元プラズマ団員「旅行先が修羅の国過ぎる件」   作:タク@DMP

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第一話:おいでませ知らん地方へ

【とある旅行スレ】

 

 :ワイどこにでも居るポケモントレーナー、旅行先に何処に行くか考えてるんだけど、良い所知らん? 出来るだけ自然豊かな田舎希望

 

 :何処住み?

 

 :ライモンシティ住み、かれこれ海外に出たことがない

 

 :列島がオススメ

 

 :都会より大自然が良いならパルデアも良いかもしれん

 

 :パルデアいいやん

 

 :少し交通の便が悪い、車が通る道路もまともに整備されていない

 

 :町と町を行きするのに空飛ぶタクシーかモトトカゲ使わないといけない所は”少し交通の便が悪い”とは言わない

 

 :観光地と言えばカロスでしょ、町の中にポケモンが居るぞ

 

 :お前、この記事見たことないのか?

 

【ミアレシティの救世主Kさんのコメント】

『いやー、最初は日帰りのつもりだったんですが、いつの間にかバトルロイヤルに参加して、あれよあれよと最強のメガシンカ使いになってそのままミアレ救っちゃったんですよねェ、ハハハ!』

 

『で、気が付いたらもう2ヵ月経ってて、いつの間にかミアレに永住しないかって話まで来ててェ……』

 

『一体……何処で間違ったんだろうなあ……って。でも、三食クロワッサンカレーだし、頭の愉快な人達に囲まれていて今すっごく幸せです!』

 

 :こわ

 

 :こわ

 

 :こわ

 

 :クロワッサンカレーって何だよ

 

 :観光のはずが永住する事になってんじゃねーか!!

 

 :あと町中に平気でオヤブンが出るからやめといた方が……

 

 :やっぱ安全なのは列島でしょ

 

 :列島って何処ぞ? 

 

 :シンオウ、カントー、ジョウト、ホウエン……って連なってるから列島や

 

 :その中で一番長閑なのは?

 

 :シンオウ? あ、でもオススメがあるで

 

 :オススメ?

 

 :サイゴク

 

 :知らん地方来たな

 

 :マイナーだからな

 

 :ジョウトの西、ホウエンの東や

 

 :列島本土の最西端やな、ポケモンリーグもないしマイナーだけど交通の要所

 

 :一番田舎と言えば田舎

 

 :あとシンオウは今の季節だと寒すぎる

 

 :その点サイゴクは割かし気候も安定してるで、2月でもなきゃ吹雪いたりもしない

 

 :サンガツ! 人生リセットするつもりで楽しむわノシ

 

「怖ァ……カロス地方に旅行するとバトルロイヤルに参加させられて、意☆味☆不☆明な料理食わされた挙句、頭のおかしい奴らに囲われて永住させられるのか。旅行先変えて正解だな」

 

 ──少年・フユキはノートPCを閉じた。

 此処最近、旅行に行く場所を決めかねていた彼は様々なサイトを回っていた。

 だが、漸く決心がつく。

 

 

 

「行くかぁ……サイゴク」

 

 

 

 特に此処でなければいけないという理由があったわけではない。

 きっと探せばもっと良い場所はあったかもしれない。

 強いて言うならば──フユキは、此処ではない遠い場所に行きたかった。

 此処ではない遠い場所ならば──彼自身が抱えている疑問も晴れる気がした。

 

 

 

「大自然と人間の共存する地方……どんな場所なんだろうな。そこなら、きっと……」

 

 

 

 フユキは部屋のクローゼットを開けた。

 もう小さくて着られない真っ白なローブが掛かっていた。

 胸の辺りには──青白い「P」の文字が刻まれていた。

 

 

 

「……きっと、ポケモンと共存する意味が……分かるかもしれない」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──この世界には至るところにポケモンと呼ばれる不思議な生き物がいる。

 森に居る。海に居る。洞窟に居る。果てには町の中に居る。

 空港前のバス停には、茶色の小鳥ポケモン・ポッポが地面を突きながら闊歩しており、人が近付くとバサバサ羽ばたいて飛び立ってしまう。

 

(ポッポって初めて見たなあ)

 

 自分の故郷には居ないポケモンに感心しながらスマホロトムを向けた。

 すぐさまスマホに入っているポケモン・ロトムが自動で目の前のポッポのデータを調べ、画面に表示する。

 

(イッシュには居ないポケモンが列島には沢山居るんだろうな)

 

 フユキは車輪付きのスーツケースを引っ張りながらバス停に立った。

 計画もない。巡る当てもない。事前知識もほとんどない。

 行き当たりばったりの旅行。だが、不思議と不安は無かった。変に計画を立ててそれに追われる方がフユキはイヤだった。

 

