伊丹達が寝静まった頃。
箱根の山の中では自衛隊特殊作戦群と工作員達が静かな戦闘を繰り広げていた。
バシュッバシュッ!とサイレンサー特有の音がなり、静かな撃ち合いが続けられる。
「クソ!待ち伏せだ!」
「ラミレス!闇雲に撃つな!」
ラミレスは闇雲に撃つなと指示を出された瞬間、頭を撃たれて死んだ。
工作員は特戦群の攻撃を受け後退し、体勢を立て直そうとするも一人、また一人とやられていく。
「タナカとキムがやられた!」
「ッ!?……クソ!(何が日本人の装備は拳銃だけだから制圧は容易いだ!先ずは手足を狙ってくる?タブルタップで狙ってくきてるじゃないか!)」
工作員、ハイデッカーは特戦群の強さに苦戦を強いられる中、仲間の元へと向かう。
「チャック。こいつは罠臭い。塩時だ」
「駄目だハイデッカー。こいつは大統領命令だ。ちょっと待て」
チャックはそう言って何処かと連絡を入れる中、チャックに向けて特戦群が銃口を向け、撃とうとした時。
《聖杯は砕かれた。各位状況を中止し、待機位置に復帰せよ》
特戦群の通信に事実上の撤退命令が下され、特戦群は退いていく。
その状況を無線で知ったチャックは仲間に視線を向ける。
「上とは話が着いた。ガードは消える。予定通りに護衛の自衛官を排除し、来賓を迎え入れる。部屋は買収した仲居に確認済みだ」
「なッ!?待てよ!半分殺られたのも予定通りってか?」
「自衛隊がいたのは想定外だがお前達が無能じゃなけりゃ上が切り札を使う前に突破出来たんじゃないのか?」
「なにぃ!」
「よせロジャー!作戦中だぞ!頭を冷やせ。ビッターと先頭に立て。行くぞ!」
工作員達は特戦群の邪魔が消えた事で今度こそ突破出来ると信じ、突き進もうとした瞬間。
「ぐはぁッ!?」
先頭に立って進んでいたビッターの頭が撃ち抜かれた。
「伏せろ!まだガードがいるぞ!」
ハイデッカーはそう叫んで伏せると包囲する様に撃たれ始め、工作員達を次々と撃ち殺していく。
「何でだよ!上とは話が着いた筈じゃなかったのか!!」
「止めろ!ロジャー!!」
ハイデッカーはロジャーが撃とうとしたのを止めようとした時、ロジャーは頭、胸、首と同時に撃たれて倒れた。
それを見たハイデッカーは恐怖を覚えた。
「あり得ない……同時に急所を撃つだと……?」
ハイデッカーは人間技ではない攻撃に恐怖を覚えつつ銃を構えて警戒する。
その頃、嘉納は司令部でその様子を見て冷や汗をかいていた。
「これが戦術人形の戦いって奴か……」
嘉納は見ているものは工作員と404小隊による戦闘だった。
衛星で熱源を追って見ている中、人間離れした行動力と射撃でたった四人で工作員を相手に一方的に射殺していた。
「我々の常識を崩されますね……」
「そうだな……一時はどうなるかと思ったがな……」
嘉納はそう言って少し前の事を思い返す。
本位がアメリカ大統領のディレルに脅される形で特戦群を退かされようとしている最中、嘉納の元に連絡が来たのだ。
《特戦群の代わりに私達が戦ってあげるわ。大丈夫よ。私達は素人さん相手には負けるつもりないから》
その言葉通り、404小隊が山中に現れ、工作員を数秒と待たずに見つけ出しては撃ち殺している光景を嘉納は見る事となったのだ。
「敵工作員を素人呼ばわりとはねぇ……末恐ろしいもんだよ」
嘉納はそう言って笑うのだった。
その頃、ディレルはヒステリック気味に叫んでいた。
「どういう事かね!?何故今も突破出来ていないのだ!」
「どうやら来賓の護衛がガードに代わったのかと思われます。つまりは戦術人形……派遣した工作員が何処まで相手に出来るのか……」
ディレルにそう言うのは側近の一人であるローマンと言う黒人の男だった。
ローマンは冷静な物言いにディレルは苛立ちを覚える。
「たった四人だぞ!四人だ!それなのに負けると言うつもりなのか!」
