個性『FPS』のTS元少年兵は、ヒーローの夢をみるか?   作:めめめめめめめめめめめめめ

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第二話 きっかけは

 

 ハローエブリワン!

 転生した俺は捕らわれた宇宙人のごとく連行され、日本へやってきたぜ!

 

 いやぁ死ぬかと思ったがどうやら生き延びれたらしい。

 まじでひやひやしたわ。

 

 特に個性を聞かれたときとかどうしようと思った。

 思わずFPSなんて言ってしまったが、よく考えればこんな状況の人間が答えられる単語じゃないことに後から気づいた。

 

 でもまぁ、なんか大目に見てくれてるのか、追求されなかったのが幸運だ。

 この体が知ってる情報と前世付きのこの脳みそは差がありすぎる。

 今後は気をつけねば。

 

 それとどうも俺の脳みそと口からでる言葉は差異があるらしく、うまく喋ることができない。

 いや喋れるは喋れるんだけど、口を開くと自動的に言葉が変換されてるっていうのかな……。

 中身はこんなにもおしゃべりなのになぁ。

 たどたどしく喉から鳴る音は喧騒の中じゃ掻き消えそうなほど小さい。

 どうにかなるのかわからないが、これも今後の課題だ。

 

 あぁそうだ!

 俺、自分でアホだからなのか限界だったからなのか気づいてなかったが女らしいんだ。

 つまりTS転生だったらしい。

 TS転生で、テロ組織の少年兵とかクソハードモードすぎるだろ。

 

 ここまで最悪の情報しかないのだが、一つ幸運なこともあった。

 どうやら俺は超美少女らしい。

 日本に来て早々ミッドナイトに風呂に入れられて全身を洗われたのだが、煤汚れた顔の先にいたのは、はっきりとした顔立ちのエキゾチック系美少女だった。

 まぁせめてもの救いと言えるだろう。

 

 ……あとミッドナイトのおっぱいクソでかくてふわふわしてました。

 

 

 

 それはおいといて、今俺は相澤先生の家にいる。

 リビングに、一人だ。

 相澤先生もいるのだが、ここで待つようにと俺に告げて部屋?寝室?の方に行ってしまった。

 

 しかし、まぁびっくりするよな。

 俺が一番びっくりしてる。

 

 俺が知ってるヒロアカのそれって……まぁアニメの途中までの記憶しかないのだが、覚えている限り相澤先生は幼女を保護するようなタイプとは思えない。

 だからあの牢獄で告げられたときだって驚いた。

 殺されないのは嬉しかったが、てっきりオールマイトかミッドナイトのどちらかが、もしくは公安とかで監禁されるって思ってたもんだ。

 

 飛行機の中でなんでって聞いたら、お国からの命令でお前の個性を抑えられるのは俺しかいないからだと疲れた目で言われて納得したけどね。

 

 そしてその後の検査で発覚したのだが、

 どうやら俺は個性を発動させるとアドレナリンやらなんやかんやが出まくって、痛覚が鈍くなり、おまけに睡眠への耐性がついてたらしい。

 つまりミッドナイトの個性があんまり効かないらしく、やっぱり万が一の状況を考えたら相澤先生が一番相性がいい(俺にとっては最悪の個性)んだとか。

 

 事前情報?でミッドナイトが効かない可能性もお上の人は考えてたらしい。

 ぐぅ有能。

 

 まぁいくらガキで状況的に責任を追求できないとはいえ、何人殺したか覚えてないほど人を殺したは事実。

 普通に凶悪犯だなぁ……。

 

 そんな少しの黄昏の後、相澤先生が隣の部屋から紙束を手にやってきた。

 

 俺の正面に座って紙束を机に広げる。

 

「あー、まぁ色々あって混乱してると思うが、とりあえず決めなきゃいけないことがある」

 

 そう言って相澤先生が指を置いた書類に目を向けた。

 普通養子離縁組と書かれた紙には殆どの部分は書き込まれているが、ただ一つ、空欄があった。

 

「お前の名前だ」

 

「俺が引き取る以上名字は相澤になる、他はない」

 

「なんか、希望はあるか?」

 

 名前、なまえか。

 しばらくの考えた後口を動かす。

 

「ろく、ろく、ろく、……?」

 

 うーむなんとも喋りにくい体だ。

 

 相澤先生は俺の言葉にため息をついて「それは名前じゃない」と眉を顰めながらトントンと机を人差し指でリズムを刻んでいる。

 

 あぁーとかうん……とか唸りながら天井を見つめるその目を追って俺も天井を見てしまった。

 

 しかし名前と言っても、666番というその番号でしか呼ばれたことはなく。

 あぁたまに悪魔の子と呼ばれたっけ。

 

 なんさまそれくらいしかない。

 

 転生して前の知識を得たが、俺はロリだ。

 

 なんとなく自覚してきたがどうも趣味嗜好や考え方が前世とは少なからず変わってしまっていて、ただでさえネーミングセンスのかけらもなかった男なのに増して情緒的な言葉が思いつかない。

