狭間達が頭を抱えている一方、伊丹達、自衛隊の面々はアルヌスに滞在する第三小隊の面々を興味津々とばかりに見ていた。
ステンを始めとした小隊の面々は全員が美少女で彼女達が元は機械である事や銃を持つ事以外は何処にでもいそうな年相応の少女に見える為、自衛隊としてもどうして女の子しかいないのかと首を傾げている者やオタク心を擽る見た目を持つ彼女達に興奮する者と分かれた。
「おっほー!隊長見てください!猫耳娘*1の子もいますよ!」
「いやそうだけど……そこなの?」
「そこっスよ!やっぱり時代は変わっても需要は変わらないんスよ!それに他の子達も可愛いときたっス!良いなぁ!彼女達の司令官はハーレムも同然じゃないっスか!」
倉田はそう言って美女、美少女に囲まれているグリフィンの指揮官の姿を想像し羨ましがり、伊丹としては分からんでもないと苦笑いする。
「……それよりも何であんな古くさい銃を使ってるのかな?二人除いて骨董品ですよ全部」
栗林はそう言ってステン達の手に持つ銃を指摘した。
ステンMKⅡ、FM mle1915、MG34。
何れも第一次、第二次世界大戦で使われた銃なのだ。
第六小隊の中にも一○○式機関短銃や四式自動小銃と言った旧日本軍の銃を使用していた一○○式と四式の事もあって疑問が生じたのだ。
現代戦において明らかな時代遅れの銃を使う五人に首を傾げる中。
「それは私達のスティグマが銃とマッチしたからですよ」
「うわッ!?びっくりした……スティグマ?」
いつの間にか来ていたステンに伊丹は驚きつつ聞くとステンは説明する。
「私達、IOP製の戦術人形は単に銃を持って戦う様に設計されてません。スティグマ・システムは戦術人形と銃を結び付ける技術で簡単に言えばIOP製の戦術人形は相性のあった銃を半身同然に扱える様にする為の技術です」
「へぇ……半身同然ね……」
伊丹はステンの簡単な説明を聞いてステンの持つステンMKⅡを見ながら聞く。
「他になかったの?その……明らかに時代遅れだし……」
「相性が良かったんです。例え時代遅れで古臭くとも……わ、私は臭くありませんからね!」
「あ、はい……」
ステンの急な振りに伊丹がたじろぐ中、倉田がここぞとばかりに手を上げた。
「はいはいっス!ステンさん達は女性の方が多いようですが何故っスか!」
倉田のその質問に自衛隊の面々はそれはもう興味津々とばかりに注目し、ステンも困った様な苦笑いをした後で答える。
「まぁ……簡単な事ですよ。単純に需要の話しなんです」
「需要?」
栗林はそう言うとステンは頷く。
「例えば私達が男性か普通のロボットだとします。それが銃を持って周辺を警備をしていたりしたらどう思いますか?」
「そりゃ……怖いよなぁ……」
伊丹はステンの例えを想像する。
厳つい男やロボットが日常的に銃を手にして警戒する姿……自衛官とは言え銃とは基本的に無縁の日本人である伊丹は普通に怖いと思えた。
そんなのに一睨みされたらと思うと寒気を覚えるのだ。
「色々な理由もありますが私達は守るべき人達を怖がらせてはいけませんから威圧的ではない女性の容姿を好まれる事が私達、人形には多いんです」
「成る程……やっぱり男の方もいるんスか?」
「いますよ。グリフィンには一人もいませんけどね」
ステンはそう言って笑った後、通信が鳴った事に気付き、ステンは申し訳なさそうに伊丹達に視線を向ける。
「すみません……指揮官から連絡が……少し席を外しますね」
ステンはそう言って伊丹達から離れると通信を繋げた。
「はい。ステンです」
《状況はどうだ?不穏な気配は無いか?》
「はい。鉄血の反応も無く、自衛隊の方々とも上手く関係を築けています。……所で指揮官」
《何だ?》
「本当に人形に関する情報を話しても良かったのですか?IOPや人形の事を知っていれば当たり前の様に開示されている情報とは言え、他の世界の方々ですよ?」
《構わない。信頼を得るにはある程度の情報は渡しておいて損はない。クルーガーさんのお墨付きだ。機密さえ渡らなければ問題ない。俺も明日、そっちに行く。引き続き自衛隊の交流を築きつつ友好を結んでくれ》
「了解しました」
