キングダムハーツ オラリオ ミィス   作:小説好きー

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ふと思いついたやつ


番外編:もしもグーフィーとドナルドもいたら…

おまけ:もしもグーフィーとドナルドもいたら

 

 

【鋭すぎる王宮騎士隊長と、女神の気苦労】

 

 かまどに火が入り、夕食の準備が進む廃教会の地下にて。

 今日の冒険を終えたベルが着替えている間、ヘスティアとソラたち三人は、テーブルを囲んで談笑していた。

 話題は自然と、ベルの急成長の理由について及んだ時だった。

 

「それにしても、ベルの成長速度は本当にすごいなぁ。やっぱり、何か明確な『目標』があるからなのかな?」

 

 ソラが感心したように呟くと、それまでおっとりと茶を啜っていたグーフィーが、何でもないことのように口を開いた。

 

「そうだねぇ。きっとベルは、アイズに追いつきたいぐらい好きなんだね。アヒョッ!」

 

「「えっ!?」」

 

 ソラとドナルドが素っ頓狂な声を上げて驚く。

 だが、それ以上に心臓が止まりそうになったのはヘスティアだった。

 

(はぁあああ!! な、なんでグーフィー君が気づいているんだーっ!?)

 

 ヘスティアが冷や汗をダラダラと流して硬直する中、ドナルドが身を乗り出した。

 

「なんでそう思うのグーフィー! ベルはそんなこと一言も言ってないぞ!」

「そうだよ! 確かにアイズの話はよく出るけどさ!」

 

 二人の問いかけに、グーフィーはのんびりと人差し指を立てて説明する。

 

「だって、こないだ『豊饒の女主人』で皆で一緒にご飯を食べた時、ベルはずーっとアイズのことを見てたじゃないか」

 

「「…………」」

 

 ソラとドナルドが顔を見合わせる。

 そして、ヘスティアは頭を抱えてテーブルに突っ伏したくなった。

 

(鋭い……! こののんびり屋、あの酒場でのベル君の視線に気づいてたっていうのかぁ……!?)

 

 ヘスティアの脳裏に、最悪の予想が駆け巡る。

 この「お節介焼き」のトリオのことだ。ベルの恋心に気づいたとなれば――。

 

『へー! ベル、アイズのこと好きなのか! よーし、俺たちが協力してやるよ!』

『デートはこうやるんだ!』

『プレゼント作戦だ!』

 

 などと、ベルとあのヴァレン何某の恋路を全力で応援し始めてしまうのではないか。

 もしそうなれば、愛しのベルが、あの女のもとへ走ってしまう未来が確定してしまう。

 

(だ、ダメだ! それだけは阻止しなきゃいけない! ボクのベル君がぁぁぁ!!)

 

 ヘスティアが必死に話題を逸らそうと口を開きかけた、その時 、ソラがポンと手を打った。

 

「なるほどなぁ……ベルがアイズをねぇ」

「そっかぁ、そういうことだったんだね……」

 

 二人は深く納得したように頷き合う。

 終わった。ヘスティアが絶望に目を閉じた瞬間、ソラが身を乗り出して言った。

 

「だったら俺、もっとベルに闘い方を教えるよ! アイズって凄い剣士なんだろ?だったら、今のままじゃ手数が足りないもんな!」

 

「は……?」

 

 ヘスティアがポカンと口を開ける。

 続いてドナルドが杖を振り上げた。

 

「だったら僕は魔法をもっと教えるよ! あのアイズって子は風を使うんだろ? じゃあベルには一緒に戦えるようにエアロを使いこなせなきゃダメだ!」

 

「えっ……?」

 

 予想の斜め上の反応に、ヘスティアの思考が停止する。

 そこに、グーフィーもニコニコと会話に入ってきた。

 

「そうだねぇ。アイズは攻撃が激しいから、一緒に戦うならベルの守りを固めないとね。僕が盾の使い方や、受け流しの極意を教えてあげるよ。アヒョッ!」

 

「お、いいなグーフィー! じゃあ明日のダンジョン探索は、ベルの特訓メニューを変えてみるか!」

「賛成! 『憧れの人』と肩を並べて戦えるようになるには、もっと強くならなきゃな!」

 

 盛り上がる三人。

 彼らの頭の中にあるのは「恋愛成就」ではなく、「ライバル」としての憧れだったのだ。

 「好き=隣に立つために強くなりたい」という、思考回路である。

 

(よ、よかったぁぁぁ〜〜〜……!)

