キングダムハーツ オラリオ ミィス   作:小説好きー

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第12話 鋼鉄の巨人とキーブレード

 迷宮都市オラリオに訪れた、ありふれた午後のひととき。

 行き交う民衆はのんびりと用を足し、露天商たちは穏やかなペースで客を呼び込んでいる。平和そのものといえる光景だ。

 

 その中で唯一、異質な空気を纏う人物がいた。

 魔石灯の柱のそばに佇み、腕を組んで目を閉じている女性――【ガネーシャ・ファミリア】団長、シャクティ・ヴァルマである。

 彼女は周囲の喧騒を遮断し、自身の思考の海へと沈んでいた。

 

 脳裏をよぎるのは、昨夜の極秘会議で明かされた衝撃の事実だ。

 

『ハートレス』。

 世界そのものを脅かす、漆黒の侵略者。人間を怪物へと変え、際限なく増殖し続けるというその性質は、悪夢という言葉すら生温い。

 

(……今日の調査で、少しでも手がかりが掴めれば良いのだが)

 

 シャクティが心の中でそう呟いた、その時だった。

 

「おーい、シャクティ!」

 

(噂をすれば、か)

 

 重い思考を断ち切るような明るい声。

 シャクティが目を開けて振り向くと、親しみやすい笑みを浮かべたソラが、人混みを縫って駆け寄ってくるところだった。

 

「で、この辺りで震動が起きているんだよね?」

「情報によれば」

 

 シャクティは踵を返し、ソラを促して歩き出した。

 

「我々のファミリアで地上周辺はあらかた調査したが、めぼしい痕跡は見つかっていない。だが今日は、君と私でこの地地下水道を調査し、震動の源を突き止める」

「わかった!」

 

 迷宮地下水道への入り口を目指して歩きながら、シャクティは隣を歩く少年に問いかけた。

 

「今回の調査で、何か注意すべきことはあるか?」

「そうだな……あいつら、キーブレード使いがいると、いつもいきなり現れるんだ。場所も時間も選ばない。こうして地上を何事もなく歩けてるってことは、今は地上にはいないってことじゃないかな?」

「……そうか」

 

 シャクティは顎に手を当て、警戒レベルを一段階引き上げた。

 神出鬼没。つまり、いついかなる時でも奇襲を受ける可能性があるということだ。街中で一般人を巻き込む事態だけは避けなければならない。

 

「他にハートレスについて知っておくべきことは? 攻手段や習性など、特筆すべき点は?」

「うーん……説明するのは難しいな」

 

 ソラはうーんと唸り、腕組みをして考えるポーズをとった。

 

「ハートレスって、形も大きさもバラバラなんだ。それに、それぞれ固有の能力を持ってるやつもいるし……。地面を揺らすって話なら、思い当たるんだけど。都市規模の震動となると、相当デカいやつじゃないと無理だと思う」

 

 アースコアやラージボディといった重量級なら局地的な揺れは起こせるが、広範囲への影響となると話は別だ。

 

「そうか。ならば、君がまだ対峙したことのない、未知の個体かもしれないな」

「それもはあるな。どこへ行っても、新しいハートレスには必ず出くわすし」

「厄介だな……」

 

 シャクティは呟き、横目でソラを見つめた。

 この少年は、そんな多種多様で未知の脅威に対し、常に最前線で立ち向かい、抑え込んできたのだという。

 

「……君は、よほど厳しく鍛えられたか、あるいは特別な教育を施されたのだろうな…」

「え? いやあ、経験が助けてくれてるだけだよ。あとは、その場でどう倒すか工夫して……ドナルドやグーフィー、その時の仲間と一緒になんとかなってきたって感じかな!」

 

 ソラがニカッと笑うと、シャクティは眉をひそめた。

 どうやら、あまり計画的なタイプではないらしい。野生の勘と現場での対応力で乗り切ってきたということか。

 とはいえ、どれほどの修羅場をくぐればそこまでの境地に達するのか。

 

「経験というのは、具体的にどれくらいの期間だ?」

「だいたい二年くらいかな」

「二年……?」

 

 シャクティの声に、困惑と僅かな呆れが混ざる。

 

「十四、五歳頃から活動を始めて、たった二年でこれほどの戦闘力を身につけたというのか?」

 

 【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインでさえ、今の領域に至るまでには相応の歳月を要している。それを、たった二年で?

 

「ああ、まあ……。あ、でもそのうち一年くらいは色々あって眠ってたから、実質一年くらいかも」

「一年、眠っていた……?」

 

 シャクティは思わず足を止めた。

 ソラは事も無げに付け足したが、聞き捨てならない情報だ。

 

「活動期間は実質一年ということか? その短期間で、君はそれほどの力を……?」

 

 驚愕に目を見開くシャクティに対し、ソラは照れくさそうに頬をかきながら苦笑した。

 

「まあ、……ハートレスに、故郷を闇に覆われちゃって、リクやカイリを探してたら…」

 

 シャクティの無表情な顔が、わずかに、そして柔らかく歪んだ。

 その言葉の裏にある喪失を察したからだ。

 

「それは……災難だったな」

「あはは、まぁ。最後には全部うまくいったから!」

 

 ソラは努めて明るく振る舞い、そして真剣な眼差しで続けた。

 

「そんなことがあったから、この世……いや、ここが俺の故郷みたいな目に遭わないように守りたいんだ」

 

 シャクティは、ソラが一瞬言い淀んだのを見逃さなかった。

 

(『この世界』……か)

 

 昨夜の極秘会議で知らされた事実――ソラがこのオラリオの外、世界という箱庭の外側から来た来訪者であること。

 彼はその出自を隠すため、咄嗟に「ここ」と言い換えたのだろう。

 

 その言い間違いを見る限り、ソラという少年は嘘が下手だ。むしろ、考えなしに口から言葉が滑り落ちるタイプらしい。

 だが同時に、彼が自身の経験や語っている「守りたい」という意志に対して、嘘偽りのない正直者であることも伝わってきた。

 

(自分が経験した悲劇を、他人にさせないために戦う、か……)

 

 それは、英雄に不可欠な気高い資質だ。

 シャクティはふっと口元を緩め、内心で安堵の息をついた。

 

(これだけ真っ直ぐな精神性ならば、他派閥の金庫に忍び込んだり、その鍵で悪さを働くようなことはないだろうな)

 

 そんな都市憲兵らしい安心感を抱きつつ、シャクティは再び前を向いて歩き出した。

 

 

 

 シャクティの案内の元、ソラ達は地地下水道の道を歩く。

 天井は圧迫感を感じるほど低く、中央を流れる汚水の溝を挟んで、狭い足場が、どこまでも、どこまでも続いている。

 そうして歩みを進めていると不意に、ソラの表情から少年らしい甘さが消えた。

 

「……ッ!」

 

 ソラが足を止め、鋭い眼光で前方の狭い闇を射抜く。

 狭い空間だからこそ、その「気配」は濃密に、逃げ場なく押し寄せてきた。

 

「どうした?」

「……来る! 前から!」

 