ステンはそう言って通信を切ると再び笑顔で伊丹達の所へ戻っていく。
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翌日、アルヌスのヘリポートにグリフィンのマークが入ったヘリが降り立った。
ヘリの扉が開かれて中からハヤトが降りると狭間含め、一部の自衛隊幹部が出迎えた。
「初めまして。私が自衛隊特別地域派遣隊の指揮を取る狭間浩一郎と言います」
「此方こそ初めまして。私はグリフィン&クルーガー異世界派遣部隊の指揮官。ハヤト・イズミと言います」
互いに挨拶を行い握手すると狭間の視線にハヤトは笑って反応する。
「意外でしたか?グリフィンの指揮官が日本人である事が?」
「えぇ……PMCの指揮官と聞いた時はてっきり外国人が勤めているものかと思いました」
「基本的にはそうですね。グリフィンには多種多様な人種の人間が勤めているんです。ロシア人や中国人、私の様な日本人もね。特に日本人は……訳ありなのは既に御存じでしょう」
ハヤトはそう言い終ると狭間達は事前に得ていたグリフィン側の世界での日本の滅亡の情報を浮かべ納得する。
「そうですか……まぁ、話しはゆっくりと中でしましょう。今後の関係や取り決めをしたいので」
「分かりました。その前にこの駐屯地にステンがいる筈です。私の副官……秘書の様な役目を持つ人形なので連れてきて頂いても?」
「構いません。おい、誰かステンさんを呼んできてくれ。我々は先に対面室に行くからそこまでの案内もな」
「了解です」
狭間の命令を聞いて自衛官の一人が駆け出していき狭間はそれを見届けるとハヤトを連れて駐屯地の対面室へと向かった。
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その頃、グリフィン側の地球ではカーターが執務室で眉間に皺を寄せていた。
「自衛隊か……まさか過去の遺物と化した存在を再び耳にするとはな……」
「今後の異世界進攻計画は自衛隊……強いては日本の存在は邪魔になりかねません。如何しますか?」
執務室でカーターと対面するエゴールはそう聞くとカーターは暫く考えた末に執務室の椅子から立ち上がると窓の外を見る。
「今は捨て置け。どのみち、我々の本懐はまだ未達成だ。異世界での取り扱いに関する政治は政治屋の者達に任せておけば良い。我々は……我々の計画を進めるのだ。その後でも掃除は出来るからな」
カーターはそう言って不敵に笑った。
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場所は戻り、ハヤトは遅れてやって来たステンを側に置くと狭間と柳田の二人に面して会談を始めていた。
「さて……先ずは互いのこの世界における方針について話しましょうか」
「そうですね。互いの方針を知れば自ずと交渉のあり方も変わります。それで……そちらはどの様な方針で?自衛隊はあくまでも国土防衛の為の組織。この世界で駐屯地まで構えるのは進攻も同然なのでは?」
「我々、自衛隊はこの特別地域における国家による進攻によって多くの被害者と損害を出しました。確かに進攻とも捉えられませんがあくまで日本国内の範疇と言う形で我々はこの世界に派遣され、この世界に存在する日本に進攻してきた首謀者の逮捕、そし然るべき賠償の獲得の為の交渉の席に座らせる為に来ました。我々はあくまでも侵略の為にきたのではありません」
狭間の説明にハヤトは自衛隊側の日本はかなり強引な方針を取ったのだと理解しつつ納得したと頷く。
「そちらはどの様な経緯で?PMCも場合によっては立派な戦力ではありますがやはり、正規の軍があたるのが普通なのでは?」
「我々の世界での雇い主……新ソ連の正規軍はどうしても手が空かないのですよ。貴方方に教えましょう……どのみち、隠しても仕方ない事だ」
ハヤトはそう言ってステンに視線を向けるとステンは頷いて端末を取り出すとホログラムの世界地図を映し出した。
「おぉ、これは……ホログラムですか?」
「この赤い色は?」
狭間はホログラムに驚き、柳田が世界地図に広く塗られた赤い色についた質問するとハヤトは答える。
