キングダムハーツⅣの最新情報が来ましたね
ダークサイドっぽいのすごくデカくね
気がつけば、ベルは不思議な空間に立っていた。足元には神秘的な文様が描かれた円形のステンドグラスが広がり、周囲は深い闇に包まれている。そこはかつて、彼が己の魔法を獲得した時に訪れた精神世界――『めざめの園』であった。
「ここは……?」
ベルが疑問符を浮かべ、恐る恐る歩みを進めたその時だった。突如として足元のステンドグラスが甲高い音を立てて砕け散った。足場を失ったベルは、底なしの暗闇へと真っ逆さまに落ちていく。
「うわああああああっ!?」
恐怖に声を上げるベルの視界に、一筋の眩い光が差し込んだ。光の先へと導かれるように落ちていくと、やがて新たなステンドグラスの床がベルの身体を優しく受け止めた。ゆっくりと立ち上がり、足元の絵柄を見つめたベルは小首を傾げる。
ステンドグラスの中心に描かれていたのは、静かに目を閉じた一人の少女の顔だった。初めて見るはずの少女なのに、どういうわけかベルの胸の奥には強い既視感が渦巻き、強烈に惹きつけられるのだ。
背景を彩っているのは、彼が
さらに、少女を囲むように四つの小さな円が配置されている。一つ目の円には、中央の少女がそのまま成長したかのような、左目が灰色で右目が翠色のオッドアイを持つ美しい女性。二つ目の円には、ベルと同じ真っ赤な瞳を持った見知らぬ男性。三つ目の円には、どこか謎めいた雰囲気を持つ全く知らない女性。そして四つ目の円に色鮮やかに刻まれていたのは、ベルにとってたった一人の肉親の顔だった。
「どうして、おじいちゃんが……?」
自身の祖父の顔が存在することに疑問を浮かべ、ベルがステンドグラスの上に完全に降り立った瞬間。足元の神秘的な光の床から眩い光が強烈に輝き放たれた。
「うっ……!」
ベルは咄嗟に腕を交差させて目を庇う。やがて光が収まり、恐る恐る腕を下ろすと、周囲の景色は一変していた。
そこは、見慣れた
「ベル」
静かな空間に、優しく穏やかな女性の声が響いた。
自身の名前を呼ぶその声に導かれるように、ベルはゆっくりと歩き出す。教会の奥にある一つのドアに手を掛け、静かに押し開けた。部屋の中のベッドには、一人の女性が腰掛けていた。それは、先ほどのステンドグラスに描かれていた少女だった。
「こっちに来て」
少女が慈愛に満ちた笑みを浮かべて両手を広げる。ベルはまるで魔法にかけられたかのように、その言葉に従ってふらふらと女性の元へと歩み寄った。少女は近づいてきたベルの身体を、自身の胸の中へと優しく抱きしめた。
「よく頑張ったね、ベル」
耳元で囁かれた労いの言葉と、突然の抱擁にベルは目を丸くして驚く。
普段のベルであれば、見知らぬ美しい女性に突然抱き着かれようものなら、瞬時に顔を真っ赤にしてパニックになり、その場から逃げ出してしまうだろう。しかし、どういうわけかこの女性の腕の中にいると、不思議なほどの暖かさと安心感が全身を包み込み、心がすっと落ち着いていくのを感じていた。
すると今度は、不意に誰かの大きな手がベルの頭を優しく撫でた。
少女がふっと微笑んで腕の力を緩め、ベルの身体を離す。ベルが自分を撫でた相手の方へと視線を向けると、そこには輪郭のぼやけた透明な影のような姿があった。その姿ははっきりとは見えず、唯一認識できるのは、ベルと同じ赤色の瞳だけだった。
赤い瞳の人物は、ベルに向けて何か言葉を紡いでいるようだった。しかし、その声は分厚い水の中にいるかのように遮断され、ベルの耳には全く届かない。内容を推し量ろうとベルが目を細めた直後、自身の頬をぷにっと指で押されたような、妙にリアルな感覚がベルを襲った。
意識が急速に浮上していく。
まだ朦朧とする中、ベルは重い瞼をゆっくりと開けた。
何度か瞬きをして、ぼやけていた視界のピントが徐々に合っていく。そしてベルの目に飛び込んできたのは、至近距離からこちらをじっと見つめ込んでくる、二つの赤い光だった。
