余命僅かなTS悪役令嬢は、生きる為に吐血魔法で聖女と勘違いされる 作:実験体G
普段はダンジョンの攻略情報や依頼の愚痴などが書き込まれる場所だが、ここ数日、ある一つのスレッドが爆発的な勢いで伸びていた。
【急募】北の辺境に出現した謎の美少女について【血染め】
1 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 12:00:00
最近、北の「死の森」周辺で妙な噂を聞くんだが、誰か知ってる奴いる?
全身白ずくめで、返り血で真っ赤に染まった美少女が一人で歩いてるって話。
幽霊か何かなのか?
2 :名無しの商会:20XX/XX/XX(月) 12:02:15
ああ、その噂なら俺も聞いたぞ。
ココル村を救った「血染めの聖女」様のことだろ?
行商人の間で持ちきりだぜ。
3 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 12:05:30
>>2
詳しく。
聖女って、あの教会のお飾りみたいな連中のことか?
あいつらが死の森なんて危険地帯に行くわけないだろ。
4 :ココル村出身:20XX/XX/XX(月) 12:08:45
お前ら、聖女様を侮辱するのは許さんぞ。
俺はその場にいたんだ。
あの魔物の大群(オーガ含む100体以上)を、たった一撃の魔法で殲滅なされたんだぞ。
5 :名無しの魔導師:20XX/XX/XX(月) 12:10:00
>>4
オーガ含む100体を一撃?
盛るにしても限度があるぞwww
宮廷魔導師クラスでも詠唱に1分はかかるレベルだぞそれ。
6 :ココル村出身:20XX/XX/XX(月) 12:12:20
嘘じゃない!
しかも無詠唱だった。
「邪魔」って一言呟いただけで、オーガの上半身が消し飛んだんだ。
その直後に、広場全体を一瞬で凍らせる氷結魔法まで使われた。
7 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 12:15:10
>>6
無詠唱で戦略級魔法の連発とか、どこの魔王だよwww
そんな奴がいたら国が放っておかねえよ。
8 :ココル村出身:20XX/XX/XX(月) 12:18:00
ここからが重要なんだよ。
その魔法を使った直後、聖女様は大量の血を吐いて膝をつかれたんだ。
ドレスが真っ赤になるほどの量だった。
それでも、「必要経費(わたしのいのちなんてやすいもの)」って仰って、名乗りもせずに去っていかれたんだ……!
9 :名無しのヒーラー:20XX/XX/XX(月) 12:20:45
えっ……なにそれ尊い……。
無詠唱の代償として、自らの生命力を削っているってこと?
そんな禁術、おとぎ話の中でしか聞いたことないわよ。
10 :名無しの商会:20XX/XX/XX(月) 12:23:30
>>8
マジかよ……。
俺が聞いた話だと、瀕死の村長に自分の血(薬?)を分け与えて蘇らせたって聞いたぞ。
なんでも、その薬は「地獄のような苦味(聖女の苦痛の味)」がしたらしい。
11 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 12:25:00
>>10
自分の血を薬にする能力……?
それ、聖女っていうか、もう女神の領域じゃね?
12 :通りすがりの騎士:20XX/XX/XX(月) 12:30:15
待て。その特徴……銀髪で、赤い瞳の少女ではなかったか?
13 :ココル村出身:20XX/XX/XX(月) 12:32:00
>>12
そうだ! 透き通るような銀髪に、血のような紅い瞳だった!
知ってるのか!?
14 :通りすがりの騎士:20XX/XX/XX(月) 12:35:45
……いや、まさかな。
王都でも似たような人相書きが出回っている。
グラン・マギカ王国の「行方不明になった令嬢」を探しているらしいが……。
その令嬢は「魔力なし」のはずだ。そんな凄まじい魔法が使えるはずがない。
15 :名無しの魔導師:20XX/XX/XX(月) 12:38:30
もしかして、魔力がないからこそ「命を削る」魔法を使わざるを得なかったとか?
