東方帰還録 ~ Reclaiming the Bond ~   作:地軸

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第一話 帰れない場所

 

1日目

男、飯田 凪(いいだ なぎ)は、この恐怖の無人島でまだ懸命にいきていた。

気が付いたらこの島にいた、夜には化け物達が襲い掛かってくる島。

近くには不時着した飛行機の残骸があり、海辺に毎日流れつく漂流物を利用して、武器を作り罠を作り拠点を作り生きていた。

孤独に一人戦い続け、生きる意味を見失いつつあったが、生存本能が、死の恐怖だけが今の彼を生かしていた。

ある日いつものように

浜辺に打ち上げられていたのは、膿と泥にまみれ、骨が異常に折れ曲がった少女だった。

巫女服の残骸がわずかに見えるが、顔は腫れ上がり、膿と蛆で覆われている。

凪は息を呑んだ。

 

「……なんだこれ……」

 

少女はかすかに呼吸するだけで、意識はなかった。

放っておくべきだ、という声は確かに頭のどこかで囁いた。

しかし――それよりも強い、もっと底の深い衝動が胸を占めた。

 

「……人だ……」

 

凪は思わず声を震わせた。

この島に来てから、初めて見る“人間”だった。

 

長い孤独で心の輪郭が削れ、何が正しいかも曖昧になっていた。

ただ、手の中に確かに“他者”が存在しているという事実が、麻薬のように脳を痺れさせる。

世話をしなければ死んでしまう。

自分が必要とされている――そう思うだけで、胸の奥が熱く満たされていく。

 

「……大丈夫だ。俺が……助ける。助けるから……」

 

それは彼女のためというより、もはや自分のための言葉だった。。

孤独だった彼は、自分以外の人間に歓喜したのは束の間、このまま何もしなければ数時間で息絶える事は確実、夜になれば化け物の餌になる事は分かっていた。

凪は覚えている限りの雑学的医療知識を総動員し、浜辺に散乱する飛行機残骸や漂流物から使えそうなものをかき集めた。

なんとか清潔な布を探し出し膿や蛆を拭き取り、骨折箇所を簡易固定する。

口移しで食料を与え、排泄の世話も行った。

彼女の裸体を見てもなんとも思わなかった。

怪我と膿に塗れた体に萎えたわけではない。

無論血尿と血便から内臓の損傷の可能性がある少女にそんなことをするわけに行かないという話もある。

しかし、ここにいたのが同じ男であっても年老いた老婆であっても、きっと同じように助けただろう。

それだけは胸を張って言えるのだ。

 

夜が来ると、化物の群れが拠点を襲った。

人型の人ならざる者たち、言葉を理解せずうめきを上げ襲い掛かる者達。

凪は自作の斧や飛行機の破片で作った鈍器で応戦する。

化物の持つ刃が肩をかすり、血が滴る。

息を切らしながらも、少女を守るために踏ん張った。夜明けまで戦い、全身血まみれで倒れ込む。

まだ意識を切らしてはならない彼女の安否を確認せねば。

 

2日目

朝、拠点の簡易ベッドの上で、少女が微かに目を開けた。

 

「……ん……?」

 

凪はそっと顔を覗き込む。

「お、意識が戻ったな。よかった……えっと、名前は言えるかい?」

 

少女は弱々しく口を開いた。

「……はく……れい……れいむ……」

 

凪は少し肩をすくめ、気まずそうに視線を泳がせる少女に話しかける。

「ここは……?」

 

少女は辺りを見回し、不安そうに目を細めた。

 

凪は肩をすくめる。

「ここか……正直、俺もよくわからない。無人島みたいなところだ。海岸で君を見つけたんだ……」

 

微笑みを添えて付け加える。

「うん、名前はわかった。今はそれで大丈夫だ、ゆっくり休もう」

 

少女は安心したように目を閉じ、わずかに呼吸が整った。凪は心の中で思った。

弱っているこの子を守ることが、今の自分のすべてだ。

 

やがて霊夢が小さく手を伸ばし、かすれた声で呟いた。

「……お……おふだ……」

 

凪は首をかしげる。

「お札か……巫女服に隠していたやつだな」

 

霊夢は弱々しく頷き、手を差し出す。

「……ちょ……ちょうだい……」

 

凪は少し戸惑いながらも、そっと札を手渡した。

「……はい。君のためのものだ。これを使うと、少し楽になるかもしれない」

 

霊夢はかすれた声で感謝した。

「……あり……がと……」

 

凪は心の中で、札の力はともかく、彼女が信じることが大事だと考えた。これで彼女の精神が少しでも安定するなら、すべての行動は正当化される。

 

昼の間、凪は飛行機残骸や漂流物を探索し、抗生物質や消毒液、清潔な布を手に入れる。拠点に戻ると再び霊夢の元に座り、慎重に包帯を巻き直す。膿や蛆を取り除く作業は気持ち悪さを伴うが、彼女の呼吸を確認する手は揺るがない。

 

「もう少しだ……俺がそばにいる」

 