「うわああああっ!?」
ベルは思わず悲鳴のような驚愕の声を上げるのだった。
ベルの唐突な絶叫に驚いたのか、至近距離で彼を覗き込んでいたアサシンは、ビクッと身体を大きく仰け反らせた。
その悲鳴を聞きつけ、慌てた足音と共にヘスティアたちが部屋へと雪崩れ込んでくる。
「ベル君!どうしたんだい!?」
「ノーバディ!?」
ベルの無事を確認するより早く、部屋の中心に佇む異形の怪物に気づいたソラが叫び声を上げた。彼は瞬時に眩い光と共にキーブレードをその手に顕現させ、鋭く構える。
だが、アサシンは襲いかかってくる気配を見せなかった。ソラの構えに反応するように、威嚇なのか、はたまた「待て」と制止しているのか、両腕をゆっくりと頭上へ掲げてみせたのだ。
一切の感情が読み取れない無機質な怪物と、武器を構えるソラたちとの間に、ピリピリとした重い緊張が走る。
その一触即発の空気を切り裂くように、今度は空中の何もない場所に白い波紋のような空間の歪みが現れた。
空間が割れ、そこからサムライが音もなく出現する。
「……ッ!」
ノーバディの増援に、リリは咄嗟に自らの手に意識を集中させると淡い光の粒子が収束し、彼女の小さな手に身の丈ほどの鋭い槍が出現する。彼女はそれを強く握り締め、油断なくサムライへと切っ先を向けた。
しかし、サムライもまた武器を抜くことはなかった。
サムライは警戒するリリやソラたちを一瞥すると、ゆっくりとした動作で自らの懐へと手を入れる。そして、一枚の折り畳まれた紙を取り出すと、それをソラたちに向けてスッと手渡すように差し出したのだった。
ソラはサムライから差し出された手紙を受け取るとサムライは、アサシンの隣へと静かに下がり、直立不動の姿勢をとる。敵意は感じられない。
ソラは訝しげに眉をひそめながら、折り畳まれた紙を開いた。そこには、几帳面な文字で長文が綴られていた。ヘスティアやベル、リリもソラの背後から手紙を覗き込む。
「ええと……なんだこれ?」
ソラは困惑しながらも、その内容を声に出して読み上げ始めた。
「『ゼムナスが以前作成したレポートだ。このレポートはFAX経由でギルドとロキ・ファミリアに送っておいたぞ。by、ダルザクス』」
その一文を聞いた瞬間、ヘスティアが「うげっ」とカエルのような声を漏らしたが、ソラは構わず続きを読み上げる。
「『この世界の下層。
果てしなく続く迷宮のどこかには、大いなる『扉』が隠されている。
世界の綻びから這い出した闇は、迷宮で命を落とした者たちの魂を喰らっている。
そして、ハートレスとして変生させ続けているのだ。
だが、真の脅威は迷宮の内部で生まれる闇ではない。
迷宮の最深部に存在するであろう『扉』。
その向こう側、外界の闇の領域から、絶望的なまでの闇の奔流が押し寄せようとしている。
世界そのものを呑み込もうと。
もし扉が完全に開かれればどうなるか。
外界からの闇が堰を切ったように流れ込み、この世界は完全に崩壊し、消滅するであろう。
世界を救うためには、扉に完全に鍵をかけねばならない。
何としても外からの闇が入り込まぬよう、永遠の封印を施すのだ。
そのために不可欠な存在がある。
私がこの世界で観測した特異な光……『セブンハーツ』』」
ソラが『セブンハーツ』という言葉を口にした時、リリルカの肩がビクッと跳ねた。
「『彼らは決して、純粋無垢な光のプリンセスではない。
過去の凄惨な記憶、迷い、恐怖。
その心には『闇』が確実に巣食っている。
一歩間違えれば、自らの闇に心を支配され、ハートレスへと堕ちてしまう。
危険性を常に孕んだ、不完全な存在である。
しかし、彼らは闇を抱えながらも、意志の力でそれをねじ伏せる。
他者のために進もうとする、強靭な魂の輝き。
それこそが、暗闇の中で最も眩い光を放っているのだ。
