進ノ介がドライブに変身するようになってから一週間がたった。どうやら向こうもまだ慎重に動こうとしているからかここ数日は重加速の発生が大幅に少なくなっている。まだ調整中のシフトカーやドライブの装備もあることだしこちらとしては有り難いことだな。それに進ノ介や霧子には一生に一度しかない青春を謳歌して欲しいしな。
「なあ、ベルトさん。」
「ん、どうしたのかね進ノ介?」
「いやさ、トライドロンこのままでいいのかよ?」
「というと?」
「俺たちがロイミュードと戦ってることは秘密って言ってたからさ、このまま使ってたらばれるんじゃないかと思ってさ。」
あのあと私は二人に対してあるルールを設けさせた。それは我々がロイミュードと戦っていることは隠すこと。進ノ介にはすまないと思っているが吉井君でも100%信用できるかと言われればNOと言ってしまうしな。なるほど、進ノ介が疑問に感じる事は無理あるまい。だがとうの昔にそのための対策は施してある。
「以前二人に渡した常に身に着けておくようにと言っていたエンブレムがあるだろ?トライドロンには特殊な処理が施されていてエンブレムをもっている物しかトライドロンのボディを見ることはできないのだよ。それ以外の人間からは普通の車にしか見えないようになっている。」
「はぁ、そういう仕組みになってたのか。っと、もうついたな。」
ついたのは文月学園。そう、今日から進ノ介たちは二年生。また新たな一年が始まるという訳だ。
「さてと、それじゃあ……」
「あ、泊さん。」
「ん、どした霧子?」
「いえ、校門の所で西村先生がクラスが書いてある紙を配っていたので行った方がいいのではないでしょうか?」
「えー?いいだろ、別にいかなくったって。どうせ俺らfで決まってるんだからさ。」
駐車場にトライドロンを止めてさっさと教室に向かおうとしていたからな。進ノ介のやつ、彼が苦手だから避けようとしているな。
「進ノ介、そういうことはキッチリしておかないと西村教師がまた君の担任になった時睨まれるかもしれないぞ?」
「へいへい、解りましたよ。じゃ、また帰りにな。ベルトさん」
「「おはようございまーす。」」
「おお、泊に詩島ではないか。」
「鉄人、おはようございます。」
「お、明久!なんだ、珍しく速いな。」
「いつも遅刻ぎりぎりですもんね。」
「吉井、いま鉄人と言わなかったか?」
「ははは、気のせいですよ。」
彼は西村宗一。確か進ノ介たちが一年生の時の担任だったな。なんでも趣味はトライアスロンとのことらしい。正直言って鉄人というあだ名をつけられてもしょうがないと思うな。
「すまなかったな、お前たち。」
「「「???」」」
「姫路を連れて保健室へ行ってくれたことについてだ。姫路も含めて再試験を受けさせてもらえるよう頼んだんだが……」
「いいですよ、西村先生。俺らが勝手にやった事ですから。」
「そうですね、どうせあんな所じゃ集中できませんでしたし。まあ吉井君はどっちにしろでしたし。」
「詩島さん酷!」
すまないが全く否定できんな。
「まあとりあえず一年頑張ることだな。受け取れ。」
「よし、それじゃさっさと行こうぜ!」
「ちょっと泊さん!」
「あ、置いてかないでよ二人とも!」
三人はFと大きく書かれた紙を受け取り校舎へと入って行った
「おい、ここ教室?」
「の、はずです。たしか二年のAクラスですね。」
「普通の教室の五倍くらいはありそうだね。」
たしかAクラスの人数は50人ほどのはずだから10人分で一つ分の教室の広さと言ったところか。逆に不便なほどの広さのような気がするな。
「うわ、すげーぞなんだありゃ!」
「プラズマディスプレイですね。それも相当な広さですね。大手の企業がここで会議でもできそうなほどですよ。」
「贅沢すぎるね。」
進ノ介たちが中をのぞきこんでいるようだな。どれ、私も……ふむ、他にも個人の机に備わっている冷蔵庫、エアコン、ノートパソコン、さらにはリクライニングシート。確かに彼らはこの学園でも優秀な人材がそろっているのだとしても過剰なのではないだろうか?