霊夢はわずかに目を開け、かすかに笑うような表情を見せた。凪はその瞬間、今日の昼の仕事が報われた気がした。戦いの夜に備えて、今だけはこの静かな時間が続けばいいと願った。

 

夕暮れ、空が赤く染まる頃、凪は霊夢の手を握りながら心の中で呟いた。

(夜が来る……また奴らが襲ってくる。でも、絶対に守る……)

 

霊夢はかすれた短い声を漏らすだけで、目を閉じ、呼吸が落ち着く様子だった。

(ふぅ……)

 

凪はぎゅっと手を握り返す。

(大丈夫だ、俺がそばにいる。絶対に離さない)

 

夜、拠点の周囲に闇が落ちると、人型の亡者が呻き声を上げて押し寄せてきた。腐臭が鼻を突き、冷たい風が肌を撫でる。

 

凪は斧を握り、飛行機の破片で作った鈍器を構えた。

「来い……絶対に、この子には触れさせない!」

 

刃が肩をかすめ、血が滴る。腕が痺れ、息が荒くなる。だが、目の前で微かに呼吸する霊夢を見て、凪は踏ん張る。霊夢は何も知らない、でもそれでいい。俺だけが守る。

 

何度も襲いかかる亡者の群れ。凪は斧を振り、棍棒を叩きつけ、泥と血にまみれながら戦った。

恐怖や痛みよりも、彼女を守るという使命感が勝っていた。

 

夜明けが近づき、亡者たちは退いた。凪は全身血まみれで倒れ込むが、霊夢の呼吸を確認すると、安堵のため息をついた。

「まだ……生きてる……よし……」

 

霊夢は薄目を開け、微かに笑う。凪はその顔を見つめながら心の中でつぶやく。

今日も生き延びた……そして、この子を守る理由はまだ消えていない。

 

 

三日目

朝、霊夢は昨日より少し長く目を開け、手を微かに動かせるようになった。かすれた声で小さく息を漏らす。

 

凪は優しく声をかける。

「おはよう。よく眠れたか?」

 

霊夢はかすかにうなずき、目を細めて安心したような表情を見せる。凪は心の中で思った。

(弱っているこの子を守ることが、今の自分のすべてだ)

 

昼、凪は飛行機残骸や漂流物を探索し、抗生物質や消毒液、清潔な布を手に入れる。拠点に戻ると霊夢の包帯を丁寧に巻き直し、膿や蛆を取り除き、骨折箇所を固定する。

 

霊夢は静かに手を動かすだけだが、その微かな呼吸や動作に凪は安心を覚える。口移しで少量の食料を与え、再び手当てを続ける。

 

午後も同じく、凪は拠点の周囲や残骸から必要な物資を集め、霊夢の手当てを繰り返す。霊夢はほとんど目を閉じて静かに休む。凪はそばに座り、手を握って呼吸を確認する。

 

夕暮れ、空が赤く染まる。凪は心の中で準備を整える。

(夜が来る……奴らが来る前に、しっかり備えねば)

 

夜、亡者たちが拠点を襲う。凪は斧と棍棒を手に全力で防衛する。刃が肩や腕をかすめ、血が滴る。だが、目の前で微かに呼吸する霊夢を見て、凪は踏ん張る。霊夢は何も知らない、でもそれでいい。俺だけが守る。

 

夜明け、亡者たちは退いた。凪は血まみれで倒れ込み、霊夢の呼吸を確認して安堵した。

「まだ……生きてる……よし……」

 

四日目

朝、霊夢は昨日より少し長く目を開け、手を少し動かせるようになる。かすれた声で小さく息を漏らす。

 

凪は手を握り、穏やかに声をかける。

「今日も無理はするな、ゆっくりでいい」

 

昼、凪は漂流物や残骸から医療物資を補充し、手当を繰り返す。霊夢は目を閉じ、呼吸を整えながら休む。

 

午後も同じく、凪は手当を続けつつ、拠点の周囲を点検する。夜に備え、斧や棍棒の整備も怠らない。

 

夜、亡者たちが押し寄せる。凪は斧や棍棒で応戦し、血まみれになりながらも霊夢を守る。霊夢は目を閉じたまま呼吸するだけだ。

 

夜明け、亡者たちは退き、凪は霊夢の呼吸を確認して心の中でつぶやく。

(今日も無事に過ごせた……守る理由はまだ消えていない)

 

霊夢はまだ動けなかったが、少しずつ意識がはっきりしてきた。膿や蛆を取り除かれ、骨も簡易固定されている。凪は口移しで食べ物を与えながら、ゆっくりと話しかけた。

 

五日目

「今日はちょっと元気出たか?」

 

少女はかすれた声で答える。

「……うん……ちょっと……」

 

凪はほっと息をつく。

「よかった。無理はするな、ゆっくりでいい」

朝、霊夢は昨日よりもしっかり目を開け、手を微かに動かせるようになった。

凪はそっと手を握り、心の中で思う。

(今日も無事でよかった……この子を守るだけでいい……)

