キングダムハーツⅣだとどのディズニーワールドに行ったり、どのFFキャラが出るのか楽しみ
それと前回の変更でモバイルポータルを渡すのにロキ・ファミリアも入れました。
ロキ・ファミリアの
その広大な中庭には、静かな、しかしひりつくような剣気が充満していた。
「……っ」
額から冷や汗を流しながら、白髪の少年ベル・クラネルが大地を蹴る。
真っ直ぐに見据える先には、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの姿があった。
純粋な白兵戦のみで行われる過酷な特訓。ベルは手にした【ヘスティア・ナイフ】を握り直し、足を踏み込みアイズの懐へと潜り込む。そして、持てる技術と速度のすべてを乗せて、鋭い刃を何度も何度も振り下ろした。
しかし、アイズは表情一つ変えることなく、鞘だけで、ベルの猛攻をことごとく、そして極めて軽やかに受け流していく。
瞬きする間に幾度もの斬撃が交錯した後、アイズはベルの刃を鞘の腹で滑らせるように軌道を逸らすと、僅かに生じた隙を逃さず、死角から鞘の先端をベルの顔面へと正確に叩き込んだ。
「ぐあ……っ!」
容赦のない一撃に、ベルの身体が宙を舞い、後方へと大きく吹き飛ばされる。
だが、空中で体勢を崩しながらも、ベルの闘志は決して折れていなかった。彼は痛みに顔を歪めながらも咄嗟に懐から投げナイフを引き抜き、吹き飛ぶ勢いを利用してアイズへ向けて鋭く投擲する。
空気を裂いて一直線に迫る凶刃。しかしアイズは歩みを進めることすらなく、手首のスナップだけで鞘を一閃させ、見えない速度で迫る投げナイフをいとも容易く弾き落とした。
地に足をつき、乱れた体勢を立て直したベルは、深く息を吸い込む。
魔法という最大の切り札に頼れない今の状況で、彼が武器にできるのは己の敏捷性と純粋な踏み込みの力のみ。ベルは黒い刀身のヘスティア・ナイフを力強く握り込み、再び大地を爆発させるように蹴り出してアイズへと肉薄した。
「はあああああっ!」
全身のバネを活かした、重く鋭い渾身の斬撃。それがアイズの華奢な身体を両断せんと斜め上から振り下ろされる。
しかし、アイズは涼やかな瞳を微塵も揺らすことなく、再び鞘を盾にしてその一撃を難なく正面から受け止めた。
力と力の拮抗。鍔迫り合いの形になったその瞬間、ベルは押し込まれる力を逆手に取り、己の身体能力を駆使して鋭い足蹴りを放った。
意表を突く下段からの蹴り技。しかし、アイズの目はそれすらも完全に見切っていた。
彼女は刃を鞘で押さえ込んだまま、空いたもう片方の手を無造作に伸ばし、迫り来るベルの蹴り足を空中でがっちりと掴み取る。
「えっ……」
足首を固定され、ベルの顔に驚愕の色が浮かんだ直後。
アイズは掴んだベルの足を軸にして、自身の身体を軽く捻るようにして力の方角を逸らすと、いとも容易くベルの身体が中庭の宙を舞い、後方へと大きく吹き飛ばされる。
そこへ、アイズが一切の容赦なく追撃の踏み込みを見せた。アイズは瞬時に距離を詰め、空中で無防備なベルの胴体へと必殺の突きを放つ。
万事休すかと思われたその瞬間、ベルは空中で姿勢を捻り、グライドを発動させた。
重力の法則を完全に無視し、目に見えない風の斜面を滑り降りるように、ベルの身体が不自然な軌道で空中を横滑りする。
アイズの放った必殺の切っ先が、ベルの衣服の布地だけを掠めて虚空を突いた。
追撃を紙一重で回避し、アイズの体勢が伸びきったその隙を突く。
ベルは空を滑空した状態のまま、右手に握りしめていたヘスティア・ナイフを強烈な光と共にキーブレード・ベルウェスタに変化させた。
ベルは空中の優位を活かし、質量を増した新たな刃をアイズの肩口へと鋭く振り下ろす。
しかし、アイズの反応速度は、ベルの決死の予測すらも遥かに凌駕していた。アイズは伸びきっていたはずの体勢から、空中で僅かに背筋を反らせて剣撃の軌道を躱すと、ベルの刃が届くよりも早く、手にした鞘を逆手で跳ね上げ、ベルの右手首へと的確に叩き込んだ。
「っ!?」
