戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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救出作戦

薔薇騎士団との遭遇は偶発的だった。

 

第三偵察隊と第四小隊はアルヌス駐屯地への帰還の道中、馬を駆けさせて急ぐ薔薇騎士団と鉢合わせしてしまった。

 

援軍として急いでいるのか穏便に対応しようと務めるもアルヌスと言う言葉を聞いた瞬間に興奮と敵意を隠さず武器を向けてきたのだ。

 

冨田が何とか説明しようとするも話しを聞く素振りが無く、伊丹が武器も持たずに何とか話しを聞いて貰おうとしたがそれに苛ついたのか金髪の縦ロールの女騎士にブタれてしまいそれを変わりきりに緊張がピークに達した。

 

銃口が向けられかけた時、伊丹が逃げる様に指示を出した事で止む負えず伊丹を置いて全員で撤退したのだ。

 

それから数時間後、第三偵察隊と第四小隊は伊丹救出の為に夕暮れ時のイタリカ付近で潜伏していた。

 

《状況は分かった。だが、撤退したばかりの小隊を動かすのは残念ながら出来ない。それに再び大規模な部隊を送れば協定は本当に全て無かった事になるだろう。それではレレイ達にも迷惑を掛ける事になる。本来なら夜戦に秀でた人形で対応する所だが……止む負えん。万が一にでも自棄になって敵対する様なら遠慮する事なく排除し、伊丹を救出しろ》

 

「了解しました」

 

AK74Mはそう言って通信を切ると隣にいたAK-47が声を掛ける。

 

「なぁ、指揮官は何だって?」

 

「万が一にでも敵対するなら排除して救出目標を確保しろと」

 

「まぁ、あっちからやらかしたしねぇ……これも自業自得だと思って貰うしかないわ」

 

スチェッキンはそう言ってくわばらくわばらと念仏の真似事をするとそれを見た栗林は一番あってはならない想定を言う。

 

「隊長。今頃、死んでたりして」

 

「そ、そんな事を言わないであげてくださいよ……!」

 

栗林の冗談なのか本気なのか分からない発言にPPSh-41はツッコミを入れると冨田が言う。

 

「大丈夫だろう多分。あれでも隊長レンジャー持ちだし」

 

冨田のその発言に栗林は双眼鏡を落とした。

 

「誰が……?」

 

「だから伊丹二尉」

 

「冗談でしょ冨田ちゃん」

 

「いやいやマジで」

 

冨田の発言に暫く黙りを決め込んでいた栗林は徐々に泣き始めると叫びだした。

 

「うそぉ~!あり得ない~!勘弁してよ~!」

 

栗林はそう言ってゴロゴロと地面を転がるとレレイが質問する。

 

「イタミがレンジャーと言う物を持っていたらいけない?」

 

「んーキャラじゃないのよねー」

 

栗林はそう言ってレレイにレンジャーとは何かを説明する。

 

「地獄の様な訓練過程を潜り抜け、鋼の様に強靭な肉体と精神を持ち、何十キロもの装備を担いで敵地に潜入、過酷な自然に耐え、音も立てず周囲に溶け込み少数でどんな任務も遂行するそれがレンジャーなのよ!!」

 

レレイ達はそれを聞いて普段の伊丹と比べたのかクスクスと笑い始めた。

 

騒がしくなる中、AK74Mは一言。

 

「静かに」

 

その一言で全員が静かになった。

 

「ご、ごめんなさい……つい……」

 

栗林は謝り、周りが苦笑いする中で冨田は空を見て太陽が完全に沈んだのを確認した。

 

「さてと……そろそろ行きますか。おやっさん、此処を頼みます」

 

「おう」

 

第三偵察隊は一部を残して伊丹救出に動き、レレイとテュカ、ロゥリィも同行する。

 

第四小隊も随従し、本格的な伊丹救出作戦が開始された。

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第三偵察隊は冨田、栗林、倉田、古田で編成した自衛官と第四小隊がレレイ達の支援の元、イタリカの街に潜入する事に成功した。

 

テュカの魔法で見張りの兵士を眠らせる姿にAK-47は口笛を軽く吹いた。

 

「あれが魔法って奴か。便利なもんだな」

 

「良いお金儲けとか出来そうだよね~」

 

「またお金ですか……」

 

