戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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偽りの帰郷

門を潜り抜けたハヤトは静かに銀座の街を見つめていた。

 

過去の戦争で消え失せた建物が目の前にあり、戦争の傷痕一つ無い現代的な街並み。

 

ハヤトが日本から逐われるに出てから数年。

 

もう二度と見る事もない景色を再び見たハヤトは懐かしさを覚えるも此処が自分の世界とは違う日本だと言う事実がぶつかる。

 

先の見えない故郷の無い世界とまだ希望のある故郷のある世界。

 

ハヤトは二つの世界を比べる中、ハヤトの腕を引く者がいた。

 

「指揮官?」

 

ハヤトは振り替えるとステンが不安そうな顔でハヤトを見ており、ハヤトは我に返った。

 

「(そうだな……俺には故郷は存在しない……だが、帰る場所はある……)」

 

ハヤトはそう思いながらステンに微笑む。

 

「何でもない。少し懐かしく思っただけだ」

 

「そうですか……あまり無理をなさらないでくださいね?」

 

ステンはそう言った時、手続きをしている伊丹の元に何人かのスーツの男達がやって来た。

 

ハヤトはそれを確認した時、ステンや64式自がハヤトの側に行き、404小隊も近くまでやって来て様子を見ている。

 

あからさまに怪しい集団だと認識されたのを感じたのかハヤト達に向かって笑顔を見せて手を振る。

 

「いやいや、危害は加えたりしませんよ」

 

怪しい集団の先頭に立つ男がそう言うと伊丹の元へ向かうと伊丹も気付いたのか男に反応する。

 

「伊丹ニ尉ですね?」

 

「そうだけど?」

 

怪しい男は伊丹本人か確認すると軽くお辞儀し、自己紹介を始めた。

 

「情報本部から来ました駒門です。皆さんの案内とエスコートを仰せつかりました」

 

怪しい男こと駒門はそう名乗ると伊丹は何者なのか察したのか嫌そうな顔を見せた。

 

「おたく……公安の人?」

 

「やっぱり分かりますか?」

 

駒門はそう言って不敵な笑みを見せる。

 

「公安?」

 

「公安調査庁或いは公安警察。どちらもテロやスパイ活動、暴力的な破壊活動を取り締まる組織だ。まぁ、俺達で言えば国家保安局に当たるな」

 

「おや?そちらでも似た様な組織が?」

 

聞こえていたのか駒門がハヤトに話しを振るとハヤトは溜め息を吐く。

 

「お前達よりも過激さ。具体的には言わないが敵に回ったなんて事になったら夜も眠れなくなるぞ?」

 

「ハッハハ!そいつは恐ろしい!さて……そこの伊丹ニ尉ですがね……」

 

駒門は伊丹の経歴をペラペラと喋り始めた。

 

学歴から勤務歴、最近の活動内容までそれはもう気持ち悪いくらいに話し、人形達をドン引きさせていた。

 

「うわぁ……何れだけ調べたんだろうね45姉……」

 

「そうね……下手したら産まれた時まで全部じゃない……?」

 

「気持ち悪い奴ね……」

 

「そんな事を言ったら可哀想だよ~……気持ち悪いけど……」

 

404小隊の面々がひそひそと駒門に刺のある言葉を言う中、駒門は気にも止めずに伊丹の経歴を言い終えると。

 

「そんなあんたが何でSなんぞに?」

 

駒門の最後のSと言う言葉を聞いてハヤトは驚く。

 

「伊丹は特戦群でもあったのか……」

 

「特戦群?」

 

ハヤトの言葉に64式自が反応するとUMP45も関心を寄せた。

 

「あら、凄いじゃない。特戦群は日本の特殊部隊の事じゃない。あれってかなり選考が厳しいって聞いたわよ?」

 

「へぇ、伊丹って人!凄いんだね!」

 

「あんなのが……?ヘラヘラしてるあれが……?」

 

「ふわぁ~……眠い……」

 

