――東京都内、夜の街
夜蛾から任務を言い渡され、悟と傑は護衛対象である星漿体のもとへと向かっていた。
人通りの少ない通り沿いに並ぶ自販機の前で足を止め、悟は買ったばかりの缶ジュースを開ける。プルタブの乾いた音が夜気に溶ける中、悟は何気なく隣を歩く傑へと視線を投げた。
「……パイセン、ブチ切れてたなぁ」
缶に口をつけながらの言葉に、傑はわずかに肩をすくめる。
「神凪先輩の言い分も、分からなくはないしね。星漿体などと言い方は変えても、生け贄であることに変わりはない」
そこで一瞬、言葉を切る。歩調がわずかに緩み、夜の静けさが二人の間に落ちた。
「……悟、もし」
その続きを待つまでもなく、悟は視線を前に向けたまま答えた。
「……あぁ。星漿体が同化を拒んだなら、同化はなしだ」
言わずとも通じ合う返答に、傑は思わず小さく息を漏らし、口元に笑みを浮かべた。
「クックック。いいのかい?」
「あぁ?」
「天元様と戦うことになるかもしれないよ?」
その言葉を受けて、悟は一瞬だけ目を細め――それから不敵な笑みを浮かべた。
「何、ビビってんの? 大丈夫でしょ、俺達最強だから。それに……」
珍しく言葉を選ぶように、悟はほんの少しだけ言い淀む。その様子を、傑は楽しげに待った。
「……パイセンもいる」
その名を聞いて、傑は肩をすくめつつも軽口を返す。
「依頼料は高そうだよ?」
颯真がいつも法外な報酬を請求してくることを思い出し、悟は子どもっぽい笑みを浮かべた。
「大丈夫大丈夫。俺、そこそこ金持ってるし、傑と折半だしね」
悟が、己以外の誰かをそこまで信頼して、当然のように口にする。その無邪気さに、傑の胸の奥でほんのわずかな寂しさが芽生えた。
だが、それも一瞬のことだ。
(……先輩相手なら、仕方ないか)
そう自分に言い聞かせるように、傑は夜の闇に溶ける二人分の足音を、静かに刻み続けた。
マンションへ向かって歩を進めながら、ふと思い出したように悟が傑へ視線を向ける。
「でもさー、呪詛師集団『Q』は分かるけど、盤星教の方はなんで
「崇拝しているのは純粋な天元様だ。星漿体――つまり不純物が混ざるのが許せない。ただ」
傑は一拍置いた。
「盤星教は非術師の集団だ。特段気にする必要はない。警戒すべきは、やはり『Q』だよ」
忠告を含んだ言葉だったが、悟は特に気負う様子もなく、いつも通りの飄々とした空気をまとっていた。
「まぁ、大丈夫でしょ。俺達、最強だし。だから天元様も俺達に指名を――」
言いかけて、悟は足を止めた。
「何?」
「悟、前から言おうと思っていたんだが」
傑は歩調を崩さず、静かに続ける。
「一人称、『俺』はやめた方がいい。特に目上の方の前ではね。天元様に会うかもしれない以上、せめて『私』、最低でも『僕』にしな。年下にも怖がられにくくなる」
「はっ、嫌なこった!」
即座に拒否され、傑は小さくため息をつくしかなかった。
――その瞬間。
夜を切り裂くような爆音が轟いた。
「!」
「お?」
二人が同時に視線を向けると、星漿体が滞在しているはずのマンションから、黒煙が立ち上っていた。
「これでガキんちょ死んでたら、俺らのせい?」
軽口を叩きつつ、悟は爆発地点を観察する。一方、傑はすでに臨戦態勢に入り、使役する呪霊を即座に呼び出せるよう呪力を漲らせていた。
「あ」
警戒する中、高層階の窓から一人の少女が落下してくるのが見えた。
割れた窓枠には、軍服姿で顔の下半分をマスクで覆った男――『Q』戦闘員、コークンの姿があった。
落下する少女を見下ろしながら、男は冷酷に言い放つ。
「悪く思うなよ。恨むなら天元を恨み――なっ!?」
術師でもない星漿体に、落下死を防ぐ術などあるはずがない。
そう高を括っていたコークンの視界に飛び込んできたのは、白銀に輝く鱗を持つ巨大な東洋龍だった。その背に跨る傑と、抱き抱えられるようにして助けられた少女の姿。
地上から見上げていた悟は、口笛を吹くように息を吐いた。
「目立つのは勘弁してくれ。今朝怒られたばかりなんだ」
軽口めいた傑の愚痴に、コークンは怒りに顔を歪める。
「その制服、高専の術師だな。ガキを渡せ、殺すぞ!」
「聞こえないな。もっと近くで喋ってくれ」
挑発するように耳へ手を当てる傑。そのやり取りを、悟は地上から気楽に眺めていた。
「いやぁ、セーフセーフ」
そう笑った直後、無数の短刀が悟へと飛来する。完璧な不意打ち。
しかし刃は悟に届くことなく、不可視の壁に阻まれて空中で静止した。
――パチパチパチッ。
「素晴らしい」
拍手をしながら近づいてきたのは、コークンと同じ軍服を着た長髪の男――『Q』戦闘員、バイエルだった。
「君、五条悟だろ。有名人だ。強いんだってね。噂が本当か、確かめさせてくれよ」
悟は悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「いいけど、ルールを決めよう」
「ルール?」
唐突な提案に、バイエルは怪訝な表情を浮かべた。
「やり過ぎて怒られたくないからね。泣いて謝れば許してあげるよ。――これがルールね」
年下の学生に嘲笑され、バイエルの表情が怒りに染まる。
「クソガキが」
その言葉が合図になったかのように、夜の街に呪力がほとばしった。
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## ――東京都内、某高層マンション
二人の戦闘が始まったのと、ほぼ同じ頃。
高層マンションの一室から、スーツ姿の男と、スウェット姿の男が、眼下の騒動を静かに見下ろしていた。
「始まったな」
スーツ姿の男が、隣に立つ男へ声をかける。
「盤星教には呪術師と戦う力がない。だが金払いはいい、それは保証する。どうだ禪院、星漿体暗殺――一枚噛まないか?」
禪院と呼ばれた男は、ゆっくりと口角を吊り上げた。
気怠げなスウェット姿ながら、その身のこなしには一切の隙がなく、内包する強さを隠しもしない。
「もう禪院じゃねぇ。婿に入ったんでな」
夜景を背に、男はニヤリと笑った。
「今は――伏黒だ」
夏油傑は救済されるべき
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このまま救済されるべき
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羂索は夏油の頭でメロンパンしないと
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虎杖ママメロンパンが見たい!
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サマーオイル教師は見たくない