 つまりは今まで呼ばれていた666番以上に何も思いつかないのだ。

 

「あーじゃあ俺が適当につけるしかないのか……」

 

 ため息を零しながら此方を見る。

 こういうの苦手なんだよなぁと言いながら首を掻く相澤先生。

 俺も無理なんだよ、すまねぇ。

 

 暫しの沈黙。

 

 

「じゃあ、そうだな」

 

「お前は今日から(なぎ)だ。相澤和(あいざわなぎ)。これで、いいか?」

 

 少し困ったように覗き込む彼を前に俺は返事ができなかった。

 

 いいか悪いかなんてわからない。

 

 相澤先生の声はひどく事務的だが、前世の日本人としての感性がきっと彼が願ったであろう思いを感じ取る。

 戦場を駆け回った元兵士には似合わない名だが、だからこそ名付けたのであろう。

 記号的な番号以外ではない、始めてもらった名前。

 噛みしめるように何度も口の中で往復させる。

 

 相澤和(あいざわなぎ)

 それが、俺の次の名前だった。

 

 

 

 月日とは早いもので、あれよこれよしてる間に3年の時がたった。

 

 相澤先生、いやショータの元で俺は健やかに楽しく暮らせている。

 

 ショータとは多分、いや結構仲良くなった。

 呼び方も変わったしな!

 

 何故ショータと読んでいるか。

 それは名字が一緒になっちまったから区別できないから、という至極シンプルな理由だ。

 

 ただ、俺が初めてショータと読んだとき、ぎょっとした目でこちらを見られてしまったのは不服。

 イレイザーと呼べと何度か言われたが、それは名前じゃないと返すと困った顔をして諦めてくれたのだ。

 ロリは強いからね!

 

 彼は思ったより優しくて、不器用だ。

 

 俺が悪夢で魘されて一人で寝れないとき、ショータの元に行けば嫌そうな顔はするが一緒に寝てくれる(俺も前世男だから嫌だけどこの体じゃ仕方ないんだよ!)

 夢見が悪いせいか、おねしょしてしまったこともあったが無言で片付けてくれた。

 まぁ凄く顔を顰めてはいたが。

 あと、俺のことがあるからかわからないが、どうやら前線より身を引いて教職についたみたいだ。

 理由はほんとに知らないけどね!

 

 

 ショータに教えてもらったのだが俺は今14歳らしい。

 

 らしいというのもあんな環境じゃ誕生日パーティーとか祝うとかそういうものは何一つない。そんな劣悪な場所で育った俺はいつ生まれたかも朧げで、特に戦場に出てからはどのくらい時が立ったのか忘れていた。

 

 幸運なことに俺の生みの母親にあたる人物の記録が日本に残っていたため、それとテロ組織の大人たちの証言を集めた結果、今は15歳とのことだった。

 

 本来なら義務教育として中学校に通うべき年齢だが、事情が事情なため中学校に通うのはだめといわれ、現在はショータや彼の職場である雄英の教師が教えてくれていた。

 基礎的な四則演算や日本語とか歴史とか他、色々。

 大体いつも雄英の職員室で手が空いている先生に教えてもらいながら勉強している。

 

 実は既に中学生レベルをも網羅している。

 

 前世持ちとかいうチートを使えば余裕……ではなかったが、こっちのほうが頭の作りがいいらしく覚えるのが早かった。

 

 自身では自覚はなかったが俺はテロ組織にいた頃から日本語と中国語、そしてロシア語も喋れるトリリンガルだったらしい。

 そのおかげか言語系の伸びは凄まじく、覚えるのもとても早かった。

 つまりこれを合わせたらクワドリンガル……!

 圧倒的じゃないか、俺の頭は!

 

 前世でもこの脳みそだったらと少し思ってしまった。

 

 

 ショータと学校に行って職員室で勉強。

 先生たちとお昼ごはんを食べて、勉強して。

 家に帰ればショータと夕ごはん。

 

 塩気があって、辛くて甘くてしょっぱくておいしかった。

 知らない味だけど知ってる味を好きなだけ食べられることに胸の奥がじんわりと暖かさを覚えた。

 

 ご飯もそうだけど他にも沢山、知ってるけど知らないことを経験した。

 

 初めてアイスクリームを食べた。

 初めてバスに乗った。

 初めてコンビニに行って、食べたいものを買った。

 初めてお寿司を食べに回転寿司に行った。

 初めてスマートフォンを触った。

 初めてパソコンに触れた。

 初めて映画を見た。

 初めて遊園地に行った。

 初めて水族館に行った。

 

 初めて誕生日パーティをした。

 

 初めて、誕生日プレゼントをもらった。

 

 私の目の色と同じ、赤くてきれいなキラキラなリボンの髪留め。

 胸が一杯で、息が詰まって、涙が止まらなくて。

 そんなぐちゃぐちゃの感情をどうしたら良いのかわからなくなった。

 あぁこれが嬉しいって感情なのか。

 

 初めて知った感情だった。

 

 そして久しぶりに人の手のひらの暖かさを思い出した。

 