404小隊も関心を寄せる中、伊丹の特戦群と言う経歴を聞いて栗林が大暴走し、場が混乱する中、駒門が伊丹に耳打ちする。

 

「気を付けろ……あの四人組の女の子達にな……特に左目に傷のある奴だ……」

 

「は?何で?」

 

「分かるんだよ……俺もこの仕事は長い……だからな……あれは裏の人間のする雰囲気だ……油断してると骨すら残らないだろうな……」

 

駒門の言葉を聞いて伊丹は404小隊の方に視線を向けるとUMP45が伊丹の視線に気付いてニッコリと微笑みながら手を振る。

 

「すっかり注目されたみたいだな」

 

「おたくのせいでな……!」

 

駒門の言葉に伊丹は若干お怒りの中、駒門は笑った。

 

一悶着の末、送迎用のバスに乗り込むと栗林が激しく落ち込んでいる事を除けば問題無く進み始めた。

 

送迎バスは東京の街を走り、民間人の人間が仕事や私用の為に練り歩く中、レレイ達、特地の者達は東京の街並みに見入っていた。

 

「賑わっているな。此処は市場なのか?」

 

「あっ。あのドレス」

 

ピニャとポーゼスも関心を示す中、ステンと64式自も街並みを観察する。

 

「意外と私達の世界の街と変わらないんですね」

 

「そうみたいですね」

 

ステンと64式自は東京が都市の街並みとあまり変わらない事を言うとUMP45が笑いながら言う。

 

「過去のデータだと。東京の人口は3000万人は軽く越えるみたいね。世界最大の都市圏なんて一時は呼ばれたりしてたらしいわ。見直されても三位くらいになるくらいの大都市みたいね」

 

UMP45のその説明にピニャとポーゼスは口をあんぐりと開けて震える声で叫んだ。

 

「さ、3000万人だと!?」

 

「こ、この都市だけでですか!?」

 

「そうみたいね。やっぱり事実上の首都だからかしらね?若い人達も企業も色々と集まる様ね。あ、因みに一位はインドネシアのジャカルタの4000万人みたいよ?」

 

UMP45のその言葉にピニャとポーゼスは口をパクパクと開けて固まり、レレイ達もあまりの規模に驚いて固まっている。

 

「……ぐ、軍事は?兵士は何人になるのだ?」

 

「ん?そうね……発表されてた人数だけでも自衛隊は22万人って所かしらね。まぁ、前まで戦争に巻き込まれる様な国じゃなかったからこの人数が妥当ね。少し前の日本だったらこの人数を軽く超えていたわよ」

 

「に、22万人……!?」

 

「帝国の戦力……10万を……!それに少し前ならこの人数を越える……!?」

 

ピニャとポーゼスはそう言ってバスの椅子にドスッと座り込むと栗林の様に落ち込んでしまった。

 

重苦しい空気が流れる中、レレイはハヤトに聞く。

 

「ハヤト達の世界の日本も同じ人口?」

 

「あッ!?レレイそれは!?」

 

レレイの悪気の無い質問。

 

伊丹はそれに気付いてレレイを止めようとした所でハヤトは伊丹を軽く制止し、レレイに言う。

 

「……俺の世界にはもう日本なんて国は存在しない」

 

「え!?嘘!?」

 

「滅んじゃったのぉ?」

 

テュカとロゥリィはそれを聞いて意外だと思っているのかハヤトの話しに食い気味になる。

 

伊丹達は不安を抱く中、ハヤトは話しを続ける。

 

「そうだ。滅んだんだ。災害と戦争。その二つに巻き込まれてな。あっと言う間だった……災害における汚染で国力は弱り果て、助けるべき国民は傀儡にされた国に見捨てられた……その後は地獄だ……二つの派閥に別れて互いに潰し合う日々……生き残りを掛けた戦い……俺達はそうした中で……」

 

ハヤトは話の途中で止める。

 

静かな雰囲気の中、ハヤトは笑顔でレレイを見て頭を撫でた。

 

