戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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帰還への追悼

工作員の武力行使を受け、伊丹達は旅館から抜け出して真夜中の逃走を開始した。

 

蛍光灯が光る薄暗がり夜の闇の中、最大限の警戒で進む。

 

「油断しないで。敵はまだ退いた訳じゃないわ」

 

「そうそう。こんな所で撃たれたら間違いなく庇いきれなくて貴方達、死んじゃうからね」

 

「怖いこと言うなよ……」

 

HK416とUMP45に伊丹はドンよりとした雰囲気の中、工作員は何処の所属なのかと言う話になった。

 

「連中、何処のだと思う?」

 

「聞こえてたのは英語とロシア語あと中国語」

 

「やっぱり?」

 

伊丹はそれを聞いて嫌そうな顔になるとUMP45は笑いながら伊丹に言う。

 

「お相手はアメリカのCIA、ロシアのSVR、そして中国の国家安全部よ。こんなに有名な諜報組織が来るなんて今回だけ。貴重な体験が出来て良かったじゃない」

 

「良くないよ!」

 

UMP45がケラケラとからかう様に笑って言うと伊丹は思わずツッコミを入れた所で。

 

「隊長」

 

「ん?」

 

「あら?」

 

冨田に声を掛けられた伊丹とUMP45が前を見ると目の前にエンジンを吹かした車があった。

 

それを見た二人は暫く車を見つめた後、とても悪い顔になると銃を持って車に接近する。

 

冨田は運転席へ静かに近付くとロシア人とおぼしき男が待機しており、冨田はそれを確認するとロシアの頭に鹵獲した銃を頭に向けた。

 

ロシア人の男も気付くも既に遅く、既に伊丹達が取り囲んでいたのだ。

 

「ゴメンねぇ。悪いけど降りてくれる?」

 

伊丹は拳銃を向けながらロシア人の男に降りる様に促すとロシア人の男は両手を挙げながら運転席から降りてきた。

 

「うわぁ……大きい……」

 

G11は降りてきたロシア人の男を見てそう言うとHK416が銃口を向けながらロシア人の男に命令する。

 

「地面に伏せて両手を頭に回して。不審な動きをしたら殺す」

 

HK416のその言葉にロシア人の男は静かに従って地面に伏せて両手を頭に回すと完全に無力化された。

 

「ねぇ、悪人なら撃って良い?良いよね?」

 

「まずいって……まだ酔ってんのか?」

 

栗林の過激な言葉に冨田は止めると栗林は武器を隠し持っていないか確認する為にロシア人の男の服を探り始める。

 

「じゃあどうするの?連れて行けないし、縛ってもすぐ逃げそうだし、無力化ったって映画みたい気絶させようとしても下手すれば死んじゃうよ」 

 

栗林のその言葉に近くにいたUMP9が考え込む中、手をパンと叩いてサムズアップする。

 

「あ、なら私が代わりにやろうか?やっちゃえば私達を追ってこれなし、伊丹さん達の責任にもならないから大丈夫だよ!」

 

「いやいや!駄目だから!なにこの子!?怖い事をいきなり言い出したよ!?」

 

冨田はUMP9の過激な発言にビビりながら拒否するとUMP9は残寝そうな顔をする。

 

「そう?私達、そう言うのに慣れてるから問題ないと思ったんだけど……」

 

「もう、9。いつもの私達の仕事じゃないのよ?下手な事をすれば余計にややこしくなっちゃうわ」

 

「でも、どうするのよ?始末した方が確実よ?」

 

HK416にまで言われたUMP45は困り果てるとレレイが話し掛けてきた。

 

「殺生せずに無力化させれば良い?」

 

「あら、可能なの?」

 

UMP45がそう聞くとレレイは頷き、ロシア人の男に向かって呪文を唱えるとロシア人の男はぐっすりと眠ってしまった。

 

「これで朝までぐっすり」

 

「す、すご……」

 

