戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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救われない世界へ

日本での旅を終えたハヤト達はアルヌスで一日宿泊後、フォルトゥーナ基地へグリフィンのヘリで移動していた。

 

レレイ達、特地の者達は初めて乗るヘリに興味や恐怖を抱きつつ窓の外を見ていた。

 

「前も思ったんだけどどうやって飛んでるのかな?」

 

「上の回転する羽を利用して飛んでいるものと思われる」

 

「地上よりもずっと速くて便利ねぇ」

 

「で、ででで、殿下!?」

 

「お、落ち着け!慣れれば恐怖など!」

 

各々の反応がある中、フォルトゥーナ基地付近へと辿り着いた。

 

伊丹達はフォルトゥーナ基地に視線を向けると驚きの声を挙げた。

 

「これがグリフィンの駐屯地なのか!?」

 

「デカすぎない!?」

 

「アルヌスよりも要塞みたいだ……」

 

伊丹が見たものは大きな建物を中心に幾つかの施設が建ち並び、更に防壁や複数の望楼が建設され、ヘリポートも巨大な車庫もあると言うアルヌス駐屯地とは比べ物にならない規模の基地だった。

 

帝国軍の数押しを警戒して増設に増設を重ねた結果、通常のグリフィンの拠点よりも強固で巨大な要塞の様な基地となり、更に新ソ連基準の旧式とは言え、正規軍から与えられた兵器も配置されており、正に鉄壁の要塞として機能しているのだ。

 

「これがグリフィンの砦なの!?」

 

「大きいわねぇ」

 

「で、殿下!?」

 

「お、落ち着け!想像はしていたがこれ程とは……!」

 

テュカ達も驚いて見入る中、ヘリはそのままヘリポートへと着陸すると最初に出迎えたのはヘリポートの付近で待機していたジャンシアーヌとG36だった。

 

「お疲れ様です。ハヤト指揮官」

 

「出迎えありがとうジャンシアーヌ指揮官。変わった事はなかったか?人形達が迷惑を掛けたりは?」

 

「いいえ。皆、優秀でした。ハヤト指揮官が戻って来るまで何もなくこの日を迎えられました」

 

ジャンシアーヌはそう言った所で伊丹達は誰とばかりにジャンシアーヌを見ているとハヤトもそれに気付いて紹介する。

 

「彼女はジャンシアーヌだ。私と同じグリフィンの指揮官をしている。若いながらかなり優秀な指揮官で、新人ながら多くの重要な任務をこなしている」

 

「大袈裟ですよハヤト指揮官……私はやるべき事をやっているだけです」

 

ハヤトの紹介にジャンシアーヌは少し照れ臭そうに言うと伊丹達に視線を向けて挨拶した。

 

「ジャンシアーヌと申します。ハヤト指揮官と同じくグリフィンの指揮官を勤めさせて頂いております」

 

「あ、どうも……陸上自衛隊の伊丹です。此方は冨田と栗林と言います」

 

伊丹達も軽い挨拶を済ませるとそこへヴァシリーがやって来た。

 

「ハヤト。時間も差し迫ってるし……お、君がハヤトが珍しく褒めちぎってたジャンシアーヌ指揮官か?なかなか綺麗な方じゃないか。どうだ?今度、何処かで食事でもどうだ?」 

 

「は、はぁ……」

 

ヴァシリーのナンパににジャンシアーヌは困惑を覚える中、ヴァシリーはハヤトに首根っこを掴まれてジャンシアーヌから引き剥がされる。

 

「うちの新人を口説くな」

 

「おいおい、冗談だって……怒るなよ……」

 

ハヤトのお怒りに触れたヴァシリーは目を反らしながら言うとHK416が来た。

 

「いつまで言い合ってるのよ。早く帰らせて」

 

「おっと、すまない。そろそろ予定の時間だな。早く行かないとどやされちっまう」

 

ヴァシリーはそう言って腕時計を見るとハヤトは呆れながら溜め息を吐く。

 

「早く行け。俺はジャンシアーヌ指揮官から状況を引き継がなければならないんだ」

 

「は?何言ってんだよお前も来るんだ」

 

「は?」

 

ヴァシリーのその言葉にハヤトは唖然とするとヴァシリーはハヤトのその反応を見て知らなかったのかと言わんばかりの顔で見てくる。

 

「うちの上層部が特地に関する新たな方針を建てるから来いって聞いてなかったか?」

 

「そんなの聞いてないぞ?」

 

「あ、ハヤト指揮官。それが……」

 

「先程、この基地の通信でその様な趣旨の内容が伝えられまして……」

 

「……本当か?」

 

ジャンシアーヌとG36のその言葉にハヤトは唖然とした後、頭をかいた。

 

「上層部は何を考えてるんだ……ジャンシアーヌ指揮官もいつまでも此処にいる訳じゃないだろう?」

 

「新しく引き継ぎの指揮官が来るそうです」

 

「誰だ?」

 

「石軍指揮官です。何でもじゃんけんで勝ったそうで」

 

「じゃんけんで人事を決めるなよ……」

 

ハヤトはじゃんけんで勝って叫んでいる石軍を思い浮かべながら呆れて果てるのだった。

________

______

___

 