【ベニ市街地行き】

 

(バスとか何時ぶりだろうな、乗るの)

 

 一先ずの目標はサイゴクでも屈指の大都市・ベニシティの市街地。

 空港は人里離れた場所にあるので、少しの間はバスに乗ることになる。

 平日の昼間と言う事もあってバスは空いており、座席に乗るのは容易かった。

 

(それにしても、列島のバスは平和だな。イッシュなら乗り合いのバスなんて乗りたくもないけど)

 

 治安の悪い故郷のバスを思い出しながら、フユキは座席にもたれかかる。

 ライモンシティのバスは柄の悪いヤツの一人や二人乗っていて騒がしく、とても乗れたものではない。

 窓の外から景色を見ているうちに──あっと言う間にベニの市街地に着くのだった。

 

(さて、と。後はじっくりプランを──)

 

 

 

「えーっ、あっ、財布、財布が……無いッッッ!?」

 

 フユキは運転席の方を見遣る。

 先に降りようとしていた女の子がカバンを漁りながら真っ青な顔をしていた。

 

「無いの? お金」

「え、いや、あの、えーと、ちょっと待って下さいっ! ウソでしょ、無いはずないのに──」

「空港から、ですよね。二人分の運賃払います」

「えっ」

「この子知り合いなんで。さ、行こうか」

 

 フユキは二人分の運賃を料金箱に入れる。運転手も「気を付けてね」と言ってそれ以上何も追求しなかった。

 真っ青な顔をした女の子は「あ、あの」と口ごもっていたが、フユキはすぐに「取り合えず降りようか」と促した。

 バス停に降りるなり、女の子はぺこぺこと頭を下げる。

 

「あ、ありがとうございますっ、助かりましたっ!! で、でも、財布、見つからないです……っ」

「落ち着いて。落としたと思ったらカバンの変な所に入ってるものだよ」

 

 未だに青い顔でカバンを漁る女の子。

 そんな中、一台のパトカーが道路を走っていく。

 

『盗難にご注意くださーい! 最近、エスパータイプのポケモンを用いた財布の窃盗が続いています、ご注意くださーい!』

 

 さぁ、と更に女の子の顔から血の気が引いていった。

 

「ど、どうしよう、盗られたかも……バス代は絶対返します!! 銀行に行きますので!!」

「ところでさ、そのコートの膨らみは何だい」

「え”」

 

 女の子は思わずコートのポケットをまさぐった。その中にはオタマロをデザインした財布が入っていた。

 

「あったーッッッ!! ボクの財布ーッッッ!!」

「……灯台下暗し、か」

「ありがとうございますっ、旅のお方! この御恩は必ずお返しします!」

「いや大袈裟だし。取り合えず財布が見つかって良かったよ」

「お金は勿論ですが──何かお礼させてください!」

「って言われてもなあ。見返りが欲しくて助けたわけじゃないし、何も思いつかないよ」

 

 フユキは唸る。そして──思いついた。自分はそもそも観光の為に此処に来たのではないか、と。

 

「そうだ。もしよかったら、オススメのお店を教えてよ。サイゴクには来たばっかりなんだけど、何も知らなくってさ」

「はいっ! 是非っ!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ボクはコゴメ、と申します! 改めてありがとうございました!」

「フユキだ。こっちこそ、お店を教えてくれてありがとう」

 

 改めてフユキは女の子──コゴメの恰好を見遣る。

 白いフード付きのパーカーに、真っ赤なマフラー。

 そしてクマシュンの顔をあしらった可愛らしい耳当て。確かに今の季節、列島はとても冷え込むが──それにしても暖房が効いている店内でして良い恰好ではないように思えた。

 年齢はきっと──自分よりは年下だろう、とフユキは判断する。背格好、そして顔立ちもまだ幼さが残っている。

 

「あー、さむさむ……お店の中は暖かくて落ち着きますねえ」

「ところで良いのかい? わざわざ一緒に来てもらって」

「いえ! サイゴクのこと、ベニのこと、色々教えますから! 是非!」

「そうなの? なら良いけど」

「お待ちどーう、焼き上がったよ」

「あはーっ! 寒い時はこれが一番です! 頂きましょう! ベニシティ名物、お好み焼きです!」

 

 女の子に連れて来られたのは、所謂お好み焼きの店であった。

 テーブルに持って来られたのは、こんがり焦げ目の付いた生地の下にそばが敷かれた不思議な料理。

 その上にはたっぷりと茶色のソース、そして刻んだネギに目玉焼きがデカデカと乗せられている。

 