栗林は目の前で起きたレレイの睡眠を誘う魔法に驚く中、G11が珍しく生き生きとした目でレレイを見ている。

 

「魔法だ!見た416!魔法だよ魔法!」

 

「うるさい。見れば分かるわよ」

 

G11の興奮を鬱陶しそうに返すHK416は車を見た時、気付いた。

 

「これ……全員、乗れるの?」

 

「「「「「「「「「……あっ」」」」」」」」」

 

HK416のその言葉に車を知る伊丹達が気付き、暫く固まった。

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結果として運が良い事に拉致の為に用意された為か全員が上手く詰めれば何とか乗れる程の大きさの車だった為、全員が乗り込む事が出来た。

 

「狭いよぉ〜」

 

「我慢しなさいよ!私だって狭い思いをしてんのよ!」

 

「ねぇ、416。その胸が私の顔に当たってるのは嫌味なのかしら?それと9。もうちょっと離れて。貴方の胸も当たって顔が挟まってるから」

 

「ごめん45姉!」

 

404小隊の面々がワイワイ騒ぐ中、ハヤトの上にステンが座ると言う状態になっていた。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はははは、はいっ!」

 

ステンは顔を真っ赤にして言い、64式自は上手く出来た隙間に縮こまりながら笑って見た後、車内を見渡す。

 

「本当にギリギリでしたね……」

 

「ごめんね……狭い思いをさせちゃって……」

 

「良いですよ。テュカさん達は一般人なのですから。少しでも休んでください」

 

64式自はそう言って笑って返す。

 

テュカ達は少しでもスペースの余裕を取って座らせており、狭い思いをせずに済んでいた。

 

「なぁ、直接銀座に行くのは止めようよ。待ち伏せされたらキツくない?」

 

「じゃあ、どうします?」

 

「私に良い考えがあるわよ?」

 

「「え?」」

 

伊丹と冨田がUMP45のその言葉に反応するとUMP45は悪戯ぽく笑う。

 

「これを使うわ。工作員の人達の落とし物よ。大々的にやっちゃえばもう手出しは出来なくなるでしょうね」

 

UMP45はそう言って工作員達から奪ったであろう携帯、通信機、端末と取り出して見せたのだ。

 

ハヤトはそれを見て何をするつもりなのかを察し、諌めた。

 

「45……やり過ぎたら逆に迷惑になる」

 

「あら、最初に喧嘩を仕掛けてきたのは誰だったのかしら?」

 

「この世界は俺達の世界じゃない。俺達の世界の日本とアメリカならまだしもこの世界の日本とアメリカの関係に明確な亀裂を入れる訳にはいかないんだ」

 

ハヤトがそう言ってUMP45を見つめる中、UMP45は溜め息をついて取り出した物をしまった。

 

「仕方ないわね……指揮官の言う事を聞くわ」

 

「(本当に何をするつもりだったんだこの子は!?)」

 

伊丹はUMP45がよく分からないがとんでもない事をやろうとしていたと聞いてドン引きする中、UMP45は携帯を片手で操作していた。

 

「(とは言ってもせめてアメリカには黙って貰わないと面倒になりそうね……悪く思わないでね。大統領さん)」

 

UMP45はそう考えながら操作を終えると携帯をしまった。

________

______

___

 

朝日が昇り、日本の新たな朝が始まろうとしていた時だった。

 

《緊急速報をお伝えします!日本時間の午前4時頃にアメリカのディレル大統領が突然の弾劾裁判を受け、アメリカ大統領を解任されたと発表されました!明確な理由は発表されておりませんがディレル大統領は大統領を解任を受け、ホワイトハウスから既に退去したとアメリカの報道局が報じており、現在も取材が続けられているとの事です!》

 

「これは……!」

 

本位は朝になって緊急入院の手続きをして総理を辞任する用意をしていた時だった。

 

テレビを着けてみればさぁ、大変。

 

ディレルが弾劾され、大統領を追われると言う前代未聞の事件を本位は見る事となったのだ。

 

