戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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一難去って

門のあるドームの中に入ると伊丹達はようやく安心して力を抜いた。

 

ハヤトは溜め息をつきながら制服のネクタイを結び直し、ステンと64式自もへたり込んでしまった。

 

「う〜ん。良い旅行だったわね〜」

 

「温泉とか最高だったよね45姉!」

 

「もう二度とやらないから……こんな任務……!」

 

「もう少しいたかったのに〜!」

 

伊丹達がへばる中、404小隊の面々は平気だとばかりに背筋を伸ばしたり、日本での思い出を語り合う等する姿に伊丹は404小隊のタフさを垣間見た気がするのだった。

 

特地のアルヌスに戻る前に検査は当然、行われた。

 

伊丹達は鹵獲した銃を出し、ハヤト達も持っていた鹵獲銃を提出するとピニャとポーゼスが拳銃を持ち込もうとしている事が分かり、検査担当の自衛官に捕まっていた。

 

「なぜ拳銃を?」

 

ピニャは自衛官に聞かれる中、ハヤトがやって来た。

 

「すまない。それは私の独断なんだ。万が一の為に護身用として持たせていた。もし、不都合な事があれば改めて私から謝罪しよう」

 

「あ、いえいえ!それなら構いませんが……」

 

ハヤトの言い分を聞いて自衛官はピニャとポーゼスの隠し持っていた拳銃を持っていってしまうとハヤトは二人の前に立つ。

 

「あんな物を作ったとしても役には立ちません。それにそこまでの技術力もないでしょう?あまり無茶な事はしないで頂きたい」

 

「……すまない」

 

ハヤトはピニャとポーゼスに軽く叱責した後、門を通った。

 

伊丹達と共に門を抜けてアルヌスへと帰還するとそこには柳田の出迎えがあった。

 

「よぉ。休暇は楽しめたか?」

 

「ぜってぇ年末三日に取り直す」

 

柳田の嫌味の様な言葉に伊丹は文句を言う中、ハヤトは一息ついていた所で向こうからドドドッと聞こえそうな程に土煙を立たせながら掛けてくる者達がいた。

 

「しきかーん!」

 

「無事だったかにゃあ!」

 

「心配しましたよぉ〜!」

 

「お怪我はありませんかー!」

 

現れたのはステンの纏めている第三小隊の面々で今回の駐留部隊だった。

 

ハヤトの帰還を聞き、駆けつけてきたのだ。

 

「うわぁーん!もう帰ってこにゃいかと思ったにゃ〜!」

 

「IDW!縁起でもない事を言わないでください!」

 

「だってにゃ!だってにぁ〜!」

 

IDWはそう言って泣きながらハヤトに抱き付き、ワンワンと泣き喚く。

 

ハヤトは苦笑いでIDWの頭を撫でてやると第三小隊の人形達も集まってワイワイ騒いだ。

 

その様子をテュカ達は笑って見守る中、伊丹は柳田にまだ文句を言っていた。

 

「本当にぜってぇ年末三日に取り直させて貰うからな!」

 

「そこまで言うなら……今、取るか?」

 

「え?」

 

柳田のその言葉に伊丹は唖然としたいや、嫌な予感を覚えたのだ。

 

伊丹は一歩下がった時、柳田は逃がさまいと話を続ける。

 

「伊丹。海外への旅行とかに興味はないか?」

 

「な、何でまた……?」

 

「それはそこにいるハヤト指揮官がよく知っている筈だ。聞いてみたらどうだ?」

 

柳田はそう言ってハヤトに話を振るとハヤトは人形達と話すのを止めて伊丹達の方へ向く。

 

「参考人招致に向かう前にクルーガーさんから連絡があった。我々の雇い主達から特地の人間と自衛官を招待したいとな」

 

ハヤトのその言葉に伊丹はまさかとばかりに柳田の方を見ると柳田は眼鏡の位置を直してから伝える。

 

「陸将の命令だ。残りの休暇を越えても良いからグリフィン側の世界に来賓として出向け……とな。良かったな。海外旅行だぞ」

 

「何処が良いんだよ!?あっちはディストピアみたいな世界だって俺、聞いてんだぞ!?」

 

伊丹は修羅場から帰ってきたばかりの時に更に地獄みたいな場所へ行けと言われて堪らずに文句を言うとレレイ達が反応した。

 

「ハヤト指揮官の世界ってどんな所なのかな?」

 

「危険な場所と聞いた……けど、気になる」

 

「私もぉ」

 

「おいおい……」

 

テュカ、レレイ、ロゥリィは行く気満々で、伊丹は次に言われる言葉が分かった気がした。

 

「お前が一番付き合いが長いんだ。着いて行ってやれ」

 

「隊長どんまいです!」

 

「御愁傷様です」

 

栗林と冨田にすら見放されたと伊丹は思った時、柳田はキョトンとしながら言う。

 

「何を言っているんだ。お前達も行くんだよ」

 