手首の骨が軋むほどの鋭い激痛に、ベルは思わずキーブレードを手放してしまう。
両者が中庭の芝生へと着地した直後、ベルはすぐさま空になった右手を伸ばし、宙を舞うキーブレードを手元へと呼び戻そうと、光の粒子が集束し、堅牢な柄が再び掌に収まった、まさにその刹那。
武器を取り戻し、ベルの意識が「反撃」へと切り替わったその一瞬の硬直を、アイズは完全に読み切っていた。
息を呑む暇すら与えないとばかりに冷酷に振るわれた鞘が、先ほどと寸分違わぬベルの手首の死角を撃ち抜いた。
二度目の衝撃が神経を貫き、ベルは手に入れたばかりのキーブレードを再び手放し、苦悶の表情で大きく後退する。
弾き飛ばされたベルを視界の端に捉えながら、アイズは宙に浮いたキーブレードの柄を自らの空いた左手で力強く掴み取り、流れるような動作で後退するベルへと鋭く踏み込み、必殺の一撃を振り抜こうとする。
だが、アイズが筋肉を躍動させ、武器を振り下ろしたまさにその瞬間。彼女の手に握られていたはずのキーブレードは、淡い光の粒子となって一瞬で虚空へと溶け落ちた。
資格ある者以外には決してその身を委ねないという、キーブレードの絶対的な特性。
己の手の中で突如として武器が質量ごと消滅するという未知の現象に、アイズの動きがほんの僅か、瞬きの半分ほどの時間だけ停止した。
その千載一遇、奇跡のような隙をベルは見逃さなかった。
後退する勢いを足の裏で強引に殺し、大地を抉りながらディフェンダーを出現させ、両腕を前へと突き出す。
ベルは自身の全体重と、前進する全速力をその巨大な盾に乗せ、アイズの華奢な身体を粉砕する勢いで渾身のシールドバッシュを叩き込んだ。
鋼鉄の壁が激突するような強烈な威力を伴った突撃。
しかし、アイズは表情一つ変えることなく、押し寄せる巨大な盾の表面へ、空いた左手を無造作に添えた。
次の瞬間、大気が震えるほどの衝撃が周囲に叩きつけられる。だが、アイズの足は中庭の芝生から一歩たりとも押し込まれてはいなかった。
少女の細腕一本によって、巨大な盾の質量とベルの渾身の突撃は完全に相殺され、受け流される。そしてその強烈な反作用により、ベルの身体は木葉のように再び後方へと大きく弾き飛ばされた。
体勢を完全に崩し、無防備な姿で宙を舞うベル。
そこへアイズが疾風の如き速度で急接近し、高く跳躍する。太陽の光を背に受け、圧倒的な死角となる上空から、愛剣の鞘を無慈悲な速度で真っ直ぐに振り下ろした。
ベルは咄嗟にディフェンダーを頭上に掲げて防御姿勢をとるが、第一級冒険者の筋力と重力が乗った一撃の破壊力は絶大だった。
強固な盾ごと押し潰すような圧倒的な力が圧しかかり、防御の姿勢ごとベルの身体は中庭の地面へと激しく叩きつけられる。
大地が小さく陥没し、土埃が舞い上がる。盾の裏側で衝撃を諸に受けたベルは、酸素を吐き出し、そのまま白目を剥いて完全に意識を手放したのだった。
土埃が晴れた芝生の上で、大の字になって完全に沈黙したベルの元へ、――ワンダニャンがトコトコと駆け寄っていく。
ワンダニャンが心配そうにベルの身体にすり寄り、ペロペロと頬を舐めながら暖かな光の粒子を振り撒き始めると、気絶した彼の身体から打撲の跡や痛みが急速に癒えていく。
その一方、少し離れた場所からこの特訓の一部始終を見学していたロキ・ファミリアの団員たちは、一様に顔を引きつらせていた。
手加減をしているとはいえ、格下の少年が繰り出す未知の力や決死の奇策のすべてを、暴力的なまでの純粋な技術と速度で捻じ伏せ、最後は力技で地面に叩き埋めるというアイズの苛烈な戦いぶり。その微塵も容赦のない光景に内心で冷や汗を流し、ドン引きしているのだ。
しかし、当のアイズ本人は周囲の引きつった視線に気づくこともなく、静かに息を整えながらベルの足元に歩み寄っていた。
彼女は、ワンダニャンの放つ治癒能力によってみるみるうちに寝息を立て始めるベルの顔を見下ろしながら、密かに胸中で極めて危険な結論を導き出していた。
(……すぐに回復できるなら。次はもう少しだけ、強くしても大丈夫かな?)