 シャクティが問うのと、ソラが警告を発したのは同時だった。

 通路の奥から、腐臭とは異なる、鼻の奥が焦げ付くような「影」の匂いが風に乗って流れてくる。

 それは、この狭い通路を塞ぐように迫りくる、悪意の塊。

 

「――ハートレス!」

 

 ソラが右手を前方に突き出す。狭い空間で壁にぶつからないよう、一本のキーブレードを具現化する。

 

 それは、彼とヘスティア達との絆の証――『ウェスタベル』。

 温かみのある木製のグリップには、ヘスティアを象徴する鮮やかな青いリボンが、まるで生きているかのように優しく巻き付き、長く垂れ下がっている。

 刀身は、かまどの火を思わせるオレンジから燃えるような赤への美しいグラデーションを描き、その中央には「聖なる火」を宿した宝石が、心臓の鼓動のように脈打ちながら輝いていた。

 刃の根元にあしらわれた白いフリルの装飾が、無骨な武器に女神のような可憐さを添えている。

 

 キーブレード全体から放たれる陽だまりのような優しい光が、狭いトンネルの闇を鮮烈に切り裂いた。

 

 その光が照らし出したのは、絶望的な光景だった。

 

 ガシャン、ガシャン、と。

 狭い通路の壁と天井を擦りながら、巨大な影が迫ってくる。

 頭部、胴体、そして巨大な両手両足がバラバラに浮遊し、見えない力で繋ぎ止められている不気味な人型。

 かつてトラヴァースタウンで対峙した『ガードアーマー』――だが、その巨体はこの狭い通路に対してあまりに大きすぎた。

 通路の幅いっぱいに広がるその体は、文字通り「壁」となって二人の行く手を完全に塞いでいる。

 

「あの時のと……色が違う!?」

 

 ソラが驚愕の声を上げる。

 以前戦った個体は紫色の装甲だった。だが、目の前の怪物は、狭い通路の壁を削りながら迫りくる、深みのある銀灰色の輝きを纏っていたのだ。

 その質感は、単なる鉄や鋼ではない。もっと密度が高く、もっと冷徹な、絶対的な硬度を感じさせるもの。

 

「あれが、ハートレス!」

 

 即座に反応したシャクティは先制攻撃とばかりに彼女は両拳に装着した、ナックルダスターを打ち鳴らし、狭い足場を強く踏み込んで加速する。

 

「はぁぁぁッ!!」

 

 【第一級冒険者】Lv.5の一撃。

 逃げ場のない一本道であるがゆえに、その威力は一点に集中する。

 シャクティは怪物の胴体、通路を塞ぐその中心核へ、渾身の右ストレートを叩き込んだ。

 

 ――ガギィィィィィィンッ!!!!

 

 鼓膜を引き裂くような、凄まじい高音がトンネル内に轟き、反響した。

 逃げ場のない衝撃波が前後に抜け、二人の服を激しく煽る。

 

 だが。

 

「なっ……!?」

 

 シャクティの瞳が、驚愕に見開かれた。

 彼女の拳は、ハートレスの装甲に触れた瞬間、まるで巨大な山脈を殴ったかのように弾き返されていたのだ。

 手首から肩にかけて、骨が軋むほどの強烈な反動が走る。

 そして何より――通路を塞ぐ鉄壁の巨人は、一歩たりとも後退していなかった。

 

「だったら…!」

 

 シャクティの脇をすり抜け、ソラが飛び出す。

 だが、天井が低い。高く跳躍することもできず、低い軌道からの突きを繰り出すしかない。

 キーブレードの先端に炎の魔力を収束させ、ファイガを放つ。

 

「いっけぇぇぇッ!!」

 

 だが、炎のは装甲の表面を滑り、火花を散らすだけで弾かれる。

 魔法による熱量を、その銀灰色の装甲は一切受け付けない。

 

「……」

 

 ガードアーマーが、通路の壁を削りながら巨大な腕を振り上げた。

 逃げ場のないこの空間で、その一撃は死のプレス機に等しい。

 シャクティは脂汗を流しながら、そのあり得ない硬度の正体に思い至り、戦慄の声を上げた。

 

「私の拳が通じず、魔法すら弾く……?まさかその鎧……!」

 

 それは、この世界において最強最硬の金属素材の一つ。

 

「全身が……『アダマンタイト』だというのか!?」

 

 逃げ場のない狭く長い地地下水道。

 眼前に立ちはだかるのは、絶対に壊れない「絶望の壁」だった。

 

 

 

 

 

 

「くっ……! なんて硬さだ……!」

 

 シャクティは痺れる拳を握りしめ、歯噛みした。

 通路を完全に塞ぐ銀灰色の巨躯はシャクティの渾身の打撃も、ソラの魔法を弾く。

 このままでは、ジリ貧だ。

 

「ソラ! あれに弱点はないのか!?」

「あいつは手足のパーツを全部壊さないと、本体の胴体と頭にはダメージが入らないんだ!」

「なんだと……!?」

 

 シャクティは絶句した。

 手足を破壊しなければ本体を叩けない。だが、この通路はあまりに狭い。

 巨大な両手両足が壁を削りながら迫りくるこの状況で、それらを一つずつ破壊して回るスペースなど、どこにもないのだ。

 

(撤退か? いや、背後はずっと一本道。逃げたところで追いつかれる……!)

 

 逡巡するシャクティの視界の端に、ふと異質なものが映った。

 通路の脇、レンガ造りの壁の一部が崩れ、横穴が空いている。

 その崩れ方は新しくない。目の前の怪物が壊したものではなく、経年劣化か、あるいは以前の何らかの衝撃で崩落した古い傷跡だ。

 

(あそこは……?)

 

 賭けに出るしかない。

 この閉塞した一本道で戦い続ければ、いずれ圧殺される。

 

「ソラ、場所を変える!」

「えっ、どこへ!?」

「あそこだ!」

 

 シャクティは崩れた壁の穴を指差すと、躊躇なくそこへ飛び込んだ。

 ソラも慌ててその背中を追う。

 

「………!」

 

 獲物を逃した怪物の鎧が鳴り響く。

 巨体ではその狭い横穴を通れない――そう思われた直後だった。

 ガシャン、ガシャン!