おそらくだが、彼らは無意識下において、空間の綻びである『鍵穴』を視認し、顕現させる力を持っている。
七つの不完全な、だが極めて強烈な光。
それが揃い、鍵を握る勇者と共鳴した時……外界からの闇を完全に遮断するための鍵穴が姿を現すに違いない。
現在、この特異な光として明確に確認されている者がいる。
アイズ・ヴァレンシュタインと、ベル・クラネルの二名』」
「ぼ、僕とアイズさんが……」
ベルが信じられないというように呟く。ソラはさらに先を読んだ。
「『なお、ベル・クラネルの動向と、彼が内包する闇の行方に関しては、ザリファに一任。
光が強ければ強いほど、その背後に落ちる闇もまた濃く、深くなる。
彼らが己の闇を完全に乗り越え、この世界で私が手にした新たな友が愛する世界を救うための真の鍵となるのか。
あるいは、闇に呑まれて世界を破滅へ導く引き金となるのか。
私にはわからない。
ならば見守ればよかろう。
我々は、この不完全で危うい光の行く末を、今しばらく見届ける必要がある。
……PS、お前たちの前にいる二体のノーバディは好きにしろ byダルザクス』」
ソラが手紙を最後まで読み終えると、部屋の中に重苦しい沈黙が降りてきた。
手紙に記されていたのは、世界の根幹を揺るがすような恐るべき真実と、ベル達が背負わされたあまりにも重すぎる使命だった。
「スケールが大きすぎて、リリの理解が全く追いつきません……世界の崩壊?ベル様やリリ達がそれを防ぐための鍵穴を出す?」
「僕が、セブンハーツ……世界の命運を握る光の一つ……」
リリが呆然と呟き、ベルは自分の手を見つめながら、その責任の重さに身震いした。
だが、事態は彼らが立ち止まることを許さない。ソラの手紙の最後の言葉を思い出し、全員の視線が部屋の中心に向けられた。
そこには、手紙を渡し終えて微動だにしないサムライと、その隣で同じく直立不動のアサシンが静かに佇んでいた。
「……好きにしろって言われてもな」
「どうするんですか、これ……?」
ソラとベルが困り果てた顔でノーバディたちを見つめる。
威嚇する様子もなく、かといって消え去る様子もない二体のノーバディを前にして、一行はただ戸惑いの息を吐き出すしかなかった。
・
ノーバディ達の騒動が一先ず終わり、ようやく
「まずはソラ君からいこうか。これまでの戦いでどれくらい加算されたか、ボクもちょっと気になるしね」
「よろしく頼むよ、ヘスティア」
ソラはポンと手を叩いて思い出したように言い、ニカっと人懐っこい笑みを浮かべた。
ヘスティアはソラの背中に神血を垂らして更新作業を行う。
「君の強さと存在の特異性を考えると、あんまり加算されていなくても文句を言わないでくれよ……」
ヘスティアは予防線を張りながら羊皮紙に数値を書き込んでいく。やがて完成した用紙を、どこか疲れた顔でソラに手渡した。
ソラ
Lv.1
力:I0→I3
耐久:I0→I10
器用:I1→I9
敏捷:I0→I7
魔力:I2→I10
《魔法》
【ふしぎな力】
・速攻、単射、範囲、付与魔法
・ファイア系、ブリザ系、サンダ系、ケアル系、グラビデ系、ストップ系、エアロ系、召喚等を使用可能
【アトラクションフロー】
・召喚魔法
・一定条件を達成することでアトラクションを召喚することができる
【シュートロック】
・範囲魔法
・キーブレードによって種類が変化する。
《スキル》
【キーブレード】
・あらゆる鍵の開閉
・心を解放する
・斬撃・打撃の変更
・闇の魔物に対して高い攻撃補正
・手元に召喚可能
・資格のある者に一時的に貸し出し可能
・キーチェーンを変更すると形、性能、アビリティが変化する
【フォームチェンジ】
・服装とキーブレードが変化する。
・一時的にスキルが発現
【フリーフロー】
・機動高補正
・対象に向かって一直線に飛ぶ
【リンクコネクト】
・一定条件の達成時味方にスキルや魔法が発現、変化する。
【リミット・フォーム】