アイズが思い描く、さらなる地獄のスパルタ指導の予感。
そんな恐るべき事実が待ち受けているとは露知らず、ベルはワンダニャンの温もりの中、今はただ心地よさそうに健やかな寝息を立て続けるのだった。
・
空を滑空し、地に叩きつけられ、己の限界を何度も引き出される過酷な午前の特訓が終わりを迎えた昼下がり。
ロキ・ファミリアの本拠地『黄昏の館』にある広大な食堂の片隅で、ベルは冷や汗を流しながら完全に萎縮していた。
巨大な長机には、迷宮都市の最大派閥にふさわしい豪華な昼食が次々と並べられていく。しかし、その席に案内されたベルの顔に食欲の喜びはなく、ひたすらに申し訳なさと居心地の悪さだけが浮かんでいた。
「あ、あの……! やっぱり僕はお暇します! 他派閥である僕が、ロキ・ファミリアの皆さんの大切な食糧や資金で用意された食事を頂くなんて、いくらなんでも図々しすぎます……!」
立ち上がり、深く頭を下げて辞去しようとするベル。
しかし、その細い肩に優しく手が置かれた。振り返ると、
「遠慮しないでくれ、ベル・クラネル。君には以前、僕達の不手際で怖い思いをさせてしまった……これは、僕達からのささやかな贖罪の意味も込められているんだ。ここで君を空腹のまま帰してしまえば、ロキ・ファミリアの名折れになってしまうからね」
「うっ……そ、それは……」
かつて上層で逃がしたミノタウロスによって死にかけた一件。その贖罪という言葉を、フィンから真っ直ぐに向けられ、ベルにそれを突っぱねる度胸などあるはずもなかった。
しかし、それでも他ファミリアの厨房で作られた料理に手をつけることに強い難色を示し、ベルは視線を彷徨わせて葛藤を続ける。
そんなベルの窮地を見かねて、隣の席に座っていたソラが明るい声を上げた。
「だったら、俺がベルの分を作るよ!」
「えっ? ソラ、君がかい……?」
「うん! こう見えて俺、『リトルシェフ』から料理の特訓をみっちり受けてたから、腕には自信があるんだ。それに、アイズとの特訓で疲れてるベルには、専用のメニューが必要だろ?」
そう言ってソラは屈託なく笑うと、フィンの許可を得て手際よく黄昏の館の厨房の一部を借り受けた。
他ファミリアの料理人の手によるものではなく、あくまで「友人であるソラの手作り」という形になれば、ベルの心理的な負担も大きく減るというソラなりの気遣いだった。
しばらくして、厨房から香ばしくも食欲をそそる匂いが漂い始め、ソラが両手に大きなお盆を抱えて戻ってきた。
ベルの前に並べられたのは、疲労困憊の身体に負担をかけず、かつ午後の特訓へ向けて爆発的な活力を生み出すように計算し尽くされた『特製フルコース』だった。
【前菜:星型果実と香草のクリアスープ】
「まずはこれ。胃腸を温めて、失われた水分を補給するためのスープだよ」
澄み切った琥珀色のスープの中には、星を模したような黄色い果実の薄切りと、香りの良いハーブが浮かんでいる。一口飲むと、優しい塩味と果実の微かな酸味が胃の腑に染み渡り、特訓で強張っていたベルの全身の緊張が嘘のように解れていった。
【主菜:清流魚の香草蒸し・彩り野菜の煮込み《ラタトゥイユ》添え】
「メインは肉じゃなくて、消化に良い白身魚にしてみたんだ」
魔の森から採れた滋養豊かな香草と共に見事に蒸し上げられた魚は、口に入れた瞬間に解けるほどの柔らかさ。その横には、赤や黄色の野菜を細かく刻んで煮込んだ色鮮やかなラタトゥイユが添えられている。ビタミンと良質なタンパク質が豊富で、午後の激しい動きの妨げにならないよう、油分は極限まで抑えられていた。
さらにパンにラタトゥイユを乗せて頬張ると、野菜の甘みと小麦の風味が口いっぱいに広がる。
【デザート:ほんのり塩味が効いた、海塩のソルベ】
「甘いのが苦手なベルにこれとかどうだ!」
食事の最後に出されたのは、美しい淡い水色をした氷菓だった。甘さの中に絶妙な塩気が混ざり合う不思議な味わい。それは、激しい運動で失われたミネラルを急速に補給すると同時に、疲労で熱を持っていたベルの脳を心地よく冷却し、意識を極限までクリアにする効果を持っていた。
(さっきまで鉛のように重かった身体が、羽みたいに軽くなっていく……)
氷菓を口へ運ぶベルは、目を輝かせて内なる感動を噛み締めていた。
ただ美味しいだけではない。食事を進めるごとに、ベルの身体の奥底から、信じられないほどの活力が湧き上がってくるのだ。
ベルは最後に残った淡い水色の氷菓をスプーンですくい続ける。
甘さと塩気が絶妙に混ざり合う不思議で優しい味わいに、ベルの顔には自然と満面の笑みがこぼれていた。全身を満たす未知の活力と共に、午後のアイズとの特訓へ向けて、ベルは静かに、しかし確かな闘志を胃の腑から燃やし続けていた。