 ガード・アーマー、改めアダマンタイト・アーマーは自らの体をバラバラに分離させると、頭部、胴体、四肢がそれぞれ独立して浮遊し、蛇のように列をなして横穴へと雪崩れ込んできたのだ。

 

「うわっ! バラバラになって追っかけてきた!」

「しつこい奴め……走れソラ!」

 

 二人は荒れた通路を全力で駆ける。

 背後から迫る浮遊する手足。その指先が不気味に開いたかと思うと、そこから赤黒い闇の光線が放たれた。

 

「危ない!」

 

 ソラは走りながら振り返り、キーブレードを掲げた。

 

「守りよ!!」

 

 展開されたリフレガによる光の防壁が、闇のレーザーを弾き返す。

 着弾した光線が壁や天井を爆ぜさせ、破片が降り注ぐ中、二人は煙を突き抜けて走った。

 

「抜けるぞッ!」

 

 やがて、前方に微かな光と、湿った風の流れを感じる。シャクティが勢いよく空間へと飛び出す。

 そこは、先ほどまでの狭い通路とは打って変わり、広大なドーム状の空間だった。

 巨大な水面が広がる、地下貯水槽。天井からは外の光が僅かに差し込み、水面を煌めかせている。

 

「ハァ、ハァ……ここなら、戦え――」

 

 シャクティが言いかけた言葉は、そこにいた先客の姿を見て止まった。

 

「あぁ? なんだテメェら」

 

 不機嫌そうな声と共に振り返ったのは、狼の耳と尾を持つ獣人――【ロキ・ファミリア】の凶狼、ベート・ローガだった。

 彼の足元には、無惨に踏み潰された植物の残骸が散らばっている。

 さらに、貯水槽の水面から次々と這い上がってくる『食人花(ヴィオラス)』の群れに対し、ベートは退屈そうに銀のブーツを鳴らした。

 

「……君は…? なんでこんな所に…?」

 

 ソラが目を丸くして問うと、ベートは鼻を鳴らし、襲いかかってきた食人花(ヴィオラス)の頭をノールックで蹴り砕いた。

 

「あ? そりゃこっちの台詞だ。おいシャクティ、なんでここに『雑魚』を連れてきやがった」

「なっ……雑魚!?」

 

 ベートの侮蔑的な視線に、ソラがムッとして声を上げる。

 

「俺は雑魚じゃない! ちゃんと戦える!」

「ハッ、口だけならなんとでも言えんだよ。身の程を知ってんなら、とっとと失せやがれ。邪魔だ」

 

 ベートは知るかと言わんばかりに吐き捨て、ソラから興味を失ったように背を向けた。

 

「なんだよ……! おいっ…!?」

「うるせぇな、消えろっつってんだよ!」

「二人とも、いい加減にしろ!!」

 

 子供のような言い合いを始めた二人に、シャクティの雷が落ちる。

 その隙を突くように、数体の食人花(ヴィオラス)が、一斉に触手を伸ばした。狙いは口論していたベートとソラに死角からの同時攻撃が襲う。

 

「チッ、うぜぇ……!」

 

 ベートが反応し、迎撃の蹴りを放とうとした――その刹那だった。

 

「――はあぁあ!!」

 

 凶狼の神速よりも速く、ソラの手元で光が弾け、キーブレード『ウェスタベル』が新たな姿へと新生する。

 

 曲線的だった持ち手が、瞬く間に真っ直ぐで滑らかな木製のシャフトへと変化し、その表面には美しい木目が浮かび上がる。

 同時に、手元にあったヘスティアの青い紐が、まるで意思を持つ蛇のようにシャフトを駆け上がり、螺旋状に巻き付いた。茶色の木目と鮮やかな青が織りなす、温かいコントラスト。

 そして、先端にあった「かまどの火」の宝石が核となり、太陽のような強烈な輝きを放つ。その輝きを包み込むように、根元の白いフリルが花開き、優雅な台座となって宝石を支えた。

 

 変形完了と同時に、杖頭に組み込まれた小さなベルが涼やかな音色を奏でる。

 そこに出現したのは、優雅でありながら芯の強さを感じさせる、優しくも力強い『長杖(ロングスタッフ)』だった。

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 

 ソラが長杖を天に掲げると、先端の宝石から全方位へ向けて、衝撃波が爆発的に放たれた。

 

 ベートに迫っていた触手も含め、周囲の食人花(ヴィオラス)たちが衝撃波によって根こそぎ弾き飛ばされ、壁に叩きつけられるる。

 

「……!」

 

 蹴りを放ちかけていたベートは、足を止めて目を見開いた。

 自分が動くよりも早く、周囲の敵を一掃してみせたのだ。

 ソラは長杖をクルクルと回して肩に担ぐと、「どうだ」と言わんばかりにニッと笑ってベートを見た。

 

「へへっ、どうだ? 邪魔じゃないだろ?」

「……フン」

 

 ベートは鼻を鳴らし、つまらなそうに視線を逸らした。

 

(……ただの口だけじゃねぇようだな)

 

 内心で、評価を「雑魚」から改めると、ベートの影からひょっこりと、ロキが顔を出した。

 

「ロキ様……!?」

 

 オラリオ最大派閥の一角、ロキ・ファミリアの主神ロキが、ニヤニヤと笑いながらシャクティを見上げる。

 

「ウチらはちょっとした調べもの中なんやけど……そっちこそ、こんな薄暗いとこでなんや、デート?」

「デートではありません…」

 

 シャクティはロキの茶化しを一蹴し、切迫した表情で背後の壁――自分たちが通ってきた穴を指差した。

 

「我々は調査任務(クエスト)中です。現在、極めて危険な新種のモンスターに追われています!直ちに避難を…!」

「新種…?」

 

 ロキが首を傾げた、次の瞬間。壁が、内側からの凄まじい衝撃で爆砕された。

 舞い上がる粉塵。飛び散る瓦礫。

 その土煙の中から、銀灰色の輝きを放つアダマンタイト・アーマーが、再結合した巨体を現した。

 

「……!」

 

 再結合した銀灰色の巨体が、狭い貯水槽に圧迫感を与える。

 さらに水面からは、無尽蔵に食人花(ヴィオラス)が這い出してくる。

 前門の鋼鉄、後門の植物。

 

 圧倒的な質量と、絶望的な硬度。

 その威容に、ベートが眉をひそめ、ロキが目を丸くする。

 

「なんやアレ…?」

「あれは全身がアダマンタイトで構成されています! ロキ様は下がって…」

 

 シャクティが警告を発しようとした時、ロキはポンとベートの背中を叩いた。

 

「ほな、あとは任せたで、ベート」

「あぁ!?」

「ウチは逃げさせてもらうわ! しっかり頑張りやぁ~!」

 

 言うが早いか、ロキは脱兎のごとく貯水槽の出口へと走り去っていった。

 

「チッ……!」

 

 主神のあまりの潔い逃走劇に、ベートは盛大に舌打ちをした。

 だが、残された三人の前には、銀色の絶望が立ちはだかっていた。

 

「行くぞ、二人とも!」

「おう!」

「チッ、指図すんな」

 

 ソラが握っていた長杖が、光の粒子となって霧散する。

 だが、その手は空を掴まない。眩い閃光とともに、彼の両手には対極の力が鮮烈に出現していた。

 

 右手に現れたのは『約束のお守り』。

 純白の刀身に黄金の装飾が絡み合い、天使の翼が優美に柄を包み込んでいる。揺れるパオプの実のチャームが、大切な者との絆を静かに主張し、柔らかな光の粒子を周囲に撒き散らしていた。

 

 対して、左手に握りしめられたのは『過ぎ去りし思い出』。

 まるで錆びついた記憶を鎖で繋ぎ止めたかのような、漆黒の剣。蝙蝠の羽を模した禍々しい鍔と、中央に埋め込まれた紫色の宝石が、行き場のない哀しみを吸い込んでいるかのように鈍く重く沈んでいる。

 

 「光」と「闇」。

 「誓い」と「追憶」。

 

