校内の廊下を、悟、傑、黒井の三人が疾走する。
「天内は?」
悟は足を緩めることなく、隣を走る黒井に問いかけた。
「この時間は音楽なので、音楽室か礼拝堂ですね」
「レーハイドゥ!?」
通常の音楽の授業ではまず耳にしない単語に、悟は反射的に聞き返す。
「音楽教師の都合で変わるんです。あとここはミッションスクールです」
黒井と悟のやり取り、そして校内の警戒に当たらせていた自身の使役呪霊がすでに祓われているという事実。それらを即座に分析し、傑は迷いなく次の指示を下した。
「悟は礼拝堂、黒井さんは音楽室、私は
「承知しました」
無言で頷く悟と、即座に応じた黒井を確認すると、傑は祓われた呪霊の痕跡があった方向へと進路を変え、再び走り出した。
悟と黒井はそのまま、礼拝堂と音楽室のある方角へ向かう。
「だから目の届くところで護衛させろっつったのにあのガキ!!」
天内の所在も安否も確認できていない状況に、悟は苛立ちを隠そうともしない。
「申し訳ありません。
移動の度にメールするように言ったのですが……」
黒井は走りながら、痛恨の思いを滲ませて頭を下げた。
一方、単独で侵入者を追う傑は、索敵を続けながら呪詛師の正体を推し量っていた。
(
考えを巡らせたまま廊下の角を曲がった瞬間、視界に異質な存在が映り込む。
「!」
学校という場にまったくそぐわない、作務衣姿の老人が、何事もない様子で歩いていた。
老人は即座に傑の存在を察知し、自身の前後に式神を顕現させる。
「……おぉ、その制服は」
迷いのない初動。その一瞬で、傑は相手の力量を測り、警戒の段階を引き上げた。
(高専の制服を見て多対一を想定し、自身の前後を式神で挟んだ。
この爺さん慣れてるな)
傑もまた油断なく身構え、応戦の構えとして両脇に使役呪霊を呼び出す。
その様子を見た瞬間、老人の顔に明確な驚愕が浮かんだ。
(媒介なし……!? 呪力も術師のものと異なる。
まさか!?)
「呪霊操術か!!」
術式を言い当てられてなお、傑は微塵も動揺せず、不敵な笑みを浮かべる。
「ご明答。
流石長生きしてるだけはあるね」
「いいや、長生きするもんじゃないぞ……」
会話を交わしながら、老人は内心で傑への対処法を組み立てていた。
(術式の格はあちらが上、だが思考は式神使いのソレだ……
おまけにその若さ、考えていることは手に取るように分かるぞ)
「生きると生きるだけ金がかかる」
そう呟きながら、老人は傑の立ち回りを観察する。
傑は召喚した呪霊を盾にするように、距離を保ちながら慎重に位置を調整していた。
(やはりな、こういうタイプは前に出ることがまずない!
近接戦闘が苦手!!
そして式神使いの儂が近づいてくることはまずないと考えておる!!
近接嫌いが近接を警戒していない。殺り易いことこの上ないな)
その内心を見透かすかのように、傑は嘲るような笑みを浮かべる。
「なんか色々考えてみているみたいだけど、意味ないよ!」
言い終わると同時に、傑は新たな呪霊を召喚した。
廊下の縦横を完全に塞ぐほどの巨体――巨大な芋虫のような呪霊が、逃げ場を断つ形で老人へと襲いかかる。
「な!?」
(
初手の2体はこれを想定させない為に出しただけか!!)
完全な包囲。
もはや興味を失ったかのように、傑は踵を返す。
「さて、あと一人か」
その呟きと同時だった。
背後の窓硝子が砕け散り、老人が傑へと飛び込んでくる。
(自ら死角を作ったのは失敗だったな!)
「殺った!!」
不意打ちは完璧。老人は勝利を疑わなかった。
――その視界に、あり得ない存在が映る。
かつて飼っていた、愛犬。
すでにこの世を去ったはずの存在に、老人は思わず息を呑んだ。
呪力を持たない両親のもとで育った彼にとって、その犬は唯一の理解者だった。
幻だと理解していながらも、懐かしさが胸を満たす。
「久しぶりだなぁ、もう50年以上経つのか。
お前が死ーー
そうか……」
(ーー走馬灯!?)
次の瞬間だった。
傑は老人の腕を取り、流れるような動きで体勢を崩す。
掌底が後頭部を打ち、脳震盪を引き起こしたところへ、顎への裏拳が叩き込まれた。
後衛型の術式使いとは思えぬ、鮮烈な近接戦闘だった。
「誘ったな……」
「まぁね。
アンタ近づきたくてウズウズしてただろう?
勝ち方が決まってる奴は勝ち筋を作ってやると簡単にノッてくる」
動けず座り込む老人を見下ろしながら、傑は笑みを崩さない。
だがすぐに表情を引き締め、老人の前に腰を落とす。
聞くべきことは一つだった。
「……そんなことより、アンタ『Q』?盤星教?」
夏油傑は救済されるべき
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このまま救済されるべき
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羂索は夏油の頭でメロンパンしないと
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虎杖ママメロンパンが見たい!
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サマーオイル教師は見たくない