戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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不穏な気配

車列が都市の道路を進む中、クルーガーは車内でハヤトと話していた。

 

「それで特地の新たな方針を決めるとは何ですか?」

 

ハヤトのその問いにクルーガーは沈黙する中、クルーガーは口を開いた。

 

「正規軍に余力が出てきた」

 

「ッ!?つまりは?」

 

「近い内に帝国への大規模攻勢が計画される可能性がある。だが、近い内と言うが具体的な時期は未検討だ。それを今回の会議で決める」

 

「だが、余力があると言ってもE.L I.Dの驚異は消えていない。それに鉄血の事もあります」

 

「そうだ。それも込みで話し合うそうだ。正規軍もいい加減鉄血に煩わされるのにも飽きたのだろう。鉄血壊滅作戦と同時並行で行う事も検討するそうだ」

 

クルーガーのその言葉にハヤトは正規軍の方針に顔をしかめるとクルーガーは笑う。

 

「気に食わないか?」

 

「えぇ、気に食わないですよ。余力があるからと何故、二方面作戦をするのか?何故、一点に絞らないのか?……上層部にいる奴等の気が知れません。どちらかの戦線が倒れればもう片方の戦線も崩壊する可能性がありますから」

 

「だが、鉄血は特地にもいる」

 

クルーガーのその言葉にハヤトは考え込む様に唸る。

 

もし、正規軍が本格的に鉄血討伐を決めれば当然、特地の鉄血も対象となる。

 

特地における侵攻も必然的に行われ、結果として目的が少し変わるだけなのだ。

 

「どうにもならないのですか?」

 

「分からん。だが、特地への侵攻は急がれている。この世界は荒れ過ぎた。少しでも安全な土地を手に入れようと政界も動いている。……ハヤト。戦火の拡大は既に始まっている。望もうと望まないとでもな」

 

クルーガーのその忠告に近い言葉にハヤトはクルーガーは静かに見つめた後、溜め息を吐いた。

 

「分かりました。ですが今回の会議の内容次第では私は遠慮なく反論させて貰います。無為な作戦で消耗する事は避けたいですから」

 

「正規軍が無為な作戦を決行するとは思えんがな。それとハヤト」

 

「何ですか?」

 

「ルミナス・インフィニティが動いた」

 

クルーガーのその言葉にハヤトは目を見開いた。

 

「それは本当ですか?」

 

「間違いない。まだ調査中だがルミナスはこの都市に入った。偽装はかなり手を込んではいたが都市への侵入の情報を国家保安局が掴んだらしい」

 

「……侵入した時期は?」

 

「来賓が来る三日前だ。これは偶然ではない。ハヤト。気を付けろ。この都市には特地の来賓だけではない。政府や私の様な企業の要人も今回行われる式典に招かれている。奴等はこの時期を敢えて狙ったと考えれば辻褄が合うだろう」

 

クルーガーのその言葉にハヤトは冷や汗をかくと話を続けた。

 

「ルミナスが彷徨いているなら警備はどうなっているのですか?」

 

「安心しろ。この都市にグリフィンの部隊を召集し、警戒させている。それと政府の要人も来るからな。正規軍の一部の部隊も任務に当たっている。ルミナスの捜索には国家保安局のエージェント達が担当し、血眼になって追っている。隙はない。今の所はな」

 

クルーガーはそう言って不安要素がある様に言う素振りにハヤトは不安を抱く中、車が止まった。

 

ハヤトは外を見ると車は誰がどう見ても高級ホテルの入り口に止まっているのが分かり、運転手が先に出てハヤト達がいる後部座席を開けた。

 

クルーガーが先に出るとハヤトも後から車から降りれば着いた場所に確信が持てた。

 

目の前にある建物はそれはもう立派な都市でも有数の高級ホテルだった。

 

伊丹、冨田、栗林は口をあんぐり開けて唖然とし、テュカ達も目の前の建物に驚いている。

 

「大層な持て成しですね」

 

「彼等は大切な来賓だ。警備の高い場所の方が都合が良い。式典は明日の夜だ。何も邪魔が入らなければ予定通りに進むと思うが……警戒は怠るな?」

 

「分かっています」

 

クルーガーはそれを聞いて頷くとへリアンに任せて先に帰って行った。

 

ハヤトは先に帰った理由の中にルミナス・インフィニティの事もあるのだと思いつつ見奥った所でへリアンが伊丹達の前に立った。

 

「それでは来賓の方々の宿泊する部屋まで案内します。ハヤト指揮官。お前は後で私と共にクルーガーさんの元に戻る。それまで待機せよ」

 

「了解しました。すみませんが此処で暫くはお別れですね」

 

「え?ハヤト指揮官は一緒じゃないの?」

 

テュカは不思議そうにそう聞くとハヤトは苦笑いしながら答えた。

 

「私は来賓ではなくグリフィンの指揮官として戻りましたからね」

 

