光が収まり、気がつけばまるで大聖堂のような場所に俺たちはいた。
そして周りには神官のような格好をした奴らがたくさんいた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
その神官みたいな奴らの中で1番目立つ格好をした老人がそう言ったのだった。
もしかしてこれ召喚されたのか……?それもおそらく異世界に……
マジか、やべぇ……!ちょっとワクワクしてる自分がいる!
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それから老人から説明を受けて
俺は説明を聞くまではワクワクしていたが、話を聞いて気が変わった。
だって戦争に参加するという事は命をやり取りをする覚悟が必要になるという事。さっきまでただの学生だったのにいきなりそんな事言われてワクワクするなんて無理な話だった。
正直、天之河にその覚悟があるのかとか色々問い詰めてやりたかったが今の俺たちにはおそらく戦う以外の選択肢がない。ここで拒否ればきっと強引にでもあの老人たちが戦わせてくるだろう。俺たちは戦うために呼ばれたのだから。
だから俺はその場では何も言わずに受け入れた。
その後、俺たちは呼び出された聖教教会の総本山・神山の麓にあるハイリヒ王国へと移動した。
この国で俺たちは受け入れられ、訓練を受ける事になった。その日の夜は王城にて歓迎する宴が開かれた。その際に色んな人たちにこの世界について色々聞いて情報収集に努めた。情報は少しでも多い方が良い。
そして訓練は明日から開始すると言う事でお開きとなった。
次の日——
教育担当の王国騎士団長、メルド・ロギンスから銀色のプレートが配られた。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
なるほど、ステータスか……ゲームみたいで分かりやすいな。でも俺はあまり期待できないな。元々低スペックな人間だったのだ。異世界に来た程度でそれがひっくり返るわけがない。
そう思いながら説明された持ち主登録の手順に従って針で指を軽く刺して自分の血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。そして浮かび上がった文字を見る。
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神代 優 17歳 男 レベル:1
天職:情報屋
筋力:8
体力:8
耐性:8
敏捷:8
魔力:8
魔耐:8
技能:情報収集・頭脳強化・言語理解
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うーん……情報屋か。となると鑑定、解析、探知とかその辺りが使えるといいな。後は使い方次第ではあるが戦闘に役立てる事もあるだろう。
そんな感じで色々想像しているとメルド団長からの説明があった。
そしてレベルや天職、ステータスの説明を受けて再度自分のステータスを見る。
俺めっちゃ弱いじゃん。いやまぁこうなるだろうとは思ってたけどさ……
すると隣にいたハジメが話しかけてきた。
「ねぇ、どうだった?」
「とりあえず俺、めっちゃ弱い事だけは分かった」
そう言いながら俺はステータスプレートを見せた。
「うわ……ほんとだ。ステータス俺より低い……」
「は?お前はどうだったんだよ」
「俺は錬成師でステータスはオール10だよ」
どんぐりの背比べじゃねぇか!と一瞬思ったが……
「錬成師……って事は武器方面で色々出来そうだな。後は壁や地面の形を変えられるだろうし、俺よりもめちゃくちゃ良いのでは……?」
「でも、多分皆の方がよっぽどすごい才能があるみたいだし……」
まぁそれはそう……メルド団長の反応を見るに他の奴らは戦闘系の天職っぽいんだよな。特に天之河に対しての反応がすごかった。あいつは相変わらず高スペックのようだ。
そんなこんなでハジメがメルド団長にステータスを報告しに行った。
次は俺の番か……
メルド団長がハジメに対して微妙な顔をしているのを見て多分俺も同じような反応されるんだろうな、とか思ってました。いざ見せた時の反応がこちら
「これは酷いな……」
予想以上の反応をありがとう。それって他のクラスメイトと比べてだよね?この世界基準で見ても酷いとか言わないよね?