「えぇ、負けます。我々は戦術人形について知らな過ぎるのです。第一、我々の電子機器をハッキングされ、情報を操作された挙げ句、重要な情報を奪われ、更には工作員の位置を定期的に日本側に漏らされてきた時点で最初から敗北は決まっていたのです」
ローマンのその言葉にディレルは顔を真っ赤にしてローマンを睨むもローマンは続ける。
「塩時です大統領。我々は日本と敵対するべきではありません。利権ではなく、調和こそがアメリカに必要な物の筈です。特地の情勢を考えれば更に分かる筈です。ですから」
「黙れ!!もう良い!お前は下がれ!私はやり遂げるぞ!何としてもだ!やり遂げれば次の大統領も私なのだ!私こそがアメリカを再び覇者へと君臨させる事が出来るのだ!!」
ディレルはそう叫ぶとローマンは暫く無言でディレルを見つめた後、その場から去った。
箱根に戻り、工作員達は決死の突破を試みていた。
「小日本め!高々、島に籠るだけの軍隊擬きなんかに……ぐはぁッ!?」
「クソ!クソオォォ!ぎぁッ!」
工作員達は自棄になりながら戦う中、404小隊は工作員達に違和感を抱いていた。
「ねぇ、45姉」
「なぁに?」
「何だかおかしくない?みーんなバラバラだし、言語もおかしいよ」
UMP9は敵を攻撃しつつ違和感を覚えて聞くとHK416が連続で工作員二人の頭を撃ち抜く。
「どうせ他の国の工作員と被ったんでしょ?好都合よ。ほっときなさい」
「ふぇ……敵もツイてないねぇ……御愁傷様……あ、一部突破されたよ」
「何やってるのよ」
G11が工作員の突破を許すとHK416は不機嫌になって咎めた時、UMP45は仲裁に入った。
「まぁまぁ。私達、四人しかいないんだから仕方ないわよ。それに突破されてもあっちには最強の最終防衛ラインがあるわ。気ままにやりましょう」
404小隊は工作員達の連携が上手く機能しないのを良い様に一方的に攻撃する中、ハイデッカー達、アメリカの工作員達は404小隊の攻撃から何とか抜け出して突破した。
「はぁ……はぁ……クソ……急がなければ……!」
ハイデッカーはそう言って旅館へと足を踏み入れようとした時、他にも旅館に近付く者達がいた。
「なッ!?」
ハイデッカーが見たのは明らかに自分達とは違う工作員達だった。
息絶え々で現れた工作員達は互いに唖然としあった後、 思わぬ接敵をした事に驚き、銃口を向けあった瞬間、旅館から飛び出した者がいた。
工作員達は一斉にライトを向けて飛び出してきた者を照らすとそこにいたのは自身のハルバードを手にしたロゥリィだった。
「みなさまぁ。こんな夜中にわざわざご苦労様ぁ」
ロゥリィはそう言い終わった瞬間、工作員達に襲い掛かった。
それは404小隊とは別の意味で一方的な殺戮だった。
ロゥリィの動きはあまりに速く、あまりに重い一撃を繰り出して工作員達を殺し回った。
シックスは物陰に隠れて連絡を試みようとした時、無線機を撃たれて壊された。
「ッ!?クソ!森の奴らか!」
シックスが気付いて銃口を向けた時、山の木々の闇の中から銃弾が飛び、ロゥリィの僅かな隙を突こうとした工作員達を撃ち抜いていく。
シックスも例外ではなく、そのまま撃たれて絶命する。
「ハイデッカー!ヤバいぜずらかろう!」
「敵から目を離すな!」
ハイデッカーがそう叫ぶも遅く、逃げようと言った工作員はロゥリィによって首を斬られて死んだ。
ハイデッカーはそれを見て自棄糞になってロゥリィに向けて銃口を向けて発砲した。
「この化物がぁッ!」
ハイデッカーはロゥリィにフルオートで撃つがロゥリィは巨大なハルバードの刃を盾にして接近し、ハイデッカーを攻撃するもハイデッカーはそれを避けて池に落ちる。
ハイデッカーはすぐに起き上がろうとするがそこで他の工作員がハイデッカーを攻撃してきた。