ソラの特製フルコースによって身体の奥底から尽きせぬ活力が湧き上がってくるのとは裏腹に、広大な食堂の片隅に座るベルの背中には、四方八方から突き刺さるような無数の視線が降り注いでいた。
迷宮都市の最大派閥に所属する団員たちからの、値踏みするような鋭い眼差し。その視線の多くには、隠しきれない嫉妬や羨望の色が濃く混じっていた。
彼らの目に映るベル・クラネルは、希少な無詠唱魔法を操り、あのアイズ・ヴァレンシュタインの記録すら容易く抜き去って『世界最速兎』の異名を得た、神に愛された天才に他ならない。なぜ他派閥の、それもぽっと出の素人が自分たちの敬愛する剣姫から直接指導を受けているのか。そんな理不尽に対するやっかみが、食堂の空気を重くしていた。
しかし、その一方で、全く異なる熱を帯びた視線を送る者たちもいた。
午前の特訓を回廊から見学していた一部の団員たちである。彼らは、圧倒的な格上であるアイズに何度叩き伏せられ、無慈悲に地面へ沈められても、決して瞳の光を絶やさず泥臭く立ち上がり続けたベルの姿を直接目撃していた。
天才などではない、ただひたすらに前を向く不屈の闘志。それを見せつけられた彼らは、己の不甲斐なさを深く恥じ、言葉を交わすこともなく静かに闘志を燃やし始めた。そして、昼食もそこそこに席を立ち、己を鍛え直すために武器を取って迷宮の深淵へと向かっていったのだ。
敵意と好意、そして焦燥感が入り交じる複雑な視線の数々に当てられ、ベルはすっかり気まずくなって肩を縮めていた。
そんなベルの傍ら、食堂の別テーブルでは、賑やかな騒ぎが起きていた。
「可愛いーっ! すっごく柔らかいー!」
ティオナが、丸みを帯びた愛らしいドリームイーター、ワンダニャンの身体を腕いっぱいに抱きしめ、頬擦りをして歓声を上げている。
さらに、その周囲にはリヴェリアや、レフィーヤをはじめとするエルフの面々が、興味津々な様子で集まっていた。
夢を食む存在であるワンダニャンから発せられる気配がこの世界の精霊に極めて近い性質を帯びていたため、エルフたちの心を強烈に惹きつけ、完全に魅了してしまったのだ。エルフたちがワンダニャンの愛らしさに頬を緩めるという珍しい光景が、食堂の重い空気をいくらか和らげていた。
最大派閥が放つ重圧や、他者からの冷ややかな視線にすっかり縮こまっていたベルだったが、外の世界の不思議な存在がもたらしたその微笑ましい光景に、張り詰めていた息を少しだけ吐き出し、自然と柔らかな笑みを浮かべるのだった。
・
食堂で和やかな空気が流れてから時間がそれほど経った頃。
『黄昏の館』の奥に設けられた厳重な執務室では、派閥の首脳陣とソラを交えた極秘の会議が開かれていた。
円卓を囲むのは、主神であるロキ、団長のフィン、副団長のリヴェリア、そしてアイズ。彼らの表情は一様に険しく、議題は当然、二十四階層で発生した未曾有の異常事態についてだった。
「……あの時、赤髪のやつが言っていた…『五十九階層で待つ』って」
ソラの口から語られた事実。それは、都市の暗部で暗躍する組織が、未開の深層でさらに恐るべき計画を進めていることを示唆していた。
静かな緊張が走る中、ソラは円卓に身を乗り出し、真剣な眼差しでフィンへと訴えかける。
「あいつらがハートレスと関わっているなら、見過ごすわけにはいかない。やっぱり、俺もその遠征に……」
「気持ちは嬉しいが、焦らないでくれソラ。君が僕達の遠征に参加したいというのなら、まずは当初の予定通り、君には上層にあるという『鍵穴』の発見を優先してほしい」
フィンが示す、理知的で筋の通った条件。その言葉の正論に、ソラは少しだけ悔しそうに目を伏せながらも、深く頷いて了承した。
深層への遠征に関する方針が固まり、会議の空気がひと段落したその時だった。
「そういえば、ずっと気になってたことがあって……」
ソラが思い出したように顔を上げ、円卓の面々を見回した。
「二十四階層で倒れたレフィーヤがハートレスに襲われた時に、レフィーヤがキーブレードを出したんだ。シャクティやベルみたいに俺のキーブレードを貸してないのに、どうしてこのレフィーヤが呼び出せたのか、ずっと不思議で……」
その言葉に、執務室の空気が再び凍りついた。
「レフィーヤが? キーブレードを呼び出したのかい?」
「うん。でも、本人に聞こうにも、あの時のレフィーヤは
ソラの説明を聞き、フィンたちが深い思考の海に沈む中、ふとアイズが静かな声で疑問を投げかけた。
「……ステイタスに、新しい『スキル』とか、出なかったのかな?」