「テュカ。ハヤト指揮官は仕事で来たんだ。俺達とは別なのは当然だ」

 

「それなら仕方ないわねぇ」

 

伊丹がテュカに言うとロゥリィは残念そうにする中、へリアンはハヤトを見る。

 

「なかなか慕われている様だな?」

 

「色々とありましてね」

 

ハヤトはそう言って笑うとへリアンは伊丹達を連れて行き、残ったのはハヤトとステンのみとなった。

 

「……大丈夫か?」

 

「な、何がです?」

 

「緊張してるだろ?」

 

「……こう言う所は初めてでして」

 

ステンは恥ずかしそうに笑うとハヤトは微笑みながら言う。

 

「俺もだ」

 

ハヤトのその言葉にステンは笑ってしまうとハヤトと共にホテルのロビーへと入った。

 

ホテルのロビーも当然、豪華であり従業員の他に明らかに仕立ての良いスーツや服を着ている者達が行き来しているのだ。

 

グリフィンの制服を着ているとは言え、場違い感が半端ない空間にハヤトは居心地悪そうに待機する中、ハヤトの目の前を通る金髪を結んだスーツ姿の女が通った。

 

ハヤトはその女を見て視線を向けると女は既に無く、ハヤトは暫くその女を探しているとステンに呼び掛けられた。

 

「指揮官?」

 

「……何でもない」

 

ハヤトはそう言って見かけた女について気にしつつも命令を守る為に待機し続けた。

 

その頃、伊丹達は案内された部屋まで来るとそこは一般人では想像も出来ない様な豪華な部屋だった。

 

広い部屋、ふかふかのベット、大きなテレビ、綺麗な夜景が見える窓。

 

何れもこれも一級品であり、伊丹達は唖然とする中、へリアンは伊丹達に言う。

 

「明日の夜には歓迎の式典があります。それまでは自由時間がありますのでホテルの外へ出掛ける際にはお声を御掛けをお願いします。それとホテルに滞在中の際にはルームサービスもありますので気兼ねなくご利用を」

 

「る、ルームサービスまで!?」

 

へリアンの説明に伊丹は驚くとテュカ達は首を傾げた。

 

「ルームサービスって?」

 

「た、頼むと部屋まで飲み物とか食事を持って来てくれるサービスよ……そんなサービスがあるのは本当に高い場所しかないのよ……!」

 

栗林がそう説明するとピニャはベルを鳴らして使用人を呼び出して命じる様なものなのかと考えて理解するとへリアンは退出し、残された伊丹は改めて部屋を見ると豪華過ぎる部屋に固まりつつも近くのソファーに伊丹が座った。

 

「はぁ……座り心地まで最高かよ……」

 

「わ、私こんなホテル初めてですよ!?」

 

「そんなの俺達くらいなら誰だってそうだ……」

 

冨田のその言葉に本来なら大はしゃぎする様な事態なのに全く気が休まらない中、テュカ達は楽しそうにしている。

 

伊丹はそれを見て苦笑いで様子を見守る中、テュカははしゃぎながら言う。

 

「ねぇ、少し此処を見て回らない?」

 

テュカのその言葉にピニャは難色を示した。

 

「部屋の外へ出て大丈夫なのか?」

 

「一応、ホテルの外に出るなら声を掛けてくれって言われたから大丈夫だと思うけど……」

 

ピニャの不安に栗林がそう言うとテュカはホテルのドアノブに手を掛けて回して開け、外へ出た所で人にぶつかってしまった。

 

「あ、ごめんなさい!」

 

テュカにぶつかった人物は金髪を結んだ女性で尻餅をついてしまっていた。

 

テュカは慌てて起こすと女性は笑いながら。

 

「Я в порядке. Что более важно, в следующий раз постарайтесь не сталкиваться с людьми.」

 

「へ?」

 

流暢なロシア語でテュカに笑顔で話し、テュカは言葉が分からず混乱する中、伊丹達がやって来た。

 

「すみません!うちの連れが……」

 

「Японский язык?」

 

「え?まさかロシア語か?」

 

伊丹は相手がロシア語で話してきているのに気付き、困り果てた。

 

「参ったなぁ……ロシア語課程を何度か受けた事あるけど本格的なもんはあんまり得意じゃないんだよなぁ……」

 

「もう隊長!そこを退いて!」

 

栗林が情けなく困り果てた伊丹に代わって女性にロシア語で話して謝ると女性はニコやかに微笑んで手を振りながら去った。

 

「隊長。次からの語学研修はロシア語も入れましょう」

 

「何も言い返せないな……だけど彼女、ロシア人には見えなかったんだけどなぁ……」

 

伊丹はそう言って女性がロシア人ではないと言うのは思い違いだったのかと考える中、全員に置いていかれているのに気付いて慌てて追い掛けた。

 

その様子を先程、ぶつかった女が影から見ていたとは気付かずに。

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