怪奇探偵 葦川 昭一 ―気になる怪奇現象、証明します。   作:山瀬 鳴

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鴉の老人 その7

「…お父さん。今日から高校2年生です。…ねぇ、お父さん。私は…」

 魔術師になるべきなのかな。

 

◆◆◆

 

 4月、春。

 魔術の影響か、金髪が混じり始めた髪を風が撫でる。

 あれから鴉の老人の被害者は居なくなった。私は髪が金髪混じりになった以外特に変化が無かった。その変化も隔世遺伝ということで問題にすらならなかった。

「…でも…なぁ…」

 父親の死の真相が謎なままで終わったこと、更に怪異や魔術など、謎を増やした上知ってはいけない物を知ってしまった。

 結局魔術についても理解した気でいるだけで、あの光が何だったのかすらハッキリしていない。

「本当に、何だったんだろうなぁ…」

 疑問が増える。学校が見える。掌を見る。

「………」

 私は…これから…

「って!早くいかないと遅刻するじゃん!早く来た意味ない!」

 

◆◆◆

 

「今年は…2年C組か」

 私の通う日羅口高校の1学年の人数は約320人。約40人のAからHまでの8クラス。

 私の友人は殆ど別クラスとなってしまっているという惨劇に目を瞑れば、C組は昇降口階段から程近いという絶好の位置の当たりだった。

(いや仲良い人が誰もいないほうが酷いわ…)

 前言撤回。やっぱり大外れだった。

 というか…一人も居ないよね今の時間。早めに起きたから校門が開く直後に来ちゃったけど、来てもやること無いからなぁ…ミスっちゃったかなぁ…

「え、誰かいる…?」

 早くない?なんで今の時間帯に…?

「机に突っ伏して寝てるし…」

そう思いながら教室の扉に手を掛けた…瞬間。

「誰だ」

「うひぃ!?」

急に声をかけられた…え、起きてたの?

…ん?この声、聞いたことが…

「…アレ?茜さん…?」

「葦川さん!?」

そこにいたのは、葦川さんだった。

「…アレ?葦川さん、目が黒い…」

「?あぁ…今日は()()の出力を切っているからな」

「魔眼…?」

「あ〜目に嵌めるタイプの魔導具(アーティファクト)…いや魔導具から説明が必要か…」

「あ、長くなるなら後でいいです…」

「先に聞いておいて失礼じゃないか?」

「すみません…」

眠そうな目で此方を睨む葦川さん…ホントごめんなさい…

「ハァ…大方聞きたいことはわかる…なんでここにいるかだろう?」

「アッハイ…あの…口調…」

「今は両者共に一学生だ。参考人と探偵じゃあない…私も普段はただの学生だ。ここに通っていて、今日は始業式だからいる。それだけだ」

「そ、そうだったんですか…」

一度も気が付かなかった。確かにブレザー姿とあのスーツとトレンチコート…そして目の色が違うと雰囲気がだいぶ違う。

「じゃあ…アーティファクトって…いや、大体察しはつくけど…」

「魔導具は文字通り魔術を利用して生まれた道具のことです。例えば魔力探知の『サーチ・ペンデュラム』、無限に伸びて様々な物を貫通する力を持つ『次元鎖《ディメンションチェーン》』、そして…魔力の残留物を観ることができる『魔視の魔眼』。私は様々な魔導具を利用する存在…魔導具使い(アーティファクター)でもあるのです」

「魔導具使い…」

「まぁ私は魔導具使いであり、五行呪術を使う呪術師でもあるのだが」

「呪術…?魔術じゃなくて…?」

「別物だ。魔術は魔力、呪術は呪力を使う…といいたいが、最近は同一視されているな…」

「じゃあ一緒じゃん」

私はそう返すが、全然違うと葦川さんは返す。

「わかりやすく言えばプログラムの違いだ。魔術のプログラムと呪術のプログラムは基本的な部分から違う。魔術は詠唱を基礎として図式化したり簡易化したりなどしているが、呪術は図形や印、文字などを基盤としている。まぁ魔術のほうが簡単だから魔術が一般化されて、呪術師は絶滅危惧種なんだがな…」

