戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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策謀の式典

夜となり、ハヤトは式典の行われる会場へとやって来ると黒塗りの車が多く連なって止まっており、中から軍服やタキシードを着た者達が降りてくる事から国や企業の要人なのが見て取れた。

 

「大層な顔ぶれだな」

 

「テレビで見た事のある人達ばかりですね」

 

軍の関係者だけでなく政治家や企業のトップまで来ているのを見てステンはこの式典で何れだけ特地が注目されているのかがよく分かった時、ハヤトの元に杖を付いた老人がやって来た。

 

「やぁ、ハヤト君。久しぶりだね?」

 

「ハーヴェルさん。お久しぶりです」

 

ハヤトはそう言って頭を下げ、ステンもそれに続いて頭を下げるのハーヴェルは笑いながら制した。

 

「頭を下げなくても良い。それとも君のそれは日本人としての(さが)なのかね?」

 

「そんなものですね。まさかIOPのCEOである貴方まで来訪されるなんて」

 

「何だね?来ては行けなかったのかね?ペルシカはこう言う場は好かん方ではあるが私はそうではないぞ?」

 

「滅相もない」

 

ハヤトはそう言うとハーヴェルは再び笑うと秘書らしき人物がハーヴェルに耳打ちする。

 

「うむ。では、ハヤト君。そろそろ会場に行かせて貰うよ。今回の主役達を中でゆっくりと待つ為にね」

 

「分かりました。また会場でお会いしましょう」

 

ハヤトはそう言ってハーヴェルを見送ると再び一台の車が止まり、中からカーターとエゴールが現れて会場へ真っ直ぐ向かっていく。

 

その様子をハヤトが見ているとカーターとエゴールもハヤトの存在に気付いて視線を向けつつもすぐに視線を戻し、姿を消した。

 

ハヤトはそれ見た後、溜め息をついた。

 

「俺もそろそろ行くよ。すまないな。また待たせる様な事をさせて」

 

「いいえ。私は大丈夫ですから楽しんで来てください。伊丹さん達もいるのですから」

 

「……素直に楽しめるものなら良かったんだかな」

 

ハヤトはそう言ってステンと別れて会場へと入って行く。

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______

___

 

ハヤトは式典の会場へとやって来ると豪華な装飾と豊富な料理が立ち並ぶ光景が見えた。

 

中ではワインを片手に話す者や談笑する女性と言った者達がおり、ハヤトは会場内を歩くとスタッフが近寄って来た。

 

「お飲み物は如何でしょうか?」

 

「赤ワインを頼む」

 

ハヤトはそう言ってスタッフからワインを受け取ると一口飲む。

 

汚染や大戦以来、ワインの様な特に年代の古い物を味わえる機会は極端に減った。

 

今では億を越える物も少なくないがハヤトは遠慮なく味わっていると会場にいる人々の視線が会場の出入口に向けられている事に気付いて視線を向けた。

 

そこには案の定、伊丹達がいた。

 

伊丹、冨田、栗林の三人は自衛官の制服を着て臨んでおり、テュカとレレイは用意されたドレスを着ている。

 

ピニャとポーゼスもドレスを着ているがテュカとレレイよりも社交界と言うものに慣れているのかドレスを慣れた様に着こなして臨んでおり、ロゥリィはいつものゴスロリの神官服だが武器のハルバードは流石に置いてこさせられたのか何も持っていなかった。

 

「す、すげぇ……!」

 

「これが式典ですか……」

 

「あ、明らかに全部高そう……!」

 

伊丹達は式典の華々しさに驚く中、テュカ達も驚いていた。

 

「こ、これって本当に私達が参加して良いの?」

 

「招待されたのは間違いない」

 

「私達の世界の宴よりも華やかなのねぇ」

 

テュカは戸惑いと緊張の中、そう言うとレレイは冷静に言い、ロゥリィもこう言った場に何度も足を運んだ事があるのか自分達の世界とハヤト達の世界の場を比べている。

 

「で、殿下……!」

 

