地下鉄経由で箱根に用意された旅館までやって来た伊丹達に待ち受けていたものは。
「うっわー!すっごーい!」
テュカが目にしたのは広々とした露天風呂だった。
湯気が立ち上ぼり、日本旅館の風景が風情を醸し出す光景に大喜びだった。
「凄いでしょー」
「この様な画期的な浴場がこの世にあるとは」
「殿下、此処は異世界です」
「そうであった……!」
大きな露天風呂にピニャ達が魅了される中、後ろから更に人がやって来た。
「これが露天風呂ですか?指揮官から聞いた事がありますが初めてです!」
「栗林さんと梨沙さんを除けば皆、初めてよ」
それはステンと64式自の二人で服は脱いでバスタオルを巻いていた。
初めての露天風呂に二人が歓喜する中、そこへ404小隊の面々も来る。
「意外と良い所じゃない~。気に入ったわよ」
「すっごく大きいお風呂だー!」
「暖かそうだね〜」
UMP45、UMP9、G11とバスタオルを巻いて現れ、最後に来たのが。
「ふん。少しはマシな所があるじゃない」
HK416である。
服を脱ぎ、バスタオルが巻かれているが栗林達はHK416の身体を見て驚愕していた。
「何よ?」
「いや……意外と立派なものをお持ちで……」
「お、大きい……着痩せって奴なの……?私くらいかな……?」
HK416の身体を見た梨沙と栗林はマジマジと観察する。
HK416はプロモーションは勿論、胸は今まではどうやって隠してたんだとばかりに大きな胸がそこにあったのだ。
見た目良し、身体良し、胸も良しと来たHK416に一同が見つめる中、HK416は不機嫌そうに言う。
「人の体をジロジロと見ないでくれる?」
「あ、ごめん……つい……」
栗林はそう言って謝るとロゥリィが自身の胸に手をやっており、明らかに落ち込んでいる。
その隣ではUMP45がニコニコとしているが何処か気分が落ちていた。
二人に共通する物は何とは言わないが明らかに落ち込んでいる為、栗林達はこれ以上は何も言わなかった。
暫くの騒ぎの中、体を洗いあう。
その光景を観察する者の視線をロゥリィが察知したり、体を洗っているどさくさに紛れて体を触ったりと女の子らしい交流が行われる中、隣でゆっくりと湯に浸かる伊丹達にも聞こえていた。
「あっちは桃源郷みたいだな〜」
「その様ですね……」
「覗くなよ?」
「覗きませんよ……」
ハヤトの冗談に伊丹はそう言って少し欲があったが高校生でもないのにそれをすれば犯罪なので何もしなかった。
暫くの沈黙の中、冨田が切り出した。
「そう言えばハヤト指揮官も自衛官だったのですね?」
「そうだ……俺も日本が失くなるまでは自衛官だったんだ……」
「無くなるまで?それって戦争を最後までやってたって事で?」
伊丹のその言葉にハヤトは頷く。
「日本が失くなる日の前……俺は自衛官として避難出来なかった国民の支援に奔走していた。辛かった……給料なんて無いし、休む暇すらない。だが、それでも一人でも救おうとした。だが……それでも西と東に分かれて争う様になって……どうしようも出来なくなった……」
ハヤトは一つずつ思い出す様に語り続ける。
「ある時、俺は自衛官として最後の作戦に打って出た。米軍が主導する傀儡政権。北海道の奪還作戦に参加したんだ」
「そ、それってつまり……!」
「アメリカを敵に回したって事ですか……!」
伊丹と冨田は驚いて聞くとハヤトは頷き、話の続きを聞かせる。
「勝ち目が無い訳では無かった。第三次世界大戦で丁度、アメリカと戦争状態になっていた新ソ連の支援を受け、俺達は北海道に侵攻した。激しい戦いだった。国が失くなるのも気にしないで俺達は残っていた感情……怒りを北海道の馬鹿共にぶつけた。……結果は分かってると思うが当然、北海道は新ソ連の支配下に収まって終結した。俺は戦後、日本から出て傭兵として彷徨っていた時にクルーガーさんに出会ってグリフィンに所属した。そして今に当たるんだ」
ハヤトの過去に伊丹と冨田は黙って聞く中、ハヤトは二人に微笑み掛ける。
「お前達も自衛官だが俺みたいにならないでくれ。国民を守り、国を守り、世界に誇れる存在であり続けて欲しい。……戦争なんて愚者のやる事でしかないんだからな……」
ハヤトはそう言って湯船に深く使った。
その頃、女湯の方では伊丹達と同じ様に湯船に浸かる女性陣達がいた。
「極楽極楽〜」