・遠く離れた者への強い想いを媒介に発動。
・対象との絆の深さに比例し、その人物が持つ魔法、スキル、アビリティを一時的に発現させる。
・発動中は
「……えっ、数値はたったこれだけ?」
ソラは自身の微増したステイタス数値を見て、少し不満そうに眉をひそめた。
「あのね、君のようにレベルの枠組みから完全に外れた存在に対して、
ヘスティアは世界の理を代弁するように呆れた声で言う。だが、ソラの目はすぐにスキル欄の最後に追加された項目に釘付けになった。
「待って、新しいスキルが追加されてるぞ!【リミット・フォーム】だってさ!」
「本当だ!?遠く離れた者への強い想いを媒介に発動……すごいスキルだね、ソラ!」
ベルが身を乗り出して羊皮紙を覗き込み、目を輝かせる。
「やった!!俺に新しいスキルが生えたぞベル、リリ!!」
ソラも不満などどこへやら、新たな力の獲得に無邪気に喜びの声を上げた。
「さて、次はベル君の番だね」
ヘスティアは微笑みながら、今度はベルの背中に神血を垂らす。だが、その背中の文字を読み取った瞬間、彼女の動きがピタリと止まった。
そして、震える手で羊皮紙に内容を写し取り、ベルへと手渡す。
「ランクアップできるんですか!?」
その信じられない叫び声に、足元でくつろいでいた
ベルはベッドの上に正座したまま、ヘスティアから手渡された自身のステイタスが記された羊皮紙を穴が開くほど凝視し、顎が外れんばかりに愕然としていた。
ベル・クラネル
Lv.2
力:A855
耐久:S945
器用:S968
敏捷:S989
魔力:SS1074
《魔法》
【魔法】
『ホーリー・ファイアボルト』
・速攻魔法
【ディメンション・リンク】
・相互共有魔法
・特定の人物と共有する物品を媒介にして発動。
・共有する物品を所持している相手側からも、互いにこの魔法を行使することが可能。
・対象の人物が持つ魔法、スキル、アビリティを一時的に発現させる。
・絆の深さに応じて引き出せる能力が変化し、発動中は
《スキル》
【キーブレード】
・あらゆる鍵の開閉
・心を解放する
・斬撃・打撃の変更
・闇の魔物に対して高い攻撃補正
・手元に召喚可能
・資格のある者に一時的に貸し出し可能
・キーチェーンを変更すると形、性能、アビリティが変化する。
・連続攻撃を契機とした自己強化の派生発現。
【
・形態変化に伴う任意での絶技実行権。
・絶技行使による効果解除。
【
・ドリームイーターの召喚および使役。
・ドリームイーターの強さは契約者の強さに比例する。
・ドリームイーターとの絆を深めることで技、魔法、スキル、アビリティの獲得。
【
・召喚したドリームイーターとの心の同調。
・自身を一時的にスピリット化し、対象が持つ技、魔法、スキルの一部をその身に宿すリンクスタイルへの移行。
・リンク時に属性が発現。
・スキル発動中、
《発展アビリティ》
【幸運】
「……な、なんですかこの異常な数値は?それに新しい魔法まで……?」
横から羊皮紙を覗き込んだリリが、己の目をゴシゴシと力強くこすりながら虚ろな声で呟く。
「やったなベル!あの死闘を乗り越えた努力が、こうして報われたってことなんだ!」
「プゥプゥ!」
ソラとミミが、法則の異常性など全く気にすることなく手放しで祝福の声を上げる。
「あ、ありがとう……でも、これ本当に僕のステイタスなの……?」
ベルは未だに現実を受け入れられず、呆然としていた。
一方、ヘスティアはこめかみを押さえながら、今にも胃に穴が開きそうな顔で沈黙していた。
(……モバイルポータルに記録された映像を見る限りすごい偉業を成し遂げたんだから時間の問題だとは思ってたけど、まさかこんなにステータスが上がるなんて。それだけじゃない、この【ディメンション・リンク】って新しい魔法……どう見てもソラ君の【リミット・フォーム】と対になるような能力じゃないか!)
