戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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戦後処理

スケアクロウを撃った各小隊は銃口を向けつつ警戒を緩めない様にスケアクロウに接近する。

 

スケアクロウは撃たれて損傷し、立つ事もままならない状況であっても戦意を無くした素振りはなかった。

 

「終わりよ。降伏するかこのまま破壊されるか選びなさい」

 

「降伏……ですか……?」

 

スケアクロウはボロボロの状態で身を少し起こしながら睨み付けるOTs-14を見つめる。

 

腕や足は新米の指揮官の率いる小隊に敗れた時の様に失い、逃げる事も叶わない……だが、マスクの外れたスケアクロウの顔は不敵に笑っていた。

 

「誰が降伏するものですか……それと……破壊されるのは……お前達です!!」

 

「ッ!?全員、待避!!」

 

OTs-14のその命令を聞いて人形達はスケアクロウから全力で離れるとスケアクロウは自爆。

 

跡形もなく壊れてしまった。

 

「またかにゃ!」

 

IDWはそう言ってスケアクロウの自爆をジタバタと悔しがる中、64式自は戦いの終わりが決まった事にようやく安堵するのだった。

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イタリカの戦いは終わり、結果はイタリカ側の勝利として扱われた。

 

鉄血の襲撃と言う大きなトラブルはあったがグリフィンと自衛隊の迅速な援軍によって事なきを得た事で悲劇を回避する事が出来た。

 

戦闘終了後は死傷者を出したイタリカの住民を支援したり、捕虜として捕えた生き残りの盗賊達を一ヵ所に集めたり、鉄血の残骸を片付けたりと忙しい状況の中、現地にいた伊丹とテュカ、ロゥリィ、64式自、増援としてやって来た部隊の代表としてOTs-14と健軍一佐がイタリカ防衛の指揮官であるピニャとイタリカの代表であるミュイと謁見していた。

 

ピニャは自衛隊とグリフィンの戦いを目の当たりにし、上の空の状態となって会談の内容を殆ど聞かないまま考え込んでいた。

 

「(何だこの惨めさは……勝利の高揚感も無い……当然だな……勝利したのは使途ロゥリィと……敵である筈のジエイタイとグリフィン……)」

 

ピニャは目の前にいる帝国の敵である自衛隊とグリフィンの面々の存在を感じながら自衛隊とグリフィンを相手に戦ったらどうなるのかと考える。

 

「(鋼鉄の天馬……大地を焼く強大な魔導……それに我らに向けられた黒紫の魔女の力も侮れん……あの力が牙を剥けば帝国の穀物地帯たるイタリカは墜ち、妾とミュイ公女は虜囚の辱めを受ける……だが、民は単純だ……黒紫の魔女を退けた姿も見た以上、ジエイタイとグリフィンを歓喜の声で迎えるだろう……)」

 

ピニャは自身とミュイが自衛隊とグリフィンの捕虜として扱われる姿を思い浮かべる。

 

「(彼らが開城を迫れば妾は取りすがり慈悲を……妾が敵に慈悲を乞うだと!?帝国の皇女たる妾が!?あぁ……今の妾ならどんな屈辱的な要求にも屈してしまうかも……)」

 

ピニャは自衛隊とグリフィンからの屈辱的な要求が来るだろうと予想している中、交渉が纏まりつつあった。

 

「捕虜の権利は我が方にあると心得て頂きたい」

 

「私達、グリフィンには異論は無いわ」

 

「我々としても情報収集の為、三~五人確保できれば良い。只、此方の慣習に干渉するつもりは無いがせめて人道的に捕虜を扱ってほしい」

 

「ジンドウテキ?」

 

自衛隊、グリフィンと交渉するハミルトンは健軍の人道的と言う言葉に首を傾げるとレレイが補足を入れた。

 

「……友人、知人に対する様に無碍に扱わない……こと」

 

「友人、知人が村、街を襲い略奪するものか!」

 

ハミルトンはレレイの補足を聞いて声を荒げた。

 

確かに盗賊達がやった事はどんな世界でも許されない行為だった。

 

略奪、殺人、凌辱……挙げれば切りが無い罪が盗賊達にはあるがそれでも自衛隊側の世界にとってどんな人間ですら人権があり、人道を守らなければならなかった。

 

ハミルトンをどう説き伏せようかと健軍は考える中、ピニャが返答した。

 

「良かろう。努めて過酷に扱わない様にしよう。此度の勝利。そなたらの貢献が著しいものがあるからな(とは言うものの……この男は何者だ?イタミと同じ格好だが明らかに格が違う。それに健軍の隣にいる女も只者ではないな)」

 

ピニャは健軍とOTs-14を見て明らかに伊丹と64式自とは違う雰囲気を持つ二人に疑問を浮かべつつハミルトンが纏めた協約を確認する。

 

1.ジエイタイとグリフィンは、此度の戦いで得た捕虜から、任意で三~五名を選んで連れ帰るものとする。

 

2.フォルマル伯爵家ならびに帝国皇女ピニャ・コ・ラーダは、ニホン国からの皇帝ならびに元老院に対する使節を仲介し、その滞在と従来における無事を保証する役務を負う。

 

3.ジエイタイとグリフィンの後見するアルヌス協同組合は今後、フォルマル伯爵領内とイタリカ市内で行う交易において関税、売上、金銭の両替等に負荷される各種の租税一切を免除される。