 相反する二つの力が、ソラを中心に螺旋を描くような魔力の奔流となって戦場を吹き荒れた。

 その尋常ならざる気配を肌で感じ取ったのだろう。ベートは鋭い眼光で二振りのキーブレードを見据えると、獣のように姿勢を低くし、瞬時に迎撃の構えをとった。

 

 そしてシャクティもまた、右手を虚空へとかざした。

 するとシャクティの手元に光の粒子が収束する。

 それはソラから教わった友を呼び出す魔法。

 光の中から、槍が出現し、その手に握られた。

 

 即席のパーティが結成される。

 三人は並び立ち、迫りくる異形の軍勢へと向き合った。

 

 

 

 

 三人と異形の軍勢が激突した。

 先陣を切ったのはソラだ。

 

「はぁぁぁッ!!」

 

 白と黒、二色の残像が舞う。

 ソラは『ダブルフォーム』による浮遊移動で地面を滑るように疾走しながら、襲い来る食人花(ヴィオラス)の触手群を紙一重で回避していく。

 避けるだけではない。回避の動作そのものが攻撃へと繋がっていた。体を独楽のように回転させ、すれ違いざまに『約束のお守り』と『過ぎ去りし思い出』を振るう。

 光と闇の斬撃が触手を切り刻み、再生する暇を与えずに本体へと刃を突き立てる。

 

「……!」

 

 シャクティはソラの戦舞に驚嘆しながらも、槍を振るい、迫りくる別の食人花(ヴィオラス)を牽制していた。

 だが、その意識が植物の怪物に向いた一瞬の隙だった。

 

 死角から、銀灰色の質量が迫った。

 アダマンタイト・アーマーの分離した『右手』パーツだ。それはジェット噴射のような勢いで加速し、シャクティの反応速度を超えて肉薄した。

 

「しまっ――!?」

 

 回避が間に合わない。

 巨大な鋼鉄の指が、シャクティの体を容赦なく鷲掴みにした。

 

「ぐぅッ……!?」

 

 強烈な圧迫感に、肺の空気が絞り出される。

 シャクティは苦悶の声を上げ、手ごわい拘束に抗おうとするが、アダマンタイトの指はびくともしない。その拍子に、召喚していた槍が手から滑り落ちる。

 

「シャクティ!」

 

 ソラが叫び、助けに入ろうとする。

 だが、それを阻むようにアーマーの『左手』パーツが浮上し、囚われたシャクティへと掌を向けた。

 指先が不気味に展開し、赤黒い闇の魔力が収束していく。

 

 ゼロ距離からの闇の光線。撃たれれば、シャクティはひとたまりもない。

 ソラは瞬時に判断した。間に合わないなら、利用するしかない。

 

「させるかぁッ!!」

 

 ソラは食人花(ヴィオラス)を踏み台にして跳躍すると、光線が発射される寸前の『左手』めがけて、『過ぎ去りし思い出』を投擲した。

 漆黒のキーブレードが回転しながら飛び、左手の側面を強打する。

 

 衝撃で左手の照準が大きくブレた直後、放たれた極太の闇の光線は、あろうことかシャクティを拘束していた『右手』の腕部を直撃した。

 

「……!?」

 

 同士討ちによる爆発的な衝撃に、右手の拘束が緩む。

 その隙を見逃さず、シャクティは強引に指をこじ開けて脱出した。

 

「ハァ、ハァ……!」

 

 地面に着地し、荒い息を吐くシャクティ。

 だが、危機は去っていない。ダメージを受け、制御を失った『右手』が、まるで暴走した独楽のように高速回転を始めたのだ。

 標的は、目の前のシャクティ。

 武器を失った彼女に、アダマンタイトの回転突撃を防ぐ術はない。

 

「シャクティ!!使って!!」

 

 その声と共に、光が飛んできた。

 ソラが右手に持っていた『約束のお守り』を、シャクティへ向けて放り投げたのだ。

 

「これは……ッ!」

 

 シャクティは反射的に手を伸ばし、空中でその純白のキーブレードを掴み取った。

 ズシリとした重み。だが同時に、手の中に流れ込んでくる温かな力。

 『他者との繋がり』を力に変える、不思議な感覚。

 

(行ける……!)

 

 シャクティは迷わず踏み込んだ。

 迫りくる回転する鉄塊。その軌道を冷静に見極め、最小限の動きで回避する。

 風圧が頬を切り裂く中、彼女はすれ違いざまに、手にした『約束のお守り』を逆手に持ち替え、右手パーツの関節部――装甲の継ぎ目へと渾身の力で突き立てた。

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 

 物理攻撃を弾き続けてきたアダマンタイトの装甲が、キーブレードの切っ先を吸い込むように貫かれる。

 鍵が「解錠」するかのように、破壊された右手パーツは、激しい光を放ちながら崩壊し、光の粒子となって消滅した。

 

「よし……!」

 

 シャクティが安堵の声を漏らすと同時に、彼女の手の中で『約束のお守り』が眩い光を放ち、消失する。

 光は弧を描いてソラのもとへ戻り、彼の手中で再び実体化した。

 

 ソラは戻ってきたキーブレードを握りしめると、空中で武器を持ち替える。

 白と黒の双剣が光に溶け、現れたのは長杖『ウェスタベル』。

 

「これで……終わりだ!」

 

 ソラは着地と同時に、長杖を水平に構えた。

 杖の先端、かまどの火を宿した宝石が、直視できないほどの輝きを帯びて臨界点に達する。

 狙うは、空中に残された『左手』パーツ。

 

「いっけぇえ!!」

 

 ソラが体を捻り、横薙ぎに杖を振るう。

 瞬間、極太の光のレーザーが放射された。

 地下貯水槽を横一文字に裂くその光流は、回避行動をとろうとした左手を飲み込み、その堅牢な装甲ごと瞬時に蒸発させ、塵へと変えていった。

 

 

 ・・・

 

 

 一方その頃、少し離れた場所では、ベートが『両足』パーツを相手に孤独な戦いを強いられていた。

 

「チッ、硬ぇなクソが!」

 

 ベートは悪態をつきながら、巨大な足による踏みつけをバックステップで回避し、カウンターの蹴りを叩き込む。

 ベートのフロスヴィルトと銀色の装甲が激突し、火花が散る。

 だが、装甲は凹み一つしない。ベートはフロスヴィルトに吸収させた蹴りさえも通じない絶望的な硬度。

 

「効いてねぇか。……なら!」

 

 頭上から、もう片方の足がプレス機のように落下してくる。

 普通なら回避一択の場面。

 だが、ベートは笑った。

 

 地面が陥没し、水飛沫が上がる。

 だがベートは回避せず、あろうことか両手でその巨大な足の裏を受け止めたのだ。

 凄まじい重量と衝撃。だが、ベートの膝は屈しない。

 

「オラァッ!!」

 

 気合一閃とばかりにベートは全身のバネを使い、受け止めた『右足』を強引に放り投げた。

 投げられた右足は、ちょうど追撃を仕掛けようとしていた『左足』へと砲弾のように激突する。

 

 同士討ちとなった両足が、盛大にバランスを崩して壁際へと転がっていく。

 

「へっ、図体ばっかデカくて鈍いんだよ、テメェらは」

 

 ベートは土埃を払い、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべた。

 