このレベルアップの事実は、間違いなくオラリオ中に巨大な爆弾を落とすほどの衝撃を与えるだろう。冒険者となってわずか一ヶ月半での2度のランクアップなど、オラリオの悠久の歴史上でも前代未聞の異常事態だ。
それに加えて、この未知の魔法。ハートレスという世界の危機に関するものであれば、まだ誤魔化しや大義名分が立つかもしれない。だが、これは純粋にソラという外の世界からのイレギュラーに深く影響され、ベルの魂が変質した結果もたらされたものだ。他の誰かに相談することなど絶対にできない。神々に見られれば、その異常性を徹底的に追及されるのは火を見るより明らかだった。
(……今度の
ベル自身の【
・
「本当に休まなくていいのか?あんな死闘をやったばかりなんだぞ」
「しっかり休めたから大丈夫だよ。それに……リリに関係することなんだから、僕だけ留守番する訳にはいかないよ」
「ベル様、ソラ様……リリのせいで、本当に申し訳ありません……」
夕暮れの空が、迷宮都市オラリオの入り組んだ街並みを燃えるような朱色に染め上げていた。長く伸びる影を踏みしめながら、ソラは隣を歩く親友の顔を心配そうに覗き込む。
ベルは昨日、迷宮の奥深くで異常な変異を遂げた強化種のミノタウロスと単身で死闘を繰り広げたばかりだ。いくら神の恩恵によってステイタスが更新され、レベルが上がったとはいえ、その小柄な身体と精神に蓄積された疲労は計り知れないはずだった。しかし、ベルのルビーのような赤い瞳には、一切の迷いや疲労感は浮かんでいなかった。ただ真っ直ぐに、大切な仲間のために戦うという確固たる決意の炎が灯っている。
そんなベルの力強い言葉を聞いて、背後を歩いていた小人族の少女、リリルカ・アーデは深々と頭を下げた。彼女の小さな肩は、自身の過去の過ちと、これから立ち向かうであろう恐ろしい古巣への恐怖で微かに震えている。
「謝る必要なんてないさ、リリ。友達が困ってる時に駆けつけるのは、当たり前のことだろ?」
「そうです。僕たちはファミリアは違っても、同じパーティの仲間なんですから。それに、リリが一人で抱え込む必要なんてないんです」
ソラがニカッと太陽のような笑みを向け、ベルも優しく微笑みかける。その二人の暖かな光のような優しさに触れ、リリは泣きそうになるのを必死に堪えながら、強く一つ頷いた。
やがて三人の歩みは、都市の端に位置する広大な敷地の前で止まった。
「ここが……ソーマ・ファミリアの本拠地……」
ベルが思わず冷や汗を流し、強張った声で呟く。
目の前にそびえ立つのは、厳重な鉄柵と高い石壁に囲まれた要塞のような巨大な建造物だった。外からの侵入を拒むだけでなく、中にいる者を逃がさないための巨大な檻のようにも見える。建物全体から、冷たく淀んだ異様な威圧感が放たれており、ベルはその空気に圧倒されてゴクリと息を飲んだ。
そして何より彼らの感覚を麻痺させたのは、周囲一帯に充満する強烈な悪臭だった。
「うっ……なんだ、この匂い。すっげえ鼻を突く……」
ソラは思わず鼻をつまみ、顔をしかめた。それは神酒の製造過程で生じる、大量の果実が限界を超えて腐敗し、発酵したような吐き気を催すほどの甘ったるい異臭だった。かつて彼が海賊船に乗り込み、終わりの見えない航海の中で嗅いだ、腐った積荷や澱んだ海水の匂いをさらに濃縮し、甘い毒を混ぜ込んだような最悪の悪臭。ソラのような異世界の旅人であっても、思わず眩暈を覚えるほどの強烈さだ。
だが、その匂いがもたらす影響は、物理的な不快感だけではなかった。
「っ……、ぁ……」
リリは顔面を蒼白にし、自身の両腕を強く抱きしめてガタガタと震え始めた。この腐敗した甘い匂いは、彼女にとって最悪の記憶を引きずり出すトリガーだったのだ。ソーマ・ファミリアの団員たちから受けた暴力、搾取、そして神酒という逃れられない呪縛。あの地獄のような日々のトラウマがフラッシュバックし、リリの呼吸が浅く、速くなる。
「覚悟はいいか、リリ?」
