俺は昔から運が悪い。
一度外に出たら、何かしらのトラブルに出くわすことが結構ある。おまけにアニメや漫画などの影響なのか困ってる人を見かけると思わず助けようとしてそのトラブルに首を突っ込んでしまうのだ。
俺自身、そんな主人公みたいな存在になれるわけがないと分かっている。運動も勉強も常に平均以下。特に何か秀でた特技がある訳でもない劣等生。
それでも俺の体は勝手に動く。何とかしたいと足掻いてしまう。
俺はそんなバカみたいな男だ。
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「おはよう」
「おう、おはよう」
今日も始業ギリギリに登校してきたのは俺——
「よぉ、キモオタ!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」
ハジメが席に座るとちょっかいを出してくる奴らがいた。檜山大介と他3人の不良グループである。
俺は溜息をついてそいつらに言う。
「お前らさ、そういう嫉妬は醜いだけだぞ?」
「は?こんなキモオタに嫉妬なんかする訳ねぇだろ!」
「ほんとかなぁ……?」
俺はそう言いながらハジメの席へ向かってくる生徒に目を向ける。
「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
ハジメに話しかけてきたのは白崎香織。学校の2大女神なんて呼ばれ、ハジメに惚れてる女子生徒。
「南雲君。おはよう。毎日大変ね」
「香織、また彼の世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」
「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」
次に話しかけてきたのは八重樫雫、天之河光輝、坂上龍太郎の3人。
「優もおはよ……っていつも以上に傷だらけじゃない!今日は何があったの?」
雫が俺を心配してくる。
俺は八重樫道場という雫の実家の剣術道場の門下生で雫とそれから
「登校中、朝から不良に絡まれてる奴がいたからさ。助けようとしたら返り討ちにあった、それだけだよ。この程度ならもう慣れたし、全然平気だ」
「全然平気、じゃないわよ。少しは自分の心配をしてっていつも言ってるでしょ?」
「その通りだよ。誰かを助けたいという気持ちは分かるし、実際このクラスには君に助けられた人もいると聞く。だがそれで君が傷つくのは友人として見過ごせない。もっと人を頼ったらどうだ?」
「はぁ……天之河、綺麗事はやめてくれ。やろうと思えば何でも出来ちまう天才なお前に俺の何が分かるっていうんだ?お前は劣等生の俺が自分よりも目立つのが気に入らないだけだろ」
俺は天之河にそう返す。
一応言っておこう。俺は天之河が嫌いだ。自分の正しさを疑わずに信じ続ける自己中。やたらとこいつはモテているが俺にはこいつの何が良いのか微塵も分からない。
「そんな訳ないだろ!俺はただ……」
天之河が言い訳しようとしたところで始業のチャイムが鳴って教師がやってきた。話は中断されて何とも言えない雰囲気のまま授業が始まるのだった。
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「おい!ハジメ!もう昼だぞ。起きなくていいのか?」
「ん?ああ、ありがとう」
ハジメが起きると10秒でチャージするやつを取り出した。
「お前、もっとマシなものを食えよ……毎回それじゃあ飽きてこないか?」
「まぁ、これが一番楽だし……」
俺は呆れつつそう言うとハジメは『今さらそんな事言われても……』とでも言いたげな顔をして返した。
「それと今日はここにいて良いのか?」
「あ……」
こいつ、徹夜のしすぎで寝ぼけていやがったな……
既に香織がハジメのことをロックオンして近づいてきている。……そんな助けを求める顔を向けられても無理だぞ。俺にはあいつを止める事は不可能だ。無理なものは無理。人間諦めが肝心。
「南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」
ハジメは何とか断ろうとするも香織は止まらない。
「えっ!お昼それだけなの?ダメだよ、ちゃんと食べないと!私のお弁当、分けてあげるね!」
俺はそこで近くにいた雫へ声をかける。
「もう少し周りの視線を気にするように言った方が良いんじゃないか?このままだとハジメが嫉妬で呪い殺されるぞ」
「うーん……南雲君には悪いけど、言っても無駄なんじゃないかしら」
「そうか……お前で無理ならもう終わりだな」
俺は完全に諦めた。さらば親友……骨は拾ってやるから……!
するとここでハジメにとって救いの手を差し伸べる者がいた。
「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
相変わらずだな、あのバカは……
声をかけたのは天之河だった。
「え?なんで光輝くんの許しがいるの?」
「「ブフッ」」
素で聞き返す香織に俺と雫は思わず吹き出した。
いいぞもっと言ってやれ
そんな時、突如として天之河の足下から白銀に輝く幾何学模様が現れた。
これってまさか……魔法陣か!?
それは教室全体へ広がってやがて光が教室全体を覆い尽くした。
『おねが……だ…か……けて!』
最後にそんな声が聞こえたような気がした……