戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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参考人招致

公共放送局が義務的に放送している国会中継。

 

低視聴率で面白味の欠ける……いや、時より珍事を巻き起こす光景を撮すこの番組だが今回の放送は違った。

 

1:特地に行きたい名無しさん

国会中継に特地の美形エルフが出とる

 

2:特地に行きたい名無しさん

マジか!!!!!

 

3:特地に行きたい名無しさん

日本とは別で特地にやって来た美少女ロボットもいるで!!!

 

 

某サイトにそんな書き込みがされた事で普段なら低視聴率の番組が開局以来の高視聴率を叩き出すと言う異例の事態を起こし、ちょっとした騒ぎになった。

 

《本日の特地に関する参考人招致は特別編成で中継しております。銀座事件から四ヶ月。初の質疑応答が行われます。現場の自衛隊員の他、現地で保護されている特地の住民。そして我々の世界とはまた違う別の世界からやって来た部隊の司令官とその部下達が初めて日本に参考人として招かれました》

 

テレビもネットも注目を集める参考人招致。

 

今か今かと待ち続ける者達の前に遂にその時がやって来た。

 

《あ、参考人が入場して来ました!》

 

その声と共に注目はテレビやネットを超えてその場にいる議員達にも向けられた。

 

伊丹に続いてレレイ、テュカ、ロゥリィが入りそしてハヤト、ステン、64式自が国会議事堂へと入った。

 

多くの議員達の声が聞こえる中、ハヤト達にもその注目は当然の様に集まる。

 

「あれが別の世界の軍事司令官か……?」

 

「若いな……」

 

「あの女の子達が部下なのか……?」

 

「ロボットだと聞いたがやはり人間にしか見えんぞ……?」

 

様々な注目が集まる中、ハヤトと64式自は堂々と座り、ステンは少しぎこちなくも席に着いた。

 

「えー皆さん静粛に。これより、特地に関する参考人質問を始めます。質問者、幸原みずき議員」

 

委員長から言われ、出てきたのは野党の女性議員でバリバリの反自衛隊を掲げる幸原みずき議員だった。

 

幸原は前へ出てくるや否やバンッ!とフリップボードを立てたと思いきやそれに書かれているのは民間人の犠牲者の数だった。

 

「伊丹参考人に単刀直入にお尋ねします。自衛隊ひいてはグリフィンと呼ばれる武装組織の保護下にあった避難民数百名がグリフィンとは別の武装組織である鉄血工造によって犠牲になったのは何故でしょうか?」

 

「伊丹燿司参考人」

 

早速、幸原からの攻撃を受けた伊丹は怠そうに出てくると幸原は不敵に笑っていたが伊丹からの予想だにしない発言を受けた。

 

「えー……それは鉄血工造の数があまりにも多かったからだと思います」

 

その言葉に幸原は勿論、議員達は呆然とした。

 

そりゃそうである……真面目な国会の場でこんなに怠そうにかつ不真面目な言葉が出てくるとは誰も思いもしないからだ。

 

「(何あの答え!?想定外だわ!二条橋の英雄で優秀な自衛官だとマスコミじゃ……!)」

 

幸原は此処で大きな誤算と勘違いがあった。

 

確かに伊丹は優秀な自衛官ではある……レンジャーであり、特戦群と言う異色の経歴を持つそれが伊丹と言う男である。

 

しかし、これらの経緯は伊丹が趣味の為に乗り越えた結果の産物であり、伊丹本人は全く持って不真面目な自衛官であるのだ。

 

能力はあるが不真面目な自衛官。

 

それが伊丹燿司なのだ。

 

「私は自衛隊の方針や政府の対応に問題は無かったのかと訊いているのです!現場指揮官として犠牲者が出た事をどう受け止めているのですか!?その答弁は貴方の力量不足の責任転嫁ではないのですか!?」

 

幸原は若干、ヒステリック気味に言うが初手で予想だにしない発言をした伊丹のせいもあるので何とも言えない。

 

伊丹は幸原の発言を聞いて発言を始めた。

 

「大勢の方が亡くなったのは残念に思います。あと力量不足を感じましたね」

 

伊丹のその言葉に幸原は少し余裕を取り戻した……かに見えた。

 

「あまりの数と予想だにしなかった敵の兵器の出現にです」

 

「は?」

 

伊丹のその言葉に幸原は再び唖然としたが伊丹は続ける。

 

「鉄血工造の戦力は我々を大きく上回っていました。それだけではありません。鉄血工造は一両だけとはいえ、四足歩行の戦車も連れていました。自分達だけなら撤退する道もありましたが住民を守る以上は限界があり、グリフィンからの支援やパンツァーファーストが無ければもっと被害が出ていましたよ」