「進級おめでとうございます皆さん。このクラスの担任、高橋洋子です。事前に伝えておいた設備に不備がある方はいませんか?冷蔵庫の中の物も学園が支給しますので遠慮なくいってください。」
「これであるやつが何処にいるんだよ?」
「中身まで支給されるんですか。これで不満を言える神経の図太い人間が居たら逆に見てみたいです。」
「あれ、気のせいかな?紅茶の香りが……」
どうやら担任が自己紹介しているというのにさっそく設備で紅茶を淹れている生徒がいるようだな。
「では、クラス代表の霧島翔子さん。前に出てきてください。」
「……霧島翔子です。よろしくお願いします。」
「あれが霧島翔子か。」
「男性の告白を断り続けているせいで妙な噂を立てられていると聞いたことがありますけど、別にそんな感じはしませんね?」
「なんか近寄りがたいっていうか神々しい感じもするね。ていうか他の人の視線すごいね。」
当然と言えば当然だな。クラスの代表はそのクラスで最も点数が取れた生徒がなるクラスのリーダー。Aクラスの代表という事はそれはつまりこの学年のトップ、主席という事だからな。……それにしても彼女、どことなく霧子に似ているな。
「ってやば!そろそろ教室行こうぜ!」
そういう進ノ介を追いかけて二人も教室へ行ったようだな。……おっと、そういえばなぜトライドロンにいるのに私がしゃべっているのか気になっている方もいるようだね。何?メタいことを言うなと?まあ、ドライブを知らない人もいるかもしれないから一応説明しておこう。進ノ介がドライブに変身するときに使うシフトカー、シフトスピードは私の遠隔情報端末でもある。ようは、目と口と耳の役割をしてくれるという事だ。たまにだがシフトスピードで進ノ介たちの様子を知っておきたいのとボディーガードも兼ねて隠れて見守っていたのだ。さて、メタな話はここまでにして進ノ介たちを追わないとな。
「とっととすわれ、ウジムシ。」
「いきなりひどい言いようだな、雄二。」
Fクラスに入って早々暴言を吐いてきた彼は坂本雄二。進ノ介たちとは文月学園に入学してからの仲だが今では親友、吉井君とは悪友としても親交がある。
「というか雄二、どうして教壇に立ってるの?」
「ああ、一応俺が代表だからな。これでこのクラス全員が俺の兵隊ってわけだ!」
「女子もいる前で良くそんな言い方出来ますね……うわさには聞いてましたがここまでひどいんですね、Fクラスは。」
畳にちゃぶ台に座布団。それだけなら和風でいいかと思うがおそらく教室の一部はどうやら腐っているな。先ほどのAクラスのある校舎と違いこちらは木造だからだろうな、いやこれは畳も腐っているな。
「あーちょっと通してもらえますか?それとホームルームを始めるので席についてください。」
「「はーい」」
「はい」
「うっす」
ふむ、どうやら彼が担任らしいね。しかしどうも覇気が感じられないね。
「どうも、Fクラス担任の……福原です。」
チョークも支給されてないと見える。
「えーみなさん、ちゃぶ台と座布団は全員分ありますか?」
「すいません、俺の綿入ってないんですけど?」
「我慢してください。」
「俺のちゃぶ台足折れてるんですけど。」
「ボンドを支給しますので直してください。」
「窓が割れてて風が……」
「ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきますので直しておいてください。」
ここは廃屋じゃないのかね?
「ひっでえなこのクラス……」
「ここまでひどいとは思っていませんでした……」
「ここって本当に教室?」
「まあ最底辺クラスだからな、こんなもんなんだろ。」
「えー不備があれば申し出てください。」
不備しかないと思うぞ。
「それでは自己紹介を……では廊下側の人から。」
「木下秀吉じゃ、これから一年間よろしくたのむぞい。」
彼女……失礼、彼は木下秀吉。その容姿はパットみると……いや、じっくり見ても女性にしか見えんな。彼が男だと知っても好意を寄せる男子の増加は後を絶たないらしい。最近は中学、いや小学生に告白されたらしいと進ノ介が言っていた気が……
「…………土屋康太。」
「みじか!」
彼は土屋康太。まあ、彼はそうとうな無口にあたるね。小柄だが運動神経もなかなからしい。ちなみに彼にはあるあだ名がつけられているが……まあそれは後ほどに。
「島田美波です。趣味は吉井を殴ることです!」
なかなかピンポイントかつ恐ろしい趣味だ。
「う、島田さん……」
「はろはろー、今年もよろしくね。」
彼女は島田美波。確か彼女は中学までは生まれてからずっとドイツで暮らしていたと聞いている。それゆえ日本語があまり得意ではないとのこと。今も日常会話はともかく字はかなりひどいらしい。
