呪術廻戦〜蒼風を纏う者   作:腹黒薩摩

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筆がのったので本日は4話投稿です(笑)

いつの間にか評価や感想をたくさん頂きましてありがとうございます。

今後ともよければ閲覧をお願い致します。


第11話

――高専最下層 薨星宮参道

 

 無骨な造りのエレベーターが軋む音を立てながら下降し、傑、天内、黒井の三人を高専の最下層へと運んでいく。

 扉が開いた先には、地下とは思えぬほど静謐な空気が満ちていた。

 

「理子様。私はここまでです」

 

 そう告げると、黒井は天内の前に立ち、深く、深く頭を下げた。

 抑えきれぬ想いが滲み出るように、その瞳からは大粒の涙が零れ落ちる。

 

「理子様……どうか……」

 

 避けることのできない別れを前に、黒井の言葉は喉に詰まり、震えたまま途切れた。

 その頭を、天内はそっと抱きしめる。

 

「黒井、大好きだよ」

 

 天内の瞳にも涙が溢れ、止めどなく頬を伝って落ちていく。

 

「ずっと……! これからもずっと!」

 

「私も……! 大好きです……」

 

 強く、短い抱擁。

 傑は少し離れた場所から、その別れを静かに見届けていた。

 

---

 

 黒井と別れた後、傑と天内は薨星宮参道を進んでいく。奥へ進むにつれ、巨大な大樹が姿を現し、その幹を囲うように石段が巡らされていた。

 

「ここが……」

 

「あぁ。天元様の膝元、国内主要結界の基底――薨星宮本殿だ」

 

 傑は淡々と説明を続ける。

 天内はすでに自身の運命を悟ったように、諦観の色を浮かべた表情で耳を傾けていた。

 

「階段を降りたら門をくぐって、あの大樹の根元まで行くんだ。

 そこは高専の結界とは別の、特別な結界の内側。

 招かれた者しか入れない。

 同化まで、天元様が守ってくれる」

 

 天内は何も言わず、ただ静かに聞いている。

 

「……それか、引き返して黒井さんと一緒に家に帰ろう」

 

「…………え?」

 

 あまりにも唐突な言葉に、天内は思わず目を見開いた。

 

 傑は視線を逸らさず、続ける。

 

「担任からこの任務の話を聞かされた時、あの人は"同化"を"抹消"と言った。

 あれは、それだけ罪の意識を持てということだ。

 うちの担任は脳筋のくせに、よく回りくどいことをする」

 

 一拍。

 

「それと同時に任務を依頼された私達の先輩は、"生け贄を捧げるようなことには協力できない"と怒っていた。

 人の命は、軽く扱っていいものじゃない」

 

 傑の声は穏やかだったが、その言葉の一つひとつには、揺るぎない確信が宿っていた。

 

「君と会う前に、悟との話し合いは済んでいる。

 私達は最強なんだ。

 理子ちゃんがどんな選択をしようと、君の未来は私達が保証する」

 

 甘く、しかし確かな言葉。

 終焉を受け入れかけていた天内の心は、堰を切ったように崩れた。

 

「……私は、生まれた時から星漿体(とくべつ)で、皆とは違うと言われ続けて……」

 

 嗚咽混じりの独白を、傑は遮ることなく、ただ静かに聞いている。

 

「……でもっ、でもやっぱり、もっと皆と一緒に居たい! もっと皆と色んなところに行って、色んな物を見て! ……もっと!」

 

 傑は柔らかく微笑み、天内へ手を差し伸べた。

 

「帰ろう、理子ちゃん」

 

「……うん」

 

 涙に濡れた顔で微笑み、天内はその手を取ろうとした。

 

 ――タンッ。

 

 乾いた銃声が、静寂を切り裂いた。

 

 天内の身体が力を失い、その場に崩れ落ちる。

 

 音の発生源へと傑が視線を向ける。

 そこには、銃口から硝煙を立ち上らせた拳銃を構え、不敵な笑みを浮かべる甚爾の姿があった。

 

「ハイ、お疲れ。解散、解散」

 

「……なんで、お前がここにいる」

 

「なんでって……あぁ、そういう意味ね」

 

 甚爾は笑みを深めた。

 

「五条悟は、俺が殺した」

 

 その言葉が落ちた瞬間、傑の中で何かが切れた。

 

「そうか」

 

 一拍の静寂。

 

「死ね」

 

 即断。傑は虹龍を呼び出し、甚爾へと放つ。

 

「焦んなよ」

 