 前世で知ってるはずの初めてが、私にはどうしようもなく美しくて、キラキラ光る宝石みたいな特別な記憶になった。

 

 

 

 ある日の職員室のお昼時。

 窓から差し込む暖かな日差しが私の体を緩やかに包んでいる。

 季節は秋、もうすぐ3回目の誕生日を迎える。

 しかしその前に進路を決めなきゃいけないらしい。

 私を膝にのせて、長い髪の毛を櫛で解きながらゆったりと語りかけている。

 

「あなたは色々混み合った事情があったからあんまり馴染みがないかもしれないけどね、もうそろそろ決めないといけない時期なのよ」

 

「進路……ですか……?」

 

「そう。あなたがこれからどう生きたいか。よく考えて決めるのよ。ただ、あなたの場合はそうね、国立以外の選択肢は残念ながらないのだけど学科も変われば勉強する内容も変わるわ。勉強の進捗は問題ないし、あなたの学力ならどこだって目指せる。」

 

 髪の毛を触られる感触が心地よくて、私は目を薄める。

 

 そうか、進学か。

 前の世界では周りに流されて、あまり考えもせず一番近い高校の普通科になんとなく進学した。

 だけどここは普通の世界ではない。

 総人口の八割が『個性』を持つ世界だ。

 今まであんまり考えたこともなかったが、確かに、もうそんな時期だったんだ。

 

「よし」

 

 気付いたら私のヘアアレンジは終わったらしく、長い髪の毛は太めの三つ編みになって纏められていた。

 ミッドナイトは机の上に置いてあった紙袋から書類を取り出して、私に差し出す。

 

「よく考えてね」

 

 そこには相澤和進学候補という文字が書かれた紙束と進学希望届と書いてある1枚の紙があった。

 

 

 相澤宅にて。

 少し肌寒い空気の中、テレビから流れるニュースの音を背後に一人思考にふける。

 夕飯を食べ終わり、片付けたテーブルにミッドナイトからもらった資料が広がっていた。

 

 うむ……。

 

 もらった資料には無数の高校名がある。

 近場のものから、遠くは北海道や沖縄の高校もあった。

 ミッドナイトが国立にと言っていたから、国立の高校を片っ端から集めてあるのであろう。

 目立つのはやっぱり雄英ヒーロー科。

 日本一と名高い高校は偏差値も高く、一番上に書いてあった。

 ただミッドナイトも言っていたが私はすごく、すごく、頭がいい。

 前のテストでは大体偏差値70後半と言われたからしっかり勉強すれば余裕で圏内にはいるであろう。

 

 だけど……。

 

「──軍報道官は本日、──国の国境地帯にて──国軍備基地に対し空爆を行ったと発表しました」

 

 思考を遮るようにテレビから流れるニュースが聞こえた。

 

 思わず資料を捲っていた手を止めて、画面に映るアナウンサーを凝視する。

 

「──軍は6日、──国、国境近くの基地関連施設へ空爆をしたと発表しました」

 

「現地メディアは──全域で少なくとも52人が死亡したと伝えています」

 

 負傷した民間人を運ぶ人、泣き叫ぶ子供。

 

「──軍は──国の攻撃により死亡した兵士37名に対する反撃だとして空爆を正当化しています。一方──国当局は攻撃した事実はないと説明しています。」

 

「こちらは、6日行われた攻撃の映像です」

 

 鈍い爆発音に空に手を伸ばす灰色の濃ゆい煙。

 いつかの戦場で何度も目にした光景だ。

 

「2国の主張が食い違う中──」

 

 ぼやけた視界に傷を負った市民たちの声と、赤い血液。

「なんで」と顔を歪ませ私を見る少女たち。

 子供が死んだのか瓦礫に身を屈ませて咽び泣く女性。

 それを傍目に、駆け寄る兵士の頭に入れる照準を合わせてトリガーを引いて、

 

 息ができない、頭がガンガンと痛んで座っていた椅子を音を立てて立ち上がる。

 体が、腕が、臨戦態勢を組んでしまう。

 

 違うここは戦場じゃない。

 安全だ。

 

 自身にそう言い聞かせるものの体は言うことを聞かず、硬直したまま。

 

 違う。

 違う。

 

 いや、違うのは俺じゃないか。

 俺は、俺はここにいてはいけない。

 

 血塗られたこの手をそのままに生きるのは、

 

 

 ブチッとテレビが切れる音がした。

 途端に力が抜けて、椅子に座り込む。

 喉の奥に鈍い味が張りついて、それでも酸素を求め呼吸を繰り返す。

 静かな部屋の中笛のように鳴り止まない私の喉の音がやけに大きく聞こえた。

 

「もう大丈夫か」

 

 後ろから聞こえる低い声が床に落ちる。

 

「みて、た……?」

 

 やっと動かせるようになった体。

 だけど振り返る気にはならなくて、絞り出すように彼に問いかけた。

 

「途中からな」

 

 暫くの静寂の中、手のひらを強く握りしめた。

 爪が食い込んで、少し、痛い。

 その痛みが今の私を繋ぎ止めていた。

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