「気持ちいいねぇ〜」
G11が蕩ける様に湯に浸かり、UMP9が満足げにタオルを頭に乗せてた。
「たまには良いものね〜。私達、カッツカツだからこんな機会は滅多にないのよねぇ〜」
「ふん。それなら少しは節約する事ね」
「あら、手厳しいわね416は」
UMP45はそう言ってケラケラと笑うと梨沙が切り出した。
「ねぇ、栗林さん。何か面白い話ない?主に恋話とか?」
「そうですね……あ、どーも冨田ちゃんがポーゼスさんを……ポーゼスさんは冨田ちゃんとはどうなの〜?」
「え!?」
話を振られたポーゼスはドキッとするとピニャが反応した。
「ほぉ、トミタ殿と?それは聞き捨てならんな?」
「き、騎士団では男女の交際は禁止されてますし……家柄とか……身分とか……」
ポーゼスはそう言ってブクブクと湯に半分程、顔を入れてしまい、ピニャが絡んでポーゼスの胸を揉むなどと激しいスキンシップが行われる。
そんな様子を眺めていたステンは左手を挙げて髪を後ろに伸ばした時。
「あれ?気付かなかったけどステンさん指輪してるの?」
テュカはステンの左手を見てそう言うと栗林と梨沙が食い付いた。
「ひ、左手!?」
「指輪の位置は!?」
「え?……く、薬……指です……よ……?」
ステンはそう言って照れながら左手を見せるとそこには薬指に填められた指輪があった。
それを見た栗林と梨沙は口をあんぐりと開けてステンに質問攻めを開始した。
「け、結婚してたの!?誰と!?」
「あ、あの指揮官って呼ばれてた男の人!?」
「は……はい……」
ステンはそう言うと栗林達は騒ぎ始めた。
「ど、どんな風にお、お付き合い!いや、どんな風にプロポーズを!」
栗林に激しく詰め寄られながらステンはモジモジと照れ続ける。
「え、えぇ……それは……内緒じゃ駄目ですか……?」
「私!気になる!」
「正直に言いなさいよぉ」
「うんうん」
テュカやロゥリィ、レレイも参戦し、ステンは困っているとHK416が冷めた口調で言う。
「正式な結婚なんてしてないわよ。そんなの形式よ」
「え?」
「形式?」
栗林と梨沙が唖然とすると64式自は苦笑いで言う。
「制度上では人間と人形の結婚は認められてはいないんです。残念ですが私達、人形はあくまでも物の様なものなので……」
「生きているのに物として扱われる?」
64式自の説明にレレイは首を傾げるとUMP9はニッコリと笑う。
「人形にも色々あるんだ〜。でも、ある程度権利が認められたり、お給料も貰えるよ〜」
「そうね。まぁ、その制度を逆手に取って何人もの人形と結婚しちゃった指揮官とか見た事があるわ。認められてないからって暗いだけじゃないのよ。更に逆手に取って同性同士でってのもあったわね」
「「え?」」
UMP45のその言葉にステンを見るとニコニコとしている。
「あの指揮官……随分とモテそうよね〜。大丈夫?何人か言い寄ってなかったかしら?」
「何の事やら?」
「うーん……スプリングフィールドとかOTs-14も貴方にとってはある意味で脅威よね〜。第一が駄目なら第二を狙ってるって聞いた事があるくらいだしね〜」
UMP45のその言葉にステンはニコニコと笑ったまま喋らなくなり、栗林と梨沙は唖然とする。
「指揮官って立場も大変なんだ……」
「いつか刺されそう……」
栗林と梨沙はハヤトの苦労が何処か見えた様な気がして拝みながら言う。
「それよりぃリサ!イタミとは今はどうなのぉ?リコンって?」
「斥候って意味じゃなかった?」
ロゥリィの質問にテュカがズレた知識を言うと64式自が訂正した。
「違いますよ。夫婦が別れたって意味です」
「やっぱりそう言う意味なのねぇ」
64式自の訂正を聞いてロゥリィは離婚の意味を理解するとUMP9が反応した。
「どうして離婚しちゃったの?家族だったんでしょ?」
「こら、9。どんな家族にだって事情は幾らでもあるのよ。無闇に触れない」
「あ、大丈夫大丈夫!そうね……銀座事件の二重橋攻防戦ってヤバかったでんしょ?それに門の向こうへ行くって決まって……生活の事は心配するな梨沙。何かあっても保険金出るから……て、言われてね」
梨沙はそう言って少し表情を暗くした。
「あの言葉で先輩が好きなのを先輩は気付いてないって分かっちゃって……それで仕切り直そうと思ったの……」
「梨沙さん……」