 

伊丹はそうハッキリと言うと動揺で口をパクパクさせる幸原を気にせず話続ける。

 

「だいたい皆さんは軍事は悪だと言いますが軍事の何を知っているのですが?ネットやGPSも軍が開発した物ですよ?使うの止めますか?介護用に開発しているパワードスーツだって消防や自衛隊にも導入すれば災害の時、何れだけ役に立つか」

 

伊丹の愚痴とも取れるその話の内容に他の議員からのヤジが飛ぶ中、此処で与党の防衛副大臣、渡辺良三が動いた。

 

「本省から補足説明よろしいでしょうか?」

 

「防衛副大臣。渡辺良三君」

 

「特地における戦闘を解析した所。戦闘のあった場所は守りに不向きな平地同然の場所でした。そんな中で鉄血工造の攻撃から人数の多い住民の被害無く守り通すと言うのは些か無理があります。仮にあったとしても特地の避難民の方々が冷静に退避するとは思えません。それに下手をしたら避難民だけでなく現場の自衛官達にも命の危険がありました。よって我々の見解としては彼らの行動には一切の非は無いと断言します」

 

渡辺のその言葉に幸原は一理あると考えたのかその場を退いた。

 

決して伊丹が面倒臭くなったのではない……筈である。

 

幸原は崩すべき相手がある意味で鉄壁な存在だと考え、今度はレレイ達にターゲットを絞った。

 

「えーでは、レレイ参考人にお尋ねします」

 

「レレイ・ラ・レレーナ参考人」

 

幸原に呼ばれたレレイは前に出てくると答弁が始まった。

 

「日本語が分かりますか?」

 

「はい、少し」

 

「今は難民キャンプで生活しているそうですが不自由はありませんか?」

 

「不自由?不自由の定義が理解不能。自由でないと言う意味なら人は生まれながらに自由ではない筈」

 

「し、質問を言い換えます。生活する上で不足しているものはありませんか?」

 

レレイの哲学染みた発言に幸原は何とか不自由の意味を伝えるとレレイは発言する。

 

「衣・食・住・職・霊。全てにおいて必要は満たされている。質を求めると切りが無い」

 

レレイのその発言は幸原には予想していた事で特に動揺せず本題に切り込んだ。

 

「では、死者が出た原因として自衛隊の対応に問題は?」

 

幸原のその発言にレレイはキョトンとし、少し考えた後、答えた。

 

「……無い」

 

レレイのその言葉にレレイにも突破口は無いと考えたのか幸原は簡単に諦めた。

 

「ありがとうございました。では、テュカ参考人にお尋ねします」

 

「此処からはレレイ参考人に通訳をお願いします」

 

委員長のその言葉が終わるとスーツを着こなしたテュカが前に出るとあからさまに空気が変わった。

 

「出身を教えて頂けますか?」

 

幸原は最初の質問を言うとテュカは元気よく答える。

 

「私はエルフ。ロドの森部族。マルソー氏族ボドリュー・レイの娘よ」

 

テュカはハッキリと出身を言うと幸原は今現在、最も興味が持たれているであろう質問をした。

 

「失礼で承知ですがその耳は本物ですか?」

 

幸原の質問にテュカはレレイを通して聞くと長い髪から長いエルフ特有の耳を出して見せると答えた。

 

「えぇ、自前ですよ。触ってみます?」

 

テュカのその発言に後ろの報道陣達は大興奮だった。

 

架空の存在であったエルフが目の前にいるのだから無理も無いが流石に委員長に咎められて静かになった。

 

幸原は少し興味を持っていたが空気を読んでそれを堪えた。

 

「け、結構です……えー、テュカさん。鉄血工造に襲われた時、自衛隊の対応に問題はありませんでしたか?」

 

幸原のその質問をレレイを通して聞いたテュカに変化が起きた。

 

明らかに動揺しており、うつ向くも声を絞り出す形で答えた。

 

「よく……分からない……」

 

「何故ですか?」

 

「……その時、気を失っていたから……」

 

テュカはそう言って黙り込む中、ハヤトはテュカを見て明らかに震えているのが分かった。

 

「(無理もないか……奴等の襲撃で彼女の故居は……)」

 

ハヤトはテュカの事を考えるとこれ以上、鉄血の話は聞かせるべきでないと考え、幸原が止める事を願うと幸原はテュカとの話を切り上げ、ハヤトは安堵した。

 

レレイ、テュカと来れば最後に来るのがロゥリィ……の筈だった。

 

「イズミ参考人にお尋ねします」

 