 

霊夢は弱々しく手を伸ばし、かすれた声で呟いた。

「……おんみょうだま……」

 

凪は首をかしげ、微笑む。

(ああ、コスプレの道具か……巫女服にはついてなかったけど、海に流れていればいいかな……まあ、別に今すぐ必要ってわけじゃないし)

「わかった……ちょっと探してみるよ」

 

昼間、凪は飛行機残骸や浜辺の漂流物を探索する。抗生物質や清潔布、包帯を確保しつつ、海岸や漂着物の中から陰陽玉がないか探してみる。しかし昼の間には見つからなかった。

 

凪はそっと霊夢のそばに戻り、包帯や膿の除去、手当てを続ける。

(まあ、今必要なものじゃない……でも見つけられたら渡してやろう)

 

霊夢は微かに目を閉じ、札を握りしめる。凪はその手を握り、昼の静かな時間を守る。

夜が訪れ、拠点の周囲に闇が落ちる。腐臭を帯びた冷たい風が吹き、

人型の亡者たちが呻き声を上げて押し寄せた。

 

すると、海辺の闇から異様に巨大な亡者が現れた。

額に光る玉を抱え、力を増しているかのように凪に迫る。

振り下ろされる拳をかわし、斧で指を叩き落とす。

腕を駆け上がり首に一撃いれて振り落とされる。

上手く着地すれば追撃の一撃を転がりかわし今度は足を鈍器で砕き膝を付かせる。

「うぉおおおおおおおおおおお!!」

頭を垂れた首に力の限り斧を振り下ろす!!

 

 

夜明け死闘の末、凪はなんとか光る玉を奪い返す。

満身創痍、切り傷打撲で済むわけもなく、折れた肋骨が肺に刺さり呼吸もままならない、口の中に広がる血の味と全身くまなく痛む体と彼女の存在だけが凪の意識を支えていた。

 

「ごめん、君一人を残して死ぬことになる、懸命に生きてくれ」

 

拠点に戻って来たズタボロの凪を驚きの表情で迎えた彼女は、静かに陰陽玉を受け取った。

陰陽玉が手の中で脈打つように震えた。

次の瞬間、拠点全体――いや、島そのものが淡い光に包まれた気がした。

 

空気が弾けるような、ガラスが割れるような音がどこかで響く。

 

その直後、霊夢が弱々しい声で呟いた。

 

「……紫……とっとと……迎えにきなさい……」

 

凪は息を呑んだ。

(誰に言ってる……? 迎えって……誰が……?)

 

返事をするように、闇の裂け目から“何か”が現れた。

 

まるで空間が紙のように裂け、その向こうから上品な和服姿の女性が歩み出る。

薄紫色の衣、冷たい笑み。

人間離れした雰囲気に、凪の背筋が冷える。

 

「やっと見つけたわ、霊夢。こんなところに居るなんて……見事にズタボロね」

 

凪は呆然とした。

(……誰だ? この人……なんで裂け目から出てきた……?)

 

霊夢は呼吸も苦しいはずなのに、その女の声に反応する。

 

「……御託は……いいわ……私も……余裕……ないの……さっさと……永遠亭にでも……連れていきなさい……」

 

永遠亭。

東方の設定の中で見た単語だ。

凪は混乱しながらも、状況が理解できなかった。

 

女がふと凪を見た。

 

「この男は?」

 

霊夢はゆっくりまばたきをし、凪の方へ顔を向ける。

 

「……世話に……なったのよ……連れて……いきなさい……」

 

凪は息を呑む。

(俺を……? この人にも……?)

 

意識が遠のく中、状況の現実味だけがぐらりと揺れた。

 

“霊夢は俺を助けようとしている”

“この女は霊夢を知っている”

“そして俺には、何が起きているのかさっぱり分からない”

 

だが、倒れそうな身体の中で、唯一はっきりしていることがあった。

 

(……ああ……俺は……間違ってなかった……助けて……よかった……)

 

そこで凪の視界はふっと揺らぎ、闇に沈んでいった。

 

凪が次に意識を取り戻したとき、すでに場所は穏やかな屋内だった。

銀髪の女性が俺の胸元を診察しているのがかろうじて目に映る。

 

「縫合があまいからやりなおしてくれ、顔の蛆の卵は取り除いたはずだが素人の腕だから再検査してくれ」

凪は弱々しく、しかし必死に声を振り絞った。

 

医者は驚きの表情で答える。

「今は自分のことだけ考えて、安静にしていなさい」

 

「もう、永琳にまかせときなさい、月の賢者よ?あなたが心配することなんてある?」

黒髪の女性が穏やかにそう言う。まるで昔話に出てくるお姫様のようだ。

 

凪はぼんやりと視界の中で、赤と青の服を着た女医や、うさ耳の助手、そしてかぐや姫を見つめた。

そして、頭の中で呟いた。

 

「……そうか、ヘルプミー永琳だったわ……」

俺は安心して、深い意識の底へと沈んでいった




他作品の反応がないので別パターンの模索。
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