「あ、次俺か。ども、泊進ノ介です。好きなものは車と飴です。」
エンジンがかかっていない時はよく飴を食べていたからな。
「詩島霧子です。よろしくお願いします。」
なかなかシンプルだ。
「あれ、詩島さんて泊と同じ車にのってなかったか?」
「なに?」
「……異端者発見……」
「まーた面倒な事になってきたな。」
ふむ、たしかモテない男が集まった異端審問会という仲のいい男女を引き裂くという活動をしている連中がいると聞いていたがそんなことをすれば余計モテなくなると思うぞ。
「えー吉井明久です。気軽にダーリンってよんでください!」
そのセンスはどうかと思うぞ。
「「「「「ダァァァァァリィィィィン!」」」」」
「……忘れてください。」
不快感しかないな。
ガララララ
「遅れてすいません!」
「あ、姫路さん!」
「ああ、ちょうどよかったです。姫路さんも自己紹介を。」
「あ、はい。姫路瑞希です、よろしくお願いします。」
「あ、あの!」
「はい?」
「どうしてここにいるんですか?」
かなり失礼な質問だね。まあ仕方ない。彼女は学年トップテンにいつも入っているからね。
「あの、試験中に高熱を出して……」
「ああ、俺も熱(の問題)がでたせいで……」
「化学だろ?あれ難しかったな。」
「俺は弟が事故にあったときいて……」
「黙れ一人っ子。」
「俺は前の日彼女が寝かせてくれなくてさあ。」
「今年一番の大嘘ありがとう。」
うん、想像以上にバカの巣窟のようだね。
「よう、姫路。調子は大丈夫か?」
「はい、あの時はありがとうございました。」
「よかったー、心配してたんだよ。」
「あ、よ、吉井君!」
「すまんな姫路。明久が不細工で脅かしたようだな。」
「平然と吉井君を不細工と言い切りましたね……」
「そ、そんな、むしろ、その……」
「はいはい、そこの人たち静かに……」
バン!
ガラララララララララ
…………見事なまでに教壇がガラクタになってしまったね。
「えー、代わりの教壇を持ってきます。」
ふむ、これでは姫路君やそこまで心配しなくてもいいかもしれんが霧子も体調を崩してしまいかねんな、この教室は。
「……雄二、ちょっといい?」
「なんだ、明久?」
「ここじゃちょっと……廊下に出ない?」
「ああ、いいぞ。」
?どうかしたのだろうか。
「……悪い霧子、ちょっと出てくる。」
「泊さん?」
………………ふむ。
「で、話ってなんだ?」
「ねえ雄二。Aクラスに戦争を仕掛けてみない?」
「戦争だと?」
「うん、このクラスいくらなんでもひどすぎるからね。これじゃ……」
「姫路が体壊すもんな。」
「!!??」
「ふん、やっぱな。カマかけてみるもんだな。」
「ちょ、別に僕は!」
「こんなことだろうと思ったぜ。」
「進ノ介!」
「なんだ、お前も戦争したいってか進ノ介?」
「ああ、あれじゃ霧子まで体壊しちまうからな。どうにかしてやらないとな。」
「なるほど。まあお前らに言われなくとも仕掛けるつもりだったしな。」
「え、そうなの?」
「ああ、学力がすべてじゃないってことを証明したいからな。それにAクラスに勝つ作戦もあるしな。」
「…………」
「すごい、さすが雄二だね進ノ介!」
「ん?ああ、そうだな。わりい明久、先に戻っててくれないか?ちょっと雄二に聞きたいことがあるからな。」
「え?」
「頼む。」
「……うん、わかった。」
ガラララ
「……なんだ聞きたいことって?」
「ああ、さっきの戦争仕掛ける理由。あれが全部じゃないだろ?」
「……ほう、さすがだな。よくみりゃ顔つきが一年の初めのころになってるじゃねえか。」
「こっちも何時までもエンジン錆びつかせたままじゃいられない事情も出来たからな。で、のこりの理由は?」
「……けじめをつけなきゃいけない奴がAクラスにいる。俺自身の手でそいつを負かさなきゃいけないんだ。」
「なるほど、それがお前のエンジンが止まってる理由ってわけか。だけどそのために霧子や明久たちがひどい目に合うってんならそん時はただじゃ済まさない。それが言いたかっただけだ。」
「ああ、心配すんな。俺もあいつらのことは仲間だと思ってるからな。」
「そうか、んじゃ戻るとしますか。」
「えー失礼しました。それでは最後、坂本君お願いします。」
……進ノ介も日々成長しているな。(全部聞いてた)
「俺が代表の坂本雄二だ。突然だがみんな。」
どうやら始まるようだね。
「俺はAクラスに戦争を仕掛けようと思う!」
試験召喚戦争が。
いかがでしたでしょうか?感想御座いましたらお願いします。では、次回もがんばって書きます!