ジャンシアーヌ達とのやり取りを終え、ハヤト達は自衛隊と同じ様にドームで囲んだ門へと来ると見張りの人形達がおり、ハヤト達に敬礼する。

 

ハヤトは軽く挨拶して門へと来ると既に門は人が通れる程に広げられており、いつでも通り抜けられる様になっていた。

 

「忘れ物は無いか?日本とは違って何でもある訳じゃないないからな」

 

「いえ……特には……」

 

「と言うよりも急過ぎて用意のヨすら……」

 

「出来てないですね……」

 

ヴァシリーの最終確認に伊丹、栗林、冨田はそう言うとハヤトは苦笑いする。

 

「ねぇ、この服装……日本に行く前よりも厚すぎない?」

 

「今は我慢してくれ。すぐに理由は分かるからな」

 

テュカが分厚い冬着を着込まされて暑そうにする中、ハヤトはそう言って我慢する様に言うとヴァシリーが門の中へと入り、ハヤト達も続く。

 

アルヌスと日本の門の様に暗闇の中を歩く中、やがて一筋の光が差し込むと出口へと辿り着いた。

 

雪がチラホラと降り、僅かに積もる街が現れた。

 

だが、その街は日本よりも明らかに発展し、高いビルが乱立している近未来の様な街並みだった。

 

「さ、寒い……!」

 

テュカは此処で厚着の意味を知る事となった。

 

やって来た世界は日本の冬よりも寒く、少しでも風が吹けば凍えるような寒さを覚えたのだ。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ……でも此処まで寒いなんて思わなかった……」

 

テュカが震える中、ステンが気遣うなどしている中、伊丹は都市の景色を見ていた。

 

「これが……この世界の街なのか……?」

 

伊丹がそう言って遥かに高度な技術が使われている建物に目をやる中、ヴァシリーが答えた。

 

「ようこそ。新ソ連へ」

 

ヴァシリーのその言葉に伊丹はやって来てしまったと溜め息をつくと門に数台の黒塗りの車がやって来た。

 

車はハヤト達の前に止まると運転手が車から降り、後部座席の扉を開けるとハヤトにとって見知った人物が出てきた。

 

「クルーガーさん?」

 

「直接会うのは久しぶりだな」

 

車から出てきたのはクルーガーで、その隣にはへリアンも控えている。

 

伊丹達は誰って言う顔になる中、ステンは上司の来訪に固まっている。

 

因みに64式自は留守番だ。

 

「貴方が直接来るとは思いませんでしたよ?」

 

「これからの重要な方針を決める会議があるからな。早くに着くに越した事はない。彼らが来賓か?」

 

「はい。自衛隊の伊丹二尉と栗林二曹そして冨田二曹です。そしてレレイさん、テュカさん、ロゥリィさんの三人のアルヌス協同組合の方々と帝国の代表であるピニャ皇女とその騎士ポーゼスさんの八名です」

 

ハヤトは伊丹達を紹介する中、ロゥリィはレレイに聞く。

 

「ねぇ、何て言ってるのかしらぁ?言葉だと日本語じゃないみたいだけどぉ」

 

「私にも分からない。聖下の言う通り彼等は日本語ではない言語で話している」

 

「今話しているのはロシア語ですよレレイさん。新ソ連ではロシア語が主流なので気を付けてください」

 

「ロシア語?」

 

ステンのロシア語と言う言葉にレレイは日本語とは違う言葉に興味を抱く中、ハヤトは伊丹達の元へ戻ってくる。

 

「彼はベレゾヴィッチ・クルーガー。グリフィン&クルーガーの最高責任者だ。俺達を迎えに来てくれたんだ」

 

「さ、最高責任者が自らですか!?」

 

冨田がそう言うとクルーガーは笑って答えた。

 

「大事な来賓だ。中には帝国の要人もいるとなれば私が自ら出向くのが一番良いだろうと思って此処に来た」

 

「あ、日本語できるんですか……」

 

伊丹はクルーガーが日本語で話し始めた事に意外だと思いつつそう言うと控えたいたへリアンが前に出てきた。

 

「これから貴方方を宿泊予定のホテルへ送ります。此方の御車にどうぞ」

 

へリアンはそう言って黒塗りの車に乗る様に伊丹達に促す。

 

明らかなVIP待遇に伊丹、栗林、冨田はたじろぐ中、テュカ達はそのまま乗り込むと中の快適さに驚いた。

 

「わぁ、すっごい!中は日本で乗ったバスよりも狭いのにとても快適!」

 

「ふかふか」

 

「きっと位の高い人達が乗ったりするのねぇ」

 

テュカ達は車の快適さに驚いて喜ぶ中、伊丹、冨田、栗林はかなり緊張した面持ちでガチガチに車に乗り込むと運転手に扉が閉められる。

 

ハヤトはクルーガーと同じ車に乗ろうとした所でヴァシリーが来ない事に気付くと声を掛けた。

 

「お前は来ないのか?」

 

「俺は別だ。色々とやらないといけなくてな。本当に忙しくて堪らないもんだよ。それじゃ、また会議で会おうな」

 

「分かった。また後でな」

 

ハヤトはそう言ってヴァシリーと別れる形でクルーガーの隣に座るとへリアンは助手席へと乗り込んだ。

 

「出してくれ」

 

クルーガーがそう運転手に言うと車は走り出し、都市の道路を進むのだった。

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