 だが戦闘はまだ終わっていなかった。

 壁際に転がった両足、そして中央に残った胴体と頭部。それらが不気味な磁力に引かれ合うように集結したのだ。だが、それは元の人型ではない。

 両足を土台とし、その上に胴体が接続され、頭部が前面にせり出す。

 それはまるで、砲台のごとき異形な形態。

 

 頭部のバイザーが上がり、奥から巨大な単眼のような発光体が露出する。

 そこへ周囲の闇が渦を巻いて収束し始めた。

 高密度の闇のエネルギー。直撃すれば、この地下空間ごと吹き飛びかねないほどの威圧感だ。

 

「チッ、まだやりやがるか!」

「あの質量…!」

 

 ベートとシャクティが戦慄する中、ソラが前に飛び出した。

 

「させるかぁ!!」

 

 ソラは高く跳躍し、変形した長杖『ウェスタベル』を逆手に持ち替えた。

 杖の先端にある、かまどの火を宿した宝石が、太陽のごとく強烈な輝きを放つ。

 

「はあぁあああ、くらえ!!」

 

 ソラが彗星のように急降下し、長杖を地面へと突き立てた、その瞬間だった。

 杖を中心に、光の粒子が爆発的に広がる。

 それは単なる衝撃波ではない。光は瞬く間に石柱や屋根の形を成し、ソラたちを包み込むように、白亜の美しい『神殿』の幻影を現出させた。

 

「――ッ!?」

 

 その聖域の出現と同時に、闇の光線を放とうとしていた強敵――アダマンタイト・アーマーが、なすすべもなく弾き飛ばされた。

 物理も魔法も一切寄せ付けないはずの重厚な装甲が、聖なる熱波の前では意味をなさなかった。

 鎧の巨体たちが、神殿から溢れる光の圧力によって宙を舞い、壁に激突してバラバラに砕け散っていく。

 

 だが、その破壊的な光の中にいながら、ベートとシャクティが感じていたのは、真逆の感覚だった。

 

「なんだ……? 傷が……?」

 

 ベートが自分の体を見下ろす。

 先程までの戦闘で刻まれた切り傷や打撲が、陽だまりのような温かい光に溶かされるように癒えていく。

 それだけではない。擦り減っていた体力が、くつろいでいるかのような安らぎと共に急速に回復していくのを感じた。

 

「温かい………」

 

 シャクティもまた、心地よい浮遊感の中で息を吐いた。

 張り詰めていた神経が解きほぐされ、代わりに体の芯から新たな活力が湧き上がってくる。

 そして、その活力は形となった。

 ボッ、と音を立てて、ベートのフロスヴィルト、シャクティの槍、そしてソラの長杖に、温かな『炎』が宿ったのだ。

 

「この炎が消えないうちに!行くぞ凶狼(ヴァナルガンド)!」

「俺に指図すんじゃねぁ! ……だが、悪くねぇ!」

 

 傷も体力を全回復し、炎の刃を得た三人は、吹き飛ばされながらも体勢を立て直そうとするアダマンタイト・アーマーを狩るべく、神殿の幻影から飛び出した。

 

 

 ・

 

 

 その光景を、眺めている影があった。

 ロキ・ファミリア主神、ロキである。

 彼女は、地下水道から天に向かって立ち上る、優しくも強大な光柱を見上げ、糸目を驚愕に見開いた。

 

「なんや、あれ……」

 

 その光に含まれる力は決して派手ではないが、どこまでも温かく、家族を守り、帰る場所を照らすような独特の波動。

 それは、天界で嫌というほど顔を合わせ、腐れ縁とも言える「あの女神」の性質そのものだった。

 

「嘘やろ……。あの光……」

 

 ロキは信じられないといった様子で呟き、口の端を引きつらせた。

 

「あれは、ドチビの……」

 

 なぜ、下界の子があれほどの力を振るうのか。

 ロキの朱色の瞳に、尽きせぬ興味と、微かな警戒の色が灯った。

 

 

 

 

 土煙を切り裂き、三つの影が疾走する。

 追い詰められたアダマンタイト・アーマーは、その無機質な頭部に再びどす黒い闇のエネルギーを収束させ始めた。周囲の空間が軋むほどの高密度な魔力だ。

 

「チッ、またかよ……!」

 

 ベートが忌々しげに吠える。だが、その悪態とは裏腹に、彼の警戒心は最大級に跳ね上がっていた。直撃すればただでは済まない。

 

「相も変わらず厄介な……!」

 

 シャクティが鋭く警告を発する。彼女の計算高い戦術眼も、この怪物のタフネスには手を焼いていた。

 

 だが、ソラは違った。

 

「一撃で決める……!」

 

 彼は迷いなく紅蓮の炎を纏いながら、真正面から突っ込んだ。

 

 それを阻もうと、巨体が軋み声を上げる。アダマンタイト・アーマーの両脚が、生き物のようにうねり、行く手を塞ぐ壁となって三人に襲いかかった。

 物理的な質量による圧殺。回避を強要されるタイミング――しかし。

 

「はぁあっ!」

 

 ソラが叫んだ瞬間、戦場に異変が起きた。

 纏っていた炎の赤に加え、眩いばかりの純白の光が弾ける。

 三人の体が、光の紋章によって繋がれたかのように輝き出したのだ。

 

「なっ……!?」

「あぁ!? なんだこりゃ!」

 

 突然の発光現象に、シャクティとベートが驚愕の声を漏らす。

 それは魔法のようでいて、オラリオの常識にはない力。ソラの連携技、『トリニティリミット』の発動だった。

 光の中でソラが叫ぶ。

 

「自分の心のままに動くんだ! そうすれば、絶対にあいつを倒せる!」

 

「心が、告げるままに……?」

 

 シャクティは戸惑いながらも、自身の四肢に満ちる爆発的な高揚感を感じ取っていた。これまで感じたことのない、熱く、それでいて澄み切った力が体の芯から湧き上がってくる。

 それは単なる身体強化ではない。信頼と連携が物理的な力へと変換されたかのような全能感。

 

「行くぞ、凶狼(ヴァナルガンド)!!」

「…………」

 

 ベートは何も言い返さない。

 ただ、自身の中に渦巻く強大なエネルギーを、拳の中でギリギリと噛み締めていた。

 それはフロスヴィルトの効果でもなければ、彼の魔法でもない。本来なら他者の力など借りることを良しとしない彼だが、今この瞬間、その奔流を否定することはできなかった。

 

「……チッ」

 

 ベートはぎらつく瞳で短く舌打ちをし、眼前に立ちはだかる鋼鉄の巨人を睨み据えた。

 言葉はいらない。体が、本能が、破壊の道筋を理解している。

 

「「「はあぁぁぁぁっ!!」」」

 

 三人の咆哮が重なった。

 

 光の軌跡を引き、三人が散開する。

 右方へ跳んだベートが、銀色の旋風となって右足を捉えた。

 

「砕けろォッ!!」

 

 渾身の廻し蹴りが炸裂し、重装甲の関節部を粉砕する。

 

 呼応するように左方へ疾走したシャクティが、槍を閃かせた。

 

「ハッ!」

 