 

 ヘスティアは脱力し、椅子に深く沈み込んだ。

 彼らが色恋沙汰に疎い……いや、純粋に「強さへの憧れ」として解釈してくれたことに、心の底から安堵する。

 

「ふぅ……あー、びっくりした。キミたちが変な気を回すんじゃないかってヒヤヒヤしたよ」

 

 ヘスティアが小声で呟き、胸を撫で下ろしていると。

 ふと、視線を感じた。

 

 顔を上げると、ソラとドナルドが熱く戦術論を交わしている向こうで、グーフィーだけが静かにヘスティアを見ていた。

 そして。

 

 パチッ。

 

 グーフィーは、ヘスティアに向けて、悪戯っぽく片目を瞑ってみせたのだ。

 

「――――ッ!?」

 

 ヘスティアは息を呑んだ。

 そのウィンクの意味。

『僕はわかってるけど、今は黙っておくよ』あるいは、『ヘスティアの気持ち、応援してるよ』そんな、全てを見透かしたような、温かくも食えない大人の合図。

 

(こ、こいつ……!! 全部わかってて、わざと話をそらしたのか!?)

 

 天然ボケに見えて、実は誰よりも周りが見えているグーフィーにヘスティアは驚愕で顔を真っ赤にしながら、のんびりと笑うグーフィーに対し、改めて「敵に回してはいけない相手だ」と戦慄するのだった。

 

 

 

 

【異界の師匠たちと、白兎の特訓】

 

 早朝のオラリオ。まだ街が目覚めきっていない時間帯、ダンジョンで激しい金属音と、熱の入った掛け声が響き渡っていた。

 

「いくぞベル!」

 

 ソラがキーブレードを逆手に持ち替え、ベルの懐へと鋭く踏み込む。

 

「うわぁっ!? は、速い……!」

 

 ベルは必死にヘスティア・ナイフで防御するが、ソラの動きは変幻自在だ。

 正面から切り結んだかと思えば、くるりと体を回転させて背後に回り込み、また次の瞬間には上空から急降下してくる。

 

「ベル!! 止まっちゃダメだ! 流れるように動き続けるんだ!」

「動き、続ける……!」

「そう! 攻撃を弾かれた反動で回転して次の攻撃に繋げたり、壁を蹴って死角に飛び込んだり……。全身をバネにするイメージだ!」

 

 ソラは実演するように、庭の木を蹴って宙返りし、着地と同時に斬撃を繰り出した。

 フリーフローアクション。重力すら味方につけるその身軽さは、敏捷を得意とするベルにとって最高の手本だった。

 

「手首だけで振るな! 腰を入れて、足で地面を掴んで……そう、いい感じだ!」

 

 ソラの教えを受け、ベルの動きから無駄が消えていく。

 単調だった刺突が、踊るような連撃へと昇華されていくのを肌で感じていた。

 

「ソラ! 次はボクの番だぞ!」

 

 ソラの指導が一段落すると、杖を振り回して割り込んできたのはドナルドだ。

 ドナルドは杖の先から小さな炎と雷を交互に出しながら、真剣な眼差しで熱弁を振るう。いつものような騒がしい鳴き声は混じっていない。

 

「いいベル、魔法で一番大切なのは『イメージ』なんだ! ただ撃つだけなら誰でもできる! 炎をどう動かすか、雷をどう落とすか……頭の中で鮮明に思い描くんだ!」

「イメ、ージ……」

「そう! ベル、君達の世界の魔法は僕たちのとは違うけど君の魔法は僕たちのと近い。だったら、剣劇の合間に牽制で撃ったり、敵の足元に撃って体勢を崩したり、もっと工夫できるはずだよ!」

