戦術人形彼の地にて斯く、戦えり   作:謎多き作家

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襲撃者

ハヤトの意識を奪ったシェイラは近くの部屋へ運ぶと手足を拘束し、口を布で縛って起きても声を出せない様にした。

 

気絶するハヤトにシェイラは静かに見つめた後、携帯を手にして連絡を入れた。

 

「……作戦開始」

 

冷たく、静かに言われたその言葉はこれから起きる戦いの合図だった。

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その頃、伊丹達は式典の会場にいたのだが伊丹達はすっかり式典の招待客達に取り囲まれていた。

 

「何とお美しい。君はエルフと聞いたのだが噂以上ですよ」

 

「どうですか?私と一緒に一時を」

 

「抜け駆けは止めろ」

 

「あ、あはは……」

 

テュカは若い将校達に話し掛けられ、困り果て。

 

「ほぉ、君は中々に知識に貪欲な様だね?」

 

「知識は学べれば学ぶべきもの。否定するものではない」

 

レレイはハーヴェルと話しており、ハーヴェルはレレイの賢さと知識の貪欲さに関心を示す。

 

「スゲェ。あのハーヴェルと話してますよレレイって子」

 

「あらぁ、そんなに凄い叔父様なのぉ?」

 

「IOPのCEOですよ?グリフィンの大半の人形はIOPが造ってます。聞いた事がありませんか?」

 

ロゥリィは食事をしながらヴァシリーと話しており今はハーヴェルとレレイが会話している事を話題としていた。

 

「だとしても難しいですな」

 

「そこを何とかなりませぬか」

 

「我々としても心苦しいが軍は国家の組織。そう易々とは……」

 

ピニャはポーゼスを伴いカーターと話していた。

 

カーターはピニャの言葉に一見、耳を傾けている様に見えるが実際は殆ど聞き流している。

 

ピニャもそれに気付いているのか悔しげにしながらも食い付いている。

 

各自が各々、式典で行動する中、伊丹は食事をしつつ辺りを見渡していた。

 

「遅いなハヤトさん……」

 

「分かれてからだいぶ経ってますね」

 

「そんなに心配する事ですか?」

 

「だってわざわざ式典に参加してるんだぞ?嫌でも顔を出し続ける筈だ。なのに分かれてから音沙汰も無いなんておかしいだろ?」

 

伊丹はそう言って料理を口にした瞬間。

 

「同感だな」

 

「んぐっ!?ゴホゴホ!あ、貴方は!?」

 

「固くならなくて良い。所詮はPMCの最高責任者でしかない。形は違えど正規の組織よりも下なのは間違いないないからな」

 

伊丹達の元に現れたのはクルーガーで側にはへリアンもいる。

 

クルーガーはワインを片手に真剣な面持ちで語る。

 

「ハヤトの姿を見なくなってかなり経つ。彼奴はこの式典に出席するのに難色を示していたが彼奴は黙って帰る様な奴ではない」

 

「今、警備の次いでにハヤト指揮官の捜索をさせていますが一向に情報が挙がりません。只、金髪の女の後を追い掛けていたと言う目撃情報しか」

 

「金髪の女……?」

 

伊丹はそれを聞いて昨日のロシア語を話していた奇妙な女の事を思い出す。

 

「まさか昨日の彼奴か……?」

 

伊丹は昨日の事を思い出した時、会場が大きく揺れた。

 

「な、何だ!?地震か!?」

 

伊丹達は体勢を崩しながら突然の揺れに驚いていると会場の突如として扉が開かれた。

 

「き、緊急事態です!か、会場の外に暴徒が!今は警備の者達が抑えていますが中には爆発物を持つ者がいると!」

 

会場にいたスタッフの男は息を切らしながら慌てた様子で言うと会場はザワつく。

 

「暴徒だと?」

 

「近くでデモがあったのか?それに爆発物だと?」

 

「だとしたら此処は危険では?」

 