まさかのロゥリィを飛ばしてハヤトに仕掛けたのだ。

 

幸原はレレイ、テュカの二人に対して成果を得られなかった事でハヤト達にターゲットを絞り直したのだと理解した。

 

「ハヤト・イズミ参考人」

 

「指揮官……」

 

「大丈夫だ……」

 

委員長に呼ばれたハヤトはステンの心配を他所に前に立つと幸原と対峙した。

 

「日本語は出来ますか?」

 

「無論です」

 

幸原の事前確認にハヤトは答えると幸原との答弁が始まった。

 

「では、イズミ参考人にお尋ねします。貴方方、グリフィン&クルーガーは民間軍事会社。つまりは傭兵であるのは事実でしょうか?」

 

「事実です」

 

幸原の質問に事実だと答えたハヤトに議員達はざわつく。

 

戦争と言うものは普通なら正規の軍がやるものだと言う考えがあるのが分かり、ハヤトの様な傭兵が特地で主に活動しているなど思わなかったのだろう。

 

それも日本人の傭兵としてだ。

 

「何故、民間軍事会社であるグリフィンが特地にいるのでしょうか?此処は正規の軍が赴くべきではないのですか?」

 

「幸原議員。貴方の言いたい事は最もだ。それが正しい……だが、残念だが正規の軍には余力はありません。他に重大な任務を受けているからです」

 

「重大とは?よろしければご説明をお願いします」

 

幸原はそう言うとハヤトは言って良いのかと本位の方へ視線を向けると本位は頷く。

 

それを見たハヤトはハッキリと伝えると決め、幸原に視線を向け直し、答えた。

 

「我々の世界はこの世界とは年代が違う。数十年程の差だ。それは御存じで?」

 

「聞き及んでおります」

 

「では、幾つか簡略化させて申しましょう。気になる事があるのならその後で。……我々の世界は事故によってコーラップスと呼ばれる物質が流出し、世界規模の汚染災害が発生しています。それに伴い安全な土地は減り、それを奪い合う形で戦争になりました。……第三次世界大戦です」

 

ハヤトのその発言に国会議事堂全体が騒いだ。

 

それだけでなく、テレビで見ていた者やネットで知る者も大騒ぎの内容だった。

 

「静粛に!静粛に!!」

 

委員長が場を収めるとハヤトは続ける。

 

「第三次世界大戦は六年続きました。核も大量に使用され、多くの人間が死にました。安全圏は更に減り、問題となる正規軍の余力を削る問題にも直面しました」

 

「そ、それは何ですか?」

 

「ゾンビは御存知ですね?……我々はE.L I.Dと呼ぶコーラップス汚染患者の集団に対処する為に正規軍は割かれているのです。E.L I.Dは銃弾を通さない装甲を持つゾンビだと理解すれば分かりやすいです。正規軍はE.L I.Dに対処するので動けず我々が代行として正規軍の余力が出るまでの凌ぎとして派遣されているのです。分からない事はありますか?」

 

ハヤトのその発言に幸原はとんでもない爆弾を出してしまったとばかりに冷や汗をかきつつ冷静を装って対処する。

 

「だ、だとしても門から離れて軍事行動を取るのはやり過ぎではありませんか!そこにいる伊丹参考人の部隊と貴方の部隊が行動を共にしていたとお聞きしました!正規の軍が来るまで守りに徹するだけでよろしかったのではありませんか!」

 

「私としてもそれが良かった」

 

「は?」

 

幸原はハヤトの発言に出鼻を挫かれるとハヤトは続ける。

 

「私としても部下を危険に去らす様な作戦は取りたくありません。しかし、そうしなければなりませんでした。他ならぬ我々の雇い主の希望でです」

 

「つまりは貴方は雇い主のせいだと?」

 

「そこまで言うつもりはありません。しかし、これだけは言いましょう幸原議員。……我々の雇い主は異世界間の戦争を穏便に終わらせるつもりはありません。これは間違いありません」

 

ハヤトのその発言に国会は再び荒れると委員長が何度も諌めて漸く収まった。

 

「貴方方は講和がしたい。しかし、我々の雇い主は……異世界を手に入れたい。それが答えなんですよ」

 

「それは明確な侵略行為を認める発言ですよ!只で済むと思っているのですか!!」

 

「えぇ、済みますよ。何たって我々の雇い主は事実上の世界の覇者なのですから。大義も十分ある。余裕の無い世界しか存在しない我々にとっては異世界は希望に見える。分かりますか幸原議員?戦争とは本来は奪い合いなんですよ。先に奪った者が好きに出来る。それだけです」

 

ハヤトはそう幸原に真っ直ぐに見つめて言う。

 

