」
「あぁ…疑われてるんだったね」
そう。私のバイト先のカラオケ店が何かしら関連性があるのではないかと疑われており、その為店を閉じているのだ。そんな事は無いのは分かりきっているのに…怪死事件だからか、手掛かりが見つからず警察も虱潰しになっているのだろう。
「ハァ…生活費もカツカツなのに、これからどうしていけばいいんでしょうか…」
…
「明日を生きていくだけでも精一杯なのに…貧乏人は死ぬしかないんですか!?あ〜もう!最悪!」
……
「ちょっと聞いてますか葦川さん!」
………
―誰もいない
―そこは薄暗い裏通り
「えっ」
―その中に赤い光が煌めいていて
―錆つき、乾ききった鉄の匂いがこびり付いていて
「私、なんで裏通りなんかに」
―カァカァと鴉はまた鳴き始め
―血に飢えた老人は再び
〝ミ、ツ、ケ、タ〟
「ヒッ!」
―その牙を…
「次元を裂きて!我が望む物を貫け!
「!?」
〝!がッ…〟
「逃げるぞ茜さん!」
急に仰け反る鴉の老人。名前を呼ばれ、背後を見ると…そこには葦川さんがいた。
「あ、葦川さん!?なんですか
葦川さんの両手からは
「話は後!今は逃げる!」
葦川さんが手を前に伸ばすと、鎖が伸びていき、路地の壁に刺さっていた。
「捕まってくれ!茜さん!」
「えっ、きゃあ!」
そう言われたので手を取ると、急に鎖が巻き取られるように縮んでいって、高速で壁まで移動した。その横を鴉が高速で突っ込んでくる。
「くっ…思った以上に鴉が早いじゃあないか!!!面白くなってきたなァ!」
「き、急に笑い出した…」
「だが!もう此方は仕込んでいるのだよ!」
すると葦川さんは高速で手で印を結び…
「喰らえ!
〝ゴ、ぎュA、ァ!?〟
突如胸が爆ぜた鴉の老人。
「ハッハッハ!貴様の胸肉をソテーしてやろう!」
両手の鎖を収めたかと思いきや、今度は構えを取り…
「
突如腕を燃え上がらせた。