星漿体天内理子護衛三日目――同化当日、午後三時。
呪術高専東京都校、筵山麓。
高専の敷地内へと天内と黒井を連れて辿り着いた傑と悟は、ようやく肩の力を抜いた。
ここは天元が張り巡らせた高度な結界の内側。未登録の呪力が侵入すれば、即座に察知されるはずの聖域だ。
「皆お疲れ様。
高専の結界内だ」
「これで一安心じゃな!!」
「……ですね」
努めて明るく振る舞う天内の声に、黒井はどこか寂しげにうなずいた。
妹のように慈しんできた主人との別れが、刻一刻と近づいている。その事実を、否応なく突きつけられていた。
そのすぐ傍らに立つ悟は、しかし安堵とは程遠い表情をしていた。
疲労の色が濃く、瞼の下には隠しきれない影が落ちている。
「悟、本当にお疲れ」
傑が改めて労う。
護衛期間中、悟は術式を常時展開し続け、ろくな睡眠も取っていなかった。
この任務の成否を支えた立役者は、疑いようもなく彼だった。
悟は三日ぶりに術式を解き、大きく息を吐く。
「二度とゴメンだ、ガキのお守りは」
「おっ?」
――トスッ。
憎まれ口に天内が怒りの表情を浮かべた、その瞬間だった。
悟の胸元に、刃が生えた。
一瞬の静寂の後、衝撃が悟と傑を貫く。
(馬鹿な!! ここは高専結界の内側だぞ!!)
想定外の事態に動揺しながら、悟は自分の背後に立つ襲撃者へと視線を向けた。
「アンタ、どっかで会ったか?」
「気にすんな。
俺も苦手だ、男の名前を覚えんのは」
背後から悟を刺した男――“術師殺し”伏黒甚爾が、不敵に笑っていた。
その脳裏には、かつて出会った一人の少年の姿が蘇る。
――五条悟、その幼き頃。
六眼と無下限術式を併せ持つ、神童。
甚爾は興味本位で、その天才児を見物しに行っただけだった。
呪力を一切持たない自分が術師に気取られたことなど、それまで一度もない。
だが、その時だけは違った。
かなりの距離を保ち、背後から覗き見していただけだったにもかかわらず、悟は正確にこちらを捉えた。
六眼が、甚爾を射抜いていた。
(後にも先にも背後に立った俺が気取られたのは、この時だけだった。
……だから削った、オマエが鈍るまで)
一瞬の回想。その隙に、悟と傑は体勢を立て直し、同時に術式を展開する。
悟が空間を収束させ、甚爾のバランスを崩す。
傑は巨大な芋虫のような呪霊を呼び出し、甚爾を丸呑みにさせた。
「悟!!」
呪霊が甚爾を飲み込んだのを確認すると、傑は即座に悟の元へ駆け寄る。
心配をかけまいと、悟は無理に笑顔を作り、掌を向けた。
「問題ない!!
術式は間に合わなかったけど、内臓は避けたし、その後呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった。
ニットのセーターに安全ピン通したみたいなもんだよ。
マジで問題ない!!」
そう告げながらも、視線は油断なく、呪霊を見据えている。
「天内優先。
アイツの相手は俺がする。
傑達は先に天元様のところに行ってくれ」
「油断するなよ」
一瞬の逡巡の後、傑は悟を信じる決断を下し、天内と黒井を連れて高専の奥へと走り出した。
「誰に言ってんだよ」
次の瞬間、芋虫型呪霊の腹が切り裂かれ、血塗れの甚爾が姿を現す。
その手には異質な呪力を放つ刀。体には別の呪霊が巻き付いていた。
(さっき俺を刺した刀とは違う……
それに体に巻いている呪霊もどっから湧いたんだ?
得体が知れないな。クソっ!!)
辺りを見回した甚爾は、すでに天内の姿が消えていることを確認する。
「星漿体がいねぇな。
出来れば
ナマッたかな」
そう言って、やれやれと後頭部を掻く。
悟は刺された傷など意にも介さぬ様子で、静かに相対した。
「天内の懸賞金はもう取り下げられたぞ、マヌケ」
「俺が取り下げたんだよ。
ヤセ我慢」
平然と振る舞う悟に、甚爾は淡々と続ける。
「オマエみたいに隙がない奴には緩急つけて、偽のゴールをいくつか作ってやるんだ。
盤星教の奴らが沖縄行った時はわらったけどな。
周りの術師が1人も死ななかったのはクソだったが、懸賞金の時間制限がなければ、オマエは最後まで術式解かなかったと思うぜ」
すべてがこの男の罠だったと悟は理解し、呪力をさらに練り上げる。
「あっそ」
空間が収束し、周囲の木々が薙ぎ倒され、甚爾は吹き飛ばされる。
だが一瞬崩れた体勢から即座に抜け出し、甚爾は呪霊から十手状の呪具を引き抜いた。
(速いッ!!
瞬間速度はパイセン並か……
それに、速さだけじゃない! コイツ、何かおかしいと思ったら呪力が全くない!!
天与呪縛のフィジカルギフテッド!!
……動きが全く読めねぇ!!)
甚爾は木々や建物を蹴り、立体的に跳躍しながら斬りかかる。
悟は全力で術式を展開し、接近する甚爾を弾き飛ばした。
(俺の術式知ってコソコソしてたんだろ?
そんな奴が無策で近づいてくるとは思えねぇ。
特に、今取り出したあの呪具……)
「虎の子か? 残念寄らせねぇよ。
ーー!!」
吹き飛ばしたはずの位置に、甚爾はいない。
(いねぇ!!
呪力がないから気配も読めない。
いや、アイツの身体に巻き付いてる呪霊、そっちの気配を読めばいい)
しかし、速すぎる。
悟は特定できずに歯噛みした。
(……速すぎんだろ!!)
「仕方ねぇな……
術式順転、出力最大『蒼』」
圧倒的な収束が発生し、建造物も木々もすべて消し飛び、一帯は更地と化す。
(遮蔽物なし、奇襲は出来ない)
悟が再度呪霊の気配を探ると、森の中に反応があった。
「森に隠れたか……
ーー!!」
次の瞬間、無数の蝿頭が森から飛び立ち、悟を包囲する。
(……あの呪霊の中で飼っていたのか)
「蝿頭をチャフのように使おうってわけね」
再び『蒼』を放とうとした、その刹那。
悟の脳裏に、最悪の予感が走る。
(……いや、待て。
アイツの狙いは天内ーー)
「ようやく、術式頼りの守りに回ったな」
懐に潜り込んだ甚爾が、十手型の呪具を悟の喉へ突き立てた。
特級呪具『天逆鉾』。
発動中の術式を、強制解除する刃。
無下限の防御は剥がされ、刃が悟の肉体を貫く。
震える手で腕を掴むが、その膂力に抗えない。
喉から腹部へ切り裂かれ、更に腹部に刃を突き刺された。
何度も、何度も突き立てられ、悟は血の海に倒れ伏した。
「少し、勘が戻ったかな」
甚爾はそう呟き、天逆鉾を振るって血を払うのだった。
夏油傑は救済されるべき
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このまま救済されるべき
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羂索は夏油の頭でメロンパンしないと
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虎杖ママメロンパンが見たい!
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サマーオイル教師は見たくない