「赤い色……これが我々の世界の汚染エリアです」
「なんと!?これが……全て……!」
狭間はそう言って汚染エリアが書かれた世界地図を見る中で日本の国土の半分が汚染エリアになっているのに気付くとハヤトは答える。
「日本は中国で起きた大規模汚染事件……2030年1月17日に起きた北蘭島事件を切っ掛けに日本列島は半分が汚染しました。台湾、朝鮮半島、中国東部が汚染。上海を始めとした海沿いの四つの都市はその事件で起きた大規模な爆発で壊滅。この事件を機に各地で汚染の連鎖が始まって今に当たります」
「……此処まで悲惨とは……まさか日本はその汚染で……」
「いえ……日本は汚染を受けましたがそれでも国家としては機能しました。問題は……その後に起きた事です。汚染を機に日本政府はより安全で汚染を免れた北海道へと国民の避難を始めようとしました。ですが……」
ハヤトはその話しの先を口ごもった。
狭間はその様子から明らかに自衛隊……日本にとって非常に不都合な事を抱えていると考えた。
「……はっきりと言います。日本の北海道は米軍主導の新政権が樹立され、青函トンネルを破壊。避難をする筈だった国民は本州ごと……」
「……米軍……ですか……」
狭間はそう言って項垂れた。
敗戦の末に繋がれた長年の同盟国であるアメリカの暴挙。
そのせいで守るべき国民が見捨てられた事実。
狭間としては今のアメリカが悪い訳ではないのは分かってはいたがやはり、良い印象など消えかけていた。
「それからは関西派と関東派に別れて限られた物資を奪い合う内戦状態……そこから更に起きた第三次世界大戦で傀儡化した日本はアメリカ側に当然の様に着いて新ソ連との戦争で敗戦。残されていた唯一の国土だった北海道も失って完全に滅亡しました。その後の日本はもう知りません」
ハヤトの話しが終ると対面室は重苦しい空気に包まれた。
悲惨……その言葉が嫌と言う程に響く程にグリフィン側の日本はあまりにも悲惨な結果に終っていた。
「話しが遠回りになりましたね。この結果として各地で汚染。EL.I.Dと呼ばれる汚染の感染者達がそう……例えるなら装甲を持つゾンビの様な存在となり、それの対処に正規軍は動き、対応は過酷を極める為に我々が派遣されました」
「成る程……何と言うべきか……」
狭間は何とも言えない悲惨過ぎる状況に項垂れつつも狭間はハヤトに向き直す。
「そちらの事情は分かりました……つまりは貴方方の……そちらの思惑が……」
「……欲しいんでしょうね……この世界が……奪えばもう一度全てをやり直せる……汚染の無い……この世界でね……まぁ、我々はあくまでも門の堅守と調査です。自衛隊の敵に回すつもりはありません。国と国の争いをするか否かは政治に携わる人間が決める事です。我々の様な武力を持つ人間が決める事ではないと明記して頂きたい」
「(成る程……敵対的ではないと示すと同時に我々の独断での攻撃を避ける為に牽制してきたか……)」
狭間はハヤトが言った国と国の争いを決めるのは政治に携わる人間が決める事の意味を理解した。
グリフィンはPMCではあるが新ソ連の正規軍に雇われた存在、つまりは新ソ連の戦力として派遣されたものだと言えるのだ。
自衛隊はあくまでも異世界の国家、帝国に対してのみ戦争をしている。
それを自衛隊が何らかの思惑の為に自己防衛の為でもない独断で新ソ連と言う他国を攻撃する様な真似をする事は憲法9条を否定する事であり、日本と言う国家を軽んじる行為であると理解させ、自衛隊との敵対行為を避ける為だと狭間は解釈した。
憲法9条で縛られた自衛隊は如何に侵略が行われる可能性があるとしても先に攻撃する行為は許されない。
あくまでも自衛隊は国と国民を守る為の存在なのだと言う事を理解させられれば強引な手法は取り辛くなる。
ハヤトが日本人だからこそ自衛隊の特性を理解したうえでの牽制だった。
狭間はそれを理解しつつグリフィンとは敵対するつもりもない為、頷く。
「分かりました。我々としても元よりそのつもりです。次はどの様に関係を維持するか決めましょう」
狭間はそう言ってハヤトとの会談を続けるのだった。