恐怖に震える彼女の肩に、ソラがそっと優しく手を置いた。その暖かな体温に触れ、リリはハッと我に返る。
見上げれば、ソラとベルが心配そうに、しかし絶対的な信頼を込めた瞳で彼女を見つめていた。そうだ、自分はもう一人ではない。この圧倒的な光を持つ二人が、共に戦ってくれるのだ。
「はい……!リリはもう、過去の自分とは決別します。新しい一歩を踏み出すために、絶対に行きます!」
リリは震えを無理やり押し殺し、顔を上げて強い覚悟の宿った声で言い切った。その堂々たる姿勢に、ソラは満足そうに大きく頷く。
「よし、その意気だ!それじゃあ、堂々と正面から行こうぜ!」
ソラを先頭に、三人は正面ゲートへと真っ直ぐに向かって歩き出した。
だが、厳重に閉じられた門の前には、鋭い槍を構えた二人の大柄な門番が立ち塞がっていた。彼らは近づいてくる三人を見るなり、鋭い殺気を放って槍の穂先を突きつけてくる。
「止まれ!何者だ!ここはソーマ・ファミリアの敷地だぞ!」
怒鳴り声を上げる門番たちに対し、ソラは全く取り乱す様子もなく、両手を軽く広げて敵意がないことを示しながら淡々と答えた。
「俺たちはヘスティア・ファミリアだ。あんたたちの主神のソーマ様に面会しに来たんだ。通してくれないか?」
正当な理由と落ち着いた態度。通常のファミリアの門番であれば、ここで一度確認を取るなり、追い返すにしても言葉での問答になるはずだった。
「ソーマ様と……用事?」
門番たちは顔を見合わせ、酷く怪訝な表情を浮かべた。
「来客の予定なんてあったか……?」
「さあ……ないと思うが……」
まるで酷い二日酔いにでも罹っているかのように、虚ろな頭で記憶をたぐる門番たち。だが、ふとその内の一人がハッとしたように顔を上げ、獲物を見つけた飢えた獣のような、凶悪な表情を浮かべた。
「こいつら……ソーマ様に『酒』をねだりに来たんだな……!」
「そうに決まってる……!」
二人の門番たちの瞳が、異常な渇望によってどす黒く、血走った色に染まり上がっていく。彼らは親の仇でも見るかのような、憎悪と執着が入り混じった眼差しでソラたちを睨みつけた。
それは神酒に対する重度の依存状態と、長期間与えられていないことによる禁断症状が引き起こした、完全な狂気だった。理性を喪失し、見知らぬよそ者は全て自分たちの酒を奪いに来た敵であるという極度の被害妄想に取り憑かれてしまっているのだ。
「俺たちの貴重な酒を渡してなるものか!俺たちがどれだけ苦労して、あの一口にありつけると思ってる!」
「殺してやるッ!酒は俺たちのものだァァァッ!」
完全に理性を失った二人が、殺意を込めて鋭い槍を大きく振りかぶる。
その異常な敵意に反応し、ベルは腰のヘスティア・ナイフの柄に手をかけ、リリは背中の小型弩に手を伸ばして即座に戦闘態勢をとった。
しかし、ソラは全く動じることはない。ただ静かに片手を上げ、指先を狂乱する門番たちへと向けた。
「話し合いは無理そうだな……」
ソラは一切の動揺を見せず、狂乱する相手との対話は不可能だと瞬時に判断した。この者たちは闇に心を奪われたハートレスではなく、ただ酒に溺れ、心を壊してしまっただけの哀れな人間だ。無闇に傷つける必要はない。
ソラは武器であるキーブレードを抜くことすらせず、スッと右手の指先を猛然と突進してくる門番たちに向け、ただ静かに魔法の力を紡ぎ出す。
次の瞬間、ソラの指先から眩い銀色の魔法の光が放たれた。
「眠れ!」
広範囲に広がった銀色の光の粉が、狂気に満ちた門番たちの身体を優しく包み込む。すると、先程まで血走っていた彼らの眼球からスッと険しい力が抜け、強烈な殺意を放っていた顔つきが嘘のように穏やかなものへと変わっていった。
「あ……れ……?なんだか、急に……眠……」
ガシャッ、と手から槍が滑り落ちる。二人の門番はそのまま糸が切れた操り人形のようにその場に崩れ落ち、深い寝息を立てて安らかな眠りへと落ちていった。