ステンは梨沙の離婚の理由に悲しげな見つめる中、梨沙はステンの方を見て微笑んだ。
「私達はこんなんなっちゃったけど貴方はちゃんと愛し合ってね!じゃないとこうだぞ〜!」
「きゃあ!?何処を触ってるんですか!?」
梨沙の突然のセクハラにステンはバタバタと動き、周りが笑い包まれていく。
平穏な時間が流れる中、UMP45の近くにHK416が来る。
「山の方が騒がしくなってるわ……」
「そうみたいね……備えを怠らなくて正解だったわ……何時でも動ける様にしてね……」
UMP45はそう言って湯船に深く浸かった。
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温泉から揚がり、夕食も食べ終えたハヤト達は宛がわれた部屋で寛いでいた。
「さぁ〜て、そろそろ寝るか〜」
「そうですね」
「明日が本番だろうな……このまま帰してくれる訳がないからな」
ハヤトのその言葉に伊丹はとても嫌そうな顔で畳の上に寝転がる。
「このまま年末までいたい〜」
「そうもいかんでしょう」
伊丹の愚痴を冨田が返しているとドタドタと足音が聞こえ、三人は警戒して身構えた時、戸が開かれて栗林とロゥリィが突入してきた。
その顔はほんのり赤く、明らかに酔っている。
「男どもぉっ!」
「此方来いやぁ!!」
「えぇ……」
ある意味では女子部屋への招待だが、酔っている以上は明らかに厄介事だった。
伊丹達は嫌な予感を抱く中、結局、栗林とロゥリィによって伊丹と冨田は拉致られた。
「ちょっと待て!何でハヤトさん置いていく!?」
「ハヤトさん良いのぉ〜!」
「お楽しみを〜!邪魔したら駄目じゃ〜ん!」
栗林とロゥリィはそう言って伊丹と冨田を連れて行ってしまい、残されたハヤトは御愁傷様とばかりにいると栗林とロゥリィが立ち去ってすぐ、足音が聞こえてきた。
「まさかまた来たのか?」
ハヤトは二人内、どちらかが来たのかと身構えていると来たのは。
「指揮官?」
ステンだった。
声だけしか聞こえなかったがステンが来ているのが分かり、ハヤトは安堵しつつ返事をした。
「どうした?入って良いぞ?」
「なら……遠慮なく……」
ハヤトの返事を聞いたステンが部屋に入ってくるのをハヤトは見た瞬間、たじろいだ。
「どうしたステン!?浴衣がはだけているぞ!?」
ハヤトが目にしたのは浴衣がはだけて霰もない姿をしたステンがやって来たのだ。
肩が露出して胸の谷間が見え、下は太股が見えてしまう程に開いてしまっており、明らかに目のやり場に困る姿だった。
「指揮官……熱いですぅ……」
「ま、まさか……お前まで酔っているのか……?」
「ふえぇ……酔ってまふぇんよぉ〜……」
ステンはそう言ってハヤトの元へ一歩、また一歩と迫り、ハヤトは身構え続ける中、ステンはフラッと倒れて行き、ハヤトはそれを受け止めると幸せそうに眠るステンがそこにいた。
「ふへへ……指揮官はぁ〜……私だけのぉ〜……」
「はぁ……全く……」
ハヤトはそう言って微笑むとステンを退かした後、ステンを敷いた布団に寝かせてた。
寝息をたてるステンにハヤトは頬んでいるとコンコンッと叩かれる音を聞き、視線を向けると浴衣ではなく、いつもの服装のUMP45がそこにいた。
手には持ち込んだ鞄がある。
「どうした?今度こそヤバいのか?」
「そうみたいね。私達は山に行くわ。自衛隊がどうやら阻止してるみたいだけど別の意味で危ないみたいだしね。そろそろ守りが崩されるわ」
UMP45はそう言って鞄を置くとチャックを開いて中に手を入れるとUMP45の半身であるサブマシンガン、UMP45が取り出された。
UMP45は慣れた手付きで動作チェックし、マガジンを差し込むと装填する。
「程ほどにな。相手は戦術人形の素人なんだ」
「それが出来るかは分からないわね」
UMP45はそう言って笑うとハヤトの部屋に残りの404小隊もやって来た。
全員、いつもの服装で武装していた。
「45姉!準備できたよ!」
「射殺しても構わないのよね?」
「ふわぁ〜……眠いよぉ〜……」
三人は各々、準備万端と言う仕草にUMP45は頷くとハヤトに向かってウィンクしてから部屋の電気を消した。
暗闇が広がった瞬間、404小隊は姿を消してしまいハヤトは末恐ろしい小隊だと思いながら月光に照らされる山を見つめるのだった。