戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

10 / 39
アルヌス駐屯地おける報告

鉄血の撃破を成功させた第三偵察隊は避難民を乗せて自衛隊の駐屯地となっているアルヌスへと帰投していた。

 

その道中は弾薬の消耗や損傷によって疲弊した第六小隊に代わり、第三小隊が万が一の備えとしてアルヌスまで護衛し、共にやって来た。

 

「だ、誰が連れてきて良いと言った!?」

 

伊丹は自身の上官である檜垣に思いっきり怒られていた。

 

伊丹が檜垣等の上を通さずに無許可で連れて帰ってきた事で生じる問題の数々に檜垣は頭を抱える中、伊丹は何処吹く風と言った具合だった。

 

「連れてきちゃ不味かったですかね?」

 

「くうぅ……!」

 

伊丹のその言葉に檜垣は再び怒り、説教に入る段階になり掛けたが深い溜め息をついて伊丹に言う。

 

「はぁ……装備を解いて待っていたまえ。陸将に報告してくる」

 

檜垣は諦めた。

 

伊丹(こいつ)になに言ってもストレスにしかならないと考え、もう陸将である狭間に押し付けてしまえとばかりに報告へと向かった。

 

そしてその報告は狭間の元へと届いた。

 

「陸将。偵察隊の一次報告が纏まりました」

 

「おう!どうだ何か分かったか?柳田ニ尉」

 

「ハッ。言語の問題はありますが各隊平穏な一次接触が出来たようです。接触したのは人間タイプが居住する農村が殆どです。流通している物品の資料は報告書に。各村は村長によって纏められていますが国としての政治体制はまだ不明です。それと……一つ問題が……」

 

「何だ?」

 

柳田は口ごもる様に言うと狭間は首を傾げながら柳田の言葉を待っていると柳田は答えた。

 

「……我々とは異なる勢力が二つ存在する様なのです。一つはグリフィン&クルーガーと呼ばれるPMC。そして鉄血工造と呼ばれこの世界では黒紫の魔女と呼ばれる未知の勢力です。グリフィンは友好的でありましたが一方の鉄血工造は非常に敵対的で警戒が必要です」

 

「……つまりは我々と同じ世界から来た勢力と言う事か?何処の国だそのPMCを雇ったのは?それと工業系の会社が何故敵対的に?」

 

狭間のその問いに柳田は困った様な表情を浮かべた後、答えた。

 

「それが……我々とは異なる年代……つまりは未来から来た可能性があるそうなのです」

 

「何だと?それは本当か?」

 

狭間は予想だにしなかった答えに驚くと柳田は報告書を見ながら説明する。

 

「今、駐屯地に待機している彼女達はグリフィンの戦闘員だそうで驚く事に人間ではありません。……分類的には機械に当たるとされます」

 

「馬鹿な!それが事実なら我々よりもいや、此方側の世界以上の技術を要するに事になる。機械となれば資源さえあれば大量に製造、即時戦力化も可能だ。それを正規の軍隊が持つのではなく、それもPMCで戦力として扱われている。……軍事的な均衡が崩れかねんぞ」

 

狭間はそう言ってグリフィンの存在する向こう側の世界はどうなっているのかと考える中、柳田は答えた。

 

「当然、彼方側の正規の軍は機械兵……もとい専用の戦術人形を大量に保有し、高度な兵器と装備を保有していると彼女達からの調書で聞きました。そしてグリフィンには戦術人形は配備されていても重火器及び戦車の様な高火力、重装甲兵器の保有を条約で禁じられているとされていると。」

 

「なら何故、正規の軍は動かなかった?PMCなぞ頼まなくともそれだけの戦力があると言うならすぐにでも戦争を終らされるかもしれないのだぞ?」

 

「どうやら正規の軍には余力が無いそうです。向こうでは何かしらのパンデミックが起こり、それの対応に全力を注いでいるとか」

 

「パンデミック……軍が動く程の混乱か……まるで数年前に流行った新型ウイルスの様だな」

 

狭間はそう言って昔に世界中で流行った新型ウイルスの猛威を思い出しながら言うと柳田は続ける。

 

「その為、PMC……グリフィンに作戦を委託。グリフィンはこの世界において多大な戦果を挙げているそうです。後々、彼女達の司令官。ハヤト・イズミが会談したいと今、この駐屯地で待機しているステンと呼ばれる戦術人形が言っておりましたが……如何しますか?」

 

「名前からして日本人か?……いや、今はそれはどうでも良い。此方としても同格或いは格上の相手との敵対は避けるべきだ。その会談は此方も望むと伝えておいてくれ」

 

「分かりました。次は鉄血工造の報告です。グリフィンと同じく戦術人形を主力とする勢力で非常に敵対的です。初接触の際にも第三偵察隊はグリフィンの第六小隊と共に避難民を護送中に襲撃を受け、少なくない被害を出しました。話し合いの余地すら鉄血工造は与えずに攻撃を行い、幸いにもグリフィンの増援が到着した事で窮地を脱しました」

 

「うむ……話し合いすらしないか……奴らは何がしたいんだ?」

 

狭間は鉄血工造の目的は何なのかと考えると柳田は眼鏡を整えて間を置いて答えた。

 

「ジェノサイド……つまりは虐殺です……」

 

「何だと!?それは本当か!」

 

「はい……鉄血工造は人類に反旗を翻した戦術人形の勢力で反乱の理由は不明。首謀者不明。分かるのは人間を殺す事だけに目的を持つとされております」

 

「何て事だ……!我々の世界でもAIの脅威や陰謀論は何度も話題と議論に挙がるがまさかそんな奴らまで現れるとは……!」

 

狭間はそう言って頭を抱え込みつつもすぐに平静を取り戻して姿勢を戻す。

 

「他の偵察隊は無事なのか?」

 

「はい。幸いにも鉄血工造とは接触せず、無事に帰還しました。続いて鉄血工造の予想戦力です。戦力は主力は歩兵……戦術人形が中心と思われます。彼女達、グリフィンからの情報提供により、鉄血工造には他にも無人兵器を大量に保有している可能性があります。その中で四足歩行の戦車を第三偵察隊が撃破したと言う報告があり、恐らくはグリフィンよりも兵器の保有量は上回っている可能性があるかと」

 

「そうか……今後の事を考えてより警戒して対応しないとならないな……分かった。俺からも上に伝えよう。特地とは別の他の世界から来た友好的な勢力と敵対的な勢力の両方をだ。早急に対策を練らなければ我々は脱兎の発令を決断しなくてはならなくなるからな」

 

狭間はそう言って深い溜め息を吐いたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。