だとしたら辻褄が合うぞ。
無能と蔑まれながら、陰で必死に力を磨いてきた……とかだったら泣けるんだが。
16 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 12:40:00
>>15
おいやめろ、俺の涙腺が死ぬ。
そんな健気な子が、血を吐きながら人助けしてるとか……推せる。
ファンクラブあったら入るわ。
17 :王都の住人:20XX/XX/XX(月) 12:45:10
王都じゃ今、第二王子様がやつれてるって噂だぞ。
「俺は取り返しのつかないことをした」ってうわ言のように呟いてるらしい。
もしかして、その令嬢を追放したことを後悔してるんじゃ……?
18 :名無しの商会:20XX/XX/XX(月) 12:48:00
点と点が繋がってきたな。
1.王都で令嬢が追放される。
2.直後に北の森で「血染めの聖女」が現れる。
3.聖女は命を削って奇跡を起こすが、見返りを求めない。
結論:グラン・マギカ王国はとんでもない逸材を捨てたんじゃね?
19 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 12:50:30
>>18
確定演出だな。
隣国の俺らからすれば、そんな聖女様が来てくれるなら大歓迎だぜ。
全力で保護(囲い込み)するべきだろ。
20 :アカデミアの教師:20XX/XX/XX(月) 12:55:00
興味深い話ですね。
生命力を魔力に変換する術式……理論上は可能ですが、実用化している例は皆無です。
もし実在するなら、魔法学の歴史が覆る発見です。
私が直接、現地へ調査に向かいます。
21 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 12:58:00
>>20
うわ、変人ギルバート先生が釣れたwww
先生が動くってことは、ガチで凄い魔法ってことか。
22 :ココル村出身:20XX/XX/XX(月) 13:00:00
とにかく、聖女様は北へ向かわれた。
おそらく「アカデミア連邦」を目指しているはずだ。
頼む、誰か聖女様を見かけたら優しくしてあげてくれ。
あの方は、ご自分のことを顧みなさすぎるんだ……!
23 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 13:02:15
了解した。
俺たち冒険者ギルドも、独自に「聖女様見守り隊」を結成するわ。
もし聖女様に手を出そうとする輩がいたら、全力で排除する。
24 :名無しの暗殺者:20XX/XX/XX(月) 13:05:00
……面白そうだな。
俺も一口乗ろう。裏から邪魔者を消しておいてやるよ。
25 :名無しの冒険者:20XX/XX/XX(月) 13:08:00
>>24
お前みたいなのが一番危ねえよ!ww
でもまあ、これで「血染めの聖女」はアンタッチャブルな存在になったな。
手を出したら、国とギルドと裏社会、全部を敵に回すことになるぞ。
「……くしゅんっ!」
森の出口付近。
男装用の服に着替えようとしていた俺は、本日二度目のクシャミをした。
「なんだろう、背筋がゾクゾクする。まだ風邪が治ってないのか?」
俺は首を傾げながら、用意していたシャツに袖を通す。
掲示板で、俺の知らない間に「聖女ファンクラブ」なる巨大組織が結成され、世界レベルで包囲網が敷かれていることなど、知る由もなかった。
「よし、着替え完了。これでどう見ても『病弱な美少年』だろ」
鏡(氷魔法で作った即席ミラー)を見る。
そこには、銀髪を後ろで束ね、メンズ服をダボッと着た、華奢で儚げな少年(?)が映っていた。
胸はサラシで潰してあるが、元々が慎ましやかなサイズだったので大した苦労はなかった(泣いてない)。
「名前は……『シル』でいいか。安直だけど、偽名なんてこんなもんだろ」
俺は荷物をまとめ、新たな一歩を踏み出す。
目指すはアカデミア連邦、王立魔法学院。
「待ってろよ、スローライフ! もう『血染め』なんて呼ばせない、地味で目立たない学生生活を送ってやる!」
その願いが、入学初日で木っ端微塵に砕かれる未来へ向かって、俺は元気よく歩き出した。
掲示板の住人たち「聖女様は命を削ってる! 守らなきゃ!」
シルヴィア「(変装完璧。これで誰にもバレないはず)」
認識のズレが国境を超えました。
掲示板回は、物語の進行に合わせて今後も挟んでいく予定です。
ギルバート先生も登場フラグが立ちましたね。
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