ハヤト目は鋭く、そして暗い闇が広がっていた。

 

幸原はその目に寒気を覚える中、ハヤトは微笑む。

 

「講和は早く終わらせておいた方がよろしいでしょう。全て根こそぎ刈られる前にね。何も無いなら戻らせて貰います」

 

ハヤトはそう言って席に戻ろうとすると幸原が叫んだ。

 

「貴方は!日本人として平和を軽んじるおつもりですか!憲法9条も!広島、長崎で受けた被曝被害者達の無念すらも全て!!」

 

幸原のその発言を聞いてハヤトの足は止まった。

 

「み、自ら国を捨てて……傭兵などと言う野蛮な職に着くくらいですからねぇ……同じ日本人として恥ずかしいですよ!!」

 

幸原の暴言とも取れる発言に64式自はカッとなり、立ち上がろうとしたがステンに止められた。

 

「ステン……!」

 

「駄目です。今、動いては指揮官に迷惑を掛けてしまいます……」

 

「ですが彼奴は……!」

 

「言う事を聞いてください……!」

 

「ッ!?」

 

64式はステンの顔を見るとステンの顔はこれまでに無い程に怒りに満ちており、64式自が動かなくてもステン殴り掛からんばかりの表情だった。

 

「私だって我慢してるんです……貴方も堪えてください……」

 

ステンのその言葉に64式自は座り直すと動かなかったハヤトが幸原に視線を再び向けた。

 

無表情だった。

 

幸原を含め、多くの議員達が恐怖する中、ハヤトは再び前に立つと発言する。

 

「平和は軽んじてません。憲法9条も守りたかった。だが、それは叶わないのですよ」

 

「な、何を言って……!」

 

幸原は恐怖に耐えて言うとハヤトは答えた。

 

「日本は既に存在しない。私の世界には」

 

ハヤトのその言葉に誰も何も言わなかった。

 

静寂が支配する中、ハヤトは溜め息をつくと発言を続けた。

 

「私は……グリフィンの指揮官となる前は……自衛官だった……最終階級は一等陸尉……とは言ってもあまり良い意味での出世ではなかったですがね……」

 

ハヤトはそう言って自虐的に言うと国会は少し落ち着きを取り戻したのかざわつく。

 

「あの人……俺よりも上だったんだ……」

 

伊丹はそんな事を思いながら見守る中、ハヤトは発言を止めずに続ける。

 

「この場でこんな事は言いたく無かったのですがハッキリと言いましょう。日本は滅亡し、失くなった。平和への祈りなんて代物は世界に無視され……憲法9条なんていざ、事が始まれば役にも立たない憲法を掲げてふんぞり返っていながらいざとなれば簡単に逃げ出した政治家達……そんなものを私は嫌でも見させられたんです。私が日本の恥だと言うのなら……何故、国は滅んだ?何故、助けるべき国民が目の前で見捨てられる現実を見せつけられた?」

 

ハヤトのその言葉に幸原は恐怖で竦みあがる中、ハヤトは何の遠慮もなく幸原の目の前まで歩くと鋭く睨み付けた。

 

「答えろ!!俺は国の為に!平和の為に!全てを投げ捨てて行動した!なのに結果は守るべき国民が見捨てられ!国は戦争に巻き込まれ!そして滅んだ!どうすれば良かったんだ?お得意の話合いすらせずに逃げ出した議員達を待てば良かったのか?国を乗っ取った奴等に媚びれば良かったのか?答えろ!!!」

 

「ひ、ヒイィッ!?」

 

ハヤトのその叫びに幸原は情けなく悲鳴を挙げて尻餅を付くと失神したのかカーペットが濡れていく。

 

「……同じ日本人として恥ずかしいと思うなら好きにしろ。俺には日本の事なんてもう関係ない。勝手に平和主義を気取ってろ。……以上です。ご迷惑を御掛けしました」

 

ハヤトはそう言って深く頭を下げると委員長が我に帰り対応した。

 

「え、えぇ……ハヤト・イズミ参考人の質問を終えます。あと……幸原議員はその……一度、離席を……」

 

委員長に促された幸原は放心しながや立ち上がるとトボトボと歩き出す。

 

ステンと64式自はそれを見て気分が晴れる思いで安堵の溜め息をつくと幸原に代わって男の議員が出てきた。

 

風格のある人物で幸原よりも手強い印象があった。

 

「幸原議員に代わって大塚議員が質問を致します」

 

委員長がそう言うと大塚は早速とばかりに声を挙げた。

 

「ステン参考人にお尋ねします」

 

「ステンMKⅡ参考人」

 