「…葦川さんって説明上手ですよね…」

「それは……。まぁ、慣れだ」

少し間があった気がするのは、あまり言われ慣れていないからだろうか。

「…それで、もう決めたのか?」

「え?」

「助手になる、という話だ。私としては色々と準備が必要なんで早くしてほしいんだが」

「……」

「…まぁ、人生に関わる決断だ。そんな急かす必要性も…」

「あの」

「…なんだい」

「……お父さんは、なんで魔術師だということを隠していたんでしょうか」

私はずっと抱えていた疑問を投げかけた。

「…魔術師は、いい奴ばかりじゃない」

葦川さんは渋々と言う感じで話し始める。

「魔術師の中には、魔術を利用して自身の欲望を叶えるために動いている奴が多い。なんなら社会の為に動いているヤツの方が珍しい。そして、魔術には相手の名前や血縁関係を利用して危害を加える物も多くある…」

「つまり…私のために?」

「半分正解だ。もう一つは自分のためだろう。貴女を利用し自身に危害が加えられるということを危惧していたのだろうな」

…やっぱり、そうだったんだ。

「……だったら、なおさらですね」

 

「お願いします。私の父の死の真相を、調査してください」

「…その回答は、NOだ」

 

返ってきた答えは、予想外のものだった。

「えっ、なんで!」

「答えを探るべきは私ではない。君だ」

葦川さんは私の顔を指差した。

「無論調査のために手を貸してほしいなら貸すし、そのために力が必要なら鍛えよう。だが答えを探すのは君だ。そこだけは譲れない」

 

「…わかりました。お願いします。探偵」

私は手を差し出した。

「あぁ。宜しく頼むよ?茜君?」

そして葦川さんは、その手を取った。

 

「…やっぱ馴れないんで葦川さんって呼んでいいですか?」

「…葦川(よしかわ)

「え?」

「本名は葦川 昭一(よしかわ てるひと)だ」

「え、違うんですか?」

「字は同じだが読みは違う」

「なんでそんな偽名を…」

「魔術の触媒になるのは読みだ。そもそも西洋から来た魔術理論に漢字が適応される理由無いだろう」

この人ホントに大丈夫かな…

「そもそも君。もう少し喜ばないか?せっかく探偵助手になれるんだぞ。君も立派な推理小説の主人公の仲間入りだろう。ワトソン君になれるんだぞ?あぁ、いや。君はシャーロキアンじゃなかったな。クリスティ派だったろう」

「…………は?」

え…なんでこの人私の趣味を…

「いやバレるとも。君の半開きの鞄にアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を入れているのが見えているし君がいつも聞いているのは探偵ドラマや探偵アニメの主題歌だ。しかも謎に噛みつきに行くその目。あからさま過ぎるんだよ。あとはカマをかければイチコロということだ」

「………探偵としての腕はあるようで」

「そりゃあ当たり前だ。なければ死んでいる」

まさに偏屈探偵とその助手のようなやり取りを繰り広げ、私達はほかのクラスメイトが来るのを待っていた。

 

コレが、後世にまで名を残す怪奇探偵とその助手の出会いである。

 

◆◆◆

 

「ついに魔導書を手に入れた」

「次は贄を集める時」

「そして産み出し成り変わるのだ」

 

―新たな神として

 

◆◆◆

 

―血の匂い、喧騒。

―その中で煌めく妖しき凶刃。

―現代社会に巣食う闇が

 

―奇々怪々の中で蠢く

 

◆◆◆

 

「………まさか固有魔術持ちを見つけることができるとは…」

「次の目標はどうするか…」

「………まずアレを手にしなければ話にならないよな」

「そう考えると、いつになったら本腰を入れられるんだ?」

「………まぁ、焦る必要性はない」

「………だが、私はなんとしても手に入れる」

 

―永遠に輝けし()()()()()

 




これにて鴉の老人編は終了となります。

え〜…遅くなり本当にすみませんでした…

入試と入学準備と若干のスランプで苦悩してました…

………嘘です。遊戯王に現を抜かしてました。すみませんでした。いや、入試と入学準備とスランプは本当なんですが…これからはもっとペースを上げていきたいと思っています。

次回『学園の七不思議』編で会いましょう。
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