本位は唖然とする中、自身の携帯の着信が鳴り、恐る恐る出ると。

 

《はぁ〜い。私からの贈り物は喜んでくれたかしら?》

 

可愛らしい女の子の声が本位の耳に入った。

 

本位はテレビを見て電話の主こそがディレル大統領の解任の黒幕だと悟り、電話を続けた。

 

「何をしたのかね?」

 

《ディレル大統領の悪行を証拠付きで色んな人達に配っちゃったのよ〜。本当は止めておくつもりだったんだけど間違って送ちゃった。ディレルって人、人望ないわね〜。私の情報を手に入れた人がすぐに動いたみたいだし、遅かれ早かれ下ろされてたでしょうね》

 

声の持ち主はケラケラと笑ってそう言うと本位は近くの椅子に座る。

 

「それで?君は何を望むんだ?捨て置いても私が辞任すればアメリカの切り札を封じる事が出来た。なのに何故?」

 

《変な人が総理の椅子に座ったら困るでしょ?私は関係ないって思ってるけど私の雇い主にとってはそうはいかないの。だから邪魔者の一人を終わらせたって訳。安心して。日本の不利益はないわ。寧ろ、此れからのアメリカはもう少し付き合いやすい筈よ。後の事は貴方達次第よ。頑張ってね〜》

 

電話の主はそう言って電話を切ると本位は切れた携帯を見つめるのだった。

 

その頃、UMP45は人通りの少ない場所で携帯を見つめた後、適当に放り投げて捨てると笑顔で伊丹達と合流した。

 

「お待たせ〜」

 

「遅いぞ?たく……何してんだか……」

 

「野暮よ野暮。大した事じゃないわよ。ほら、車に乗せて。行くわよ」

 

UMP45はそう言って車に乗り込むとハヤトが伊丹に話し掛ける。

 

「プランはどうするつもりだ?工作員の事だ。門周辺を張っててもおかしくない。梨沙さんのやっていた仕込みが作戦の肝なのか?」

 

「うん、そう。色々とやったんだけど少なくとも千人は来ると思ったんだけど……スッゴい来たわね……」

 

梨沙がそう言って見たのは明らかに人が密集し過ぎている銀座の街だった。

 

千人なんて可愛い数字ではなく、数万人は越えるとばかりに人がぞろぞろと道路も飛び出して集まっていたのだ。

 

おかげで大渋滞となり、伊丹達は足止めを受ける羽目になっていた。

 

「何よこれ!?」

 

「凄い人集り!これ梨沙さんがやったの!」

 

「うん、そう……大きいお友達舐めてた……」

 

HK416は人集りに驚き、UMP9は梨沙に聞くと梨沙はそう言ってやらかしたとばかりに顔を覆う。

 

計画とは違う形で成果を出してしまった事態に伊丹も困惑する始末だ。

 

「どうします?」

 

冨田がそう聞くと伊丹は唸った後で溜め息をつく。

 

「歩いて行くしかないよなぁ」

 

「危険じゃないスか?」

 

「大丈夫よぉ」

 

冨田は車から出る危険性を考えて発言した時、ロゥリィがニッコリと笑ってそう言うと制止を聞かずに用意されていた花束を手に車の外へと出た。

 

「ねぇ、あなたぁ。ギンザはどっちぃ?」

 

ロゥリィが集まっていた野次馬の一人に聞くと驚いた野次馬がその場を退き、それが連鎖してモーゼの海割りの様に退いたのだ。

 

それを見ていた伊丹達は動揺していた。

 

「まいったな……集まる人の中にどんな人がいるか分からないのに……銀座事件の遺族にとっちゃロゥリィ達は初めて見る敵国人だぜ?やっぱ今日は止めてまた梨沙の部屋に泊まろっか?」

 

「で、明日になったら工作員の待ち伏せを強硬突破ですか?」

 