「分かっている。この場にいるのは恐らく新ソ連の身分の高い者達だ。交渉に当たる前にこの場にいる者達とパイプを作るべきだな……」

 

ピニャは既に交渉の為の布石作りの為に誰がどう言った者達なのかと見定め始めており、何とか交渉で良い方向に持ち込みたいと思考を巡らせている。

 

伊丹達の登場により会場がザワつく中、伊丹達の元へヴァシリーがやって来た。

 

「伊丹二尉。それに皆さん。式典への参加。誠にありがとうございます」

 

ヴァシリーはわざわざ日本語で伊丹達に挨拶に伊丹は挨拶を返した。

 

「あ、はい。此方こそ御誘いありがとうございますヴァシリー大尉」

 

「堅苦しい式典ですが遠慮なく食べて飲めば良いですよ。そこの赤毛のお嬢さん方はそうはいかないでしょうが」

 

ヴァシリーのその言葉にピニャは何とも言えない表情になる中、そこへハヤトがやって来た。

 

「あまりからかうものじゃないぞヴァシリー大尉」

 

「ハヤト指揮官。やっぱり参加していたので?」

 

ヴァシリーはハヤトが参加しないんじゃないかと言う様な発言をするとハヤトは苦笑いする。

 

「クルーガーさん達が参加するんです。その下が嫌だからと拒否出来るので?」

 

「ハハッ!確かに無理だ。私も上官に出られたら出るしかありませんからね」

 

ヴァシリーはそう言って笑うと。

 

「なら、帰っても良いぞ。そんなに嫌ならな?」

 

ヴァシリーはそれを聞いて振り替えるとエゴールがおり、そしてその後ろにはカーターがいた。

 

「おや、別に嫌とは申してませんが?」

 

ヴァシリーはそう言ってエゴールに笑って見せるもその目は笑っていない。

 

二人が睨み合う中、カーターが仲裁に入った。

 

「よせ。式典の場で無粋な言い争いは客人に失礼だ」

 

カーターのその言葉に二人は退くとカーターは伊丹達の前へと出てきた。

 

「ようこそ皆さん。私はカーター・ペトゥノヴィッチ・ノイシュタット。新ソ連正規軍の陸軍少将を勤めさせて貰っている」

 

「り、陸軍少将……!?失礼しました!私は陸上自衛隊二等陸尉の伊丹耀司です!」

 

「陸上自衛隊二等陸曹の冨田章です!」

 

「同じく栗林志乃です!」

 

三人はカーターの階級を聞いて敬礼して挨拶するとカーターは笑いながら制する。

 

「そんなに緊張などしなくとも良い。此方から御呼びした客人なのだからな。それで彼女達がそうなのかね?」

 

「はい。彼女達が特地の来賓の方々です。あ、あの黒い衣服の方はアレが礼服の様なものなのでご了承を」

 

ヴァシリーの説明にカーターはテュカ達の元の前へと立った。

 

「遠路遥々、ようこそおいで下さいました。今夜の式典。楽しんで行ってください。私はまだ挨拶がありますのでこれで」

 

カーターはそう言ってエゴールとヴァシリーを連れて去ると伊丹達は緊張が溶けたのか力を抜いた。

 

その中でピニャはカーターを見定めていた。

 

「(伊丹殿達の反応……間違いない……あの御仁が新ソ連の位の高い武官なのだろう……どうにか接触する機会はないのか……?)」

 

ピニャはカーターが身分のある人物だと知り、接触を模索するその姿をハヤトを横目で見つつ、ワインを飲む。

 

ハヤトは程良く酔う中、周りを見渡せばクルーガーとへリアンの様なグリフィンの重役やハーヴェルの様な企業の代表、カーター達、正規軍の将校達と集まる場が自棄に眩しく見えた。

 

ハヤトはやっぱり適当な事を言って欠席すれば良かったと思う中、一人の女性が視界に入った。

 

スリットのある黒いドレスを着て、料理を口にしている金髪の女。

 