その一言が、停滞していた空気を劇的に動かした。
ロキが弾かれたように顔を上げ、即座に立ち上がる。
「それや! 極限状態での未知の力の発現……ステイタスに何らかの変化が刻まれとる可能性は高いで! よし、ウチが今すぐレフィーヤの部屋に行って、ステイタス更新してくるわ!」
ロキはもの凄い剣幕で執務室を飛び出していった。
残された面々が静かに待つこと数分。
扉が開き、戻ってきたロキの様子は明らかにおかしかった。彼女は虚空を見つめたまま、完全に魂が抜けたような顔で頼りない足取りのまま歩み寄り、フィンの前へ一枚の羊皮紙を無言で差し出した。
「……マジ、やったわ」
「どうしたんだい、ロキ?」
尋常ではない主神の様子に、フィンが怪訝な顔で羊皮紙を受け取る。そこには、神の文字で記されたレフィーヤの最新のステイタスが翻訳されて記されていた。
フィンの目が、新たに追加された一つの項目の上で完全に釘付けになる。
====================
【キーブレード】
・あらゆる鍵の開閉
・心を解放する
・斬撃・打撃の属性変更
・闇の魔物に対して高い攻撃補正
・手元に召喚可能
・資格のある者に一時的に貸し出し可能
・キーチェーンを変更すると形、性能、アビリティが変化する
====================
「な、なんだこれは……」
横から羊皮紙を覗き込んだリヴェリアが、信じられないものを見るように声を震わせた。
ただの攻撃力上昇や耐性付与といった枠を完全に逸脱した、法則すら書き換えるような多種多様な能力の羅列。
キーブレードが、この世界のシステムである『
すると、何を思ったのか。
フィンが突然、着ていた上着を脱ぎ、躊躇うことなく上半身を露わにし始めたのだ。
「えっ!? ちょっとフィン!? 急にどうしたの!?」
突拍子もない行動にソラが慌てて声を上げるが、フィンは極めて真面目な顔でソラへと振り返った。
「ソラ。このスキルに書かれている『あらゆる鍵の開閉』という項目……これの検証がしたい。僕が背を向けるから、キーブレードを使ってくれないか」
そう言って、フィンはソラに対して無防備な背中を向けた。そこには、ロキ・ファミリアの紋章と、複雑な神の文字が刻まれたステイタスが存在しているはずだが、現在は不可視の状態に隠蔽されている。
「フィン! いくらなんでも、他派閥の者の前で自身のステイタスを晒すような真似は……!」
リヴェリアが即座に難色を示して止めに入ろうとする。派閥の最高責任者の能力値は、最大級の機密情報だからだ。
しかし、口では咎めながらも、彼女の視線はフィンの背中とソラの持つキーブレードに完全に釘付けになっており、その内心は未知の魔道具が神の法則にどう干渉するのかという事象に対する探求心で夢中になっていた。
戸惑うソラに対し、放心から復帰したロキが真剣な顔で説明を加える。
「ええか、ソラ。
「……。わかった、やってみるよ」
事の重大さを理解し、ソラは表情を引き締めてキーブレードを顕現させた。
そして、フィンへと鍵の先端を向ける。
「……!」
ソラが意志を込めると、キーブレードの先端から一条の眩い光線が放たれ、フィンの背中へと真っ直ぐに吸い込まれた。
光が背中に到達した瞬間、目に見えない強固な錠前が外れるような、硬質な音が執務室に響き渡る。
次の瞬間、何もなかったはずのフィンの背中に、ロキの紋章と緻密な神聖文字が鮮明に浮かび上がったのだ。
神の血も、特殊な霊薬も介さず、ただ異界の剣を向けただけで、神が定めた絶対の隠蔽法則が破られた。
「う、嘘じゃろ……」
「信じられん……
本来ならば絶対に不可能な事象を目の当たりにし、ガレスとリヴェリアは呆然と立ち尽くす。
沈黙を破ったのは、己の特権すら軽々と越えられた神、ロキの絶叫だった。
「こんなチート隠してたんか、あのドチビィィィィッ!!」
理不尽なツッコミと共にここにはいないヘスティアに絶叫するロキ。執務室は一気に喧騒に包まれた。
その騒ぎの端っこで。
(……いいな。レフィーヤ)
静かに佇むアイズは、ワンダニャンと交流しているであろうレフィーヤへ向けて、微かな、しかし確かな羨望の眼差しを向けているのだった。
・
執務室での騒々しい検証が一段落し、アイズとソラが中庭へと戻ってきた時のことだった。
彼らの視界に飛び込んできたのは、広大な芝生の上を信じられない速度で滑り抜けていく三人の姿である。
先陣を切ってディフェンダーの先端に立つベル。その後ろからラウルがベルの肩を掴んで乗り込み、さらに最後尾ではティオナがバランスを取りながら満面の笑みを浮かべていた。どうやら、ソラたちがいない間にすっかり仲良くなったようだ。