「要は不運続きに見舞われて情けなく滅んだんだよ俺のいた日本は。どんなものにでも寿命がある……それが国であってもな……」

 

ハヤトはそう言ってバスの前方に視線を向け、他の何も見なかった。

 

暗い雰囲気から重い空気まで加わってしまった空間に伊丹はどうするかと頭を悩ませる中、冨田が動いた。

 

「に、ニ尉!……この辺で飯の宛はあるんですか?」

 

「ッ!?あ、あぁ……そこで降りるから」

 

「え?」

 

伊丹の指差した場所を見るとそこは明らかに牛丼のチェーン店だった。

 

来賓を迎える為の高級料亭でも何でもない一般人も来るような極普通の牛丼チェーン店だ。

 

バスから降りて全員で店に入って席に着くとハヤトは懐かしそうに見渡す。

 

「牛丼か……俺も昔はよく食べたな……」

 

「確か牛肉を乗せた料理ですよね?」

 

「生の卵も使うとか……指揮官。健康に影響するので他の店にすべきでは?」

 

「いや、日本の卵は余程の事が無い限りは問題ないから安心しろ」

 

64式自の心配にハヤトは苦笑いでそう言うと伊丹が纏めて注文した牛肉が運ばれてきた。

 

生卵が当然の様に乗っている光景にステンと64式自は不安を抱く中、ハヤトは当たり前の様に口に運んで食べている。

 

ステンと64式自は互いに目を合わせた後、覚悟を決めて一口食べると目を輝かせた。

 

「美味しいです!」

 

「生卵がこんなに良い具合に絡むなんて……!」

 

「言っておくがこの世界の日本限定だからな。他は腹を下す可能性がある」

 

ハヤトはそう言って再び口にすると懐かしい味に満足感を覚える。

 

404小隊の面々も満足げに味わい、レレイ達は駐屯地で食べた事があるのか普通に食べている。

 

ピニャとポーゼスも初めて味わう牛丼にガッついて食べてる程だ。

 

食事を終えると伊丹はすぐにスーツを取り扱っている店へと急ぐとテュカにスーツを買った。

 

レレイとロゥリィには普通に断られ、ピニャとポーゼスは形は違えど元から正装だ。

 

ハヤトはグリフィンの制服が正装であり、人形達もスーツは不要だと言いはった事でテュカのみの購入で落ち着いた。

 

「スーツは種類によっては高いんだから汚しちゃ駄目よ~。弁償になったら大変だからね~」

 

「何と!?やはり高いのか!?」

 

店の中でUMP45の言葉にピニャは驚愕している。

 

その光景に伊丹はもう良いやとばかりに捨て置いた。

________

______

___

 

バス移動、食事、スーツ選び(テュカのみ)と忙しい中、ようやく参考人招致の場である国会議事堂までやって来た。

 

「此処が日本の元老院……」

 

ピニャが国会議事堂を見つめる中、レレイ達が伊丹に連れられて降り、ハヤトもステンと64式自を連れて降りる。

 

ピニャとポーゼスは別の会合場所へ行く事になり、バスに残るとハヤトはUMP45に向かって行き、耳打ちする。

 

「404小隊はピニャ皇女とポーゼスさんに着いてくれ」

 

「あら?良いのかしら?」

 

「国会議事堂なら変な手出しはされないだろう。一番怖いのは国会議事堂に入らないピニャ皇女とポーゼスさんが狙われる可能性だ。……さっきから嫌な視線を感じるからな」

 

「気付いてたの?……やるわね」

 

ハヤトの言葉にUMP45は不敵に笑ってそう言うとハヤトは頷く。

 

「頼むぞ。万が一にでも相手が動けば……日本の対応次第ではやるしかないからな」

 

「了解。じゃあ、参考人招致頑張ってね~」

 

ハヤトとの会話を終えたUMP45は手をヒラヒラさせながらバスへと戻るとピニャとポーゼス、404小隊を乗せたバスは移動した。

 

それを見届けたハヤトは伊丹達と共に国会議事堂へと足を踏み入れたのだった。

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