「すごいなこれ、初めて見たよ。パスタの上にクレープ生地のようなものが敷かれてる」

「お好み焼きをそんな例え方する人初めて見ました……」

「え? 違うの?」

「パスタじゃなくて焼きそばです。クレープの生地ってのは……まあ、当たらずとも遠からずでしょうか」

「イッシュには無いんだよね、ヤキソバ。確かにパスタとは違うような。これ、どうやって食べるの。ソースで口が汚れちゃいそうだ」

「ヘラでこうやって小さく切るんですよ」

「成程。独特の文化だな……」

 

 皿に小さく切ったお好み焼きを取り分け、口に運ぶ。

 そして思わずフユキは目を見開いた。口の中にソースとタマゴの味、そしてうまみの強いヤキソバ麺が絡み合う。

 

「すごい料理だな、これは、はふはふ」

「でしょ? ベニと言えばお好み焼き、ですから!」

「ふぅん。でもこれ、俺の知ってるお好み焼きとはちょっと違うな。前にテレビで見たヤツはもっとこう、平べったかったような」

「それはコガネシティのお好み焼きですね。こっちのお好み焼きはソバの下に生地を置いて焼くんです」

「色々違うんだなあ」

「それにしてもフユキさんはイッシュから来たんですよね。遠かったでしょ」

「んまあね。ちょっと観光に。君は? 空港に居たって事は、この辺の人じゃないんだろ」

「ボクは旅先から帰ってきたところだったんです。ちょっとジョウトから」

 

 コゴメがそう言うと──ポン、と何処からともなく爆ぜるような音が鳴った。

 彼女の腰についていた赤いカプセル──モンスターボールからポケモンが飛び出したのである。

 

「ぷっきゅるるるるる!」

「あ、イーブイ! ダメですよ、お店の中で出てきたら」

 

 現れたのは茶色の毛玉のようなポケモンだった。

 犬のような体躯、そして兎のような長い耳ともふもふした体毛。

 

「珍しいな、イーブイか」

 

【イーブイ しんかポケモン タイプ:ノーマル】

 

「イッシュでは珍しいんですね。サイゴクでは旅立つトレーナーにイーブイが渡されるんですよ」

「そうなんだ。ポケモン……か」

「旅人さんもポケモン持ってるでしょ?」

「いや──それが、持ってないんだよ」

 

 コゴメの手からヘラが落ちた。

 

「ポ、ポケモンを持ってないィ!? しょ、正気ですか!?」

「実はこの年になるまでポケモンを持ったことが無くてね。その……機会が無くって。えっと、そんなにマズいかな」

「サイゴクは野生ポケモンが町に侵入する事もあるんで……自衛のためにも持ってた方が良いですよ? てか、何で今までポケモン持ってなかったんですか?」

「特に困らなかったし。トレーナーじゃなかったらポケモン持ってない人ってそれなりに居るよ。それに……」

 

 フユキはイーブイの方を見遣った。

 過るのは、彼自身の中で今も蠢く記憶。そして──”教え”だった。

 

 ──ポケモンを解放せよ! 自由を奪うボールを捨てよ!

 

 フユキは、己の脳裏に過った言葉を抑え込むように眉間を摘んだ。

 

「いや、何でもない」

「?」

「えーと……この年になって、ポケモンと過ごす生活ってどんなカンジなんだろうって興味が出てね。旅行先にサイゴクを選んだのもそれなんだ。此処は自然が過酷で、ポケモンと人の距離が密接だって聞いたよ」

「あ、そうです! そうなんです! 野生ポケモンが町に入ってくることも多いですし、町によっては当たり前のように野生ポケモンと人が共存してます」

「……そうか。それは楽しみだな」

 

「お客さーん、店の中でポケモン出さないでくださいよ!」

 

 店主の声が飛んでくる。

 コゴメは肩を震わせるとボールに手を掛けた。

 

「いけない! ほら、戻って下さいねイーブイ」

「ぷっきゅ!」

 

 モンスターボールのボタンを押し、イーブイを引っ込めようとするコゴメ。

 しかし、モンスターボールから照射された光をイーブイは避けてしまうのだった。

 

「ちょっと。早く戻って下さい」

「プッキュルルルルルル!!」

 

 ポケモンも香りに釣られてお好み焼きを食べたくなってしまったのではないか、と最初こそ思ったフユキだったが──

 

「待って」

「え?」

「その子、()()()()()()()()

 

 耳をきゅっと絞り、威嚇するようにイーブイは店の外を向いている。

 イーブイはお好み焼きではなく──店の外に完全に意識を向けている。

 

「怯えてる……まさか、ボクに!?」

「誓ってそれは無い。これはきっと──」

 

 

 

 ──ぐらぐらぐらぐらぐらッッッ!!