栗林の言葉を聞いて伊丹は頭を抱えるとハヤトは拳銃のスライドを引いた。

 

「伊丹。俺は進むべきだと思うぞ」

 

「指揮官!危険ですよ!」

 

「これだけの人がいれば何が起こるのか分かりませんよ」

 

64式自とステンが反対するがハヤトに二人に微笑む。

 

「俺には頼もしい部下達がいるからな。必ず守り通してくれるって信じてるぞ」

 

ハヤトのその言葉に二人は黙るとUMP45が車から降りた。

 

「決まったわね?なら、行きましょう。大丈夫よ。私達、404小隊もいるんだから」

 

「どんな奴にだって指一歩触れさせないよ!」

 

「さっさと仕事を終わらせたいのよ。早くしなさい」

 

「えぇ……もう少し此処に……」

 

「「「G11?」」」

 

「分かったよ〜」

 

G11はそう言って渋々、車から降りると404小隊は歩き出す。

 

「……だぁもう!冨田二曹。栗林二曹。もし彼女達を害する者があれば構わず撃て」

 

「「了解!」」

 

伊丹は突破を決断し、冨田と栗林に指事を出すと各々が決めた銃を手に取って車から降りると自衛官としての雰囲気に変えた。

 

その雰囲気に梨沙が圧倒される中、ハヤト達も車から出ればハヤトもステンも64式自も戦場に立つ者としての気配を見せていた。

 

「……お別れですね梨沙さん」

 

「楽しかっですよ。貴方の様な人に会えて光栄でした」

 

「え?あ……うん……此方こそ」

 

ステンと64式自からの最後の挨拶を受け、梨沙は頷くとハヤトを追って進んでいく。

 

ハヤトは群衆の裂け目を通る中、群衆はハヤトに気付いて注目を集める。

 

ハヤトの姿は今、追悼の為にグリフィンの制服へと戻っており、誰もが国会で参考人招致として呼ばれた指揮官と呼ばれる男だと分かる姿なのだ。

 

ハヤトがもたらした言葉はこの世界の日本の人々に深く刺さる出来事であり、誰もが当たり前の様に感じていた平和が崩される可能性を与えた男の姿を直に目に焼き付けているのだ。

 

「とても見られてますね……」

 

「気を付けて……もしかしたら指揮官に危害を加える者がいるかもしれません……」

 

ステンと64式自はハヤトの近くに寄り、警戒する中、献花台付近へと来た所で飛び出してきた者がいた。

 

「指揮官!」

 

ステンはハヤトの前に立って隠し持っている鹵獲した銃を手にしようとした時、ロゥリィがハルバードの柄を道路に突いて大きな音を出すとステンは止まった。

 

飛び出してきたのは一般人でステンは暫く呆然とした後、取り返しのつかない失敗をしそうになった事に気付いて落ち込んだ。

 

「大丈夫だステン。何も起きていない」

 

「すみません……」

 

「落ち込まないで。私も銃を抜き掛けたわ。貴方だけの失敗じゃないから」

 

「はい……」

 

ハヤトと64式自に励まされたステンは気を取り直すとハヤトは献花台の前まで来るとロゥリィが花束を置いた所でグリフィンのベレー帽を脱ぎ胸に当てると深く冥福を祈った。

 

「(どうか……安らかに眠りについてくれ……)」

 

ハヤトはそう想いを込め、祈りを捧げる。

 

ステンも64式自も冥福を祈り、404小隊の面々も合わせて祈りを捧げると献花は終わった。

 

献花が終わり、伊丹達が門の向こうへ帰ろうとした時、群衆は声を挙げた。

 

それはレレイやロゥリィ、テュカの名前で中にはステンや64式自の名前も挙がっていた。

 

「は、恥ずかしいですよ……!」

 

「私……こんなに人に名前を呼ばれたのは初めてですよ……」

 

二人が困惑する中、ハヤトは微笑んだ後、かつての故居の姿をした日本に背を向けて門の中へと入った。

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