東方帰還録 ~ Reclaiming the Bond ~   作:地軸

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第七話 不死者到来

夏の日差しが暖かなある日、涼しげな風が抜ける昼下がり。

静かな博麗神社の屋内、湯飲みが二つ置かれたちゃぶ台。

そのちゃぶ台を挟んで、博麗霊夢の向かいに、赤いドレスの吸血鬼が座っている。

傍らには完璧な瀟洒な従者が控えている。

少し離れた縁側の端で、俺はその光景を眺めながら、思わず口元を緩めていた。

(……すげぇ、完全に和室に湯飲みなのに亡き王女の為のセプテットが聞こえる(幻聴))

「で? 今日は何しに来たのよ」

お茶を啜る音だけが響く静寂を破ったのは霊夢だった。

「お茶が飲みたくなっただけよ」

そっけなく、答えるレミリアに霊夢は「そう」と短く返す。

「だったのだけど、……しばらく見ないうちに変な物を拾ったわね、霊夢」

「……変な物って」

霊夢は一瞬だけ視線を凪に向けて、すぐに湯飲みに戻す。

 

「まぁ、そうね」

 

「変って酷いなぁ」

と凪が自分の話題が出たことに幸いと声を返す。

「変よ」

 

「そうか?」

 

「そうよ」

 

「そうか…」

 

凪が苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「へぇ…」

霊夢と凪のやりとりに何か感じる物があったか、レミリアの口の端が持ち上がる。

 

レミリアが能力を使い、運命を垣間見る。

 

絡み合う糸に指を伸ばした、その瞬間。

 

――一本。

 

か細く、今にも切れそうな運命の糸が、

いつの間にか自分の首に掛かっていた。

 

……冗談じゃない。

 

引けば千切れる。

そう思った、その考え自体が、

僅かな重みとなって喉に食い込む。

 

レミリアは、指を止めた。

 

「人間、名前を名乗りなさい。聞いてあげるわ」

 

「凪だ、飯田 凪、貴方が覚える程の価値がある人間ではないですが、お見知りおきを」

 

凪は、威厳があるなぁ、優雅さと儚さがすげぇ、まじカリスマとかのんきに考えていた。

 

しかし、その思考とは別に凪の視線が動いた。

 

柱。障子。縁側。

開け放たれた廊下の先。

 

それから、赤いドレスの吸血鬼の背後。

最後に、完璧な従者の位置。

 

視線は、すぐに湯飲みに戻った。

 

「凪、覚えておくわ、それと会話の途中に視線を踊らせるものではないわよ」

 

咎められた。

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社からの帰り道、レミリアは従者に声をかける。

「何よ、咲夜、言いたい事があるのなら言いなさいな」

 

「お嬢様は、何故、アレを名前でお呼びに?」

 

咲夜は分からなかった、アレを主が気に留める必要を認められなかった。

 

「私はね自分が躓くかもしれないものがあれば、それが何かくらいは確認するし、認識するわ」

 

咲夜は目を見開く。

 

運命は未だ訪れず、しかし確実にその時へと近づいて行く。

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