自衛隊と協力体制を結んだハヤトは異世界こと特地の調査を進めつつ鉄血の動向を探っていた。
何時から居て、何を目的にして、何処に拠点を敷いているのか。
特地における鉄血の活動はハヤトを含めたグリフィン上層部としても無視できない事態である以上、迅速な行動が求められている最中。
「参考人招致?」
「はい。自衛隊側からの連絡で向こう側の議会がハヤト指揮官とあの時の避難民の護送に携わった人形達を指名したとかで……どうやら向こう側の議員の一部は戦術人形を信じていないとか」
ハヤトはリューリクからの報告を聞いて考える素振りを見せる。
「……まぁ、流石に人形がいない世界からしたら眉唾ものの話だろうな……」
「どうしますか?前線の指揮官が離れるのはあまり好ましくありませんが?断る事は容易いです。自国の指揮官でもない者を呼び出すなど言語道断。外交問題だと突き付けてやれば問題ありません」
「まぁ、落ち着け。一先ずはクルーガーさんに報告を行う。返答次第では参考人招致を受けよう。これから長く世話になる隣人からの願いだしな。それに……向こう側がどうなっているのか気になるだろう?」
ハヤトのその言葉にリューリクは聞いて呆れ気味に溜め息をついた所で端末の画面を見る。
「分かりました。しかし、第二、第三小隊は待機しているとはいえ肝心の第六小隊の面々は前に協力した第三偵察隊と一緒にイタリカへ行きましたが?」
「帝国の経済について知れる機会だったからな。最初に支援部隊として送るにも丁度良い関係性だったし不都合も無かったからな。まぁ、避難民の護送での事だ。第三偵察隊の隊長の伊丹も呼ばれる筈だ。そこまで時間は掛からないだろうし第三偵察隊と帰還するだろうから遅刻はしないだろう」
「指揮官。失礼します」
ハヤトは参考人招致に関して楽観視しながら話していた時、ステンはやって来た。
「どうした?」
「指揮官にご報告が……イタリカに向かった第三偵察隊と第六小隊がイタリカの紛争に巻き込まれたとかで……至急、応援を求めると」
ステンのその報告にハヤトは真顔になると天を仰ぐように天井に視線を向け、どうしてそうなったと思いつつ溜め息を出した。
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数時間前、翼竜の鱗を売りに行く事になったレレイ、テュカ、ロゥリィに付き合う事になった第三偵察隊はアルヌスの駐屯地に支援部隊兼交換連絡員として派遣された第六小隊の面々と共にイタリカへと向かっていた。
「初めてですよね。この世界の街に行くのは」
「そうね。帝国の経済を知るには良い機会だと指揮官が言ってましたし、物の相場や通貨の価値を調べておかないと」
89式の言葉に64式自はそう言って端末内で電子化された地図を見ながら調べるべきものを再確認する中、89式は興奮気味に言う。
「ファンタジーの世界の街ですよ!きっとファンタジーみたいな凄い光景があるかもしれないのですよ!ちょっと楽しみじゃありません?」
「と言った所で我々の世界の中世と同じで汚物やら何やらで不衛生で汚い場所かもしれないでありますけどね」
「夢を壊さないでくれます!?」
四式の意地悪な言葉に89式はプンスカと怒ると回りに笑いが広がる中、窓の外を見たPM-9が何かに気づいた。
「なぁ、あれって黒煙じゃないか?」
「え?あ……本当ですね……」
PM-9の発見に一○○式は嫌そうな顔をしながら言うと64式自は黒煙の方を見ると顔が険しくなる。
「イタリカ方面……」
「えぇと……つまりまた鉄血が?」
64式自のその言葉に89式はうんざりした様に言うと備え付けの無線が繋がった。
《此方、伊丹。このままイタリカに向かう。周囲を警戒しつつ慎重に接近する》
「了解。鉄血の可能性もあります。気を付けてください」
64式自はそう言って無線を切ると車内がどんよりとした状態になっているのに64式自は気付いた。
「なに?決定に文句があるのかしら?」
「いや……戦えって言うならやるけどよ……」
「街レベルの場所を攻める相手でありますよ……絶対に数が多いであります……」
「うぅ……帰りたいです……!」