「邪魔をするな!!」
ハイデッカーはそう言って銃を向けようとするも片腕が失くなっており、ハイデッカーは咄嗟に残った腕で拳銃を抜き、工作員を撃った。
「(クソ!クソ!!俺はこんな所で!!)」
ハイデッカーは拳銃を撃ちながら必死に撃つ中で意識が無くなっていく。
片腕を失い、出血多量に陥ったハイデッカーは404小隊やロゥリィの攻撃を待たなくとも死に逝く運命にあったのだ。
ハイデッカーは必死に抵抗しながらも最後に自身の家族の姿を浮かべながら気を失ったのだった。
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戦闘終了。
戦場と化した箱根の山中と旅館の庭は工作員達の死体の山で溢れた。
旅館で寝ていた伊丹達も流石に異変に気付いて起きており、庭の惨状に呆然とするしかなかった。
ロゥリィが旅館の中心に佇み、満足げに微笑む中、山の暗闇から404小隊が現れた。
「戦闘終了よ。敵の工作員は全滅したわ」
「え?なに?戦闘?てか何で銃持ってんの?」
伊丹は404小隊の面々が銃を手にしているのを見るとUMP45は笑いながら言う。
「そんな細かい事は良いじゃない。それよりも早く逃げましょう。そうじゃないと沢山来ると思うわ」
「ッ!?そ、そうだった!何も知らない警察が来たらスゲー面倒だ!そうでなくても公安やら何やらが後始末に来るしそれにこいつらの仲間も近くにいる筈……今すぐずらかるぞ!」
伊丹は逃げる事を決断して指示を出して行く中、404小隊は工作員達を見て回っていた。
「何してる?」
「あら、レレイ。貴方はあまり見ない方が良いわよ?」
UMP45はそう言って少し動いた工作員を見つけると数発撃ち込んだ。
「生き残りがいないか確認してるのよ。生きてたら私達の無事を知らされるし、何なら不意を突かれる可能性があるわ。あんたも言われた事があるなら転がってる工作員に無闇に近付かないで行動しなさい」
HK416はそう言って倒れた工作員を撃つとその場から立ち去る。
「し、死神ロゥリィ……凄まじいですね……」
「ポーゼスはロゥリィの戦いを見るのは初めてだったな?無敵に見える異世界の兵も死神ロゥリィに掛かれば……ッ!」
ピニャは庭の地面を見るとそこには一丁の拳銃が無造作に落ちていた。
ピニャはそれを見て庭から降りて拳銃を拾った時、その腕を掴む者いた。
ピニャは驚いて腕を掴む者を見るとそこにはハヤトがおり、拳銃を手にするピニャを見下ろしていた。
「は、ハヤト殿……これは……!?」
「貸してください」
ハヤトのその言葉にピニャは恐る恐る拳銃を渡すとハヤトは慣れた手付きでマガジンを確認し、プレスチェックを行うとピニャに手渡した。
「無闇に落ちている銃を拾わないでください。暴発する可能性があります。それとマガジンには弾が十分にあります。此処を外すせば撃てる様になりますのでこうやって構えて……引き金を引いてください。しっかりと握って。撃つとかなり反動があるのでしっかりと持たないと腕を痛めます」
ハヤトから軽い講習を受けたピニャは唖然とするとハヤトは言う。
「万が一の時は自分の身は自分で守ってください。良いですね?」
「わ、分かった……」
ピニャの言葉にハヤトは頷くと近くに落ちていた拳銃を拾って確認するとステンと64式自が工作員の銃を手にしてやってきた。
「指揮官。工作員は404小隊が……」
「分かっている。彼奴らは最初から銃を持ち込んでいたからな……」
「さ、最初から!?つまり、あの鞄の中にずっと!?」
「でも検査では……」
「恐らくはハッキングして誤魔化したんだろう。検査機に触れていたな……その時か……」
ハヤトはそう言ってハッキングされた時期を推測した後、自分も逃げる為に服を着替えに向かった。