 巨大な顎が迫る中でも、甚爾は笑みを崩さず拳銃を乱射する。傑は即座に烏賊状の呪霊を展開し、銃弾を受け止めた。甚爾は跳躍し、虹龍をかわす。

 

 宙に浮いた甚爾を見上げながら、傑は問いを投げた。

 

「途中に一人、女性がいたはずだ。彼女はどうした?」

 

「ん? あぁ、あのメイドか。多分死んでる。生かす気も殺す気もなかったけどな、運が良ければ生きてるだろ」

 

 あまりに無造作な言い草だった。

 傑の怒りが、静かに、しかし確実に殺意へと変わる。

 

「そうか」

 

 声のトーンは変わらない。だからこそ、恐ろしかった。

 

「やはりお前は死ね」

 

 再び虹龍を放つ。

 だが甚爾は避けず、正面から飛び込み、刃で真っ二つに切り裂いた。

 

(切り裂いた!? 手持ちの呪霊で最高硬度の虹龍だぞ!?)

 

 傑は即座に判断を切り替え、切り札を投入する。特殊な術式を持つ仮想怨霊。

 醜悪な姿のそれが、簡易領域を展開した。

 

「ねぇ、わた、わタ、わたしきれい?」

 

(仮想怨霊……質問に答えるまで不可侵を強制する簡易領域か)

 

「あー、そうだな、ここはあえて。趣味じゃねぇ」

 

 答えた瞬間、鋏が振るわれ、甚爾の耳が裂ける。

 さらに巨大な鋏が周囲に顕現する。

 

「そういう感じね……」

 

 甚爾は天逆鉾でそれらを叩き落とした。

 その一瞬を逃さず、傑は背後へ肉薄する。

 

(能力は特殊だが、呪霊自体は強くない!)

 

 だが、格納呪霊の取り込みは弾かれ、隙を晒した。

 甚爾は迷わず斬りかかる。

 その刃が届く、直前。

 

 清涼な風が、吹き抜けた。

 

 必殺の一撃は空を切り、傑は不可視の風に横へ弾き飛ばされる。

 

「迂闊に相手の間合いに入ってんじゃねぇよ……」

 

 姿を現したのは颯真だった。

 颯真はすでに傑と甚爾の間に立ち、その双眸で静かに甚爾を捉えている。

 

「……誰だオマエは?」

 

「助けてもらって文句を言いたくはないんですが、アイツじゃなくて、なんで私を吹き飛ばすんですか」

 

「仕方ねぇだろ。あの野郎、『天逆鉾』持ってるからな」

 

 軽口の裏で、颯真の全身から静かな殺気が滲み始めていた。

 

(コイツ、強ぇな……)

 

 甚爾は内心で値踏みしながら、挑発を口にする。

 

「救援にしては遅すぎたな。星漿体はもう撃ち殺した後だぜ」

 

 颯真は一瞬だけ沈黙し――それから吹き出した。

 

「ハハハッ。フィジカルギフテッドなのにまだ気付いてないのか」

 

 甚爾の視線が、反射的に天内へ向かう。

 

(出血していない!?)

 

「お前はこの高専に入ってから、誰一人殺せちゃいねぇよ」

 

 淡々とした断言。事実だけを告げる声には、揺らぎが一切なかった。

 

 甚爾はその目を一秒だけ見て、引き際を悟った。

 

「……オマエ、名前は」

 

「お前、男の名前覚えるの苦手なんだろ」

 

 甚爾は小さく笑い、颯真の顔に視線を焼き付けた。

 

「その顔ァ、覚えたぜ」

 

 次の瞬間、甚爾の気配が掻き消えた。

 

 追う素振りも見せず、颯真は静かに息を吐く。

 

「……俺は追わねぇけどな」

 

 その呟きは、風に溶けて消えた。

 

 薨星宮の静寂が、また、ゆっくりと戻ってくる。

 




感想コメントや評価もありがとうございます。

お陰で、この主人公のモデルにしていたタイトルが思い出せなかった学生時代のライトノベルタイトルを教えて頂くことができました。
本当にありがとうございます。

早速、Kindleでポチってきました。

評価もたくさん頂きましてありがとうございます。
中には厳しい評価もありまして、自分の未熟さを痛感しております。

改善できる点は改善するよう努力いたしすので、よければ今後とも閲覧をお願い致します。

感想や評価を頂けると、泣いて喜びます。

本当にいつもありがとうございます。

夏油傑は救済されるべき

  • このまま救済されるべき
  • 羂索は夏油の頭でメロンパンしないと
  • 虎杖ママメロンパンが見たい!
  • サマーオイル教師は見たくない
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