スチェッキンの金への執着にPPSh-41は苦笑いする中、イタリカの街を進んで行き、フォルマル邸へと近付いていく。

 

フォルマル邸へとやって来た面々は邸宅を観察すると二階に明かりが点いていた。

 

「二階に明かりが……」

 

「裏口は避けて此処から入ろう……」

 

冨田はそう言って窓を極力音を出さない様に銃剣の刃を窓の隙間に入れると抉じ開けた。

 

窓は開かれ、邸宅に侵入すると静かに行動して二階を目指して隊列を組んで歩く。

 

万が一にでも敵対する素振りがあるのなら射殺する前提で動く中、階段に差し掛かろうとした所で目の前に人影が現れた。

 

「誰?」

 

AK74Mは銃口を向け、人影問うと月光が照らし、人影の姿の正体を見せるとその姿は人ではあるが兎の耳をしたメイドだった。

 

「伊丹様の手の者でございますね?私はマミーナと申します。伊丹様の元へご案内致します。此方へ」

 

マミーナはそう言って背を向けると冨田とAK74Mは互いに目を合わせた後、罠の可能性を考えて警戒しつつ着いて行く。

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冨田達とAK74M達がマミーナの案内の元、一つの部屋の前まで通された。

 

罠の事を考えて第四小隊の面々は銃のセーフティを外した状態で待機する中、冨田が扉を開くと。

 

「隊長!」

 

「あ、生きてる」

 

「よ、よお……」

 

滅茶介護されている伊丹がそこにおり、メイド達の御世話を受けていた。

 

人間のメイドだけでなく、髪が蛇のメイドがおり、兎耳のメイドの事もあって人間とは別の種族の者であるのがすぐに分かった。

 

伊丹の怪我はそれなりに酷いが生きていたのと介抱されていると言う状況確認が出来た事で第四小隊は漸く安心してセーフティを付けた。

 

「……指揮官に連絡を入れます。目標は無事だったと」

 

「分かりました。此方も報告を入れます。一時はどうなるかと思いましたよ……」

 

冨田も安心した事で緊張は漸く収まりを見せ、互いに伊丹の無事を報告し終えた頃にはいつの間にか救出作戦から異文化交流に変貌していた。

 

「じ、自分はぁっ!倉田武雄三等陸曹であります!!21歳独身!よろしくお願いしまっス!!」

 

「はい。よろしくですニャ」

 

倉田がペルシアにスッゴい勢いで挨拶したり。

 

「昨日の戦い拝見しました!あんな戦い方は初めてです。素晴らしい身のこなしですね!」

 

「え?そう?普通だよー」

 

マミーナが栗林の戦いぶりを称賛して栗林が照れたり。

 

「伸び縮みする生地なんてこの世にあったんですね!エルフの技ですか!?」

 

「違う違う!貰い物。異世界の物よ。体の線が出ちゃって」

 

テュカがモームに着ているシャツを見せていたり。

 

「(お菓子食べたい……)」

 

ロゥリィがメイド長のカイネに捕まって長話をしていたり。

 

「古田ちゃん。なに真剣に味見してんの?」

 

「此方の食い物初めてっスからね」

 

古田が料理人として用意された特地の菓子を真剣に味見したりと様々な反応を見せる中、第四小隊も交流を行った。

 

「メデュサはその習性から虐待されて殆どいなくなった。私も見るのは初めて」

 

「へぇー……」

 

「大変なんだな……」

 

レレイのメデュサと言う種族の解説を聞きながら相づちを打つスチェッキンとAK-47。

 

「このお菓子美味しいですね!」

 

「うん」

 

PPSh-41とPPS-43は姉妹揃って古田とは別の意味で菓子を味わっていた。

 

小隊メンバーが思い思いに交流を楽しむ中、AK74Mは壁際で静かに待機していた。

 

そんな様子を見た栗林がAK74Mに話し掛けた。

 

「ねぇ!そんな所にいないで此方に来なよ!」

 

「……良い」

 

「あら、そう……」

 

栗林はAK74Mの距離を置いた返事に戸惑うとAK-47が助け船を出す。

 

「気にすんな。彼奴は仕事とプライベートを完全に分けるタイプなんだ。指揮官にもあんな感じだから別に嫌われてる訳じゃないからな」

 

「そうそう!でも、こう言う時くらい楽しめば良いのにね~」

 

「そうですよね」

 

「私もそう思う」

 

