参考人招致が終わり、再びバスへ……とは行かず伊丹の指示で地下鉄へとハヤト達は訪れていた。
「急に移動手段を変えるなんて……」
「指揮官……」
「分かっている。恐らくはこの世界で利権を狙う奴等が動いたんだろう。気を引き締めるぞ」
ハヤト達は警戒し、ステンと64式自が辺りを見渡す中、電車が来た。
停車した電車の戸が開かれるとそこにいたのは参考人招致の際に分かれた冨田と栗林達だった。
「お、いたいた。冨田、栗林ごくろーさん」
「急に四ッ谷から地下鉄に乗れって言われて慌てましたよ。バスを囮にするって聞いてなかったんで」
冨田の愚痴を溢す様に言うとその近くには。
「はぁ~い、指揮官。少し振りね」
「指揮官だ!参考人招致?が終わったんだね!」
その側には当然の様に404小隊の面々がおり、UMP姉妹から歓迎を受ける。
尚、G11はグゥスカと眠っており、栗林が背負い、HK416が不機嫌そうにG11の分の荷物を持っている。
「すまない栗林。G11が迷惑を掛けたな」
「いやいや!大丈夫ですよ!それよりもよく眠りますよねこの子……」
「只の寝坊助なだけよ。いざとなったらそこら辺に捨てて良いわよ」
「いや、駄目だから!そんな事出来ないから!」
HK416の冷たい言葉に栗林はツッコミを入れる中、それを知ってか知らずか今だに気持ち良さそうに眠るG11。
UMP姉妹はそれを見て笑っている事から日常茶飯事な事なのだとハヤトは思いつつ冨田を見るとポーゼスが冨田の腕に抱き付いていた。
ハヤトはそれを見て少し微笑む。
「何かいきなり進展したな……ん?」
ハヤトは腕に違和感を覚えて見てみるとステンがポーゼスと同じ事をしていた。
「どうした?お前は地下鉄に不慣れじゃないだろう?」
「……馬鹿」
「え?」
少し照れたステンにハヤトは突然、馬鹿と言われて困惑し、周りがニヤニヤしているのにハヤトは気付かなかった。
数分後、電車が走り出した。
ガタンゴトンッとテンポの良い音が響く中、ハヤトは周りを観察する中でいつの間にかロゥリィまで伊丹に抱き付いて怯えていた。
「(意外だな……ん?)」
ハヤトは伊丹とロゥリィを見ていると体に手が回されており、視線を向けると先程まで腕に抱き付いていたステンが今度はハヤトの体を抱き締めていたのだ。
「だからどうした?そんなに地下鉄が嫌なのか?」
「……もう知りません」
「えぇ……?」
顔の赤いステンのその言葉にハヤトは首を傾げる中、64式自は呆れ、UMP姉妹の二人はニヤつきながらひそひそと話しつつハヤトとステンを見ている。
暫く電車に揺られる中、霞ヶ関に着くとそこで駒門が乗り込んできた。
「うわ、変態さんだ」
「そうね変態さんね」
「私から10mは近付かないでくれるかしら?」
「すぅ……すぅ……」
「酷い言われようだな」
404小隊に完全に変質者扱いされる駒門はそう言いつつも伊丹の元へと行く。
「予定を早めて箱根に向かう」
「バスの方は?」
「見事に引っ掛かったよ。移動手段の変更を知らなかった時点で漏洩の容疑者は二人まで絞り込めた。情報の行き先を突き詰める為に泳がせている。ハニートラップにでも掛かったんだろうが我々がそれを知っていれば問題はない」
「そんなもんですか」
「ま、伊丹さんも気を付けて……ってその好みだったら心配ないか。某国だってこんな容姿の工作員は育成してない。更に言えばそちらさんも女には困りそうになさそうですからな」
駒門はそう言ってハヤトの方を見て笑う。
ハヤトの周りにはステンと64式自、404小隊の面々がおり、どの人形達も全員が目を霞む程の美少女だ。
「まぁ、確かにな……だが、最近だと人形を使ったハニートラップが盛んなんだ。何しろ見た目を相手の好みにすぐに合わせられるからな」
「ほぉ、それは恐ろしい」