「いっくよー! もっと加速するよベル!」
「わ、ティオナさん揺らさないでください!」
「いやこれ、想像以上に速度出るっすね!」
三人は大きな歓声を上げながら、ディフェンダーを即席の乗り物にして中庭を縦横無尽に駆け回っている。
芝生を縦横無尽に駆け回り、最高潮に達した盛り上がりの最中、ティオナが無邪気な提案を口にした。
「ねーねー、あそこの壁、飛び乗ってみない?」
彼女が指差したのは、ホームを囲む低い城壁の一部だった。芝生の上を滑るだけでも精一杯のベルが慌てて制止しようとするが、ティオナの行動が早かった。彼女は最後尾で盾を強く踏み込み、無理やり軌道を城壁の方へと向けさせる。
「えっ、ちょっとティオナさん!? 無理ですよ!」
「アハハ! 大丈夫大丈夫! 行くよー!」
ティオナはベルの制止を笑い飛ばすと、城壁の目前でアマゾネスとしての規格外の身体能力を爆発させた。最後尾で盾を掴んでいた両手に凄まじい膂力を込め、さらに強靭な脚力で地面を強く蹴り上げる。三人の質量が乗った巨大な大盾を、自身の腕力と脚力だけで強引に宙へと跳ね上げたのだ。
三人を乗せたまま、ディフェンダーは重力の法則を無視したかのように高く舞い上がる。空中で絶妙な均衡を保ちながら、城壁の狭い天端に見事に着地した。
一瞬の静寂の後、三人は歓声を上げようとした。しかし、大人の男二人とアマゾネス一人の質量は、その狭い石造りの空間にはあまりに重く、不安定だった。
「わわわ!」
「ティオナさん……!?」
「あはは! 揺れる揺れるー!」
狭い城壁の上で、三人は滑稽なポーズで均衡を保とうと冷や汗を流す。しかし、ラウルが足を滑らせたのをきっかけに、均衡は完全に崩れた。
ディフェンダーが城壁から滑り落ち、三人はそこから放り出され、真っ逆様に地面へと落下した。
地上で見守っていたアイズとソラが驚きの声を上げようとしたその時、近くで遊んでいたワンダニャンが異変に気づいた。小さな体を俊敏に動かし、落下地点へと急行する。
ワンダニャンは落下する三人の真下へと滑り込むと、その小さな体をブワッと巨大な風船のように膨張させた。落ちてきた三人は、膨らんだワンダニャンの柔らかい背中に次々と激突する。
巨大なワンダニャンは三人の重さをしっかりと受け止め、その弾力でボヨンボヨンと弾み、衝撃を完全に吸収した。
ワンダニャンの弾力でポイポイと弾かれ、芝生の上に転がった三人。
「助かった……のかな?」
「ありがとう、ワンダニャン!」
ベルがホッとした表情で、体を元に戻したワンダニャンを抱き上げる。
その様子を、アイズとソラは呆れと安心が入り交じった視線で見つめるのだった。
その平和で和やかな光景を無言で見つめていたアイズの脳裏に、午前の特訓の記憶が鮮明に蘇った。
(……吹き飛ばした時、あの盾を使って滑るように体勢を立て直していた)
アイズは金色の瞳を細め、静かに思考を巡らせる。
現在のベルの動きは確かに目覚ましい成長を遂げている。しかし、格上の敵から重い一撃を受けて大きく吹き飛ばされた際、そこから次の動作へと移行するまでの『立て直し』が決定的に遅い。もし実戦で強力なモンスターから直撃を受ければ、その僅かな隙を突かれて命を落とすだろう。
ならば、あの盾を利用した滑走技術は、被弾時の衝撃を殺しつつ瞬時に戦闘態勢へ復帰するための、極めて有効な生存手段になり得るのではないか。
(……特訓のメニュー、変更しよう)
アイズは密かに頷き、静かな、しかし有無を言わさぬ足取りで楽しげに滑走するベルたちの軌道上へと歩み寄った。
「ベル」
不意に前方に立ち塞がり、平坦な声で名を呼んだアイズの姿に、ベルはひどく肩を震わせて盾を急停止させる。
ベルの目に映ったのは、鞘を構え、一切の感情を排した戦闘者の瞳で自分を見据える都市最強の剣姫の姿だった。
「特訓、再開するよ」
「あ、はい! よろしくお願いします、アイズさ――」
ベルが返事を終えるよりも早く、アイズは神速の踏み込みで間合いを詰め、その鞘をベルの胴体へと容赦なく叩き込んだ。
激しい衝撃と共に、ベルの身体が中庭の宙を舞い、後方へと勢いよく吹き飛ばされる。
「盾を使って、今の立て直し」
「えっ!? あ、はいっ!」
空中で慌ててディフェンダーを呼び出し、地面に叩きつけられる寸前で盾の表面を滑らせて体勢を整えるベル。
しかし、彼が息をつく間もなく、アイズはすでに目前へと迫り、再び手加減のない一撃を放っていた。
「遅い。もう一度」
再び容赦なく宙を舞うベル。
アイズの意図は明確だった。敵の重い攻撃を受けて吹き飛ばされた状態から、瞬時に盾を展開して衝撃を逃し、反撃の体勢を整える。その一連の動作が完全に身体に染み付くまで、ひたすらに吹き飛ばし続けるという地獄の反復練習である。
