東方帰還録 ~ Reclaiming the Bond ~ 作:地軸
胸の奥に残っていた鈍い痛みは、もうほとんど感じない。
「退院は今日でいいわ」
淡々と、しかし確信をもって永琳は告げる。
「外傷も内臓も問題なし。無茶をしなければ、日常生活には支障は出ないわね」
「……三日で、ここまで治るもんなんですね」
正直な感想だった。
永琳は小さく微笑む。
「普通なら、もう少しかかるでしょうね。でも――ここは永遠亭よ」
その一言で、妙に納得できてしまった。
凪は一拍置いて、気になっていたことを口にする。
「……霊夢は?」
永琳は一瞬だけ手を止め、それから何事もなかったように続ける。
「彼女は先に退院しているわ。治療費は八雲紫がまとめて支払って、連れて行った」
紫、か。
胸の奥で、重いものが静かに落ち着く。
「今は、彼女の心の整理を優先させているはずよ」
「あなたが今、会いに行っても、良い結果にはならないわね」
それ以上は、聞かなかった。
聞いても答えは変わらないと、分かっていた。
まず、自己の安定だ、人里に行き職につき金を稼ぐ。
神社に行くなら賽銭の一つでもないと恰好つかない。
霊夢にカッコ悪い姿は…見せたくないな。
「人里へ行くなら、案内をつけるわ」
「案内?」
「竹林を抜ける必要があるもの。一人で行かせるわけにはいかないわね」
ほどなくして現れたのは、赤い服の女性だった。
長い黒髪、気だるげな雰囲気。
だが、立ち姿には妙な安定感がある。
「藤原妹紅だ。永遠亭からの頼みでな」
「……凪です。よろしくお願いします」
名乗ると、妹紅は少しだけ目を細めた。
「律儀だな。ま、悪い奴には見えない」
それだけ言って、歩き出す。
竹林の中は噂に違わず、方向感覚を狂わせる。
だが妹紅は迷う様子もなく、淡々と進んでいった。
「このあたりって……一人だと、やっぱり危険なんですか?」
慎重に言葉を選んで、凪は尋ねた。
妹紅は鼻で笑う。
「私にとっちゃ、そうでもないけどな」
それから、ちらりと凪を見る。
「でも、あんただけなら話は別だ」
「素直に案内を受けて正解だよ」
人里が見えてきたところで、妹紅は足を止めた。
「ここまでだな」
首を軽く鳴らし、里の方を顎で示す。
「慧音に会えば大丈夫だ。余計なことは聞かないし、必要なことはちゃんと面倒見る」
一瞬だけ視線を逸らしてから、ぶっきらぼうに言う。
「変に一人で抱え込むなよ」
そう言って、妹紅は竹林へと戻っていった。
「では、どのような仕事を希望していますか?」
凪は口を開こうとした――その瞬間。
戸が勢いよく開いた。
「ちょっとあんた!!」
聞き覚えのある声。
振り向く間もなく、お祓い棒が肩に軽く当たる。
「な、何してんのよ、勝手に!」
霊夢だった。
「おい、ちょ――」
慧音が言葉を失う中、霊夢は凪の腕を掴む。
「あんた、こんなところで何してんのよ帰るわよ、なんで私を頼らないのよ、借りを返させないつもり?」
抵抗する間もなく、引きずられるように連れていかれる。
振り返ると、慧音は困ったように、しかしどこか納得した表情で手を振っていた。
こうして、凪の新しい生活――
霊夢との共同生活とも言える日々が、半ば強引に始まったのだった。
本作は霊夢をチョロインにせず。
どうすれば博麗霊夢と恋仲になれるか?という疑問から作られています。
そのため、博麗霊夢の無敵性とかマイペースさの元になってる自己その物が無い状態からのスタートから復帰というウルトラCを決めることになりました。
これでもまだ、霊夢は惚れてません。
その辺のチョロインなら私の為にここまでしてくれてきゃっ素敵ってなってます。
いまだ霊夢義理でうごいてるのであしからず。
ここから、チョロインのアンチテーゼかっ言うくらい向き合っていけたらいいなと思っています。
こんなの博麗霊夢じゃないと言われるかもしれません。
ていうか言ってくれたらありがたいです。
すでに霊夢は原作と剥離するほどの経験を積んでいます。
そして、誰かを好きになったりするってことは変わるってことです。
それを受け入れてくれるよう書いてみますのでお付き合いください。
人に読まれているのかよく分からない状態なので感想で、設定矛盾や考察等ありましたら書いていただけると幸いです。