 

 ドナルドは杖を掲げ、「サンダー!」と叫んだ。

 雷撃が岩を正確に砕く。

 

「魔法はトドメの一撃にもなるし、自分を守る壁にもなる! 魔力を体の中で常に循環させて、いつでも撃てるように意識するんだ! さあ、走り込みながらモンスターを狙う練習だ、百回やるぞ!」

「ひゃ、百回!? が、頑張ります……!」

 

 宮廷魔導士の容赦ない指導に、ベルは悲鳴を上げながらも必死に食らいつく。

 魔力の制御と並行思考。それは『並列詠唱』の基礎となる技術だった。

 

 そして、ヘトヘトになったベルを待ち受けていたのは、大きな盾を構えた長身の騎士だった。

 

「アヒョッ! お疲れ、ベル。最後は僕と『守り』の練習だよ」

 

 グーフィーは優しく微笑むと、ベルの方を見た。

 ベルの左手には、禍々しくも重厚な、獣の顔が彫り込まれた巨大な盾――『ディフェンダー』が握られている。

 

「うぅ……やっぱり重いです、グーフィーさん。これを持って動くのは……」

「最初はそう感じるかもねぇ。でもベル、盾はただの壁じゃないんだよ」

 

 グーフィーは自身の盾を構え、ベルに向き合う。

 

「盾はね、敵の攻撃を防ぐだけじゃなくて、立派な武器にもなるんだ。その重さと、硬さを利用するんだよ」

「武器に、ですか?」

 

 ベルがまじまじと盾を見る。

 

「そう。例えば、敵が近づいてきたら……こうっ!」

 

 グーフィーが踏み込み、盾の面を勢いよく前に突き出した。

 ドォン! と空気が爆ぜるような音がする。シールドバッシュだ。

 

「その重さでぶつかれば、大きなモンスターだって怯ませることができる。それにね……」

 

 グーフィーは一度距離を取ると、自身の盾を構え、腕を大きく振りかぶった。

 

「遠くにいる敵には、こうするのさ! それっ!」

 

 ヒュンッ! と風を切り、グーフィーの手から盾が放たれた。

 回転しながら飛翔した盾は、ダンジョンから生まれたモンスターにガォン! と命中し、そのままブーメランのように弧を描いてグーフィーの手元に戻ってきた。

 

「えええっ!? な、投げたぁ!?」

「アヒョッ! びっくりした? 盾を投げつけて相手が混乱している隙に、ベルの自慢の足で一気に近づくんだ」

 

 ベルは唖然としながら、自分の手にある『ディフェンダー』を見つめた。

 ただ身を守るだけの道具だと思っていたそれが、急に攻撃的な牙を剥いたように思えた。

 

「守るだけじゃ、いつか押し切られちゃうからね。防いで、殴って、投げつける! 盾は自由に使っていいんだよ、ベル」

「投げて、殴る……はい!」

 

 ベルは『ディフェンダー』を構え直した。

 ずしりと重いその質量が、今は敵を打ち砕く力強く頼もしい相棒のように感じられる。

 

「さあ、ゆっくりでいいからやってみよう! 僕が攻撃するから、まずは受け流して、シールドバッシュだ! いくよ、ベル!」

 

 三者三様の教え。

 ソラからは「剣の機動力と体術」を。

 ドナルドからは「厳格な魔力制御と戦術」を。

 グーフィーからは「盾を使った攻防一体の技術」を。

 

 昼休憩の頃には、ベルは地面に大の字になって倒れ込んでいたが、その瞳はかつてないほどキラキラと輝いていた。

 

「へへ……すごいなぁ。みんな、本当にすごい……」

 

 異界の英雄(ヒーロー)たちから注ぎ込まれる技術は、乾いたスポンジが水を吸うように、急速に白兎の血肉となっていった。

 Lv.2へのランクアップを控えた少年の「器」は、この三人の師匠によって、確実に広げられていたのだった。

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