ハヤトの言葉に駒門は笑った後、何かブツブツ言って携帯を弄り始めた所でロゥリィが騒ぎ始めた。
「い、イタミぃ。此処から出たいのぉ。もぉガマン出来なぁい」
「酔ったのか?次の次で降りるから……」
伊丹はロゥリィにそう言った後、ロゥリィの様子を見て本当に苦しそうだと察した。
「ねぇ、早くぅ~」
ロゥリィの懇願に伊丹は周りを見ると仕方ないとばかりの雰囲気を駒門以外に出していた。
伊丹はそれを見て降りる事を決断し、次の駅である銀座で全員が降りたのだ。
「てな訳で駒門さん降りるよー」
「え!?ち、ちょっと待てよ!此方にも段取りってもんが……!」
駒門が慌てて伊丹達を引き留めようとした時、地下鉄で事故が起こり、運休してしまった。
あまりにタイミングの良い事故に伊丹達や駒門は望もうと望まないと予定を変える事となった。
地下鉄から出ると辺りはすっかり暗くなっていた。
「駒門さん。敵の狙いは?」
「威力偵察。示威行動。いつでもお客さんに手を出せると言う警告だ。だが何れも失敗している。そろそろ直接仕掛けて」
駒門が話している最中、ロゥリィが突如として引ったくりあった……が、引ったくり犯が奪ったのはロゥリィの持ち込んだ布で巻かれた巨大なハルバードでその重さのせいで勢いよく転けて潰された。
「こんな感じで後を追わせて罠に誘い込む……と言うのがよくある手なんだが……何やってんだこいつは?いきなり転けやがって……」
「あ、それは……」
駒門が伊丹の制止を聞かずにロゥリィのハルバードを拾おうと手を伸ばして引っ張った時、駒門の腰に嫌な音が響いた。
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結果として駒門が腰を痛め、病院送りとなった。
置いて行かれた伊丹達は呆然とする中、次の行動が求められた。
「駒門さんの言っていた市々谷会館って所に行くのですか?」
「大丈夫なの?」
ステンは駒門から市々谷会館に行く様に言われた事を言うと64式自は不安を抱いた。
電車事故、引ったくりと続く中で本当に指定された場所が安全なのかと不安を抱いているのだ。
「う~ん……駄目ね。そこも目星を付けられてるわ」
「そうですか……て、何で分かるんですか!?」
UMP45のその言葉を聞いて64式自は驚いて声を挙げるとUMP45はいつの間にか携帯を手にしていた。
「これあの時の工作員から貰ったんだけどね〜。下っ端の下っ端みたいだけどこの携帯だけでも十分よ」
UMP45はそう言って携帯を弄り回す。
暫くしてUMP45は携帯をしまって不敵に笑った。
「これで暫くは持つわ。さ、次の手を打ってくれるかしら?」
「何したんだこの子……?」
UMP45の行動に伊丹は引き気味になるも伊丹はどうするかと考えてとある場所を思い浮かべるのだった。
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伊丹達が向かったのはホテル街でも何でもない単なる住宅街だった。
夜が更ける中、人通りの無い住宅街を警戒して歩く中、伊丹の手にはコンビニの袋が握られていた。
「此処に自衛隊のセーフハウスでもあるの?」
HK416は極普通の民家しかない光景に目を細める中、伊丹は苦笑いで答える。
「そんな場所じゃないよ……」
伊丹はそう言って古いアパートまだ来ると迷わずに階段を上って行くと一つの部屋の扉に鍵を差し込んで開けた。
「あ、起きてたのか梨沙。エアコンくらい点けろよ。寒いぞこの部屋」
伊丹はそう言って中でパソコンを弄っていた女、梨沙にそう言うと遠慮もなくそのまま中に入った。
「ご、ごはん……」
伊丹の姿を認識した梨沙は這いずる様に伊丹の元へと行くと伊丹は苦笑いでコンビニの袋を梨沙に渡した。
「はいはい。そんな事だろうと思ってたよ。皆、構わず入ってくれ」
伊丹がそう言うと冨田達は中に入った。