会場にいる招待客達が話す中、カーターがマイクを手にして招待客の前に立った。

 

「皆様。聞いての通り緊急事態であります。心配の必要はありません。この為にグリフィンの部隊と我が正規軍の部隊が共同で警備を行っております。何も心配はありません。ですので皆様には万全を期して秩序ある行動を持って避難をお願い致します」

 

カーターはそう言い終えるとエゴールとヴァシリーが動いた。

 

「各部隊は集結次第、暴徒と交戦せよ!会場に一歩も足を踏み入れさせるな!」

 

「皆様!私に着いて来てください!脱出用の通路を使用し、此処から避難します!急いで!」

 

エゴールが戦闘指揮、ヴァシリーが招待客を避難させると言う役割で動く中、伊丹達も動こうとしていた。

 

「一体何が起きてるのか知らないが俺達も避難するぞ!冨田、栗林!武器は無いがテュカ達を」

 

「これを使え」

 

伊丹が武器も無い中でテュカ達を守る様に言おうとした時、クルーガーから拳銃を差し出された。

 

「いや、これは……」

 

「今は緊急事態だ。身を守れる手段を持っておけ」

 

「しかし、それではクルーガーさんが」

 

「私にはこれがある」

 

クルーガーはそう言って取り出したのはリボルバーで大口径の物を扱う物だと嫌でも分かった。

 

「やっぱり巨漢に似合う銃を使うんだ……」

 

「言ってる場合か……」

 

栗林に冨田がツッコミを入れると二人にもへリアンから拳銃が手渡された。

 

「恐らく暴徒は第一段階だ。油断するな自衛官」

 

「第一段階……?」

 

クルーガーのその言葉に伊丹は困惑を覚える中、悲鳴と銃声が会場に鳴り響いた。

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伊丹達が避難しようとしている頃、会場内の廊下では激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

暴徒鎮圧に向かったグリフィンの人形達とは別に残っていたグリフィンの部隊は突如として内部からの奇襲を受けていた。

 

武装は兵士の様な装備を纏っており、何処かの部隊の様な姿を見たグリフィンの部隊は最初こそ正規軍の部隊かと誤認した。

 

その誤認はすぐに消え去ったのだが。

 

「増援を!増援を求めます!きゃあッ!?」

 

増援を求める人形に襲撃者は銃弾を当て、制圧すると倒れている人形に対して念入りに銃弾を撃ち込んで突き進む。

 

素早く、そして機械的に動くその姿は特殊部隊そのもので接敵した人形が何度立ちはだかっても襲撃者の敵ではなかった。

 

「クリア」

 

短い言葉と共に角に警戒してクリアリングして接敵しては射殺する。

 

襲撃者はやがて式典が行われている会場の前へと着くと扉の隅に行き、配置に着くと扉を開け放ち、突入する。

 

だが、そこには誰もおらず襲撃者達はそれを確認すると無線を使って連絡を入れた。

 

「此方、アルファチーム。会場内に突入したが人はいない。既に待避したものと思われる」

 

《アルファチーム了解。予定通りよ。貴方達は残りの人形の部隊を相手にしなさい。その間にベルタチームが追撃を行う》

 

「了解」

 

襲撃者はそう言ってすぐさま会場に置いてあるテーブルを使って簡易的なバリケードを作ると突入してきたグリフィン部隊と交戦を開始した。

 

《ベルタチーム。聞いた通りよ。貴方達は事前に入手した待避ルートを辿って追撃。ガンマチームが待避ルートの出口前で待機している。ガンマチームと連携して挟撃せよ》

 

ベルタチームはそれを聞いて追撃を開始、待機ルートを辿って追い始めた。

 

その頃、ステンは息を殺して近くの部屋に隠れて様子を伺っていた。

 

足音が無数に聞こえ、通り過ぎるのを確認したステンは自身の半身であるステンMKⅡのマガジンを抜いて弾数を確認して装填して動作チェックすると軽く息を吐いた。

 