 鋭い気合いと共に繰り出された一撃は、左足の駆動部を正確に貫く。 

 胴体へ、正面からソラが突っ込んだ。

 

「これでぇっ!」

 

 回転しながらの連撃。光を纏った長杖の一撃が、分厚い装甲板を紙のように抉り、爆散させた。

 

 両足と胴体を破壊され、アダマンタイト・アーマーが悲鳴のような金属音を上げて仰け反る。

 頭部には、未だ放たれぬ闇のエネルギーが燻っていた。

 

「これで、終わりだぁぁぁっ!!」

 

 三人の動きが完全にシンクロする。

 上空へ跳躍したソラ。

 右方から踏み込んだベート。

 左方から構えたシャクティ。

 

 ソラの長杖、ベートの剛脚、シャクティの槍。

 光を帯びた三つの絶技が、一点――敵の頭部へと同時に叩き込まれた。

 

 

 

 

 光の奔流が収まると、アダマンタイト・アーマーの巨躯は音もなく崩れ去った。

 その残骸から立ち上ったのは、黒い煙ではない。淡いピンク色に輝く、美しいハートの光だった。囚われていた心が解放されていく。

 

 ソラはキーブレードを消し、共に戦った仲間へと向き直る。

 シャクティとベートは、自身の体に起きた変化を確かめるように、まじまじと両手を見つめる。つい先刻まで全身を駆け巡っていたあの強大な力は、もはや完全に消え失せていた。

 

「ありがとう、シャクティ! それに……」

 

 ソラの視線が、不機嫌そうに腕を組む狼人に向く。そういえば、乱入のドサクサで名前を聞いていなかった。

 鋭い目つき、銀色の髪。その雰囲気になぜか既視感を覚え、ソラは思わず言葉を詰まらせる。

 

「勘違いすんな…」

「え…?」

「テメェのためにやったわけじゃねえ。ロキのやつに頼まれたから一緒に戦っただけだ」

「ええ……」

 

 あまりの言い草にソラが苦笑していると、シャクティが静かに歩み寄ってきた。

 

「気にするな、ソラ。彼は誰に対してもああなんだ」

「そ、そうなんだ……」

 

 ソラはオラリオの冒険者の個性の強さに内心舌を巻いた。

 

「いやー、ご苦労さん! なんや派手な花火やったなぁ!」

 

 そこへ、ひらひらと手を振りながらロキが近づいてきた。その細い糸目を開き、興味津々といった様子でソラを覗き込む。

 

「それにしても驚いたわぁ。ソラ君、ほんまにLv.1なん?」

「あ、うん」

「ほーん……。なら、最後のアレは何や? あんな魔法、オラリオ中探しても見たことあらへんで」

 

 ロキの鋭い問いに、ソラは隠すことなく答えた。

 

「あれは俺の魔法みたいなものだよ。仲間の力を借りて、一つにするんだ」

「詠唱もなしにか……」

 

 ロキはへらへらとした笑みを崩さないまま、内心で激しく舌打ちをした。

 

(非常識にも程があるで。あの杖と鍵の形をした二本の魔剣といい、詠唱無しの魔法……Lv.1の器に収まる力やない。あのドチビ、とんでもない大当たりを引きよったな……!)

 

 未知の可能性の塊を前に、ロキはギリリと奥歯を噛み締める。喉から手が出るほど欲しい逸材だが、今はこれ以上の干渉は野暮というものだろう。

 

「ま、ええわ。今日はいいもん見せてもらったしな。帰るで、ベート」

「チッ……言われなくてもわかってる」

 

 ロキが踵を返し、ベートもそれに続く。

 だが数歩進んだところで、ベートが足を止めた。

 

「おい、ツンツン野郎」

 

 不躾な呼び名にソラが振り返ると、ベートが鋭い視線を向けていた。

 彼はしばしの沈黙の後、吐き捨てるように言った。

 

「……足手まといじゃなかったぜ。そこらへんの雑魚よりは、マシな動きだった」

 

 言って、ベートはぶっきらぼうに背を向けた。

 誉め言葉というよりは嫌味に聞こえるその物言いに、ソラが呆気にとられていると、ベートの隣にいたロキがニヤニヤと笑いながら助け舟を出した。

 

「あれはなぁ、あの子なりの感謝の言葉なんや。ほんまツンデレやなぁベート」

「あぁ!? ロキ、テメェ! わけのわからん言葉使ってんじゃねえぞ!!」

「痛い痛い! 叩くんやないベート!」

 

 ロキの解説を聞いたベートは即座に激昂し、主神相手とは思えぬ怒鳴り声を上げる。

 静まり返った貯水槽に、ギャーギャーと騒がしい喧嘩の声が響き渡っていく。

 

 その遠ざかる背中を見送りながら、ソラとシャクティは顔を見合わせた。

 

「……素直じゃないんだな」

「……根は、悪い男ではないのは事実なのであろう…」

 

 呆れつつも、どこか憎めないその不器用さに、二人は小さく苦笑いを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 地地下水道での大騒動を終えたソラとシャクティは、事の顛末を報告するため、ガネーシャ・ファミリアの本拠(ホーム)へと足を運んだ。

 

 ソラは、ガネーシャ・ファミリアの本拠(ホーム)であるその建物を前にして、呆気にとられずにはいられなかった。

 

 目の前にそびえ立つのは、ガネーシャを模した、30M(メドル)はあろうかという巨大な像だ。その像はあぐらをかいて座っており、建物の入り口は……あろうことか、その像の股間に直結していた。

 

「……なんというか……随分と個性的な…」

 ソラは言い淀みながら、遠慮がちに口を開いた。

 

「頼む……あまり深く考えないでくれ。無視するのが一番なんだ」

 

 ひどく疲れ切った表情で、シャクティが彼に告げる。ファミリアの門を守っていた二人の衛兵たちもまた、苦渋に満ちた長い溜息をついていた。

 

「あ、うん。わかった」

 

 シャクティの案内で、ソラは本拠地の奥にある団長室――もとい、主神の私室へと通された。

 扉を開けた瞬間、部屋の空気が震えるほどの大音声が響き渡った。

 

「俺が!ガネーシャだ!!!」

 

 部屋の中央で、象の仮面をつけた筋肉質の神が、バアァァン!と効果音がつきそうな完璧なポーズを決めていた。

 あまりの迫力にソラが目を白黒させている横で、シャクティは表情筋一つ動かさず、冷ややかに言い放つ。

 

「知ってるよ、ガネーシ」

「……なぁ、シャクティ…、ガネーシャ様って、いっつもこんな調子なの?」

「……否定はしない」

 

 こめかみを押さえるシャクティをよそに、ガネーシャは「むん!」と鼻息を荒くしてソラに向き直った。

 

「よくぞ戻った、ソラ!シャクティ! 地下の調査、ご苦労!」

 

 そこから、報告はシャクティが一歩前へ出て、毅然とした態度で状況を説明する。

 

「ガネーシャ、地地下水道に出現したハートレスは、極めて厄介だ。その潜在能力は、下層の階層主に匹敵すると推測するよ」

「ふむ……。まさかそれほどとは…」

「偶然にもロキ・ファミリアの凶狼(ヴァナルガンド)と共闘したが……ソラの力がなければ、勝てなかったかもしれないと考えるとなさけない話だ」

 