ソラの特製フルコースによって湧き上がる尽きせぬ活力が、この時ばかりはベルにとっての残酷な呪いとなった。どれほど吹き飛ばされ、身体を打ち付けられても、異常なまでの回復力が彼が気絶して楽になることを決して許さないのだ。
こうして、日が落ちてオラリオの街が完全な夜の闇に包まれるまでの間、中庭にはベルの悲鳴と、彼がひたすら虚空を舞う光景が絶え間なく繰り返されることとなったのである
ロキ・ファミリアの本拠地である『黄昏の館』が夜に包まれる頃、終わりの見えない地獄のようだったアイズの過酷な特訓は、ようやく一つの区切りを迎えた。
広大な中庭の芝生の上には、限界を超えて全身の筋肉を酷使し、大の字になって天を仰ぎながら荒い息を吐き出すベルの姿がある。その傍らでは、指導役であるアイズが一切の乱れを見せない静かな動作で、愛剣をゆっくりと鞘に収めていた。
そんな精根尽き果てた二人を労うべく、ずっと様子を見守っていたソラが歩み寄る。そして、自らの衣服のポケットへ深く手を入れると、今朝方ホームで手作りしてきた特製の軽食――『ジャガ丸くん』を取り出した。
「二人とも、本当にお疲れ様。一日中動いて、すごくお腹空いてるだろ?」
ソラの掌の上には、丁寧に包まれた四つのジャガ丸くんが乗せられていた。それぞれ、スイートチーズ、フルーツジャム、コーン、ベーコンチップという四種類の異なる味付けが施された自信作である。
疲労困憊で立ち上がることもできないベルを真ん中に挟む形で腰を下ろしたソラが、それぞれの味を提示したその瞬間。普段は感情の起伏が乏しいアイズの金色の瞳が、目に見えて強烈な輝きを放った。彼女は迷う素振りすら見せず、即座にスイートチーズの包みを自らの手元へ引き寄せる。
その素早い決断に苦笑しつつ、ベルが遠慮がちにベーコンチップを選ぶと、ソラは残ったコーンの包みを自分の分として手に取った。
「美味しそうな匂いやな。余ったんなら、ウチにも一つ頂戴な」
和やかな空気の中、いつの間にか背後まで近づいてきていた主神のロキがひょっこりと顔を出す。
ソラが最後に残っていたフルーツジャムのジャガ丸くんを快く手渡すと、ロキは早速それを一口かじり、驚愕のあまり大きく目を見開いた。
「うんまいなこれ! それに……なんやこれ、朝に作った言うてたのに、なんでこんなに温かいんや!?」
ロキからの手放しの称賛と驚きの声を受け、ソラは誇らしげに胸を張って笑みを浮かべる。
渡されたジャガ丸くんを味わうロキの驚きは尤もだった。それはただ温かいだけではない。生地の表面の絶妙な食感や、内側に閉じ込められた具材の鮮度に至るまで、まるでたった今、熱した油の鍋から引き上げられたばかりの『完全な出来たて』の状態で保存されていたのだ。
ロキは神としての鋭い慧眼をもって、これもソラが持つ未知の魔法による恩恵ではないかと推測する。
そして、その推測は正確に的を射ていた。
秘密は、ソラが身に纏っている衣服のポケットに施された、常軌を逸した規格外の機能によるものである。
イェン・シッドがソラの新たな旅立ちのためにこの服を仕立てた際、三人の妖精たちの手によって、ポケットの内部には想像を絶するほどの広大な収納空間が与えられていた。
さらに、マーリンの手によって、その空間には『時間停止』という神の領域に足を踏み入れる機能までが追加されていたのだ。このポケットの内部では物理的な時間の流れが完全に凍結されるため、ソラは旅の途中で作った繊細な料理や極めて貴重な食材を、一切腐らせることも冷ますこともなく、永遠に作りたての状態で持ち歩くことができる。
カイリやアクセルのために、外界と時間の流れが全く異なる特殊な修行場すら構築してみせるマーリンにとって、ただの衣服のポケットの時間を止めることなど、造作もない作業に過ぎない。もし理由を問われれば「なぜやらないのか」と平然と答える程度の、極めて日常的な魔法の応用であった。
そんな世界の理すら超越した常識外れの恩恵が込められていることなど、知る由もない。ただ目の前の極上の甘味に魅了されたアイズは、何も疑問に抱くことなく夢中でスイートチーズのジャガ丸くんを頰張っている。ベルもまた、限界を迎えていた空腹には勝てず無言でかぶりつき、ソラも二人の様子に目を細めながら自らの分に口をつけた。
「それにしても、あんなにアイズにボコボコに吹き飛ばされとったのに、よう最後まで折れずに頑張ったなベル」
温かいジャガ丸くんの味を堪能しながら、ロキが隣で息を整える白髪の少年へ、純粋な労いの言葉をかける。