「わ、私……食堂の時刻までに帰ったら自衛隊の人達にお米食べさせてくれるって約束したんですよ……これで遅れたら食べられないじゃないですか!」
64式自を除いた全員、これから起きる面倒事を嫌がる姿に64式自は呆れながら溜め息をついた。
確かに前みたいな苦労を受けたくないのは分かるが目の前で鉄血の襲撃の可能性がある中でそのまま踵を返して帰るのはグリフィンの名折れだと64式自は考え、強めの口調で促す。
「とにかく進んで。手が付けられない状況なら増援を呼ぶと言う手段だってあるわ。ほらほら、落ち込んでないで警戒して」
「「「「はーい……」」」」
64式自の命令に四人は渋々、受け入れると周囲の警戒を開始する。
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イタリカの城門の前までやって来た第三偵察隊と第六小隊が目にしたのは明らかに戦闘後が目立つ警戒体制の取られた状態だった。
「な、何があったでありますか……?」
「馬鹿!明らかに戦った後だろこれ!……状態的に鉄血じゃなさそうだな……」
「そうよね……鉄血だったら彼らは此処でおちおち守りに着いてなど……あッ!?」
64式自は状況を分析している最中、レレイが自衛隊車両から降りてしまいそこからテュカとロゥリィまで降りてしまった……次いでに伊丹も。
「な、何をしているのあの人達は!?」
「あの馬鹿野郎共!下手しら攻撃されるぞ!」
「どうするでありますか!?どうするでありますか!?」
「どうするって言ったって!?」
「これって出ていって行った方が良いんですか!?」
あまりにも想定外の事をした四人に第六小隊は混乱する中、64式が腹を括って車両の扉を開けた。
「64式自!?」
「私が行くわ!もし、私に何かあればPM-9が引き継いで指示を出して!……大丈夫……流石に何の勝算も無くあの人達も出たりしないでしょうから……」
64式自はそう言って89式の制止も聞かずに伊丹達の元に駆け寄ると伊丹は軽く驚く素振りを見せる。
「出てきちゃったの?残ってても良かったのに」
「戦術人形の私達がビクビクして生身の人間である貴方方を前に立たせるなんて情けなくて出来ませんから」
64式自の言葉に近くにいたレレイ達が軽く微笑む中、門の前まで来ると伊丹が代表して門をノックした。
暫くの静寂の中、門の内側から何かが取り外された音が聞こえたと同時に。
「よく来てくれた!!」
「ふぎゃあッ!?」
そんな大きな声と小さな悲鳴と同時に門は開かれ、伊丹は開かれた門に勢いよくぶつけられて吹き飛び、レレイ達と64式自は唖然とする。
そして開かれた門の内側では固まる赤毛の鎧を着た女騎士が顔をひきつらせている。
「……もしかして妾が?」
女騎士のその問いにレレイ達と64式自は頷くと何とも言えない空気のまま取り敢えずレレイ達が伊丹を引き摺って中に入れ、64式自も慌てて一緒に中に入った所で門は再び閉じられた。
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結局、伊丹が起きた所でイタリカの紛争に巻き込まれる事となった。
赤毛の女騎士こと帝国の第三皇女ピニャ・コ・ラーダである事とイタリカは現在、アルヌスとフォルトゥーナを攻めて来た連合諸王国軍の残党を主力とした盗賊団の襲撃に合っており戦力の摘発でまともな戦力の無いイタリカは正に陥落寸前の風前の灯火の状態だったのだ。
その話しを聞いた伊丹と64式自はイタリカの防衛に協力する事となり、結果としてどちらの基地にも応援を求める要請を出す羽目になったのだった。
だが、その行動と選択が後にイタリカの運命と部隊の生死を分ける結果となった。
「あれがイタリカですか……」
日が沈むイタリカの近くに宙を軽く舞う巻きツインテールで指揮者を思わせる燕尾服を身に纏い、口元をマスクで覆った少女がいた。
「適当にサンプルとでもと思いましたが……グリフィンのボロ人形に旧時代の自衛隊ですか……厄介ですね……しかし、状況は私の味方。混乱の時を待つとしましょう」
燕尾服の少女はそう呟いてその場から離れていった。