「初めて見た天職だが……」
意外にも他にこの天職を持っている人はいないらしいが、多分悪い意味で珍しいんでしょうね……くじ引きで言うと大凶みたいな
「ともかくあれだ……おそらく鑑定などの技能で情報を得る事が得意のはずだが……」
「もうぶっちゃけてくれ。隠してもしょうがないだろ」
「……分かった。さっき言った鑑定というのが情報を得ることに対しての代表的な技能なんだが、この技能は派生技能も含めて多くの者が有している。特に生産職系などの天職ならばあって当然レベルだ。さっきの彼の錬成師も取ろうと思えば鉱物系の鑑定ならば容易に習得出来るだろう」
あーなるほど、言いたい事が分かった……
そんな誰でも出来ることに才能があっても、今のこの世界の状況では価値が薄いということなんだろうな。それこそ、10人に1人の天職であるハジメの錬成師以下の価値なのだろう。
「だが、わざわざ天職となるくらいだ。もしかしたら我々の想定以上の事があるかもしれん。応援しているぞ」
メルド団長、その気遣いが1番傷つくんだよ……
「おーい!ユウユウ!どんな感じ?その様子だとあまり良くはなさそうだけど……」
「鈴、その呼び方はやめろって言ってるだろ……普通に名前で呼べ」
話しかけてきたのは谷口 鈴。クラスのムードメーカー的な存在だ。そしてその隣には鈴の親友である中村恵理がいた。
2人とはかなり前からの友人だ。親友であるハジメの次に親しいと思う。
「もういい加減諦めたら?鈴は全く名前で呼ぶ気がないみたいだし」
「そうだよ。さっさと諦めて渾名を受け入れて、そしてステータスプレートを見せて!」
「はぁ……分かったよ。見せれば良いんだろ」
そう言って俺は鈴たちにステータスプレートを見せる。
「……とりあえず情報に強そうなのは納得ではあるね」
「そうだね、ユウユウは意外と頭脳派だから。でも、それにしたってステータスが……」
「それ以上何も言うな、悲しくなるから。それで、お前らの天職はなんだったんだ?」
「鈴は結界師だよ」
鈴がなぜか勝ち誇ったかのような感じで言ってくる。
「結界師と言う事は、防御寄りなのか……意外だな。もっと攻撃的な感じかと……」
「え?鈴ってそんな攻撃的なイメージある?」
「だってお前変態じゃ——」
言い終わる前に鈴に頭を殴られた。普通に痛え……
「喧嘩したいのかな?いつでもやってあげるよ?」
一見笑顔に見えるけど目が笑ってない。きっとまたここで余計な事を言えばさっきよりも痛い攻撃がくるのだろう。だがそれでも……!
「俺は事実しか言っていない……お前は変——」
予想通り言い終わる前に拳がきたので軽く回避する。
「んな……!躱された!鈴の方が強いのに……!」
「鈴は分かりやすいからな」
「ぐぬぬぬ……」
「それで?恵理の天職は?」
俺は怒りが治らない鈴の拳を躱しながら恵理に聞く。
「その状態で聞いてくるんだね……降霊術師だよ」
降霊術師……て事はネクロマンサーみたいな感じか?
「強そうだな」
「全然当たらない……!これじゃあいつもと変わらないじゃん!」
鈴が痺れを切らして言った。
たとえステータスが俺より強かろうと動きが何も変わらないからな。そりゃ見切られるだろうよ……
「ドンマイ」
俺は鈴にそれだけ言っておいた。
それから、まもなくして訓練が始まった。
——そしてあっという間に1週間が過ぎ去った。
この1週間は色々あった。
まず、俺は自分の技能を使いこなせるようになろうとした。俺の技能の『情報収集』は情報を得ることであれば大抵のことは出来るらしいのだが、今の俺には見れば分かる程度の情報しか鑑定できなかった。
どうやらこの『情報収集』は蓄えた知識量に応じて性能が変化するっぽい。その知識を基に対象調べて情報を得る、と言うことらしい。
これだけ聞くと通常の鑑定の技能よりも使えないがこれはその分自由度が高い。例えば、目の前の相手の構えや筋肉の動きなどから次の行動を予見出来る。それから調べ上げた相手の動きを自身の動きに完璧に反映出来る。
他にもきっと様々な使い方があるのだろう。
そんな『情報収集』を使えるようにするために俺は王立図書館で書物をひたすらに読み漁っていた。『頭脳強化』により、五感や反射神経なども強化されているようで1つの書物を読むのに全く時間が掛からなかった。
寝る間も惜しんで行い、この1週間で膨大な数あった書物を全て読み切った。
『情報収集』は一度得た情報や知識を記録するため忘れる事はない。つまりもうこの図書館には用はない。
というわけで次は武器だ。
俺にはなぜかまともな武器が支給されなかった。とりあえずサバイバルナイフ的なものをもらったので、これをハジメに頼んで錬成で普通の剣の形にしてもらった。
これで後は訓練で実戦をして戦闘に活かせるようにするだけだ。