東方帰還録 ~ Reclaiming the Bond ~   作:地軸

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第六話 花映塚

幻想郷中の花が、季節外れに咲き乱れ、同時に幽霊が大量に出現した。

幽霊と亡者は違う――そう分かっていても、思い出さずにはいられなかった。

 

俺はこの異変を知っている。

だが、特段の害があるものではない。

 

それでも気になったのは、閻魔と死神が――

彼女を、博麗霊夢を、どう見るのかということだった。

 

俺は神社で、彼女の帰りを待つ。

彼女が最強であることは知っている。なぜなら、彼女は博麗霊夢だからだ。

 

境内に散った花びらを掃きながら、彼女を待つ。

彼女が弱いことも、俺は知っている。なぜなら、彼女は無人島の少女だからだ。

 

俺は、境内に立つ人影に声をかけた。

 

「なぁ、あんたは彼女を連れて行く気か?」

 

小野塚小町――死神が、境内に舞い降りていた。

 

「いや? 私の仕事は、あんたも霊夢も、まだ先の話さ。

 でもね、ちょっと聞きたいことがあって」

 

ひとまず、敵対の意思がないことに安堵の息をつく。

命のやりとりなんて御免だ。

ましてや、文字通りの“死神”となど、やっていられない。

「聞きたいこと、か。霊夢じゃなくて、俺なんかに?」

死神をまっすぐ見据える。

「死神様の問いに、俺みたいなのが答えられるといいんだが」

 

「聞きたいんだよ。博麗の巫女じゃない、あんたに」

小町は肩をすくめた。

「黄泉返しの英雄様に答えられなきゃ、誰が答えられるっていうのさ」

 

「英雄?」

思わず鼻で笑う。

「それこそ霊夢のことだろ」

 

「あんたが、その霊夢を救ったんだろ」

 

「違う」

即座に言葉が出た。

「救われたのは俺だ。だからこそ――英雄は霊夢だ」

 

「じゃあ、あんたは何を背負って生きるつもりなんだい?」

 

「背負うんじゃない。霊夢のことも、あの島での自分のことも――全部、大切なものとして胸に抱えて生きるんだ。俗な理由じゃ片付けられない何かがある。それに答えを出すために、死ぬまで、生き抜く」

 

「……ほう。なかなか骨のある話ね」

 

「小町、貴方が結論を出す話ではありません」

 

「へぇ……閻魔様の裁定もまだなんですね。でも、今の俺の覚悟、少しは伝わってますよね……?」

 

「覚悟の問題でもないのです。そして裁定でもないのです。そもそも私は、死者の裁定をするものであり、生者たる貴方を裁くものではありません」

 

「では、何を?」

 

「私は閻魔であり、地蔵菩薩でもあります。迷える衆生への助言です」

 

俺は少し間を置き、言葉を噛みしめる。

「助言……か」

 

「貴方は、死を否定しました。それ自体は、善でも悪でもありません」

 

沈黙が少しだけ流れる。四季映姫の声は静かだが、揺るぎない重みがある。

 

「ですが、否定した以上、責任は生じます」

 

「救われた者が、再び死に向かうことを、貴方は――見過ごしてはならない」

 

俺は肩の力を抜き、拳を軽く握る。

 

「彼女を守れ、とは言いません。それは彼女自身の役目です」

 

言葉の重みを噛みしめながら、心の中で反芻する。

 

「ですが――彼女が帰る場所を、壊さないこと」

 

四季映姫の言葉が、深く胸に染み込む。

 

「それが、貴方がこれから詰める善行です」

 

視線を伏せ、ゆっくりと息をつく。

言葉は重い。だが、逃げる余地はない。自分が選んだ道だから。

俺は、ゆっくりと頭を下げた

(そもそも彼女達は、俺が好きだった幻想郷の彼女達でもある。その心遣いを俺は否定できない)

 

「ありがとうございます、肝に銘じます」

 

胸の奥に、ずっと引っかかっていた重みが、少しだけ溶けるような感覚があった。

肩の力も、自然に抜けていく。

 

四季映姫は静かに頷く。

「よろしい」

 

その声に、主人公の胸の奥で何かが確かに落ち着く。

覚悟でも、裁定でもない――だが、進むべき道はここにある。

そしてその道は、霊夢という存在と共に歩むためのものだと、はっきりと理解した。

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