小隊メンバーから口々に言われ、AK74Mは少しムスッとした顔になると周りから笑い声が響いた。

 

「隊長!記念写真を取るっス!皆集まってー!」

 

部屋にいる面々が伊丹を中心に集まる中、AK74Mは壁の片隅から動こうとしない所をAK-47に引っ張られてくる。

 

「だぁーかーらー!こう言う時くらい付き合えよ!」

 

「無理に引っ張らないで」

 

AK-47に引っ張られてきたAK74Mはムスッとした顔のままカメラの前に立つと最終的に写真を撮られた。

 

ワイワイと騒がれる中、一人の人物が入って来るのに約一名を除いて気付かなかった。

 

「あれって……」

 

AK74Mは入って来た人物にあの格好で何しに来たんだとばかりに観察していた時、その人物は何を考えているのかドスドスッと伊丹の元へ行くと……。

 

バチィン!

 

伊丹を連行する前同様に再び打ったのだった。

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最後の最後でやらかした女、ポーゼスは一先ず拘束される形でピニャの前まで連れてこられた。

 

「……で?その顔の傷は?」

 

ピニャは目の前の光景に愕然とし、伊丹の顔には大きな平手の後と引っ掻き傷が付け加えられていた。

 

「別にあたいらが引っ掻いた訳じゃないですニャ」

 

「右目の痣は元々ついてたモノよぉ」

 

ペルシアとロゥリィが素っ気なく言うとポーゼスはそれはもう顔から火が出そうな程に真っ赤になりながら言う。

 

「わ……わたくしが……やりました……」

 

ポーゼスのその言葉にピニャはそれはもう部屋中に響く程の大きな溜め息を出して頭を抱えた。

 

「この始末……どうしてくれよう……」

 

「あの~」

 

ピニャが悩みに悩む中、冨田が声を掛けた。

 

「自分らは隊長を連れて帰りますのでそちらの事はそちらで……」

 

「我々は隊長を連れて帰る。そちらの事は我々に関係ない」

 

冨田の言葉を翻訳したレレイの言葉を聞いたピニャは顔をこれでもかと青ざめさせた。

 

「それは困る!!も、もう朝だ!朝食を用意しよう!それに和解の意を込めて騎士達と歓談の場を……」

 

「申し訳ないですが伊丹隊長は国会に参考人招致されてまして。今日にはアルヌスに帰らないとやばいんです」

 

「イタミ隊長は元老院に報告を求められている。今日には帰らないとならない」

 

「(元老院に報告!?こんな小部隊の隊長がエリートキャリアだったのか!?)」

 

倉田の言葉を特地でも分かりやすい様に翻訳したレレイの言葉を聞いたピニャは盛大な勘違いを起こした。

 

それを側で聞いていた第四小隊の面々はピニャが勘違いをしているのに気付き、コソコソと話し始める。

 

「どうすんだ……?あれ、絶対に何か勘違いしてるぞ……?」

 

「一応、補足しとく……?」

 

「良い……彼女の自業自得……」

 

AK-47とスチェッキンの言葉を聞いてAK74Mはそう冷たく返事をする。

 

明らかに不機嫌な彼女に小隊メンバーはAK74Mから少し距離を取る。

 

不穏な空気が流れる中、ピニャが動いた。

 

「では!妾が行こう!!妾もアルヌスに同道させて貰う!!」

 

ピニャのその言葉に全員が驚く事となった。

 

一国の姫……それも敵国の要人が自ら敵地と化しているアルヌスへ行くと言い出したのだからどんな人間も人形も驚く。

 

「此度の協定違反。ケングン団長か上位の指揮官に正式に謝罪しておきたい。よろしいかイタミ殿?」

 

「え?え~と……招致まで時間無いですし車も狭いので……殿下とあと一人くらいなら……」

 

「了承感謝する。メイド長。妾の従兵を呼んでくれまいか」

 

ピニャは伊丹の条件を聞いても行くと言う意思を崩さず着いて行くき満々だった。

 

この様子に伊丹達も困っている最中、第四小隊もヒソヒソと話す。

 

「い、良いんですかこれ……!?つ、連れてきちゃって……!?」

 

「どうするAK74M……?」

 

「……もう知らない」

 

PPSh-41とPPS-43にどうするかと聞かれたAK74Mは面倒くさいとばかりに匙を投げたのだった。

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