「……待っていてください。指揮官。今、行きます」

 

ステンは意を決して部屋から出てクリアリングを行い、内部を歩く。

 

静まり帰った会場内は酷く不気味でステンは緊張が高まる中、ステンが歩く廊下の曲がり角で襲撃者が現れた。

 

「コンタクト!」

 

襲撃者のその言葉と同時に発砲、ステンは咄嗟に近くの部屋を蹴破って身を隠して体勢を立て直すと反撃する。

 

銃弾は当たらず、襲撃者は角に身を隠してステンの銃弾を避けつつ同じく反撃する。

 

互いに撃ち合う中、火力は襲撃者に分があり、ステンは撃ち続けるが押されていく。

 

「くッ……指揮官……そこを退けぇッ!」

 

ステンはハヤトの事を思い、何としても助けると考え発砲。

 

襲撃者の一人を倒した。

 

「ベータIVダウン!」

 

「敵の人形を牽制しろ!」

 

襲撃者の一人がそう言うと他の襲撃者達は一斉に発砲。

 

「きゃあッ!?」

 

ステンが顔を出せなくなるのを確認して牽制する様に言った襲撃者の手にはグレネードがあり、他の襲撃者にグレネードを見せて静かに警告するとピンを抜く。

 

「グレネード!」

 

襲撃者はそう言ってグレネードを投げるとグレネードはステンの元へと転がっていく。

 

「ッ!?しまった!?」

 

ステンはすぐに立ち上がり、身を隠していた部屋の奥へと駆け出した時。

 

ボオォンッ!

 

グレネードは爆発、ステンが逃げ込んだ部屋の内部を巻き込んで吹き飛ばした。

 

会場内で激しい戦闘繰り広げられる中、伊丹達は護衛のグリフィンの部隊に守られながら避難していた。

 

会場の廊下を少し通り、隠し通路を通った地下の通路を進む。

 

「この世界でも地下を通るなんてぇ。何てツイてないのぉ」

 

「我慢してくれロゥリィ。ハルバードはそこにいる子が持ってきてくれたんだから」

 

伊丹はそう言って横をチラッと見るとリボンでサイドテールに結んだ髪型の如何にも気が強いとばかりに鋭い目付きを持つ人形がいた。

 

「ふん。大事なものだからって言うから無理を承知で運んで来たのよ。そんな重たい物。二度持ってこないから」

 

「まぁまぁ、落ち着いてわーちゃん」

 

「わーちゃん言うな!いつも言ってるわよねGr Mk23!」

 

わーちゃんことWA2000はそう言ってGr Mk23に怒り、ワイワイ言い合う中、伊丹は収拾の着かなくなった二人に困り果てる。

 

「我が軍の部隊は何処だ?」

 

「会場の外を主に警備していましたので抜ければすぐに合流するかと」

 

「それまではアレに守られるのか」

 

カーターの質問に答えたヴァシリーの話しを聞いてエゴールは難色を示しつつ歩き続ける。

 

「大丈夫ですかハーヴェルさん」

 

「ありがとう若いの。こんな老人を背負って避難するとは流石は自衛官だ」

 

冨田がハーヴェルを背負って移動し、進む。

 

テュカ達も不安を抱く中、進む中で後ろから足音が響いたのをWA2000が気付いた。

 

「……Gr Mk23」

 

「もう来たの?早くない?」

 

「情報が漏れてた可能性があるわ。食い止めるわよ」

 

「はーい!」

 

WA2000とGr Mk23はその場で銃を手にして止まると伊丹が振り返る。

 

「お、おい」

 

「さっさと行って。死にたいの?」

 

「大丈夫だよ!不意を突かれちゃったけど私達は強いから!すぐに追い付くよ!」

 

二人に先に行くように言われた伊丹は先に進む事を選び、再び歩き出すとWA2000とGr Mk23は迫り来る襲撃者を迎え撃つのだった。

 

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