「ありがとうございます。まだまだ、アイズさんの足元にも及びませんけど……」
「謙遜せんでもええ。自分みたいな真っ直ぐでええ子が、なんでヘスティアみたいな貧乏神のとこの子になっとるんや? もっと大手のファミリアから引く手あまたやったやろ」
神の純粋な疑問を真っ直ぐにぶつけられ、ベルは少しだけ寂しそうに視線を落とし、自らの過去を振り返るように語り始めた。
「オラリオに来たばかりの頃は、どこのファミリアにも入れてもらえなくて、ずっと悩んでいたんです。行く先々で才能がないと断られて、途方に暮れていた時に……神様が僕を見つけて、声を掛けてくれたんです」
「なんやて? ウチのとこには来なかったん?」
「もちろん行きました。でも……館の前にいた門番の人に、帰れって追い出されてしまって」
ベルの口から申し訳なさそうに紡がれた正直な告白。それを聞いた瞬間、ロキは絶句し、両目を限界まで見開いた。
そして、すぐさま一切の冗談を排した極めて真剣な表情へと切り替わり、大地に座るベルに向かって深々と、神としての頭を下げる。
「……ほんまに、すまんかった」
「えっ!? ど、どうして謝るんですかロキ様!?」
「ウチのファミリアは誰でも歓迎なんや。才能があろうとなかろうと、志を持って来る者は絶対に拒まへん。それがウチの決めた方針や。やけども……門番が君の素質も見ずに追い出したということは、完全にそいつの独断による失態や」
ロキの口から語られた真実に、ベルは驚きのあまり言葉を失った。
「そうなんですか……僕、てっきり実力不足で落とされたんだとばかり……」
門番の行った独断専行は、冒険者を夢見る少年の心を折るに足る、確かにひどい仕打ちだった。しかし、あの時に門番に無慈悲に追い出され、行く当てを失って雨の裏路地を彷徨ったからこそ、ベルは誰よりも自分を信じ、大切にしてくれるヘスティアと出会うことができたのだ。
自らの運命を決定づけたその奇跡のような巡り合わせを思うと、ベルはロキからの真摯な謝罪を素直に受け入れ、門番を憎むことなど到底できなかった。
「ソラも、ベルと同じで追い出されたの?」
横で食事を終えたアイズが、静かな声音でふと生じた疑問を口にする。
「いや、俺はちょっと違うかな。ダンジョンでベルを助けた時に、泊まる宿を探そうとしたら、ベルがホームに案内してくれたんだ。それで、そのまま色々あって…」
ソラの屈託のない明るい答えを聞き、ロキの内心は千々に乱れ、血の涙を流すほどの痛恨に苛まれていた。
ロキ・ファミリアの門番がベルを独断で追い出した。たった一度の、その軽率な判断のせいで、都市の歴史を覆す異常な成長速度を誇る『世界最速兎』だけでなく、ソラまでをも、まとめて取り逃がしてしまったのだ。
有能な人材を求めるロキ・ファミリアにとって、これほどの天文学的な大損失はない。
「ちなみに、ベルがオラリオに来たんって、いつぐらいの話なんや?」
「えっと、大体一ヶ月ほど前ですかね?」
「そうか……。明日もアイズの特訓、気張りや」
一ヶ月というあまりにも最近の出来事であった事実にさらなる致命傷を負いながらも、ロキは湧き上がる激しい後悔と溜息を悟られないように腹の底へと飲み込み、ベルの背中を軽く叩いてその場を立ち去っていった。その後ろ姿は、来た時よりも随分と小さく哀愁を帯びているように見えた。
ロキの背中を見送った後、ソラはジャガ丸くんを飲み込み、立ち上がって衣服の汚れを軽く払い落とす。
「すっかり暗くなってきたし、そろそろ俺達もホームに帰るか」
「えー、もう帰っちゃうの?」
ソラの言葉に不満げに反応したのは、ワンダニャンの極上の柔らかい背中にすっかり跨り、くつろいでいたティオナだった。
「外の話、まだまだいーっぱい聞きたかったのにー」
「ごめんな。また今度ゆっくり話すよ」
名残惜しそうに唇を尖らせるティオナに対し、ソラが苦笑いを浮かべながら明日の約束を交わした、まさにその時だった。
「おい、ツンツン野郎」
中庭の和やかな空気を刃物のように鋭く切り裂く、苛立ちを含んだ極めて獰猛な声が響き渡る。
振り返ったソラの視線の先。そこには、鋭い犬歯を剥き出しにし、周囲の空気を威圧するほどの凶暴な気配を全身に纏ったべート、両腕を組んで真っ直ぐに立ち塞がっていた。
ヘルメスがアスフィに課したこと
1:コックピットグミの設計図を渡して一人でなおかつ他の団員にバレないように制作すること
2:ソラのARポータルとフェルズの作ったモバイルポータルから通信用の
3:犯罪防止のため一般に普及させるモバイルポータルは大きく嵩張るようにしさらには性能を落とすこと(ショルダーホンか黒電話みたいな感じ)