前にロビーでハヤトが見た女だった。

 

女はある程度、料理を食べた後、その場を後にして会場を出るのをハヤトは見ていると。

 

「ハヤト指揮官?」

 

栗林がハヤトの異変に気付くとハヤトは飲み掛けのワインをそのまま伊丹に差し出した。

 

「飲み掛けですまないが代わりに飲んでくれ」

 

「え!?ちょっと!?」

 

伊丹の制止を聞かずにハヤトは女の出ていった出入口から会場に出ると女を探す。

 

痕跡らしい痕跡もなくハヤトは探す中、角を曲がって歩く女を見つけて追い掛けようと角の近くまで来た時、角から手が出てきてハヤトの襟を掴んだ。

 

襟を掴んだその手はハヤトを引き込むと壁に叩きつけ、ハヤトは抵抗しようとしたが。

 

「動かないで」

 

その声と共にハヤトの腹部辺りに鋭いナイフの刃が光った。

 

目の前には追い掛けていた女がおり、特徴的な金髪を除いて顔は俯いていて見えない。

 

「そう……そのままじっとしてて……」

 

ハヤトはその言葉を聞いて詰んだかと思っていた時、ハヤトの唇に女の唇が重なった。

 

ハヤトはその行為に暫く固まるがすぐに空いていた手で女の顔を引き離した。

 

「よせ!……何のつもりだ?」

 

「懐かしかったから……つい?」

 

女のその言葉にハヤトは困惑と苛立ちを覚える中、女の手は力強く、簡単には離されなかった。

 

「何を企んでいる?」

 

「企む?何のこと?」

 

「惚けるな。ルミナス・インフィニティのリーダーのお前がどうして要人の集まるこの場所に来た」

 

ハヤトのその言葉に女は不敵な笑みを浮かべながらハヤトの耳元に囁く。

 

「世界の輝きを更新せよ。私は何時だってその為に動くの」

 

女のその言葉にハヤトを目を見開いた。

 

「安心して。犠牲は最小限に抑えて行うわ。無関係な人間に銃なんて無粋な物を向けるつもりは毛頭ないの。そう……全てはロクサットを押さえ込む新ソ連を崩す為なの。分かって頂戴」

 

「止めろ。テロを起こしても変わる所か悪化するだけだ」

 

ハヤトはそう言って女に言うも女は微笑んでハヤトの頬に手をやった。

 

「そんなの百も承知よ。それでももう私達にはそれしかないの。戦争が終わってからの私達には居場所なんて無かった。私は別に国に追放同然で追い出されたって良かった。でも、他はどうなの?皆、故居に帰りたがってた。私達には銃しか無かった。戦うしかないのよ。未来永劫。永遠に」

 

女はそう言ってハヤトの胸に顔を当てた。

 

「ハヤト……私は貴方を今も愛してる……でも、貴方はもう私を愛さない……私達の故居、アメリカが貴方達を裏切ったから……確かステンMKⅡだったわね……あんなに愛し合っちゃって……全く……嫉妬しちゃうわ……」

 

「ステンは関係ない」

 

「えぇ、無いわ。だけど私だって女なのよ。失くして目の前で他人の者になる光景を見て良い気分にはなれないのよ」

 

女はそう言ってハヤトに微笑みを見せるもその微笑みの目は狂喜に満ちており、ハヤトに寒気を覚えさせた時、ハヤトは身体に違和感を覚えた。

 

身体に力が入らなくなり、徐々に立てなくなってくる。

 

ハヤトは力無く通路の廊下に倒れようとした時、女に支えられた。

 

「戦う事しか知らない私達は何時かは時代に消される……ハヤト……貴方も知らない内に染まってるのよ……だから貴方を絶対に巻き込ませたりしないから……」

 

女のその言葉を聞いてハヤトは力無く手を伸ばして女を掴もうとするも力が入らず、意識を失っていく。

 

「シェイラ……!」

 

ハヤトは初めて女の名前、シェイラの名を口にした瞬間、意識を落とした。

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