 

4.以上の協約発行後、ジエイタイとグリフィンは可及的速やかにフォルマル伯爵領を退去するものとする。

 

ただし小規模の隊、及びアルヌス協同組合については、今後も領内従来の自由を保証する。

 

と四つの協約が書かれており、ピニャは驚かされた。

 

「(何だこれは?勝者の権利を殆ど求めてない。こんなもので良いと言うのかジエイタイとグリフィンは?どんな手を使ったのか知らんが敗者みたいな我々にとってこれ程の好条件を纏めるとは……ハミルトン・ウノ・ロー。意外と使えるな」

 

ピニャはハミルトンに対してとんでもない勘違いを抱きながら調印が進み自衛隊とグリフィンの部隊は撤退を開始した……のだが。

 

「嫌だぁ!私は大丈夫ですからアルヌス駐屯地まで帰してくださいよぉ!」

 

「馬鹿な事を言わないで!貴方が一番酷いのよ!」

 

「そうだぞ89式。男なら潔く諦めるべきであってな……」

 

「私はうら若き乙女ですけど!?嫌だ嫌だ嫌だぁ!!私は……私は本物のお米を食べたいんですぅ!!離してぇ!!」

 

戦闘で損傷した第六小隊は一度、フォルトゥーナ基地にヘリで帰還する事となり、交代の時期もあった為、第四小隊が代わってアルヌスに駐留する為に交代したのだ。

 

その際、第六小隊の中で最も損傷の激しい89式は強制送還と言う形で帰る事となり、米を食べ損なる事を察した89式は激しく抵抗するもそのまま他の人形達に乗せられてしまった。

 

それを見届けた64式自は深い溜め息をつくとそれを見ていた伊丹達は苦笑いするのだった。

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伊丹達はアルヌスに帰還する為に停めていた車両まで来るとAK74M、AK-47、スチェッキン、PPSh-41、PPS-43のと編成された第四小隊の面々が既に待機していた。

 

「お疲れ様です伊丹さん。改めてご挨拶を。私は第四小隊の隊長を務めているAK74Mです」

 

「あたしはAK-47だ!よろしくな!」

 

「アタシはスチェッキンAPS!よろしく!」

 

「PPSh-41です。さ、先に言っておきますが私は重くありませんからね!」

 

「PPS-43です。私はそこにいる姉とは違って軽いのが取り柄であります」

 

「PPS-43!」

 

と、各第四小隊の人形達は挨拶するとまた癖が強そうな面々だと思いながら伊丹達は軽い挨拶を済ませるとイタリカから出発した。

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伊丹達がイタリカを出発してから同時刻。

 

フォルトゥーナ基地でハヤトはグリフィン本部に定期報告の為に連絡をしている最中、ハヤトに再び頭を悩ませる事態が起きた。

 

「つまりはそちらにも連れてこいと命令されたと?」

 

《そうだ。向こう側の日本が住民を招くと言うのなら此方も招かねば面目もない……と、言う名目だ。恐らくはこの際に我々の世界を見せ、後から呼び寄せた者達に日本との力の差を見せつけるつもりなのだろう。どちらに従った方が良いのか……そう言う腹でだ》

 

通信相手である人物、クルーガーからもたらされる話しにハヤトは眉間に皺を寄せる中、クルーガーは続ける。

 

《それと自衛隊の人間も何人か招きたいと言ってきている》

 

「異世界……特地の住民だけで満足しないと?」

 

《そうらしいな。招いた自衛官にも新ソ連の力を見せ、見たものを伝えさせより優位に外交を進める為なのだろう。どちらにしても何時かは向こう側の日本の人間を招く事になる。それが早まっただけだ》

 

クルーガーの言葉にハヤトは納得しきれないが政府の命令である以上は従うしかないと割り切る。

 

「分かりました。自衛隊にその趣旨の話しを通しておきます。それとクルーガーさん。私が暫くこの基地から離れる間の後任なのですが誰に決まりましたか?」

 

《ふん。お前が最も期待している指揮官だ。丁度、AR小隊の件が片付いた所だからな。良い気晴らしにもなるだろう》

 

ハヤトはそれを聞いて誰が来るのか察すると同時に気晴らしの意味も理解する。

 

「極秘拠点の件ですか……アレは酷かったと聞きましたよクルーガーさん」

 

《止む負えない事だった。彼処でAR小隊を失う訳にはいかない。お前も知っている筈だ。AR小隊にはバックアップは存在しない。一度、破壊されれば終わりだ》

 

「……儘ならないものですね」

 

ハヤトはそう言ってAR小隊を守る為に大切な人形達の犠牲を強いらされた指揮官達に同情する中、ハヤトの元に駆け込む様にステンがやって来た。

 

「指揮官!通信中、失礼致します!」

 

「どうしたステン?何かあったのか?」

 

「はい!自衛隊第三偵察隊と第四小隊が帰還中にイタリカへの援軍として向かっていた薔薇騎士団と遭遇!協定違反を避ける為に穏便に対応しようとした様ですが興奮した薔薇騎士団の対応が出来ずすぐに撤退しましたが伊丹さんが薔薇騎士団に拘束されたと!」

 

ハヤトはそれを聞いてどうしてそうなるんだとばかりに天を仰いだのだった。

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