 シャクティは悔しさを滲ませつつも、素直にソラの実力を認め、深く頭を下げた。

 ガネーシャもまた、芝居がかった態度を崩し、真摯な眼差しを向ける。

 

「感謝する、ソラ。君がオラリオの危機を救ってくれたのだ」

「そんな、大げさだよ。俺はただ、放っておけなかっただけだし」

「その心が素晴らしいのだ! そこで!」

 

 ガネーシャは再びテンションを上げると、ゴソゴソと懐から何かを取り出した。

 

「君の力になればと、俺が夜なべして作ったこれを授けよう! 受け取るがいい!」

「えっ、くれるの? ありがとう!」

 

 渡されたのは、小さなキーチェーンだった。ガネーシャがつけている象の仮面をそのままミニチュアサイズにしたような、妙に精巧な出来栄えだ。

 

「さあ、見せてくれソラ! それでどんなキーブレードができるのかを!」

「うん、わかった。やってみるよ!」

 

 ガネーシャの熱意に押され、ソラは頷いた。

 手持ちのキーブレードから元のキーチェーンを外し、代わりにガネーシャから貰った仮面を取り付ける。

 

 瞬間、まばゆい光が弾けた。

 光が収束し、ソラの手元に新たなキーブレードが顕現する。

 

 その剣身は、太く頑丈な黄金の円柱で、表面には極彩色の紙吹雪や星の賑わいが描かれている。

 持ち手を守る鍔には、巨大な黄金の象の頭部がデザインされ、長い鼻がグリップを囲っていた。

 

 そして何より目を引くのは、鍵の歯にあたる剣先だ。

 そこには、象の仮面を被り、自慢の筋肉を見せつけるようなマッスルポーズをとった、黄金のガネーシャ像そのものが鎮座していた。

 

「うおぉぉぉっ!! 素晴らしい!!」

 

 新しいキーブレードを見た瞬間、ガネーシャは叫んだ。

 そして、キーブレードの先端についている自分自身の象と全く同じ、暑苦しいマッスルポーズを完璧に決める。

 

「俺たちが、ガネーシャだ!!!」

 

 並んでポーズを決める主神と、それを模した武器。あまりにも濃すぎる光景に、シャクティは深いため息をつき、天井を仰いだ。

 

「……はぁ」

 

 

 

 

 暑苦しいほどの熱気に満ちた主神の部屋を辞し、夜風が吹き抜けるガネーシャ・ファミリアの本拠(ホーム)の外廊下へ出たところで、ソラは大きく息を吐いた。

 

「ふぅー……。ガネーシャ様って、本当に面白い神様だな…」

「……騒がしいだけだ。気疲れさせてすまなかったな」

 

 呆れ混じりに詫びるシャクティに対し、ソラは首を横に振った。そして、夜空を見上げながら屈託のない笑みを浮かべる。

 

「ううん、楽しかったよ。それに俺、新しいキーブレードも貰えたし! これを使って、これからも俺の心を信じて、俺にできる最善を尽くすよ」

 

 その言葉に、前を歩いていたシャクティの足がピタリと止まった。

 

「……心を、信じるか」

「え? うん。俺の心が『助けたい』って言ってるなら、俺はそれに従うだけだからさ」

 

 ソラの言葉には、一片の迷いも、打算もなかった。

 見返りを求めない人助け。危険な力を他者のために振るう勇気。そして、敵意を剥き出しにしてきたベートさえも信じ、共闘した器の大きさ。

 シャクティは、この短期間で目の当たりにしたソラの行動を反芻していた。それは、欲望と野心が渦巻くこのオラリオにおいては、あまりに稀有で、尊い「徳性」だった。

 

 シャクティはゆっくりと振り返り、ソラを真っ直ぐに見つめた。その瞳には、いつもの厳格な憲兵としての光ではなく、どこか哀切な色が混じっていた。

 

「君のその真っ直ぐな心は、周囲を照らす光になる。だが……その光を利用しようとする者が、必ず現れる」

「利用する……?」

「ああ。善意や正義感を食い物にする輩がいる。……その『優しさ』は時に致命的な隙となり、あだとなるのだ」

 

 シャクティの脳裏に、苦い記憶がよぎる。正義を信じ、秩序を守ろうとして、悪意に利用され散っていった最愛の(アーディ)がソラに重なってしまう。

 

 シャクティの声は震えていた。それは、彼女が普段被っている鉄仮面の下にある、一人の姉としての痛切な願いだった。

 ソラは真剣な表情で、その言葉を受け止める。

 

「……わかった。気を付けるよ、シャクティ」

 

 素直に頷くソラを見て、シャクティは少しだけ表情を緩めたが、すぐにまた厳しい顔つきへと戻った。

 

「それともう一つ。……今回のハートレスとあのモンスターは、決して楽観視はできない」

「どういうことなんだ?シャクティ?」

「ただの突発的な事態ではない気がするのだ。……この不穏な空気、かつてオラリオを恐怖に陥れた『暗黒期』の再来を感じさせる」

 

 『暗黒期』。その重々しい響きに、ソラはゴクリと喉を鳴らした。

 シャクティは夜の闇を見据え、憎しみを押し殺すように、だがハッキリと警告した。

 

闇派閥(イヴィルス)は悪意の権化だ。もし、今回の件にその残党が関わっているのだとすれば……ソラ、ゆめゆめ警戒を怠るないでくれ…」

 

 その言葉は、冷たい夜風と共に、ソラの胸に重く沈み込んでいった。

 

 

 

 

 ソラを見送り、夜風に当たって少し頭を冷やしたシャクティは、再び主神の待つ執務室へと足を向けた。

 先ほどの騒がしい報告会とは異なり、部屋の中は静寂に包まれていた。ガネーシャは窓際で腕を組み、オラリオの夜景を見下ろしている。

 ガネーシャは仮面の奥で小さく頷くと、ゆっくりと振り返った。その動作には、いつもの道化じみた軽さはなく、一柱の神としての威厳が漂っていた。

 

「それで? 態々俺の部屋に来たのは、報告以外の用件があるのだろう?」

「あぁ。……今回の戦闘で、殻を破るような感覚を感じた。ステータスの更新を頼む、ガネーシャ」

 

 シャクティの申し出に、ガネーシャは「よかろう!」と快諾し、使い慣れた針を取り出した。

 シャクティが長椅子に腰掛け、背中を露わにする。

 

 神血(イコル)を含ませた針が肌を滑り、彼女の背に刻まれた『神聖文字(ヒエログリフ)』の上を走っていく。

 さらさらと、羊皮紙にステータスを書き写す音だけが室内に響く。

 

 シャクティは目を閉じ、今日の激闘を反芻していた。

 物理攻撃を弾く絶望的な硬度の怪物。

 ソラから託された白いキーブレード『約束のお守り』。

 そして、他者との繋がりを力に変え、限界を超えて放ったあの一撃。

 

(あの瞬間、私は確かに……今までの自分とは違う領域にいた)