大塚に指名され、委員長に呼び出されたステンは不安そうにする中、ハヤトが肩に手を置いて頷くとステンは立ち上がって前に出た。

 

ステンが前に出ると大塚は早速とばかりにすぐに切り出した。

 

「ステン参考人にお聞きしたい。失礼を承知の上でお聞きしますが本当に人間ではないのですね?」

 

「そうですが……何か?」

 

「正直に言いましょう。私は貴方が本当に戦術人形……所謂、ロボットなのかと疑っています」

 

大塚の発言に国会が騒ぐがすぐに静まった。

 

誰もが疑っている戦術人形が本当に人間ではないのかと言う問題に大塚は切り込んできたのだ。

 

「貴方はどう見ても人間の少女だ。見た目も。言動も。表情もだ。失礼ながら観察させて頂き、貴方が怒っているのに気が付きました。幸原議員の事は此方でも大変な無礼だと考えております。本当に申し訳ありませんでした」

 

「い、いえ……大丈夫ですから頭を上げてください……!」

 

大塚はまさかの謝罪を行い、ステンはオロオロとする中、大塚は再び頭を上げると再び質問に戻った。

 

「本題に戻りましょう……貴方は機械なのですか?それとも人なのですか?」

 

「え……えーと……」

 

ステンはその質問に戸惑いを感じ、固まってしまった。

 

自分は人なのか?

 

或いは機械なのか?

 

ステンは自身が戦術人形であるのは理解するも明確にどちらなのかと聞かれれば答える事には戸惑いがあった。

 

何故なら機械ならどうして一人の男を愛せると言うのだろうかと言うステンの頭に過るのだ。

 

「……分かりません」

 

「何故?」

 

「私は……戦術人形です……人とは呼べないかもしれませんが……それでも……ある人を愛しているのです……この気持ちは……何があっても偽りではないからです……そう思うと明確には……答えられません……」

 

ステンはそう言って大塚を見つめると大塚は暫く無言でいたが質問を切り上げた。

 

「分かりました。ステン参考人の質問は終わります。次は64式自参考人にお尋ねします」

 

「64式自参考人」

 

委員長がそう言い終わる頃にステンは戻って来ると64式自は心配そうにステンを見つめる。

 

「ステン……」

 

「わ、私は大丈夫ですから!早く行ってください!」

 

ステンのその言葉と笑顔に64式自は頷くと前へと出た。

 

「64式自参考人にお尋ねしたい。ステンさん同様に私は貴方方の身分を疑っております。……貴方が人間ではないと証明出来ますか?」

 

大塚のその言葉に64式自は暫くの沈黙の後、視線を大塚に向け、答えた。

 

「あります。私が損傷し、片腕を失った際に撮影された写真があります」

 

64式自のその言葉に回りは騒ぐと委員長に静かにさせられると大塚は臆する事なく発言する。

 

「では、この場にその写真はありますか?」

 

「はい。指揮官に言われ、用意しています。少し気分が悪くなるかもしれませんが……よろしければ開示しますが?」

 

「私は構いません」

 

64式自の言葉に大塚は戸惑いなく頷くと周りの議員達はざわつく。

 

これから何を見せられるのか分からない写真に不安を抱いているのが分かり纏まらない中、委員長が動いた。

 

「静粛に!……写真の開示を許可します」

 

委員長が決めた以上、写真が公開される事が決まった。

 

準備が出来るまでの間、待ち時間があるも国会にいる者の殆どが時間が永久に感じられる程の緊張で包まれていた。

 

暫くして用意が整うと写真が大きなスクリーンで公開された。

 

何枚にも及ぶ64式自の損傷した写真。

 

ハッキリと分かる程に腕を失くしており、他の写真にも機械部分が露出した箇所が写っている。

 

他にも64式自以外の人形の損傷箇所の写真があり、64式自だけが機械だと言い張れなくなった。

 

「これを見てもまだ信じられない様でしたら……私の腕を切り裂いて機械の身体を見せてあげますが?」

 

何か言おうと口を動かしていた議員がいたのを知ってか知らずか64式自のその言葉に沈黙し、大塚もこれ以上は追及出来ないと踏んで質問を打ち切った。

 

最終的に残ったのはロゥリィだったが。

 

「では、その衣装は聖職者としての服装なのですね?」

 

「えぇ、そうよぉ。向こうの神官達はだいたいこんな感じよぉ」

 

至って普通の質問が行われ、年齢がどうとかで騒がれはしたがこれ以上のトラブルは起きずに済んだ。

 

「これにて参考人招致を終了致します」

 

委員長のその言葉に何れだけの議員が救われたのかはまた別の話。

 

 

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