どう見ても普通……だが所々、趣味らしき物が置かれている部屋でセーフハウスとも思えなかった……寧ろ住んでる人間もいるのだ。
冨田達は困惑する中、伊丹に聞く。
「た、隊長……その人は……?」
「あーこれは……俺の元嫁さんだ」
伊丹のその言葉に全員が呆然とし、暫くの沈黙の後、叫んだ。
「元……」
「嫁!?二尉と結婚する物好きがいたなんて……けど実物みたら納得……!」
栗林の明らかに失礼な物言いに伊丹はジト目で返す中、梨沙は涎を滴しながら冨田達を見た。
その後、梨沙の狭い家に転がり込んだ面々は眠りにつく中、約一名を除いて人形達は冨田達と交代で窓の外を注視し、不審人物がいないか確認する。
「やっぱりこんな所にいるなんて思わないわよね〜」
UMP45はそう呟いて工作員から鹵獲した携帯を弄りながら言うとUMP9は笑いながら言う。
「灯台下暗しって奴だね!」
「そうね……要人の匿う場所ですらないもの此処は」
HK416は壁に持たれながら座りつつその側で眠り続けるG11に呆れ果てる。
「全くこいつは……」
「休ませてやってくれ。明日も行動するんだ。休める時は休むんだ。お前も休め」
ハヤトはその言葉にHK416はそっぽを向くとステンはハヤトに話し掛けた。
「私達の事は構いません。それよりも指揮官も早くお休みになってください。人形とは違って指揮官は休まないといけないのですから」
ステンはそう言って心配する素振りを見せ、ハヤトは暫く考え込んだ後、笑って頷く。
「分かった。休ませて貰う。何かあったら起こしてくれ」
「はい。分かりました」
ステンの返事を聞いてハヤトは出された布団を被るとそのまま瞳を閉じた。
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揺れる空間、爆発音。
それらを感じたハヤトは目を覚ますとハッと辺りを見渡した。
ハヤトの周辺は燃えており、崩れた建物で溢れていた。
銃声と悲鳴が響く中、ハヤトは立ち上がって自身の姿を確認する。
グリフィンの制服を見ると緑の迷彩服を着ており、その手には20式小銃があった。
ハヤトは呆然としていると肩を掴まれ、振り向くと武装した自衛官がいた。
「泉一尉!指示をください!」
自衛官のその言葉にハヤトは無言でいた時、前方に無数の影が現れた。
「来たぞ!アメ公だぁ!!」
自衛官の誰かが叫んだ時、無数の銃弾が飛び、自衛隊側も撃ち始めた。
銃弾が飛び交う中、自衛官の一人また一人が倒れ、死んでいく中、ハヤトは動けないでいると後方から飛び出す影があった。
「新ソ連の人形が行ったぞ!!」
自衛官が歓喜する様に言い、他の自衛官達も歓喜する様に声を挙げた。
後方から無数の戦術人形が駆け出し、前方の敵に向かって駆け出す。
激しい銃声と爆発音が響き続ける中、近くで爆発が起こり、ハヤトは黒煙に包まれた。
暫く黒煙に包まれたハヤトは目を開けると目の前に一人の軍服を着たアメリカ人の女がいた。
手には拳銃が握りしめられおり、女は涙を流しながら拳銃を向ける。
「さよなら……隼人……!」
「ッ!?シェイラ!」
女はそう言って引き金を引こうとし、ハヤトは咄嗟に20式小銃を構えて引き金を引いた。
パァンッ!
放たれた銃弾が同時に鳴り、銃弾がハヤトの元へと飛んでくる。
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ハヤトは銃弾が当たる直前に目を覚ました。
身体を起こして辺りを見渡すとまだ目を覚ますに早すぎたのか伊丹達は眠っており、起きているのは窓の外を警戒するHK416だけだ。
「まだ時間じゃないわよ」
「その様だな……」
ハヤトは額に流れる汗を手で拭うと横でステンが寝息を立てて眠っていた。
ハヤトはステンに布団を掛け直すのだった。