一切の流血もなく、怪我をさせることもなく、瞬時に障害を排除してしまったソラは、パンパンと手を払ってから振り返る。
「よし、おやすみ。さあ、先へ進もう」
あまりにも軽い調子で先へ進むよう促すソラを見て、リリとベルは呆然と立ち尽くした。
「……ソラ様の魔法には呆れるばかりです……」
リリは彼の圧倒的で規格外な魔法に心底呆れ果てつつも、無駄な戦闘を避けられたことにホッと胸を撫で下ろし、深い安堵の息を吐き出した。
だが、彼らが門をくぐろうとしたその直後だった。
ソラたちのすぐ背後の何もない空間が、突如として陽炎のようにグニャリと不自然に歪んだのだ。
「……え?」
ベルが驚いて振り返った先で、歪んだ空間がパツンと弾け、そこから一人の小人族の男性が音もなく姿を現した。金色の髪に、知性を感じさせる碧眼。第一級冒険者であり、ロキ・ファミリアの団長を務める勇者、フィン・ディムナであった。
「フィ、フィン様!?」
あまりにも予期せぬ都市最高峰の冒険者の登場に、リリが素っ頓狂な驚愕の声を上げる。フィンはそんな彼女を見て、悪戯が成功した子供のようにニコリと微笑んだ。
「やあ、驚かせてすまないね。実は、オバケゴーストとのリンクスタイルで姿を完全に消す魔法を行使して、君たちの後ろに密かに同行させてもらっていたんだ」
フィンがサラリととんでもない種明かしをするとベルとリリは目を見開いた。
だが、驚きはそれだけでは終わらない。フィンの背後の空間が次々と歪み、同じく姿を隠していた者たちが続々と実体化して現れたのだ。
現れたのは、ガネーシャ・ファミリアの団長であるシャクティをはじめ、副団長や重武装に身を包んだ数名の憲兵たちだった。
「どうして……他派閥である皆様がここに?」
リリが完全に混乱し、戸惑いながら尋ねる。
だが、フィンは真っ直ぐな、一点の曇りもない瞳でリリルカを見つめ返した。
「僕は同胞の再興を目指しているんだ。同胞の助けになるというのなら、他派閥だとか、そんなことは一切関係ない」
しかし、フィンはそこで表情をスッと引き締め、鋭い指揮官の顔へと切り替わった。
「もちろん、それも大きな理由の一つだが……シャクティたちが同行しているのには、もっと都市全体に関わる理由があるんだ」
「理由……ですか?」
ベルが首を傾げると、フィンは重々しく頷いた。
「ああ。さっき、ダルザクスが、僕達ロキ・ファミリアとガネーシャ・ファミリアに宛てて、FAXで書類が送られてきたんだ。その中に、彼から依頼があったんだ。ザニスが闇に関与しているから調べて欲しいという依頼がね」
「ザニスってやつが、闇に……!?」
ソラが眉をひそめ、険しい顔つきになる。
「そうだ。僕達もガネーシャ・ファミリアも、現在このオラリオを脅かしつつある、正体不明の闇とハートレスという存在について、一刻も早く事態を把握しなければならない。だからこそ、その糸口を掴むために、このソーマ・ファミリアの拠点への突入に密かに協力させてもらったというわけさ」
フィンは手にした槍を軽く回し、鋭い視線を巨大な館の奥へと向けた。
これはもはや、単なる一人の少女の救出劇ではない。オラリオの平和を根底から揺るがすかもしれない闇の脅威に対する、都市の最高戦力たちによる極秘の潜入作戦なのだ。
「さあ、行こうか。真実を暴きにね」
フィンの静かな、しかし威厳に満ちた号令とともに、ソラたちは固く閉ざされたソーマ・ファミリアの闇の奥深くへと、その足を踏み入れていくのだった。
ベルの阿保みたいなステータス上昇はベルのソラやアイズへの思い+オッタルと戦っているときに所謂ベル&ソラVSハートレス・ミノタウロス&オッタルみたいな感じである意味では師弟子タッグの激突みたいな感じで戦ったために膨大な
ダルザクスからの依頼内容は俺たちXIII機関は別件で今からオラリオを離れる。その間にソーマ・ファミリアのザニスという男が闇に関与されているので調べておいてくれ、こちらからはディラクスを送るみたいな感じです。
次回は番外編で12:00頃に投稿します