 

 思考の海に沈んでいたシャクティだったが、ふと、背中を走る指の動きが止まったことに気づいた。

 

「……?」

 

 いつもなら、「終わったぞ!!」とやかましい声がかかるはずだ。

 しかし、ガネーシャは沈黙したまま動かない。

 不審に思ったシャクティが、首だけで背後を振り返る。

 

「どうした、ガネーシャ――」

 

 言葉は途中で止まった。

 そこには、奇妙な表情の主神がいたからだ。

 象の仮面の下。

 ガネーシャの口元が、ニヤリと――いや、抑えきれない喜びと興奮を噛み殺すように、大きく吊り上がっていたのだ。

 

「……ガネーシャ。その顔はなんだ。気色が悪い…」

「失礼な! 俺は常にプリティでクールなガネーシャだぞ!」

「では、なぜニヤついている。私のステータスに、何か異常でも刻まれているのか?」

 

 シャクティの声に、わずかな不安が混じる。

 あの闇の光線を浴びかけた影響か、それとも異界の武器を使った代償か。

 訝しむ眷属に対し、ガネーシャは書き写したばかりの羊皮紙をバサリと広げ、震える声で告げた。

 

「異常ではない! 見るがいい、この輝かしい数値を!」

 

 ガネーシャが指差したのは、ステータスの一番下の項目だった。

 そこには、長年【Lv.5】の壁に阻まれ、停滞していたはずの『経験値(エクセリア)』が、規定の数値を大きく突破していることが示されていた。

 

「『ランクアップ』が可能だ!!シャクティ!!」

「――っ!?」

 

 その言葉に、常に冷静沈着なシャクティの表情が、驚愕に崩れた。

 【Lv.5】から【Lv.6】へ。

 長年、彼女の前には分厚い壁が立ちはだかっていた。実直に鍛錬を重ねても届かなかったその頂に、今日、たどり着いたのだ。

 

「私が……Lv.6に……?」

「そうだ! お前は今日、強大な敵に立ち向かい、仲間を信じ、己の限界を超えた! その魂の輝きが、新たな位階への扉を開いたのだ!」

 

 ガネーシャは感極まった様子で、「俺がガネーシャだ……!」と涙ぐみながらポーズをとっている。

 シャクティは呆然と自分の手を見つめた。

 まだ微かに残る、『約束のお守り』の温もり。

 頑なに個の武を求めていた自分が、ソラという少年に感化され、他者を信じて放った一撃。それこそが、彼女に足りなかった最後のピースだったのだ。

 

「……ふっ」

 

 シャクティの口元から、自然と笑みがこぼれた。

 それは主神につられたような、けれど確かな達成感に満ちた笑顔だった。

 

「ありがとうガネーシャ。……どうやら、あの子に感謝しないといけないようだ」

 

 そう言って服を整えようとしたシャクティを、ガネーシャが慌てて呼び止めた。

 

「待て待て、シャクティ! 驚くのはまだ早い!」

「まだ何か?」

「むしろここからが本番だ。……よく見るがいい。新たに発現した『魔法』と『スキル』の欄を」

 

 ガネーシャが意味ありげに羊皮紙の下部を指差す。

 シャクティは怪訝そうに眉を寄せ、そこに記された神聖文字を目で追った。

 そして次の瞬間、彼女の目は限界まで見開かれた。

 

「なっ……!?」

 

 そこには、明らかにオラリオの常識からは外れた、異質な力が刻まれていたのだ。

 まず目に飛び込んできたのは、新たな【スキル】の記述だった。

 

【スキル】

『トリニティ・リミット』

・連携技発動権

・発動中、参加者全員の精神力(マインド)を消費

・発動動作中、対象者へのあらゆる物理・魔法干渉を大幅に軽減

・消費した精神力の総量に比例して、超広範囲の光属性複合攻撃を発生

 

「『トリニティ・リミット』……?」

 

 シャクティは眉をひそめた。通常のスキルであれば、己の能力を自己完結で向上させるものがほとんどだ。だが、この『他者との連携』を大前提とし、周囲を強制的に巻き込む効果はあまりにも特異で、オラリオの常識から外れている。

 今日の戦闘を思い返す。ソラ、シャクティ、そしてベート。確かに3人だった。あの連携が、魔法ではなく一つのスキルとして昇華されたというのか?

 

「だが、これだけではないぞ。真に驚くべきは、この【スキル】だ」

 

 ガネーシャの声が、興奮で微かに震えている。

 促されるままに視線を移したシャクティは、次の瞬間、信じられないものを見たかのように目を限界まで見開いた。

 

「なっ……!?」

 

 そこには、オラリオの常識、いや、この世界の常識を無視した、とんでもない「力」が刻まれていたのだ。

 

【スキル】

『キーブレード』

・特殊武装顕現。

・あらゆる鍵の開閉。

・心の解放。

・斬撃・打撃属性の任意変更。

・闇の魔物に対する超高攻撃補正。

・手元への瞬時召喚。

・資格者への一時譲渡可能。

・キーチェーン交換による形態・性能・アビリティ変化。

 

「ば……馬鹿な……」

 

 常に冷静なシャクティの口から、呻くような声が漏れた。

 あらゆる鍵を開け、どこにでも召喚でき、姿形を変え、闇を滅ぼす剣。

 それは、まさしく今日、彼女が目の当たりにし、一時とはいえ手にした――ソラの力そのものではないか。

 

「ガネーシャ、これは……一体どういうことだ。私のスキルが、ソラの武器そのものになっているなど……」

 

 混乱する眷属に対し、主神は仮面の下でニヤリと笑い、両手を広げて見せた。

 

「素晴らしいとは思わんか! 神の恩恵(ファルナ)は、子供たちの経験と心象を映す鏡! お前は今日、あの鍵に触れ、その本質に誰よりも深く『同調』した! その強烈な体験が、お前の魂に焼き付き、新たな力として発現したのだ!」

「魂に……焼き付いた……」

 

 シャクティは自分の手のひらを見つめた。

 あの時、『約束のお守り』を握りしめた感覚が蘇る。他者との繋がりを力に変える、温かくも強大な力。

 まさか、あれがたった一度の貸し借りではなく、彼女のステータスそのものを書き換えてしまうほどの事態になるとは。

 

 シャクティは戦慄した。ソラという存在は、オラリオにとって劇薬すぎる。

 だが同時に、胸の奥底から湧き上がってくる高揚感を否定できなかった。

 シャクティは羊皮紙を強く握りしめ、決意を秘めた瞳で夜景を見据えた。




ヘスティアモチーフのキーブレードはエバーアフターみたいな感じだと思ってください
キーブレード「この娘の心は良いな…」


・アダマンタイト・アーマー
アダマンタイト製のガード アーマー。
ある扉をキーブレード使いから守るために人工的に生み出されたハートレス。
アダマンタイト製のため固く。闇の光線や闇の砲台など。多彩な攻撃を持つ。
ガード アーマー同様、手足のパーツを破壊しないと胴体に攻撃が通らない。
見た目のわりにパーツ一つ一つの重さは軽い
仮にこれをソラ抜きで倒すならLv.6が数人必要。
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