 

 

 

 大きく店が揺れた。

 お冷のコップが倒れて地面に落ちて割れる。

 店主が慌てて棚に置いていた酒瓶を抑えたが、何本か落ちてしまった。

 

「な、なんですか、地震──!? でも、地震速報なんて──」

「いや、これは……!!」

 

 遅れて、悲鳴が外から聴こえてくる。

 そして──

 

 

 

「ドゴォオオオオオオオオオオオオーッッッッ!!」

 

 

 

 野太い咆哮が響き渡るのだった。

 すぐさまお代をテーブルの上に置いたフユキは店を飛び出す。

 

「コゴメちゃん、この町は……あのサイズのポケモンを放し飼いにしてるバカタレが居るのかな」

「そ、そんなはずは……」

 

 一瞬のうちにベニの市街地は悲鳴と絶叫に包まれていた。

 逃げ惑う人々。そしてぽっかりと穴が開いたアスファルトの地面。

 普通ならば地盤沈下を疑う場面だが、そうではないことは見上げる程に巨大なポケモンが示している。

 

 ──それは、地の奥底から這い出てきたのだ。

 

 球形の岩石が数珠のように連なった、巨大な蛇が。

 

 

 

【イワーク いわへびポケモン タイプ:岩/地面】

 

 

 

 恐らく野生の個体に違いは無い、とフユキは断じる。だが、問題はその規格外のサイズだ。

 通常全長が6メートル程のイワークだが今こうして現れた個体のサイズは──10メートルを優に超えている。

 おまけに、その目は赤く光り輝いており、咆哮は殺気を帯びていた。まさに怪獣と言っても過言ではない。

 

「イワークのオヤブンです……ッ!! どうして、こんなところに……!」

「これが、イワーク……!? なんて巨大なんだ……ッ!!」

 

 生まれて初めて見るイワーク。そして、他の個体を遥かに上回る巨体。

 フユキは逃げようにも足が竦んでしまった。

 そして。自分の言っていたことが理想論でしかないことをイヤでも思い知らされるのだった。

 

(こ、こいつはやばい。ポケモンの自由がどうとか、そんな事を言ってる場合じゃない……!! こいつを野放しにしてたら、被害が出る!!)

 

「グゴォォォォーッッッ!!」

 

 イワークが咆哮すると共に、空中に巨大な岩が浮かび上がる。

 そして、次々に地面へとそれが落ちていき、停車している車を押し潰し、アスファルトに穴を開けていく。

 フユキは寒気がした。上を見上げると、此方の頭上にも岩が降ってきている。すぐさまコゴメの腰を抱きかかえると、彼はその場を飛び退いた。

 

「きゃぁっ!?」

「ちょっとごめんよ──ッ!!」

 

 間もなく、岩が降り注いでアスファルトが凹んだ。

 もしあそこに居れば揃ってぺしゃんこだった、と思い知らされる。

 

「なんて奴だ、お構いなしか!!」

「あ、あの、そろそろ下ろしてください……!」

 

 顔を真っ赤にするコゴメ。彼女は所謂お姫様抱っこの姿勢でフユキに抱えられていた。

 すぐにフユキは彼女を下ろす。

 

「ま、また助けられちゃいました……!」

「そうだ、君のイーブイは──」

「あの子は大丈夫! そう簡単にやられるほどヤワじゃないです!」

「ぷっきゅるるるるる……!! ぷるるるるるるッッッ!!」

 

 イーブイは一目散にイワーク目掛けて走り、星型の弾幕を飛ばした。

 ”スピードスター”だ。しかし、強固な岩の装甲にそれは阻まれてしまい、全く効いた様子が無い。

 

「ぷいっ!?」

「ダ、ダメです、ノーマルタイプの技は岩タイプにいまひとつ……!!」

「他にポケモンは居ないのか!?」

「居るには居るんですが……いや、そんな事を言ってる場合じゃないですよね……!」

 

 コゴメはカバンから金属製の四角いケースを取り出した。それを開くと──モンスターボールが3つ、並んでいる。

 

「……これって」

「選んでください!! この中から一匹!!」

 

 

 

「グゴォォォォーッッッ!!」

 

 

 

 イワークが叫ぶ。

 また、岩が降り注ぎ、周囲のものを押し潰していく。最早選んでいる余裕もないようだった。

 

(後は野となれ山となれ──か!)

 

 フユキはボールを一つ無造作に掴み、イワーク目掛けて投げ付けた。

 中から飛び出したのは──

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