「「えぇ!?」」

 

「いよっしゃ!道連れじゃあ!」

 

伊丹は道連れが出来たとガッツポーズし、冨田と栗林は力無く地面に膝を着いた。

 

その様子を見ていたピニャは前に出た。

 

「わ、妾達も同行出来るか!日本だけでなく……その……」

 

「新ソ連だ」

 

「そうだ!新ソ連とも交渉したい!何とかならぬか?」

 

ハヤトの助け船を借りてピニャは柳田に頼み込むと柳田は考える素振りを見せる。

 

「流石に分かりませんね。彼らも定員を定めてはいませんが……」

 

「構いませんよ」

 

伊丹達はその声を聞いて視線を向けると自衛隊とは違う軍服を着こなした男が現れた。

 

男はそのまま歩いて来るとハヤトの前まで来ると笑って見せた。

 

「久しぶりだなハヤト。少しは中世の世界に慣れたか?」

 

「それなりにな。ヴァシリー大尉」

 

ハヤトはそう言って手を差し出すとヴァシリーはハヤトの手を掴み拍手する。

 

その様子を見ていた伊丹達にハヤトはヴァシリーを紹介した。

 

「彼はヴァシリー大尉だ。新ソ連正規軍所属の軍人で私の友だ」

 

「おいおい、かなり畏まって言わなくても良いだろ?ヴァシリーだ。階級は大尉。まぁ、気軽にヴァシリーとでも何でも呼んでくれ」

 

「は、初めまして……陸上自衛隊所属の伊丹です。階級は二等陸尉です……どうもよろしく……大尉……」

 

伊丹はまさか此処でグリフィンの大元となる存在に属する軍人が来るとは思わずぎこちない挨拶をするとヴァシリーはテュカ達に視線を向けた。

 

「おぉ!この子達が特地の!特にあの金髪のあの子の耳は本物なのかハヤト?」

 

「そうですよ。あまり触れるのは失礼だからそれくらいでな」

 

「なんか急にタメになってないか?」

 

ヴァシリーはそう言ってハヤトにジト目で視線を向けて言うとヴァシリーの元にピニャが来た。

 

「ヴァシリー殿!そちらの世界へ赴く際に妾達の同行も構わないと言うのは確かで良いのか?」

 

「……ハヤト」

 

「何です?」

 

「すまん。俺は特地の言葉は不慣れなんだ……何て言ったんだ?」

 

「あぁ……彼女は伊丹達と同行しても言いか確認する為に聞いてるんだ」

 

「成る程。構わないぞ。上もこんなに早く敵国の要人と接触できるとは願ったり叶ったりだろうからな。だが、少し待って欲しいんだ。上に聞いて正式に認められたら連れて行ける。それまで待てるか……聞いてくれ」

 

「全く……ヴァシリー大尉は連れて行っても構わないが上に聞いて正式に許可されたら同行を許すと言っています」

 

「ほ、本当か!では、このアルヌスで返事を待とう!柳田殿、よろしいか?」

 

「良いですよ。伊丹達も構わないな?」

 

柳田のその言葉に伊丹、冨田、栗林は死んだ様な目付きで頷くと正式に新ソ連行きが決まった。

 

伊丹達がワイワイ言い合う中、404小隊の面々が来る。

 

「あら、私達の世界に行くの?」

 

「なら帰りまでは一緒だね!」

 

「まだあんた達と付き合う事になるなんてね」

 

「まだ日本にいたかったよ〜!」

 

若干、一名未練たらたらな者もいるが伊丹達が新ソ連へ行くと聞いてもう少し付き合う事になると404小隊は言うとハヤトは言う。

 

「彼女達は俺の正式な小隊じゃない。だから任務が終われば彼女達は此処を去る事になる。次の任務に赴く為にな」

 

「そうなの……?」

 

テュカはそう言って寂しそうに言うとUMP9がテュカの手を両手で握った。

 

「大丈夫だよ!きっとまた会えるから!」

 

「そうよね。縁と言うのは不思議なものよ。機会があれば必ず会えるわ」

 

「もっとも会ったとしても二度とあの下劣な絵の本なんて探したりしないわよ」

 

「また会ったらもっと魔法見せてね。楽しみにしてるよ」

 

404小隊のその言葉にテュカは微笑むとレレイもロゥリィも笑ってワイワイ会話し始めた。

 

前よりも距離が縮まった関係にハヤトは微笑むとヴァシリーがハヤトの隣に立った。

 

「相変わらず他人にお優しいな?」

 

「ほっとけ。救い様がない世界で生きてるんだから……少しでも優しくしてやりたいんだよ」

 

「とんだ甘ちゃんだな。だが、それがお前の魅力だしな。それで何人の女を落としてるんだか」

 

「別に口説いてないが?」

 

「そう言うとこだぞ?」

 

ハヤトの言葉にヴァシリーは呆れつつも一時の平穏を楽しむのだった。

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